都道府県別社会増減数ランキング(2023年度)
概要
社会増減数とは、転入者数から転出者数を引いた値で、人口移動の結果を示す指標です。この記事では、2023年度の都道府県別社会増減数のランキングを紹介します。
社会増減数は、地域の魅力や経済的機会の豊富さを反映しており、プラスの値は転入超過(社会増加)を、マイナスの値は転出超過(社会減少)を示しています。2023年度は、東京都や神奈川県、埼玉県などの首都圏や、愛知県、大阪府、福岡県などの地方中枢都市を有する府県で社会増加が見られる一方、多くの地方県では社会減少となっています。
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上位県と下位県の比較
社会増減数が多い上位5県
2023年度の社会増減数ランキングでは、東京都が95,996人(偏差値104.5)で全国1位となりました。東京都は経済的機会の豊富さや高等教育機関の集積、文化的魅力などにより、特に若年層の流入が多いことが高い社会増加の要因と考えられます。
2位は神奈川県で40,157人(偏差値71.0)、3位は埼玉県で34,291人(偏差値67.5)、4位は大阪府で30,577人(偏差値65.3)、5位は千葉県で26,747人(偏差値63.0)となっています。上位県には首都圏の都県や大阪府が多く、大都市圏の経済的求心力の強さを示しています。
社会増減数が少ない下位5県
最も社会増減数が少なかったのは福島県で**-4,958人(偏差値43.9**)でした。福島県は若年層の進学や就職に伴う流出が多いことが、低い社会増減数の要因と考えられます。
46位は青森県で**-4,748人(偏差値44.1**)、45位は長崎県で**-4,234人(偏差値44.4**)、44位は新潟県で**-4,165人(偏差値44.4**)、43位は山形県で**-3,198人(偏差値45.0**)となっています。下位県には東北地方や中山間地域を抱える県が多く、若年層の大都市圏への流出が社会減少の主な要因と考えられます。
地域別の特徴分析
東北地方の人口流出
東北地方では、福島県(47位、-4,958人)、青森県(46位、-4,748人)、山形県(43位、-3,198人)、岩手県(41位、-3,077人)、秋田県(39位、-2,385人)と、5県が全国ワースト10に入る深刻な人口流出を示しています。一方、宮城県(19位、1,043人)は東北地方では唯一の社会増加を示しています。
東北地方の深刻な人口流出の背景には、若年層の進学や就職に伴う大都市圏への移動があります。特に、高校卒業後の進学や大学卒業後の就職を機に、東京圏や仙台市などの大都市へ移動する傾向が強くなっています。また、第一次産業の衰退や製造業の海外移転などによる雇用機会の減少も、人口流出の要因となっています。
宮城県が社会増加を示している理由としては、仙台市という東北地方最大の都市を有していることが挙げられます。仙台市は東北地方の経済・文化・教育の中心地として、周辺地域からの人口流入があり、これが県全体の社会増加につながっています。
関東・甲信越地方の二極化
関東・甲信越地方では、東京都(1位、95,996人)、神奈川県(2位、40,157人)、埼玉県(3位、34,291人)、千葉県(5位、26,747人)と首都圏の都県が上位を占める一方、新潟県(44位、-4,165人)は全国でも下位に位置しています。茨城県(8位、7,555人)、群馬県(9位、4,988人)、栃木県(11位、3,584人)は社会増加を示していますが、山梨県(21位、800人)と長野県(17位、1,316人)は小規模な社会増加にとどまっています。
首都圏の都県が高い社会増加を示している理由としては、東京都を中心とした経済圏の強い求心力が挙げられます。特に、若年層の進学や就職に伴う流入が多く、また外国人労働者の増加も社会増加に寄与しています。
一方、新潟県では若年層の東京圏への流出が続いています。特に、中山間地域や農村部では人口流出が顕著であり、地域の活力低下が懸念されています。茨城県、群馬県、栃木県が社会増加を示している背景には、東京都への通勤圏の拡大や、製造業等の企業立地の進展などが考えられます。
中部・北陸地方の多様な状況
中部・北陸地方では、愛知県(7位、11,513人)が高い社会増加を示す一方、静岡県(16位、1,498人)、長野県(17位、1,316人)、岐阜県(20位、908人)、山梨県(21位、800人)は比較的小規模な社会増加にとどまっています。富山県(27位、-256人)、石川県(29位、-677人)、福井県(40位、-2,460人)、新潟県(44位、-4,165人)は社会減少となっています。
愛知県が高い社会増加を示している理由としては、名古屋市を中心とした経済圏の存在や、自動車産業をはじめとする製造業の集積による雇用創出が挙げられます。これにより、周辺地域からの人口流入が続いています。
一方、富山県、石川県、福井県、新潟県などは、若年層の大都市圏への流出が続いています。特に、中山間地域や過疎地域では人口流出が顕著であり、地域の持続可能性が課題となっています。
近畿地方の都市部と地方の格差
近畿地方では、大阪府(4位、30,577人)が高い社会増加を示す一方、滋賀県(12位、3,396人)、京都府(14位、2,389人)、兵庫県(18位、1,291人)は中程度の社会増加にとどまっています。奈良県(26位、-250人)、三重県(32位、-1,587人)、和歌山県(34位、-1,642人)は社会減少となっています。
