都道府県別完全失業者数ランキング(2020年度)
概要
完全失業者数とは、労働力人口のうち、仕事を持たず、積極的に求職活動をしており、すぐに就労可能な状態にある人の数を指します。この記事では、2020年度の都道府県別完全失業者数のランキングを紹介します。
完全失業者数は、地域の雇用状況や経済状況を反映する重要な指標であり、特に2020年度はコロナ禍の影響により、多くの地域で失業者が増加した時期でもあります。東京都や大阪府などの大都市圏で完全失業者数が多く、鳥取県や島根県などの人口規模の小さい地方県で完全失業者数が少なくなっています。
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上位県と下位県の比較
完全失業者数が多い上位5県
2020年度の完全失業者数ランキングでは、東京都が279,825人(偏差値100.0)で全国1位となりました。東京都は日本の政治・経済・文化の中心地であり、人口規模が大きいことが完全失業者数の多さに直接影響していると考えられます。また、コロナ禍の影響により、観光業やサービス業などの雇用が大きく減少したことも要因の一つです。
2位は大阪府で183,125人(偏差値78.5)、3位は神奈川県で177,625人(偏差値77.4)、4位は愛知県で142,625人(偏差値70.0)、5位は埼玉県で139,125人(偏差値69.3)となっています。上位県には大都市を有する都府県が多く、人口規模が大きいことや産業構造の特性が完全失業者数の多さに影響していると考えられます。
完全失業者数が少ない下位5県
最も完全失業者数が少なかったのは鳥取県で6,875人(偏差値40.0)でした。鳥取県は日本で最も人口が少ない県であり、人口規模の小ささが完全失業者数の少なさに直接影響していると考えられます。
46位は島根県で9,125人(偏差値40.4)、45位は福井県で11,375人(偏差値41.0)、44位は山梨県で13,625人(偏差値41.5)、43位は高知県で14,125人(偏差値41.6)となっています。下位県には人口規模の小さい地方県が多く、人口規模の小ささが完全失業者数の少なさに直接影響していると考えられます。
地域別の特徴分析
東北地方の雇用状況
東北地方では、宮城県(12位、48,923人)が最も完全失業者数が多く、山形県(37位、19,030人)が最も少なくなっています。その他の県は、青森県(25位、29,305人)、岩手県(29位、23,788人)、秋田県(36位、19,606人)、福島県(18位、37,445人)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
東北地方全体として完全失業者数が比較的少ない理由としては、人口規模が全国的に見て小さいことが挙げられます。特に秋田県や山形県は人口減少が進んでおり、労働力人口自体が少ないため、完全失業者数も少なくなっていると考えられます。
特に宮城県で東北地方の中では完全失業者数が多い理由としては、仙台市という東北地方最大の都市を有しており、労働力人口が多いことが挙げられます。また、東日本大震災からの復興需要が一段落し、建設業などでの雇用が減少している可能性もあります。
一方、山形県で完全失業者数が少ない理由としては、人口規模が小さいことに加え、農業などの第一次産業に従事する人が多く、雇用の安定性が比較的高いことが挙げられます。また、製造業を中心とする産業構造により、コロナ禍の影響を比較的受けにくかった可能性もあります。
関東地方の都市化と失業の動向
関東地方では、東京都(1位、279,825人)が最も完全失業者数が多く、栃木県(19位、36,875人)が最も少なくなっています。その他の県は、茨城県(11位、55,136人)、群馬県(21位、35,875人)、埼玉県(5位、139,125人)、千葉県(6位、126,125人)、神奈川県(3位、177,625人)と、全国的に見ると上位から中位に位置しています。
関東地方全体として完全失業者数が多い理由としては、人口規模が大きいことに加え、サービス業や小売業など、コロナ禍の影響を受けやすい産業が集中していることが挙げられます。特に、東京都や神奈川県などの大都市圏では、飲食業や観光業などの雇用が大きく減少した可能性があります。
特に東京都で完全失業者数が突出して多い理由としては、日本最大の人口を有することに加え、サービス業や小売業、観光業などの第三次産業が集中しており、コロナ禍の影響を強く受けたことが挙げられます。また、外国人観光客の減少により、インバウンド関連の雇用も大きく減少した可能性があります。
一方、栃木県で関東地方の中では完全失業者数が少ない理由としては、人口規模が比較的小さいことに加え、製造業を中心とする産業構造により、コロナ禍の影響を比較的受けにくかった可能性があります。また、農業などの第一次産業も盛んであり、雇用の安定性が比較的高いことも要因として考えられます。
中部・北陸地方の産業構造と失業の特徴
中部・北陸地方では、愛知県(4位、142,625人)が最も完全失業者数が多く、福井県(45位、11,375人)が最も少なくなっています。その他の県は、新潟県(15位、42,125人)、富山県(38位、18,625人)、石川県(33位、21,125人)、山梨県(44位、13,625人)、長野県(17位、38,125人)、岐阜県(16位、39,125人)、静岡県(10位、67,125人)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
中部・北陸地方全体として完全失業者数にばらつきがある理由としては、人口規模の差に加え、産業構造の違いが挙げられます。特に、製造業が盛んな地域では、コロナ禍の影響を比較的受けにくかった可能性がありますが、自動車産業などの一部の製造業では、部品供給の停滞や需要減少により、雇用が影響を受けた可能性もあります。
