都道府県別合計特殊出生率ランキング(2022年度)

概要

合計特殊出生率とは、一人の女性が生涯に産むと推計される子どもの数を示す指標です。この記事では、2022年度の都道府県別合計特殊出生率のランキングを紹介します。

合計特殊出生率は、15〜49歳の女性の年齢別出生率を合計したもので、人口置換水準(人口を維持するために必要な出生率)である2.07を下回ると、将来的に人口減少につながるとされています。日本全体の合計特殊出生率は2022年度で1.26と、人口置換水準を大きく下回っており、少子化対策が急務となっています。

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上位県と下位県の比較

合計特殊出生率が高い上位5県

2022年度の合計特殊出生率ランキングでは、沖縄県1.70(偏差値73.1)で全国1位となりました。沖縄県は伝統的に子どもを大切にする文化や、大家族制の名残などが高い出生率の要因と考えられます。

2位は宮崎県1.63(偏差値68.4)、3位は島根県1.61(偏差値67.0)、4位は鹿児島県1.57(偏差値64.3)、5位は長崎県1.57(偏差値64.3)となっています。上位県には九州・中国地方の県が多く、地方の県が上位を占める傾向が見られます。

合計特殊出生率が低い下位5県

最も合計特殊出生率が低かったのは東京都1.08(偏差値31.2)でした。東京都は晩婚化・晩産化の進行や、仕事と子育ての両立の難しさなどが低い出生率の要因と考えられます。

46位は宮城県1.09(偏差値31.8)、45位は北海道1.12(偏差値33.9)、44位は京都府1.15(偏差値35.9)、43位は神奈川県1.16(偏差値36.6)となっています。下位県には大都市を抱える都道府県が多く、都市部ほど出生率が低い傾向が見られます。

地域別の特徴分析

東北地方の状況

東北地方では、山形県(30位、1.32)が比較的高い出生率を示す一方、宮城県(46位、1.09)は全国で2番目に低い出生率となっています。青森県(37位、1.24)、岩手県(39位、1.21)、秋田県(40位、1.18)、福島県(34位、1.27)も全国平均を下回る値を示しています。

宮城県の低い出生率は、仙台市という大都市を抱えていることが影響していると考えられます。都市部では晩婚化・晩産化が進行しており、これが低い出生率につながっています。一方、山形県の比較的高い出生率は、三世代同居率の高さや子育て支援策の充実などが影響していると考えられます。東北地方全体としては、人口流出や高齢化の進行などが出生率の低下につながっていると考えられます。

関東・甲信越地方の低い出生率

関東・甲信越地方では、東京都(47位、1.08)が全国で最も低い出生率を示しています。神奈川県(43位、1.16)、千葉県(42位、1.17)、埼玉県(41位、1.18)など、首都圏の都県は軒並み低い出生率となっています。一方、茨城県(31位、1.31)や栃木県(28位、1.34)、群馬県(27位、1.35)は比較的高い出生率を示しています。

首都圏の低い出生率は、住宅事情や教育費の高さ、長時間労働などの要因が影響していると考えられます。特に東京都では、共働き世帯が多い一方で、保育所の不足や通勤時間の長さなどが子育ての障壁となっています。また、キャリア志向の強さや晩婚化の進行も低い出生率の要因となっています。一方、茨城県や栃木県、群馬県などは、比較的住宅取得がしやすく、子育て環境も整っていることが、首都圏と比べて高い出生率につながっていると考えられます。

北陸・東海地方の多様な状況

北陸・東海地方では、福井県(9位、1.49)が高い出生率を示す一方、愛知県(36位、1.25)は比較的低い出生率となっています。石川県(22位、1.39)、富山県(25位、1.36)、岐阜県(26位、1.36)、静岡県(33位、1.28)、三重県(29位、1.33)は中程度の出生率を示しています。

福井県の高い出生率は、三世代同居率の高さや女性の就業率の高さ、子育て支援策の充実などが影響していると考えられます。特に、福井県では保育所の整備率が高く、仕事と子育ての両立がしやすい環境が整っています。一方、愛知県の比較的低い出生率は、名古屋市という大都市を抱えていることが影響していると考えられます。都市部では晩婚化・晩産化が進行しており、これが低い出生率につながっています。