大阪府が高い社会増加を示している理由としては、関西経済圏の求心力や、高等教育機関の集積、文化的魅力などが挙げられます。特に、大阪府では梅田や難波などの都心部の再開発や、インバウンド需要の回復などにより、人口流入が続いています。
一方、奈良県、三重県、和歌山県は、社会減少となっています。特に、和歌山県は近畿地方で最も社会減少数が多く、若年層の大都市圏への流出が続いています。
中国・四国地方の人口流出
中国・四国地方では、多くの県が社会減少を示しています。中国地方では鳥取県(31位、-1,265人)、島根県(35位、-1,760人)、山口県(36位、-1,776人)、岡山県(38位、-2,046人)、広島県(42位、-3,130人)の全県が社会減少となっています。四国地方では香川県(25位、-218人)、高知県(30位、-1,109人)、徳島県(33位、-1,635人)、愛媛県(37位、-1,794人)の全県が社会減少となっています。
広島県が中国地方で最も社会減少数が多い理由としては、製造業の不振や中山間地域からの人口流出などが考えられます。また、岡山県も同様に社会減少を示しており、地方都市の求心力の低下が影響していると思われます。
四国地方では、全県が社会減少を示していますが、香川県が比較的社会減少数が少ないのは、高松市の県庁所在地としての求心力が一定程度機能していることが考えられます。一方、愛媛県や徳島県では若年層の大都市圏への流出が続いています。
九州・沖縄地方の明暗
九州・沖縄地方では、福岡県(6位、14,288人)、熊本県(10位、3,618人)、沖縄県(15位、1,761人)が社会増加を示す一方、佐賀県(22位、300人)は小規模な社会増加にとどまっています。鹿児島県(23位、-63人)、大分県(24位、-71人)、宮崎県(28位、-422人)、長崎県(45位、-4,234人)は社会減少となっています。
福岡県が高い社会増加を示している理由としては、福岡市を中心とした九州経済の中心地としての求心力や、アジアとの交流拠点としての役割などが挙げられます。また、熊本県は熊本市の求心力や、震災からの復興需要などにより、社会増加を示しています。沖縄県は観光業の好調や、若年層の流入などにより、社会増加を示しています。
一方、長崎県は九州地方で最も社会減少数が多く、若年層の流出が深刻な問題となっています。特に、離島地域や半島地域では人口流出が顕著であり、地域の持続可能性が課題となっています。
社会増減数の格差がもたらす影響と課題
地域経済への影響
社会増減数の格差は、地域経済に大きな影響を与えます。社会増加が続く地域では、人口増加に伴う消費拡大や住宅需要の増加などにより、経済が活性化する傾向があります。一方、社会減少が続く地域では、人口減少に伴う消費縮小や住宅需要の減少などにより、経済が停滞する傾向があります。
例えば、東京都(1位、95,996人)では、人口流入に伴う消費拡大や住宅需要の増加などにより、経済が活性化しています。特に、都心部では再開発が進み、オフィスビルやマンションの建設が活発化しています。一方、福島県(47位、-4,958人)では、人口流出に伴う消費縮小や住宅需要の減少などにより、経済が停滞しています。特に、中山間地域や過疎地域では商店の閉鎖や空き家の増加などが進んでいます。
労働市場への影響
社会増減数の格差は、労働市場にも大きな影響を与えます。社会増加が続く地域では、労働力人口の増加により、企業の人材確保が比較的容易となる一方、住宅費や通勤コストの上昇などにより、労働者の生活コストが増大する傾向があります。一方、社会減少が続く地域では、労働力人口の減少により、企業の人材確保が困難となる一方、住宅費や通勤コストの低さなどにより、労働者の生活コストが比較的低く抑えられる傾向があります。
例えば、神奈川県(2位、40,157人)では、労働力人口の増加により、企業の人材確保が比較的容易となっています。特に、サービス業や建設業などでは、若年労働者や外国人労働者の増加が見られます。一方、青森県(46位、-4,748人)では、労働力人口の減少により、企業の人材確保が困難となっています。特に、製造業や建設業などでは、若年労働者の不足が深刻な問題となっています。
住宅市場への影響
社会増減数の格差は、住宅市場にも大きな影響を与えます。社会増加が続く地域では、住宅需要の増加により、地価や家賃が上昇する傾向があります。一方、社会減少が続く地域では、住宅需要の減少により、地価や家賃が下落する傾向があり、空き家の増加も問題となっています。
例えば、埼玉県(3位、34,291人)では、住宅需要の増加により、特に東京都心へのアクセスが良い地域で地価や家賃が上昇しています。マンション建設も活発化しており、住宅供給が増加しています。一方、長崎県(45位、-4,234人)では、住宅需要の減少により、地価や家賃が下落しています。空き家の増加も問題となっており、特に中山間地域や離島地域では空き家率が高くなっています。
教育環境への影響
社会増減数の格差は、教育環境にも大きな影響を与えます。社会増加が続く地域では、児童・生徒数の増加により、学校の新設や増築が必要となる一方、教室の過密化や教員の負担増加などの課題も生じています。一方、社会減少が続く地域では、児童・生徒数の減少により、学校の統廃合が進み、通学距離の増加や教育の選択肢の減少などの課題が生じています。
