都道府県別老年人口割合ランキング(2023年度)

概要

老年人口割合(高齢化率)とは、総人口に占める65歳以上の人口の割合を指します。この記事では、2023年度の都道府県別老年人口割合のランキングを紹介します。

老年人口割合は、地域の高齢化の進行度を示す重要な指標であり、社会保障制度の負担、医療・介護需要、地域経済の活力などに大きな影響を与えます。日本は世界有数の高齢社会であり、全国的に老年人口割合の上昇が続いていますが、その程度には地域差があります。

地図データを読み込み中...

上位県と下位県の比較

老年人口割合が高い上位5県

2023年度の老年人口割合ランキングでは、秋田県39.0%(偏差値72.5)で全国1位となりました。秋田県は若年層の流出が続き、出生率も低いことから、高齢化が最も進行している県です。

2位は高知県36.3%(偏差値64.3)、3位は山口県徳島県が同率で35.3%(偏差値61.3)、5位は青森県山形県が同率で35.2%(偏差値61.0)となっています。上位県には中山間地域を多く抱える地方県が目立ちます。

老年人口割合が低い下位5県

最も老年人口割合が低かったのは東京都22.8%(偏差値23.4)でした。東京都は教育や就業機会を求めて多くの若年層が流入することから、相対的に高齢化の進行が遅い都市です。

46位は沖縄県23.8%(偏差値26.4)、45位は愛知県25.7%(偏差値32.2)、44位は神奈川県25.9%(偏差値32.8)、43位は滋賀県27.0%(偏差値36.1)となっています。下位県には大都市圏の都府県が多く、若年層の流入や生産年齢人口の集中により、相対的に老年人口割合が低くなっています。沖縄県は出生率が高く、若年層の割合が多いことから、相対的に高齢化の進行が遅い県です。

地域別の特徴分析

東北地方の高い高齢化率

東北地方は全体的に老年人口割合が高く、秋田県(1位、39.0%)をはじめ、青森県(5位、35.2%)、山形県(5位、35.2%)、岩手県(7位、35.0%)と上位を占めています。一方、宮城県(38位、29.2%)は仙台市を中心に若年層が集まるため、東北地方では例外的に低い値となっています。これらの地域では、若年層の流出が続き、出生率も低いことから、高齢化が急速に進行しています。

中国・四国地方の高齢化

中国・四国地方も高齢化が進んでおり、高知県(2位、36.3%)、山口県(3位、35.3%)、徳島県(3位、35.3%)、島根県(7位、35.0%)が上位に位置しています。これらの地域は中山間地域や過疎地域を多く抱え、若年層の流出が続いていることが高い老年人口割合の要因となっています。

特に注目すべきは、高知県と島根県の高齢化率の差です。両県とも地理的条件や産業構造が似ていますが、高知県がより高い高齢化率を示しているのは、より厳しい地理的条件(山がちな地形と過疎地域の広がり)や産業構造の違いが影響していると考えられます。

三大都市圏の相対的な若さ

三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)は相対的に老年人口割合が低く、東京都(47位、22.8%)、愛知県(45位、25.7%)、神奈川県(44位、25.9%)、滋賀県(43位、27.0%)、埼玉県(42位、27.4%)、大阪府(41位、27.7%)、千葉県(40位、28.1%)などが下位に位置しています。これらの地域は、教育機関や雇用機会が多く、若年層の流入が続いていることが要因です。

特に東京都は、日本の政治・経済・文化の中心として全国から若者を集めているため、老年人口割合が最も低くなっています。また、名古屋圏(愛知県)も自動車産業を中心とした製造業の集積地として若年労働者を集めており、相対的に低い高齢化率となっています。

北海道・北陸地方の状況

北海道(19位、33.0%)は全国平均よりやや高い老年人口割合を示しています。北陸地方では、新潟県と富山県(ともに13位、33.8%と33.1%)が比較的高く、石川県(33位、30.5%)や福井県(26位、31.5%)は中位にあります。北陸地方は全体として高齢化が進んでいますが、県庁所在地を中心に若年層が一定程度定着していることから、東北や中国・四国地方ほどの高齢化には至っていません。

九州地方の多様性

九州地方では、長崎県(9位、34.3%)、大分県(10位、34.2%)、愛媛県(10位、34.2%)、鹿児島県(13位、33.8%)、宮崎県(15位、33.7%)が上位にある一方、福岡県(39位、28.5%)は下位に位置しています。福岡県は九州の中心都市として若年層を集めていることが、相対的に低い老年人口割合の要因です。

九州地方の中でも、長崎県や大分県の高齢化率が高いのは、造船業や鉱業などの基幹産業の衰退による若年層の流出が大きな要因となっています。一方、福岡県は九州の経済・文化・教育の中心として発展し、周辺県から若年層を集めているため、相対的に低い高齢化率となっています。

沖縄県の特異性

沖縄県(46位、23.8%)は東京都に次いで老年人口割合が低く、独自の人口構造を持っています。これは、出生率の高さ(全国1位の1.80、2021年)、若年層の県内定着率の高さ、独自の文化や歴史的背景など、複合的な要因によるものです。

