都道府県別核家族世帯割合ランキング(2020年度)

概要

核家族世帯割合とは、一般世帯に占める核家族世帯(夫婦のみの世帯、夫婦と未婚の子どもからなる世帯、ひとり親と未婚の子どもからなる世帯)の割合を示す指標です。この記事では、2020年度の都道府県別核家族世帯割合のランキングを紹介します。

核家族世帯割合は、地域の家族構成や世帯形態の特徴を反映しており、地域の社会構造や生活様式を理解する上で重要な指標です。2020年度は、奈良県や和歌山県、埼玉県などの近畿・関東地方や滋賀県で核家族世帯割合が高く、東京都や山形県、岩手県などで核家族世帯割合が低くなっています。

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上位県と下位県の比較

核家族世帯割合が高い上位5県

2020年度の核家族世帯割合ランキングでは、奈良県62.59%(偏差値78.8)で全国1位となりました。奈良県は大阪都市圏のベッドタウンとして発展し、夫婦と子どもからなる世帯が多いことが、核家族世帯割合の高さに影響しています。

2位は和歌山県59.29%(偏差値66.4)、3位は埼玉県58.57%(偏差値63.7)、4位は滋賀県57.95%(偏差値61.3)、5位は群馬県57.60%(偏差値60.0)となっています。上位県には首都圏や近畿圏の県が多く、都市化が進み、核家族化が進行している地域の特徴を示しています。

核家族世帯割合が低い下位5県

最も核家族世帯割合が低かったのは東京都45.72%(偏差値15.2)でした。東京都は単身世帯の割合が特に高く、これが核家族世帯割合の低さに直接影響しています。

46位は山形県50.99%(偏差値35.1)、45位は岩手県51.34%(偏差値36.4)、44位は宮城県51.71%(偏差値37.8)、43位は福島県51.90%(偏差値38.5)となっています。下位県には東北地方や日本海側の県が多く、三世代同居の文化が残る地域の特徴を示しています。

地域別の特徴分析

東北地方の家族形態

東北地方では、山形県(46位、50.99%)、岩手県(45位、51.34%)、宮城県(44位、51.71%)、福島県(43位、51.90%)、秋田県(37位、52.98%)、青森県(39位、52.73%)と、全ての県が全国平均を下回っています。

東北地方で核家族世帯割合が低い理由としては、三世代同居の文化が根強く残っていることが挙げられます。特に山形県は三世代同居率が高く、親と子と孫が同居する伝統的な家族形態が今も多く見られます。これは、豪雪地帯という地理的条件や農業を中心とした産業構造、「家」を重視する価値観などが影響していると考えられます。

また、東北地方では高齢化と若年層の流出が進んでいますが、残った若年層は親世代と同居する傾向があり、これも核家族世帯割合の低さに寄与しています。特に、宮城県は仙台市という大都市を有しているにもかかわらず核家族世帯割合が低いのは、都市部でも三世代同居の文化が比較的残っていることを示しています。

関東・甲信越地方の都市化と核家族化

関東・甲信越地方では、埼玉県(3位、58.57%)が上位に位置する一方、千葉県(10位、56.82%)、山梨県(12位、56.70%)、長野県(16位、56.12%)、茨城県(15位、56.22%)、栃木県(24位、55.29%)と中位に位置し、新潟県(35位、53.29%)は下位に位置しています。特筆すべきは、東京都(47位、45.72%)が全国最下位となっていることです。

埼玉県が高い核家族世帯割合を示している理由としては、都市化の進展と住宅事情が挙げられます。埼玉県は東京のベッドタウンとして発展し、核家族向けの住宅供給が進んだことで、夫婦と子どもからなる世帯が多く形成されました。特に、1970年代以降のニュータウン開発により、核家族世帯が集中して居住する地域が形成されました。

一方、東京都が最下位に位置している理由としては、単身世帯の割合が非常に高いことが挙げられます。東京都では、若年層の単身者や高齢者の単身世帯が多く、これが核家族世帯割合を大きく引き下げています。特に都心部では、単身世帯が多くを占め、核家族世帯の割合は相対的に低くなっています。