近畿地方の低い出生率

近畿地方では、京都府(44位、1.15)が特に低い出生率を示しています。大阪府(38位、1.22)、兵庫県(35位、1.26)も全国平均を下回る値となっています。一方、滋賀県(15位、1.44)や奈良県(32位、1.30)、和歌山県(24位、1.37)は比較的高い出生率を示しています。

京都府の低い出生率は、大学が多く若年人口の流入がある一方で、就職時に流出する傾向があることや、住宅事情の厳しさなどが影響していると考えられます。大阪府や兵庫県の低い出生率も、都市部特有の晩婚化・晩産化や住宅事情の厳しさなどが影響していると考えられます。一方、滋賀県の比較的高い出生率は、子育て環境の良さや、大阪・京都へのアクセスの良さから、子育て世代が移住する傾向があることなどが影響していると考えられます。

中国・四国地方の状況

中国・四国地方では、島根県(3位、1.61)が特に高い出生率を示しています。鳥取県(11位、1.47)、山口県(16位、1.44)、徳島県(17位、1.43)、香川県(18位、1.42)、愛媛県(19位、1.42)、高知県(21位、1.40)、岡山県(23位、1.38)、広島県(20位、1.41)も比較的高い出生率を示しています。

島根県の高い出生率は、子育て支援策の充実や、UIターン促進策による若年層の流入などが影響していると考えられます。特に、島根県では「しまね結婚・子育て市町村交付金」などの独自の支援策を展開しており、これが高い出生率につながっていると考えられます。中国・四国地方全体としては、三世代同居率の高さや地域のつながりの強さなどが、比較的高い出生率につながっていると考えられます。

九州・沖縄地方の高い出生率

九州・沖縄地方では、沖縄県(1位、1.70)が全国で最も高い出生率を示しています。宮崎県(2位、1.63)、鹿児島県(6位、1.54)、長崎県(5位、1.57)、佐賀県(7位、1.53)、熊本県(8位、1.52)、大分県(10位、1.49)、福岡県(14位、1.44)も比較的高い出生率を示しています。

沖縄県の高い出生率は、伝統的に子どもを大切にする文化や、大家族制の名残などが影響していると考えられます。特に、沖縄県では「ゆいまーる」と呼ばれる相互扶助の精神が根付いており、地域全体で子育てを支える環境があります。また、宮崎県や鹿児島県などの高い出生率も、地域のつながりの強さや子育て支援策の充実などが影響していると考えられます。九州・沖縄地方全体としては、都市部と比べて住宅取得がしやすく、子育て環境も整っていることが高い出生率につながっていると考えられます。

合計特殊出生率の格差がもたらす影響と課題

人口減少と地域間格差

合計特殊出生率の地域間格差は、将来的な人口減少の度合いにも格差をもたらします。出生率の低い都市部では、人口減少が急速に進行する可能性があり、これが労働力不足や社会保障制度の持続可能性に影響を与える可能性があります。一方、出生率が比較的高い地方でも、若年層の流出により人口減少が進行しており、地域の活力低下につながっています。

例えば、東京都(1.08)と沖縄県(1.70)の合計特殊出生率の差は0.62ポイントに達しており、この差が将来的な人口構造に大きな影響を与えることになります。人口減少の度合いの地域間格差は、地域経済や社会保障、教育環境など様々な面で格差を拡大させる可能性があります。

仕事と子育ての両立

合計特殊出生率の地域間格差には、仕事と子育ての両立のしやすさの違いも影響しています。都市部では長時間労働や通勤時間の長さなどが子育ての障壁となっている一方、地方では女性の就業機会の不足が課題となっています。

例えば、福井県では女性の就業率が高く、かつ合計特殊出生率も高い(9位、1.49)という特徴があります。これは、三世代同居率の高さや保育所の整備率の高さなど、仕事と子育ての両立をサポートする環境が整っていることが影響していると考えられます。一方、東京都では女性の就業率は高いものの、長時間労働や通勤時間の長さ、保育所の不足などが子育ての障壁となり、合計特殊出生率が低い(47位、1.08)という結果につながっています。

子育て支援策の地域差

合計特殊出生率の地域間格差には、子育て支援策の充実度の違いも影響しています。保育所の整備率、子育て関連の経済的支援、ワーク・ライフ・バランス推進策など、子育て支援策は地域によって大きく異なります。