沖縄県の特徴として、多世代同居の文化が根強く残っていることや、地域コミュニティの絆が強いことが挙げられます。また、観光業や米軍基地関連の雇用など、若年層の就業機会が一定程度確保されていることも、若年層の県内定着に寄与しています。

老年人口割合の格差がもたらす課題

社会保障制度の地域間格差

老年人口割合の高い地域では、年金受給者が多く、医療・介護サービスの需要も高いため、社会保障制度の負担が大きくなっています。一方で、税収や保険料を負担する現役世代の割合は低く、財政的な持続可能性に課題を抱えています。

例えば、秋田県(1位、39.0%)では、介護保険料が全国平均を上回る水準となっており、財政負担も大きくなっています。一方、東京都(47位、22.8%)では、相対的に現役世代の割合が高く、社会保障制度の財政基盤が安定しています。

地域経済への影響

老年人口割合の高い地域では、消費市場の縮小や労働力不足が生じやすく、地域経済の活力低下につながっています。特に中山間地域や過疎地域では、高齢化と人口減少の相乗効果により、地域経済の衰退が加速しています。

例えば、高知県(2位、36.3%)では、商店街の衰退や事業者の後継者不足が深刻化しており、地域経済の活力低下が顕著になっています。一方、愛知県(45位、25.7%)では、製造業を中心とした産業基盤が安定しており、労働力も一定程度確保されていることから、地域経済の活力が維持されています。

医療・介護サービスの需給バランス

老年人口割合の高い地域では、医療・介護サービスの需要が高まる一方、サービス提供者の確保が難しくなっています。特に地方部では、医師や看護師、介護職員の不足が深刻化しており、サービスの質と量の確保が課題となっています。

例えば、山口県や徳島県(ともに3位、35.3%)では、医療・介護人材の確保が難しく、地域によってはサービスの提供体制に格差が生じています。一方、神奈川県(44位、25.9%)では、医療機関が充実しており、人材確保も比較的容易であることから、サービス提供体制が整っています。

コミュニティの維持と孤立防止

老年人口割合の高い地域では、地域コミュニティの担い手不足や高齢者の孤立が問題となっています。特に過疎地域では、集落機能の維持が困難になり、高齢者の見守りや支援体制の構築が課題となっています。

例えば、島根県(7位、35.0%)では、中山間地域を中心に集落機能の低下が進み、高齢者の見守りや生活支援の体制づくりが喫緊の課題となっています。一方、滋賀県(43位、27.0%)では、比較的若い世代が多く、地域コミュニティの担い手が確保されやすい状況にあります。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2023年度の都道府県別老年人口割合データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:

  1. 平均値と中央値の比較:平均値は約31.5%、中央値は約31.7%とほぼ同じ値を示しています。これは、データの分布がほぼ対称的であることを示しています。

  2. 分布の歪み:データはわずかに負の歪み(左に裾を引いた形状)を示しています。これは、東京都(22.8%)や沖縄県(23.8%)など、特に低い値を示す都府県があるためです。

  3. 外れ値の特定:秋田県(39.0%)や高知県(36.3%)は上側の外れ値、東京都(22.8%)や沖縄県(23.8%)は下側の外れ値と考えられます。特に東京都は、2位の沖縄県との差が1.0ポイント、全国平均との差が約8.7ポイントと大きく、統計的に見ても特異な値を示しています。

  4. 四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約28.5%、第3四分位数(Q3)は約34.3%で、四分位範囲(IQR)は約5.8ポイントです。これは、中央の50%の都道府県の老年人口割合が28.5%から34.3%の間に収まっていることを示しています。

  5. 標準偏差によるばらつき:標準偏差は約3.8ポイントで、多くの都道府県が平均値から±3.8ポイントの範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約12.1%となり、相対的なばらつきは中程度と言えます。最高値と最低値の差は16.2ポイント(39.0%−22.8%)に達し、地域間の格差が存在することを示しています。

まとめ

2023年度の都道府県別老年人口割合ランキングでは、秋田県が39.0%で1位、東京都が22.8%で47位となりました。上位には東北地方や中国・四国地方の県が多く、下位には三大都市圏の都府県が多く見られました。

老年人口割合の地域差は、若年層の移動パターン、出生率の違い、産業構造の変化など様々な要因によって生じており、この差は社会保障制度、地域経済、医療・介護サービス、地域コミュニティなど多方面に影響を与えています。

統計分析からは、都道府県間の老年人口割合に一定のばらつきがあり、最高値と最低値の差は16.2ポイントに達することがわかります。この地域差は、日本の人口動態の不均衡を示すとともに、高齢化対策の地域差の必要性を物語っています。

高齢化が進む日本において、老年人口割合の上昇への対応は全国共通の課題ですが、その対応策は地域の特性に応じて異なるアプローチが必要です。高齢化率の高い地方では地域包括ケアシステムの構築や地域公共交通の維持、都市部では高齢者向け住宅の整備や社会参加の促進など、地域の実情に合わせた取り組みが求められています。

出典