新潟県が比較的低い核家族世帯割合を示しているのは、農山村地域を多く抱え、三世代同居の文化が残っていることが影響しています。特に、新潟県は日本海側の豪雪地帯であり、冬季の生活の安全確保のためにも家族の結束が重視される傾向があります。

中部・北陸地方の地域差

中部・北陸地方では、岐阜県(6位、57.30%)、三重県(8位、57.17%)が上位に位置する一方、静岡県(18位、55.99%)、愛知県(21位、55.50%)は中位に、富山県(28位、54.62%)、石川県(30位、54.42%)、福井県(34位、53.49%)は中位から下位に位置しています。

岐阜県、三重県が高い核家族世帯割合を示している理由としては、製造業を中心とした産業構造と都市化の進展が挙げられます。特に、岐阜県は名古屋大都市圏に隣接し、住宅地としての開発が進んでいることも核家族世帯の増加に寄与しています。三重県も同様に、名古屋大都市圏や関西圏へのアクセスの良さから、核家族世帯の居住地として選ばれる傾向があります。

一方、北陸地方(石川県、富山県、福井県)は核家族世帯割合が比較的低くなっています。これらの県では、三世代同居の文化が根強く残っており、特に持ち家率が高いことも特徴です。広い住宅に家族で住む傾向があり、親世代の介護や子育て支援などの面でも家族内の支え合いが重視されています。

近畿地方の都市部と郊外の差

近畿地方では、奈良県(1位、62.59%)、和歌山県(2位、59.29%)、滋賀県(4位、57.95%)、兵庫県(7位、57.18%)が上位に位置する一方、京都府(41位、52.32%)、大阪府(36位、53.14%)は下位に位置しています。

奈良県、和歌山県、滋賀県が高い核家族世帯割合を示している理由としては、大阪都市圏のベッドタウンとしての性格が挙げられます。これらの県は、自然環境の良さや教育環境の充実から、子育て世帯の移住先として選ばれる傾向があり、これが核家族世帯の形成に寄与しています。特に、奈良県は大阪への通勤・通学の利便性の高さと落ち着いた住環境から、核家族世帯が増加しています。

一方、大阪府、京都府が下位に位置している理由としては、都市部での単身世帯の増加が挙げられます。特に、大阪市や京都市の都心部では単身世帯の割合が高く、これが核家族世帯割合を相対的に引き下げています。また、京都府は大学が多く学生の単身世帯が多いことも影響しています。

中国・四国地方の過疎化と家族形態

中国・四国地方では、香川県(11位、56.77%)、広島県(17位、56.06%)、山口県(14位、56.34%)が中位に位置する一方、愛媛県(22位、55.33%)、岡山県(29位、54.47%)、高知県(33位、53.51%)、徳島県(31位、53.74%)、鳥取県(38位、52.90%)、島根県(42位、52.15%)は中位から下位に位置しています。

香川県、山口県、広島県が比較的高い核家族世帯割合を示している理由としては、都市化の進展と産業基盤の強さが挙げられます。特に香川県は高松市を中心に商業・サービス業が発展し、核家族世帯の形成が進んでいます。広島県も広島市という中核都市を有し、製造業やサービス業の雇用機会が多いことが核家族世帯の増加に寄与しています。

一方、島根県、鳥取県などが低い核家族世帯割合を示しているのは、過疎化と高齢化の進行に加え、三世代同居の文化が残っていることが影響しています。特に、山間部や離島では、若年層の流出により新たな核家族世帯の形成が少なく、残された家族は親世代と同居する傾向があります。

九州・沖縄地方の地域性

九州・沖縄地方では、宮崎県(9位、57.06%)、長崎県(13位、56.44%)が上位から中位に位置する一方、鹿児島県(18位、55.99%)、大分県(22位、55.33%)、熊本県(25位、55.26%)、佐賀県(26位、55.21%)、沖縄県(27位、55.15%)、福岡県(40位、52.36%)と、福岡県を除いて中位に位置しています。

