都道府県別完全失業率ランキング(2020年度)
概要
完全失業率とは、労働力人口(就業者と完全失業者の合計)に占める完全失業者の割合を指します。この記事では、2020年度の都道府県別完全失業率のランキングを紹介します。
完全失業率は、地域の雇用状況や経済状況を反映する重要な指標であり、特に2020年度はコロナ禍の影響により、多くの地域で失業率が上昇した時期でもあります。沖縄県や青森県などで完全失業率が高く、福井県や富山県などで完全失業率が低くなっています。
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上位県と下位県の比較
完全失業率が高い上位5県
2020年度の完全失業率ランキングでは、沖縄県が5.5%(偏差値14.9)で全国1位となりました。沖縄県は観光業を中心とする産業構造であり、コロナ禍による観光客の減少が雇用に大きな影響を与えたと考えられます。また、若年層の就業機会が限られていることも高い失業率の要因の一つです。
2位は青森県で4.6%(偏差値33.6)、3位は大阪府で4.5%(偏差値35.7)、4位は宮城県で4.3%(偏差値39.8)、5位は北海道と大分県で同率の4.2%(偏差値41.9)となっています。上位県には観光業が盛んな地域や、製造業の比率が低い地域が多く含まれており、コロナ禍の影響を強く受けたと考えられます。
完全失業率が低い下位5県
最も完全失業率が低かったのは福井県で2.3%(偏差値77.0)でした。福井県は製造業、特に繊維産業や眼鏡産業などの地場産業が発達しており、雇用の安定性が高いことが特徴です。また、女性の就業率が高いことも低い失業率に寄与していると考えられます。
46位は富山県で2.4%(偏差値75.0)、45位は島根県で2.5%(偏差値73.0)、44位は石川県で2.6%(偏差値71.0)、43位は岐阜県で2.7%(偏差値69.0)となっています。下位県には製造業が盛んな地域や、地場産業が発達している地域が多く含まれており、雇用の安定性が高いことが特徴です。
地域別の特徴分析
東北地方の雇用状況
東北地方では、青森県(2位、4.6%)と宮城県(4位、4.3%)の失業率が特に高く、山形県(8位、3.4%)の失業率が最も低くなっています。その他の県は、岩手県(21位、3.8%)、秋田県(34位、4.1%)、福島県(34位、4.1%)と、全国的に見ると中位から上位に位置しています。
東北地方全体として失業率が比較的高い理由としては、産業構造の特性や雇用機会の限定性が挙げられます。特に青森県では、第一次産業の比率が高く、季節的な雇用変動が大きいことや、若年層の就業機会が限られていることが高い失業率の要因として考えられます。
特に宮城県で失業率が高い理由としては、東日本大震災からの復興需要が一段落し、建設業などでの雇用が減少していることや、仙台市を中心とするサービス業がコロナ禍の影響を受けたことが考えられます。
一方、山形県で失業率が低い理由としては、製造業を中心とする産業構造や、農業などの第一次産業の安定性が挙げられます。また、地域に根ざした中小企業が多く、雇用の維持に努めている可能性もあります。
関東地方の都市化と失業の動向
関東地方では、千葉県(9位、4.0%)と埼玉県(11位、3.9%)の失業率が比較的高く、栃木県(19位、3.7%)と群馬県(19位、3.7%)の失業率が比較的低くなっています。その他の県は、茨城県(15位、3.8%)、東京都(15位、3.8%)、神奈川県(11位、3.9%)と、全国的に見ると中位から上位に位置しています。
関東地方全体として失業率が中程度である理由としては、多様な産業構造を持ち、雇用機会が比較的豊富であることが挙げられます。ただし、コロナ禍の影響により、サービス業や小売業などの雇用が減少した地域では、失業率が上昇した可能性があります。
特に千葉県と埼玉県で失業率が比較的高い理由としては、東京都のベッドタウンとしての性格が強く、東京都内の雇用状況の影響を受けやすいことが考えられます。また、製造業の比率が低く、サービス業や小売業の比率が高いことも、コロナ禍の影響を受けやすい要因となっています。
一方、栃木県と群馬県で失業率が比較的低い理由としては、製造業の比率が高く、特に自動車関連産業や電機産業などの基幹産業が発達していることが挙げられます。これらの産業は、コロナ禍の影響を比較的受けにくかった可能性があります。
中部・北陸地方の産業構造と失業の特徴
中部・北陸地方では、新潟県(26位、3.9%)の失業率が比較的高く、福井県(47位、2.3%)、富山県(46位、2.4%)、石川県(44位、2.6%)、岐阜県(43位、2.7%)の失業率が非常に低くなっています。その他の県は、山梨県(30位、4.0%)、長野県(15位、3.8%)、静岡県(26位、3.9%)、愛知県(26位、3.9%)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
中部・北陸地方全体として失業率が低い理由としては、製造業を中心とする産業構造が挙げられます。特に、自動車産業や電機産業、機械産業などの製造業が発達しており、雇用の安定性が高いことが特徴です。また、地場産業が発達している地域も多く、これらの産業がコロナ禍の影響を比較的受けにくかった可能性があります。
特に福井県、富山県、石川県で失業率が非常に低い理由としては、繊維産業や眼鏡産業(福井県)、医薬品産業(富山県)、伝統工芸品産業(石川県)などの地場産業が発達していることが挙げられます。これらの産業は、長年にわたり地域の雇用を支えており、雇用の安定性が高いことが特徴です。また、女性の就業率が高いことも低い失業率に寄与していると考えられます。
