概要
生産年齢人口割合とは、総人口に占める15歳から64歳までの人口の割合を指します。この記事では、2023年度の都道府県別生産年齢人口割合のランキングを紹介します。
生産年齢人口割合は、地域の経済活力や社会保障制度の持続可能性を示す重要な指標です。少子高齢化が進む日本では、全国的に生産年齢人口割合の低下が課題となっていますが、その程度には地域差があります。都市部では若年層の流入により比較的高い割合を維持している一方、地方では若年層の流出と高齢化により低下が進んでいます。
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上位県と下位県の比較
生産年齢人口割合が高い上位5県
2023年度の生産年齢人口割合ランキングでは、東京都が66.5%(偏差値82.4)で全国1位となりました。東京都は日本の政治・経済・文化の中心地であり、多くの企業や教育機関が集中していることから、若年層を中心に人口が集まっています。
2位は神奈川県で62.9%(偏差値70.2)、3位は愛知県で61.9%(偏差値66.8)、4位は埼玉県で61.2%(偏差値64.4)、5位は大阪府で61.1%(偏差値64.1)となっています。上位県はいずれも三大都市圏に位置しており、経済活動の集積と若年層の流入が顕著に表れています。
生産年齢人口割合が低い下位5県
最も生産年齢人口割合が低かったのは秋田県で51.9%(偏差値32.8)でした。秋田県は若年層の流出と高齢化が進行しており、総人口に占める高齢者の割合が高くなっています。
46位は島根県と高知県で同率の53.2%(偏差値37.3)、44位は鹿児島県で53.5%(偏差値38.3)、42位は長崎県と宮崎県で同率の53.6%(偏差値38.6)となっています。下位県には中国・四国地方や九州地方の県が多く、若年層の流出と高齢化の進行が顕著に表れています。
地域別の特徴分析
三大都市圏と地方圏の格差
生産年齢人口割合の分布を見ると、三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)と地方圏の間に明確な格差があることがわかります。東京都を中心とする南関東地方や愛知県、大阪府などの大都市圏では60%を超える高い割合を示している一方、秋田県や高知県などの地方では50%台前半にとどまっています。
東京都(1位、66.5%)と神奈川県(2位、62.9%)の差は3.6ポイントですが、これは東京都が突出して高い生産年齢人口割合を持つことを示しています。また、上位6県(東京都、神奈川県、愛知県、埼玉県、大阪府、千葉県)はすべて60%を超えており、大都市圏の優位性が明確です。
地方中枢都市の状況
福岡県(11位、58.9%)や宮城県(9位、59.7%)など、地方の中枢都市を持つ県は比較的上位にランクしています。これらの県は、周辺地域から若年層を吸収する「ダム機能」を果たしており、地方における人口構造の偏りを緩和する役割を担っています。
特に宮城県は東北地方で唯一トップ10に入る高い割合を示しており、仙台市という中核都市の存在が大きく影響しています。同様に、福岡県も九州地方において突出した数値を示しており、福岡市を中心とした若年層の集積が見られます。
北海道・東北地方の特徴
北海道は23位(56.9%)と中位にランクしていますが、東北地方の県は総じて下位に集中しており、特に秋田県(47位、51.9%)は最下位、山形県(38位、54.2%)、岩手県(35位、54.7%)、青森県(33位、54.8%)も低位にあります。これらの地域では、若年層の流出と高齢化が顕著に進行しています。
東北地方で唯一上位に位置するのは宮城県(9位、59.7%)で、仙台市への若年層の集中が影響しています。一方、他の東北各県は若年層の大都市圏への流出が続いており、特に秋田県の51.9%は全国平均(約57.0%)を大きく下回っています。
中部・北陸地方の状況
愛知県(3位、61.9%)は自動車産業を中心とした製造業の集積地として高位にありますが、同じ中部・北陸地方でも富山県(25位、56.2%)や新潟県(30位、55.4%)などは中位から下位に位置しています。これらの県では、製造業の基盤はあるものの、若年層の流出が続いています。
中部地方では、愛知県を筆頭に、石川県(16位、57.9%)、三重県(16位、57.9%)、静岡県(19位、57.6%)など、製造業が盛んな県が比較的上位に位置する傾向があります。一方、北陸地方は総じて中位から下位に集中しており、地理的な条件や産業構造の影響が見られます。
近畿地方の二極化
大阪府(5位、61.1%)は上位にランクしていますが、同じ近畿地方でも和歌山県(35位、54.7%)は下位に位置しています。近畿地方内でも都市部と周辺部の格差が見られます。
近畿地方では、大阪府に加え、滋賀県(8位、60.0%)、京都府(10位、59.4%)も上位に位置しており、関西経済圏を形成する都市部の優位性が現れています。一方、奈良県(25位、56.2%)や和歌山県(35位、54.7%)など、大都市から離れた地域は生産年齢人口割合が低い傾向にあります。
中国・四国地方の低迷
中国・四国地方の県は総じて下位に集中しており、特に島根県(45位、53.2%)、高知県(45位、53.2%)は最下位グループを形成しています。これらの地域では、若年層の流出が長期にわたって続いており、生産年齢人口割合の低下が著しくなっています。
中国地方では広島県(18位、57.8%)と岡山県(22位、57.1%)が比較的上位にありますが、他の県は軒並み下位に位置しています。特に山口県(41位、53.7%)や鳥取県(35位、54.7%)は低い数値を示しています。四国地方では香川県(28位、55.9%)が最も高いものの、全国的に見ると中位にとどまっています。
九州・沖縄地方の多様性