宮崎県が高い核家族世帯割合を示している理由としては、温暖な気候と自然環境の良さから、移住者や退職後の夫婦が増加していることが挙げられます。特に、宮崎市や日南市などの沿岸部では、核家族世帯の形成が進んでいます。

福岡県が下位に位置している理由としては、福岡市や北九州市などの都市部での単身世帯の増加が挙げられます。特に、福岡市は九州地方の経済・文化・教育の中心地として若年層の流入が多く、単身世帯の割合が高いことが核家族世帯割合を相対的に引き下げています。

沖縄県が中位に位置しているのは、沖縄特有の家族観や住居形態が影響しています。沖縄県では、「一門」と呼ばれる拡大家族の絆が強く、核家族であっても親族との近居が多いことが特徴です。また、米軍基地関連の雇用や観光業の発展により、若年層の県内定着率が比較的高く、これが核家族世帯の形成に寄与しています。

核家族世帯割合の格差がもたらす影響と課題

子育て環境への影響

核家族世帯割合の格差は、子育て環境に大きな影響を与えます。核家族世帯割合が高い地域では、共働き世帯が増加し、保育所や学童保育などの子育て支援施設への需要が高まる傾向があります。一方、核家族世帯割合が低い地域では、祖父母による子育て支援が期待できるため、公的な子育て支援施設への依存度が比較的低くなる傾向があります。

例えば、埼玉県(3位、58.57%)では、核家族世帯が多く、共働き世帯も増加していることから、保育所や学童保育などの子育て支援施設の整備が進んでいます。特に、さいたま市や川口市などの都市部では、待機児童問題の解消が課題となっており、保育所の増設や保育士の確保などの取り組みが進められています。

一方、山形県(46位、50.99%)では、三世代同居の割合が高く、祖父母による子育て支援が期待できるため、保育所などの公的な子育て支援施設への依存度が比較的低くなっています。これにより、女性の就業率が比較的高い水準を維持しており、出生率も全国平均を上回っています。

高齢者福祉への影響

核家族世帯割合の格差は、高齢者福祉にも大きな影響を与えます。核家族世帯割合が高い地域では、高齢者の単身世帯や夫婦のみの世帯が増加する傾向があり、介護サービスや見守りサービスなどの需要が高くなります。一方、核家族世帯割合が低い地域では、三世代同居の割合が高く、家族内での介護や支え合いが期待できるため、公的介護サービスへの依存度が比較的低くなる傾向があります。

例えば、奈良県(1位、62.59%)では、核家族世帯が多く、高齢者の単身世帯や夫婦のみの世帯も増加していることから、介護サービスや見守りサービスの需要が高くなっています。特に、奈良市や生駒市などの都市部では、高齢者の孤立や孤独死が問題となっており、地域包括ケアシステムの構築が急務となっています。

一方、岩手県(45位、51.34%)では、三世代同居の割合が比較的高く、家族内での介護や支え合いが期待できるため、公的介護サービスへの依存度が比較的低くなっています。これにより、介護保険料の負担も比較的軽減されていますが、家族介護者の負担増加という課題も生じています。

住宅需要への影響

核家族世帯割合の格差は、住宅需要にも大きな影響を与えます。核家族世帯割合が高い地域では、中小規模の住宅への需要が高く、マンションやアパートなどの集合住宅の供給が増加する傾向があります。一方、核家族世帯割合が低い地域では、三世代同居に対応した大規模な住宅への需要が比較的高く、一戸建て住宅の割合が高くなる傾向があります。

例えば、滋賀県(4位、57.95%)では、核家族向けの中小規模マンションの供給が増加しており、特に大津市や草津市などの都市部では住宅開発が進んでいます。これにより、都市の高密度化が進み、通勤時間の短縮や生活利便性の向上などのメリットがある一方、緑地の減少や都市環境の悪化などの課題も生じています。

一方、福島県(43位、51.90%)では、三世代同居に対応した広い一戸建て住宅が多く、住宅の平均面積も広くなっています。これにより、家族の絆の強化や子育て支援などのメリットがある一方、住宅の維持管理コストの増加や空き家の増加などの課題も生じています。