一方、新潟県で中部・北陸地方の中では失業率が比較的高い理由としては、農業の比率が高く、季節的な雇用変動が大きいことや、製造業の比率が他の北陸地方の県と比べて低いことが考えられます。また、豪雪地帯であることから、冬季の雇用が制限される面もあります。
近畿地方の経済状況と失業の分布
近畿地方では、大阪府(3位、4.5%)の失業率が特に高く、滋賀県(39位、3.0%)の失業率が最も低くなっています。その他の県は、京都府(11位、3.9%)、兵庫県(11位、3.9%)、奈良県(30位、4.0%)、和歌山県(30位、4.0%)と、全国的に見ると中位から上位に位置しています。
近畿地方全体として失業率にばらつきがある理由としては、大阪府や京都府などの大都市圏と、滋賀県や和歌山県などの地方県との産業構造の違いが挙げられます。特に、大都市圏ではサービス業や小売業の比率が高く、コロナ禍の影響を強く受けた可能性があります。
特に大阪府で失業率が高い理由としては、サービス業や小売業、観光業などの第三次産業の比率が高く、コロナ禍の影響を強く受けたことが挙げられます。また、製造業の比率が低下傾向にあり、雇用の安定性が低下していることも要因として考えられます。さらに、非正規雇用の比率が高いことも、雇用の不安定性を高めている可能性があります。
一方、滋賀県で失業率が低い理由としては、製造業の比率が高く、特に電機産業や化学産業などの基幹産業が発達していることが挙げられます。これらの産業は、コロナ禍の影響を比較的受けにくかった可能性があります。また、大阪府や京都府などへの通勤者が多く、地元での雇用依存度が比較的低いことも要因として考えられます。
中国・四国地方の人口動態と失業の傾向
中国・四国地方では、高知県(9位、4.0%)の失業率が比較的高く、島根県(45位、2.5%)の失業率が非常に低くなっています。その他の県は、鳥取県(30位、4.0%)、岡山県(30位、4.0%)、広島県(30位、4.0%)、山口県(30位、4.0%)、徳島県(30位、4.0%)、香川県(30位、4.0%)、愛媛県(30位、4.0%)と、全国的に見ると中位に位置しています。
中国・四国地方全体として失業率が中程度である理由としては、製造業と第一次産業のバランスが取れた産業構造を持つ地域が多いことが挙げられます。ただし、人口減少や高齢化が進んでいる地域も多く、労働力人口自体が減少傾向にあることも影響している可能性があります。
特に高知県で失業率が比較的高い理由としては、第一次産業の比率が高く、季節的な雇用変動が大きいことや、製造業の比率が低いことが挙げられます。また、人口減少や高齢化が進んでおり、若年層の就業機会が限られていることも要因として考えられます。
一方、島根県で失業率が非常に低い理由としては、公務員や医療・福祉関係の雇用の比率が高く、これらの分野では雇用の安定性が高いことが挙げられます。また、人口減少により労働力人口が減少しており、労働力需給が逼迫している可能性もあります。さらに、地域に根ざした中小企業が多く、雇用の維持に努めている可能性もあります。
九州・沖縄地方の雇用環境と失業の実態
九州・沖縄地方では、沖縄県(1位、5.5%)の失業率が突出して高く、佐賀県(15位、3.8%)の失業率が最も低くなっています。その他の県は、福岡県(30位、4.0%)、長崎県(21位、3.8%)、熊本県(26位、3.9%)、大分県(40位、4.2%)、宮崎県(30位、4.0%)、鹿児島県(30位、4.0%)と、全国的に見ると中位から上位に位置しています。
九州・沖縄地方全体として失業率が比較的高い理由としては、第一次産業の比率が高く、季節的な雇用変動が大きいことや、製造業の比率が低いことが挙げられます。また、観光業に依存している地域も多く、コロナ禍の影響を強く受けた可能性があります。
特に沖縄県で失業率が突出して高い理由としては、観光業を中心とする産業構造であり、コロナ禍による観光客の減少が雇用に大きな影響を与えたことが挙げられます。また、若年層の就業機会が限られていることや、非正規雇用の比率が高いことも高い失業率の要因として考えられます。さらに、米軍基地関連の雇用も多く、これらの雇用状況の変化も影響している可能性があります。
一方、佐賀県で九州地方の中では失業率が低い理由としては、製造業の比率が比較的高く、特に電子部品や食品加工などの産業が発達していることが挙げられます。また、農業も盛んであり、これらの産業がコロナ禍の影響を比較的受けにくかった可能性があります。さらに、福岡県への通勤者が多く、地元での雇用依存度が比較的低いことも要因として考えられます。
格差や課題の考察
地域経済への影響
完全失業率の地域間格差は、地域経済にも影響を与えます。失業率が高い地域では、消費活動が低迷する可能性があり、地域経済の活性化が課題となります。また、税収も減少するため、公共サービスの維持が困難になる可能性があります。
例えば、沖縄県(1位、5.5%)では、失業率が高く、特に若年層の失業が問題となっています。これにより、消費活動が低迷し、地域経済の成長が抑制される可能性があります。また、税収の減少により、教育や福祉などの公共サービスの質の低下も懸念されます。
一方、福井県(47位、2.3%)では、失業率が低く、雇用が安定していることから、消費活動も安定しており、地域経済の持続的な成長が期待できます。また、税収も安定しているため、公共サービスの質の維持・向上も可能となります。