九州・沖縄地方では、沖縄県(7位、60.1%)と福岡県(11位、58.9%)が上位にある一方、長崎県(42位、53.6%)、宮崎県(42位、53.6%)、鹿児島県(44位、53.5%)は下位に位置しています。沖縄県が高位にあるのは、出生率の高さと若年人口の割合が比較的高いことが要因です。
沖縄県は全国7位の60.1%と高い数値を示しており、これは出生率の高さ(全国1位)と若い世代の割合の高さを反映しています。また、福岡県も九州の経済中心地として若年層を集めていますが、その他の九州各県は総じて低位にあり、特に長崎県、宮崎県、鹿児島県は全国ワースト10に入っています。
生産年齢人口割合の格差が生み出す課題
地域経済への影響
生産年齢人口割合の地域格差は、地域経済の活力にも大きな影響を与えています。割合が高い都市部では経済活動が活発である一方、低い地方では労働力不足や消費市場の縮小が地域経済の停滞を招いています。
例えば、東京都(1位、66.5%)では多様な企業が集積し、新たなビジネスやイノベーションが生まれやすい環境があります。一方、秋田県(47位、51.9%)では労働力人口の減少により、企業誘致や地域産業の維持が困難になりつつあります。また、消費市場も縮小し、商業施設や飲食店などの減少につながっています。
社会保障制度への影響
生産年齢人口割合の低い地域では、高齢者を支える現役世代の負担が大きくなり、社会保障制度の持続可能性に課題が生じています。特に医療や介護のサービス提供体制の維持が困難になりつつある地域もあります。
島根県(45位、53.2%)や高知県(45位、53.2%)などでは、高齢化率が30%を超えており、介護サービスの需要が高まる一方で、介護従事者の確保が困難になっています。また、医療機関の維持も課題となっており、地域医療の崩壊が懸念されている地域もあります。
財政基盤の脆弱化
生産年齢人口割合の低下は、地方自治体の税収減少につながり、財政基盤を脆弱化させています。これにより、公共サービスの質の低下や地域インフラの維持管理の困難化が懸念されています。
生産年齢人口は地方税の主要な担い手であり、その割合の低下は自治体の自主財源の減少を意味します。秋田県(47位、51.9%)や島根県(45位、53.2%)などでは、地方交付税への依存度が高まっており、財政の自立性が低下しています。また、人口減少に伴い公共施設の維持管理コストが住民一人当たりで見ると増加し、財政を圧迫しています。
地域コミュニティの持続可能性
生産年齢人口割合の低下は、地域コミュニティの担い手不足にもつながっています。祭りや伝統行事の継承、自治会活動、消防団など、地域を支える活動の維持が難しくなっている地域が増えています。
特に鹿児島県(44位、53.5%)や長崎県(42位、53.6%)などの離島・過疎地域では、若年層の流出により地域の伝統行事の担い手が不足し、地域の文化継承が難しくなっています。また、消防団員の高齢化や減少も進んでおり、地域防災力の低下が懸念されています。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2023年度の都道府県別生産年齢人口割合データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約57.0%、中央値は約56.0%とほぼ同じ値を示しています。これは、東京都を除けば、データの分布がほぼ対称的であることを示しています。
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分布の歪み:東京都(66.5%)が他の都道府県と比べて特に高い値を示していますが、それを除けば、データの分布は比較的対称的です。
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外れ値の特定:東京都(66.5%)は、2位の神奈川県(62.9%)と比べても3.6ポイントも高く、統計的に見ると外れ値と考えられます。一方、下位の秋田県(51.9%)も他県と比べてやや低い値ですが、東京都ほどの極端な外れ値ではありません。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約54.2%、第3四分位数(Q3)は約59.1%で、四分位範囲(IQR)は約4.9ポイントです。これは、中央の50%の都道府県の生産年齢人口割合が54.2%から59.1%の間に収まっていることを示しています。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約3.2ポイントで、多くの都道府県が平均値から±3.2ポイントの範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約5.6%となり、相対的なばらつきは小さいと言えます。ただし、最高値と最低値の差は14.6ポイント(66.5%−51.9%)に達し、地域間の格差が存在することを示しています。
まとめ
2023年度の都道府県別生産年齢人口割合ランキングでは、東京都が66.5%で1位、秋田県が51.9%で47位となりました。上位には三大都市圏の都府県が、下位には中国・四国地方や東北地方の県が多く見られました。
生産年齢人口割合の地域差は、若年層の移動パターン、産業構造の違い、出生率の地域差、高齢化の進行度合いなど様々な要因によって生じており、この差は地域経済の活力、社会保障制度の持続可能性、財政基盤の強さ、地域コミュニティの活力など多方面に影響を与えています。
統計分析からは、東京都が突出して高い値を示す一方、多くの都道府県は比較的狭い範囲に分布していることがわかります。しかし、最高値と最低値の差は14.6ポイントに達し、地域間の格差が存在することが確認できます。
少子高齢化が進む日本において、生産年齢人口割合の維持・向上は全国共通の課題ですが、その対応策は地域の特性に応じて異なるアプローチが必要です。都市部では子育て環境の整備や女性・高齢者の労働参加促進、地方では若者の流出防止や移住促進など、地域の実情に合わせた取り組みが求められています。