特に愛知県で完全失業者数が多い理由としては、名古屋市を中心とする大都市圏を有しており、人口規模が大きいことが挙げられます。また、自動車産業を中心とする製造業が盛んですが、コロナ禍による世界的な需要減少や部品供給の停滞により、一時的に雇用が減少した可能性があります。
一方、福井県で完全失業者数が少ない理由としては、人口規模が小さいことに加え、繊維産業や眼鏡産業などの地場産業が発達しており、雇用の安定性が比較的高いことが挙げられます。特に女性の就業率が高いことが特徴で、これが完全失業者数の少なさに影響していると考えられます。
近畿地方の経済状況と失業の分布
近畿地方では、大阪府(2位、183,125人)が最も完全失業者数が多く、滋賀県(31位、22,125人)が最も少なくなっています。その他の県は、京都府(9位、67,625人)、兵庫県(7位、108,125人)、奈良県(23位、31,625人)、和歌山県(35位、19,875人)と、全国的に見るとばらつきがあります。
近畿地方全体として完全失業者数にばらつきがある理由としては、大阪府や兵庫県などの大都市圏と、滋賀県や和歌山県などの地方県との人口規模の差が挙げられます。また、産業構造の違いも影響していると考えられます。
特に大阪府で完全失業者数が多い理由としては、大阪市を中心とする大都市圏を有しており、人口規模が大きいことが挙げられます。また、サービス業や小売業など、コロナ禍の影響を受けやすい産業が集中していることも要因として考えられます。さらに、産業構造の変化により、製造業の雇用が長期的に減少傾向にあることも影響している可能性があります。
一方、滋賀県で完全失業者数が少ない理由としては、人口規模が比較的小さいことに加え、製造業を中心とする産業構造により、コロナ禍の影響を比較的受けにくかった可能性があります。また、大阪府や京都府などへの通勤者が多く、地元での雇用依存度が比較的低いことも要因として考えられます。
中国・四国地方の人口動態と失業の傾向
中国・四国地方では、広島県(13位、47,625人)が最も完全失業者数が多く、鳥取県(47位、6,875人)が最も少なくなっています。その他の県は、島根県(46位、9,125人)、岡山県(14位、42,625人)、山口県(26位、27,125人)、徳島県(40位、15,625人)、香川県(30位、22,875人)、愛媛県(27位、26,625人)、高知県(43位、14,125人)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
中国・四国地方全体として完全失業者数が比較的少ない理由としては、人口規模が全国的に見て小さいことが挙げられます。特に鳥取県や島根県は人口が少なく、労働力人口自体が少ないため、完全失業者数も少なくなっていると考えられます。
特に広島県で中国・四国地方の中では完全失業者数が多い理由としては、広島市という中国地方最大の都市を有しており、人口規模が大きいことが挙げられます。また、自動車産業や造船業などの製造業が盛んですが、コロナ禍による需要減少や部品供給の停滞により、一時的に雇用が減少した可能性があります。
一方、鳥取県で完全失業者数が少ない理由としては、日本で最も人口が少ない県であり、労働力人口自体が少ないことが挙げられます。また、農業や漁業などの第一次産業に従事する人が多く、雇用の安定性が比較的高いことも要因として考えられます。
九州・沖縄地方の雇用環境と失業の実態
九州・沖縄地方では、福岡県(7位、108,125人)が最も完全失業者数が多く、佐賀県(42位、14,977人)が最も少なくなっています。その他の県は、長崎県(28位、24,463人)、熊本県(22位、33,316人)、大分県(32位、22,627人)、宮崎県(34位、20,653人)、鹿児島県(24位、31,023人)、沖縄県(20位、33,683人)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
九州・沖縄地方全体として完全失業者数にばらつきがある理由としては、福岡県と他の県との人口規模の差が挙げられます。また、産業構造の違いも影響していると考えられます。
特に福岡県で完全失業者数が多い理由としては、福岡市や北九州市という大都市を有しており、人口規模が大きいことが挙げられます。また、サービス業や小売業など、コロナ禍の影響を受けやすい産業が集中していることも要因として考えられます。特に、福岡市は九州地方の商業・サービス業の中心地であり、これらの産業の雇用減少が完全失業者数の多さに影響している可能性があります。
一方、佐賀県で完全失業者数が少ない理由としては、人口規模が小さいことに加え、農業などの第一次産業に従事する人が多く、雇用の安定性が比較的高いことが挙げられます。また、福岡県への通勤者が多く、地元での雇用依存度が比較的低いことも要因として考えられます。
特に沖縄県(20位、33,683人)は、人口規模の割に完全失業者数が多い傾向があります。これは、観光業を中心とする産業構造により、コロナ禍の影響を強く受けたことが要因として考えられます。特に、外国人観光客の減少により、観光関連の雇用が大きく減少した可能性があります。
格差や課題の考察
地域経済への影響
完全失業者数の地域間格差は、地域経済にも影響を与えます。完全失業者数が多い地域では、消費活動が低迷する可能性があり、地域経済の活性化が課題となります。また、税収も減少するため、公共サービスの維持が困難になる可能性があります。
例えば、東京都(1位、279,825人)では、完全失業者数が多いものの、経済規模も大きいため、地域経済への影響は限定的である可能性があります。ただし、コロナ禍の長期化により、特定の産業(飲食業、観光業など)では深刻な影響が続いており、これらの産業に依存する地域では経済的な打撃が大きい可能性があります。