社会保障制度への影響
完全失業率の地域間格差は、社会保障制度にも影響を与えます。失業率が高い地域では、失業給付や生活保護などの社会保障費が増加する傾向があり、財政的な負担が大きくなる可能性があります。
例えば、大阪府(3位、4.5%)では、失業率が高く、特に長期失業者が多い可能性があります。これにより、失業給付の支給期間が終了した後も就職できない人が増え、生活保護受給者が増加する可能性があります。これは、地方自治体の財政に大きな負担をかける要因となります。
一方、富山県(46位、2.4%)では、失業率が低く、特に長期失業者が少ない可能性があります。これにより、社会保障費の増加が抑制され、財政的な余裕が生まれる可能性があります。この余裕を活用して、産業振興や人材育成などの施策を展開することで、地域経済の活性化につながる可能性があります。
若年層の就業環境への影響
完全失業率の地域間格差は、特に若年層の就業環境にも影響を与えます。失業率が高い地域では、若年層の就業機会が限られる可能性があり、これが若年層の地域外への流出を促進する要因となっています。
例えば、青森県(2位、4.6%)では、失業率が高く、特に若年層の就業機会が限られています。これにより、若年層が県外に流出する傾向があり、人口減少と高齢化が進行しています。特に、大学進学や就職を機に県外に移住する若者が多いことが特徴です。
一方、石川県(44位、2.6%)では、失業率が低く、特に製造業や伝統工芸品産業などで若年層の就業機会が確保されています。これにより、若年層の県外流出が抑制され、地域社会の持続可能性が高まっています。特に、金沢市を中心に文化的な魅力も高く、若者にとって魅力的な就業・生活環境が整っていることが特徴です。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2020年度の都道府県別完全失業率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約3.7%、中央値は約3.9%とほぼ同じ値を示しており、データの分布がほぼ対称的であることを示しています。ただし、沖縄県(5.5%)や青森県(4.6%)などの上位県と、福井県(2.3%)や富山県(2.4%)などの下位県との間には大きな差があります。
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分布の歪み:データは全体としてやや負の歪みを示しており、左に長い裾を持つ分布となっています。これは、福井県(2.3%)や富山県(2.4%)などの一部の県で失業率が特に低いことを反映しています。
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外れ値の特定:沖縄県(5.5%)は上側の外れ値と考えられ、平均値を大きく上回っています。これは、沖縄県の特殊な産業構造や雇用環境を反映していると考えられます。一方、福井県(2.3%)や富山県(2.4%)などは下側の外れ値と考えられ、平均値を大きく下回っています。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約3.4%、第3四分位数(Q3)は約4.0%で、四分位範囲(IQR)は約0.6%です。これは、中央の50%の都道府県の完全失業率が3.4%から4.0%の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的近い失業率であることがわかります。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約0.6%で、変動係数(標準偏差÷平均値)は約16%となり、相対的なばらつきは比較的小さいことを示しています。ただし、最高値(沖縄県、5.5%)と最低値(福井県、2.3%)の差は3.2%ポイントと大きく、地域間の格差が存在することを示しています。
まとめ
2020年度の都道府県別完全失業率ランキングでは、沖縄県が5.5%で1位、福井県が2.3%で47位となりました。上位には沖縄県、青森県、大阪府などの観光業が盛んな地域や、製造業の比率が低い地域が多く、下位には福井県、富山県、島根県などの製造業や地場産業が発達している地域が多く見られました。
完全失業率の地域差は、産業構造、雇用環境、人口動態など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、社会保障制度、若年層の就業環境など様々な面に影響を与えています。特に2020年度は、コロナ禍の影響により、観光業やサービス業などの特定の産業で雇用が大きく減少した時期であり、これらの産業が集中する地域では失業率が上昇した可能性があります。
統計分析からは、都道府県間の完全失業率の格差が存在することがわかります。特に、沖縄県や青森県などの上位県と、福井県や富山県などの下位県との間には大きな差があります。これは、産業構造や雇用環境の違いを反映していると考えられます。
コロナ禍からの経済回復が進む中、失業率の改善が期待されますが、地域によって回復のスピードや程度は異なる可能性があります。特に、観光業やサービス業に依存している地域では、回復に時間がかかる可能性があります。一方、製造業や地場産業が発達している地域では、比較的早い回復が期待できます。地域の特性に応じた雇用対策や産業振興策が求められています。