地域コミュニティへの影響

核家族世帯割合の格差は、地域コミュニティにも大きな影響を与えます。核家族世帯割合が高い地域では、住民の流動性が高く、地域コミュニティの形成が難しくなる傾向があります。一方、核家族世帯割合が低い地域では、住民の定着率が高く、地域コミュニティの絆が強くなる傾向があります。

例えば、和歌山県(2位、59.29%)では、核家族世帯が多く、特に和歌山市や田辺市などの都市部では、住民の流動性が高く、地域コミュニティの形成が課題となっています。これに対応するため、自治会やPTAなどの地域組織の活性化や、地域イベントの開催などの取り組みが進められています。

一方、新潟県(35位、53.29%)では、三世代同居の割合が高く、住民の定着率も高いことから、地域コミュニティの絆が比較的強くなっています。これにより、地域の祭りや行事が活発に行われ、地域の伝統文化の継承も進んでいます。特に、豪雪地帯では、冬季の除雪作業など、地域住民の協力が不可欠な活動が多く、これが地域コミュニティの結束を強めています。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2020年度の都道府県別核家族世帯割合データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:

  1. 平均値と中央値の比較:平均値は約55.0%、中央値は約55.3%とほぼ同じ値を示しており、データの分布がほぼ対称的であることがわかります。ただし、東京都(45.72%)という極端な下側の外れ値が存在します。

  2. 分布の歪み:東京都を除くと、データは全体としてわずかに負の歪み(左に裾を引いた形状)を示しており、山形県(50.99%)などの下側の外れ値が存在しています。また、奈良県(62.59%)は上側の外れ値と考えられます。

  3. 外れ値の特定:東京都(45.72%)は明らかな下側の外れ値であり、山形県(50.99%)、岩手県(51.34%)も下側の外れ値と考えられます。一方、奈良県(62.59%)、和歌山県(59.29%)は上側の外れ値と考えられます。

  4. 四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約53.1%、第3四分位数(Q3)は約57.1%で、四分位範囲(IQR)は約4.0%です。これは、中央の50%の都道府県の核家族世帯割合が53.1%から57.1%の間に収まっていることを示しています。

  5. 標準偏差によるばらつき:標準偏差は約2.4%(東京都を除くと約2.2%)で、多くの都道府県が平均値から±2.4%の範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約4.4%となり、相対的なばらつきは比較的小さいと言えます。最高値と最低値の差は16.87%(62.59%−45.72%)であり、奈良県と東京都の間には大きな格差があることを示しています。

まとめ

2020年度の都道府県別核家族世帯割合ランキングでは、奈良県が62.59%で1位、東京都が45.72%で47位となりました。上位には奈良県、和歌山県、埼玉県などの近畿・関東地方の県が多く、下位には東京都、山形県、岩手県などの東北地方の県や大都市が多く見られました。

核家族世帯割合の地域差は、三世代同居の文化の差、都市化の程度の差、産業構造の差など様々な要素を反映しており、この差は子育て環境や高齢者福祉、住宅需要、地域コミュニティなど様々な面に影響を与えています。

特筆すべきは、東京都が最下位となっていることで、これは単身世帯の割合が極めて高いことが主な要因です。一方、奈良県や和歌山県が上位に位置していることは、大阪都市圏のベッドタウンとしての性格が強く、核家族向けの住宅地開発が進んでいることを反映しています。

統計分析からは、東京都を除くとデータの分布がほぼ対称的であり、多くの都道府県の核家族世帯割合が53.1%から57.1%の範囲に収まっており、全国的に見ると比較的均質な分布を示しています。

少子高齢化が進む日本社会において、核家族世帯割合の変化は今後も続くと予想されます。特に、単身世帯の増加や高齢者のみの世帯の増加により、核家族世帯の割合は変化していく可能性が高いと考えられます。これに対応するためには、世帯構成の変化を踏まえた住宅政策や福祉政策の展開、地域コミュニティの再構築など、多角的な取り組みが求められています。

出典