一方、鳥取県(47位、6,875人)では、完全失業者数は少ないものの、人口減少や高齢化により、労働力不足が深刻化する可能性があります。特に、若年層の県外流出により、地域経済の担い手が減少し、地域の持続可能性が課題となる可能性があります。
社会保障制度への影響
完全失業者数の地域間格差は、社会保障制度にも影響を与えます。完全失業者数が多い地域では、失業給付や生活保護などの社会保障費が増加する傾向があり、財政的な負担が大きくなる可能性があります。
例えば、大阪府(2位、183,125人)では、完全失業者数が多く、特に長期失業者が多い可能性があります。これにより、失業給付の支給期間が終了した後も就職できない人が増え、生活保護受給者が増加する可能性があります。これは、地方自治体の財政に大きな負担をかける要因となります。
一方、福井県(45位、11,375人)では、完全失業者数が少なく、特に長期失業者が少ない可能性があります。これにより、社会保障費の増加が抑制され、財政的な余裕が生まれる可能性があります。この余裕を活用して、産業振興や人材育成などの施策を展開することで、地域経済の活性化につながる可能性があります。
若年層の就業環境への影響
完全失業者数の地域間格差は、特に若年層の就業環境にも影響を与えます。完全失業者数が多い地域では、若年層の就業機会が限られる可能性があり、これが若年層の地域外への流出を促進する要因となっています。
例えば、東京都(1位、279,825人)では、完全失業者数が多いものの、就業機会も豊富であるため、若年層が流入する傾向があります。特に、大学卒業後の就職を機に東京都に移住する若者が多いことが特徴です。ただし、コロナ禍の影響により、新卒採用が減少している可能性があり、これが若年層の就業環境に悪影響を与える可能性があります。
一方、秋田県(36位、19,606人)では、完全失業者数は少ないものの、若年層の就業機会が限られているため、若年層が県外に流出する傾向があります。特に、大学進学や就職を機に県外に移住する若者が多いことが特徴です。この結果、人口減少と高齢化が進行し、地域社会の維持が課題となっています。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2020年度の都道府県別完全失業者数データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約50,000人、中央値は約27,000人と大きく乖離しており、データの分布が右に歪んでいることを示しています。これは、東京都や大阪府などの一部の都府県で完全失業者数が特に多いことを反映しています。
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分布の歪み:データは全体として強い正の歪みを示しており、右に長い裾を持つ分布となっています。東京都(279,825人)が最も多く、鳥取県(6,875人)が最も少ないですが、その差は272,950人と非常に大きく、極端な格差が見られます。
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外れ値の特定:東京都(279,825人)、大阪府(183,125人)、神奈川県(177,625人)などは上側の外れ値と考えられ、平均値を大きく上回っています。これらの都府県は人口規模が特に大きく、また、コロナ禍の影響を強く受けた可能性があります。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約19,000人、第3四分位数(Q3)は約48,000人で、四分位範囲(IQR)は約29,000人です。これは、中央の50%の都道府県の完全失業者数が19,000人から48,000人の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的少ない完全失業者数であることがわかります。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約57,000人で、変動係数(標準偏差÷平均値)は約114%となり、相対的なばらつきが非常に大きいことを示しています。これは、都道府県間の完全失業者数の格差が非常に大きいことを意味します。
まとめ
2020年度の都道府県別完全失業者数ランキングでは、東京都が279,825人で1位、鳥取県が6,875人で47位となりました。上位には東京都、大阪府、神奈川県などの大都市を有する都府県が多く、下位には鳥取県、島根県、福井県などの人口規模の小さい地方県が多く見られました。
完全失業者数の地域差は、人口規模、産業構造、雇用環境など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、社会保障制度、若年層の就業環境など様々な面に影響を与えています。特に2020年度は、コロナ禍の影響により、観光業やサービス業などの特定の産業で雇用が大きく減少した時期であり、これらの産業が集中する地域では完全失業者数が増加した可能性があります。
統計分析からは、都道府県間の完全失業者数の格差が非常に大きく、特に東京都や大阪府などの大都市圏と、鳥取県や島根県などの地方県との間で顕著な差があることがわかります。これは主に人口規模の差を反映していますが、産業構造や雇用環境の違いも影響していると考えられます。
コロナ禍からの経済回復が進む中、完全失業者の再就職支援や産業構造の転換支援など、地域の特性に応じた雇用対策が求められています。特に、デジタル化やグリーン化など、新たな成長分野での雇用創出や、テレワークの普及による地方での就業機会の拡大など、地域間格差を是正するための取り組みが重要となっています。