例えば、島根県(3位、1.61)では「しまね結婚・子育て市町村交付金」などの独自の支援策を展開しており、これが高い出生率につながっていると考えられます。また、福井県(9位、1.49)では保育所の整備率が高く、仕事と子育ての両立がしやすい環境が整っています。一方、都市部では保育所の不足や待機児童問題が深刻であり、これが低い出生率の一因となっています。

晩婚化・晩産化の進行

合計特殊出生率の地域間格差には、晩婚化・晩産化の進行度合いの違いも影響しています。都市部では特に晩婚化・晩産化が進行しており、これが低い出生率につながっています。

例えば、東京都(47位、1.08)では平均初婚年齢が女性で30.1歳、男性で32.3歳と全国で最も高く、第1子出産時の母親の平均年齢も32.4歳と高くなっています。晩婚化・晩産化は、生物学的な出産可能期間の制約から、生涯出生児数の減少につながる可能性があります。また、高齢出産はリスクも高まるため、安心して子どもを産み育てるための医療体制の充実も重要な課題となっています。

住宅事情と教育費の地域差

合計特殊出生率の地域間格差には、住宅事情や教育費の地域差も影響しています。都市部では住宅価格や家賃が高く、子育て世帯の住居費負担が大きくなっています。また、教育費も地域によって差があり、特に都市部では私立学校や塾・習い事などの教育関連支出が大きくなる傾向があります。

例えば、東京都(47位、1.08)では住宅価格や家賃が全国で最も高く、子育て世帯の住居費負担が大きくなっています。また、教育費も高く、特に私立学校や塾・習い事などの教育関連支出が大きくなる傾向があります。これらの経済的負担が、子どもの数を制限する要因となっている可能性があります。一方、地方では住宅取得がしやすく、教育費も比較的低いことが、比較的高い出生率につながっていると考えられます。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2022年度の都道府県別合計特殊出生率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:

  1. 平均値と中央値の比較:平均値は約1.34、中央値は約1.36とほぼ同じ値を示していますが、沖縄県(1.70)や宮崎県(1.63)という極端に高い値と東京都(1.08)や宮城県(1.09)という極端に低い値があるため、分布の両端に外れ値が存在しています。

  2. 分布の歪み:データは全体としては対称的ですが、東京都(1.08)や宮城県(1.09)という下側の外れ値があるため、わずかに負の歪み(左に裾を引いた形状)を示しています。

  3. 外れ値の特定:沖縄県(1.70)は明らかな上側の外れ値と考えられます。また、東京都(1.08)も下側の外れ値と考えられます。

  4. 四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約1.21、第3四分位数(Q3)は約1.44で、四分位範囲(IQR)は約0.23ポイントです。これは、中央の50%の都道府県の合計特殊出生率が1.21から1.44の間に収まっていることを示しています。

  5. 標準偏差によるばらつき:標準偏差は約0.15ポイントで、多くの都道府県が平均値から±0.15ポイントの範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約11.2%となり、相対的なばらつきはやや大きいと言えます。最高値と最低値の差は0.62ポイント(1.70−1.08)に達し、沖縄県と東京都の間には大きな格差があることを示しています。

まとめ

2022年度の都道府県別合計特殊出生率ランキングでは、沖縄県が1.70で1位、東京都が1.08で47位となりました。上位には沖縄県、宮崎県、島根県などの地方の県が多く、下位には東京都、宮城県、北海道などの大都市を抱える都道府県が多く見られました。

合計特殊出生率の地域差は、仕事と子育ての両立のしやすさ、子育て支援策の充実度、晩婚化・晩産化の進行度合い、住宅事情や教育費の地域差など様々な要素を反映しており、この差は将来的な人口構造や地域の活力に大きな影響を与えています。

統計分析からは、沖縄県が突出して高い合計特殊出生率を示す一方、東京都が特に低い合計特殊出生率を示していることがわかります。また、多くの都道府県は1.21から1.44の範囲に集中しており、中程度の合計特殊出生率を示しています。

少子化対策としては、仕事と子育ての両立支援、子育て関連の経済的支援の充実、若者の雇用安定化、住宅支援など、多角的な取り組みが求められています。特に、沖縄県や島根県などの成功事例に学び、地域の特性に応じた少子化対策を展開することが重要です。

出典