例えば、千葉県(5位、26,747人)では、児童・生徒数の増加により、特に都市部で学校の新設や増築が進んでいます。一方、保育所や学童保育の不足も問題となっており、待機児童の解消が課題となっています。一方、新潟県(44位、-4,165人)では、児童・生徒数の減少により、学校の統廃合が進んでいます。これにより、通学距離が増加し、スクールバスの運行などの対応が必要となっています。
地域コミュニティへの影響
社会増減数の格差は、地域コミュニティにも大きな影響を与えます。社会増加が続く地域では、新たな住民の流入により、地域コミュニティの多様化が進む一方、従来の地域のつながりが希薄化する傾向があります。一方、社会減少が続く地域では、若年層の流出により、地域コミュニティの高齢化が進み、地域の担い手不足や伝統文化の継承の困難さなどの課題が生じています。
例えば、大阪府(4位、30,577人)では、新たな住民の流入により、特に大阪市周辺で地域コミュニティの多様化が進んでいます。外国人住民の増加も見られ、多文化共生の取り組みが求められています。一方、山形県(43位、-3,198人)では、若年層の流出により、地域コミュニティの高齢化が進んでいます。特に、中山間地域や過疎地域では、祭りや伝統行事の担い手不足が問題となっています。
地方創生と人口維持策
社会増減数の格差に対応するため、各地域では様々な地方創生策や人口維持策が展開されています。特に、社会減少が続く地域では、UIJターンの促進、若者の地元定着、関係人口の拡大などの取り組みが進められています。
例えば、島根県(35位、-1,760人)では、「しまね暮らし」推進プロジェクトを展開し、UIターン促進や若者の地元定着などに取り組んでいます。また、徳島県(33位、-1,635人)では、「とくしま回帰」プロジェクトを推進し、サテライトオフィスの誘致やテレワーカーの移住支援などに力を入れています。これらの取り組みにより、一部の地域では若年層の流入が見られるようになっています。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2023年度の都道府県別社会増減数データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約5,152人、中央値は約-71人と大きな差があり、東京都(95,996人)や神奈川県(40,157人)などの極端に高い値が平均値を引き上げていることがわかります。これは、データが強い正の歪みを持っていることを示しています。
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分布の歪み:データは全体として強い正の歪み(右に裾を引いた形状)を示しており、東京都(95,996人)や神奈川県(40,157人)などの上側の外れ値が存在しています。
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外れ値の特定:東京都(95,996人)は明らかな上側の外れ値と考えられます。また、神奈川県(40,157人)、埼玉県(34,291人)、大阪府(30,577人)も上側の外れ値と考えられます。一方、福島県(-4,958人)や青森県(-4,748人)は下側の外れ値と考えられます。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約-1,776人、第3四分位数(Q3)は約3,396人で、四分位範囲(IQR)は約5,172人です。これは、中央の50%の都道府県の社会増減数が-1,776人から3,396人の間に収まっていることを示しています。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約16,655人で、多くの都道府県が平均値から±16,655人の範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値の絶対値)は約323.3%となり、相対的なばらつきは非常に大きいと言えます。最高値と最低値の差は100,954人(95,996人−(-4,958人))に達し、東京都と福島県の間には大きな格差があることを示しています。
まとめ
2023年度の都道府県別社会増減数ランキングでは、東京都が95,996人で1位、福島県が-4,958人で47位となりました。上位には東京都、神奈川県、埼玉県などの首都圏の都県や、大阪府、愛知県、福岡県などの地方中枢都市を有する府県が多く、下位には福島県、青森県、長崎県などの地方県が多く見られました。
社会増減数の地域差は、経済的機会の差、教育機関の集積度の差、生活環境の差など様々な要素を反映しており、この差は地域経済や労働市場、住宅市場、教育環境、地域コミュニティなど様々な面に影響を与えています。
統計分析からは、東京都が突出して高い社会増加数を示す一方、福島県や青森県が特に低い社会減少数を示していることがわかります。また、多くの都道府県は-1,776人から3,396人の範囲に集中しており、中程度の社会増減数を示しています。
人口減少社会に対応するためには、地方創生策の推進、UIJターンの促進、若者の地元定着、関係人口の拡大など、多角的な取り組みが求められています。特に、福岡県や沖縄県などの成功事例に学び、地域の特性に応じた人口維持策を展開することが重要です。