都道府県別非労働力人口ランキング(2020年度)
概要
非労働力人口とは、15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者を除いた人口を指します。具体的には、専業主婦(主夫)、学生、高齢者などの就業していない人々が含まれます。この記事では、2020年度の都道府県別非労働力人口のランキングを紹介します。
非労働力人口は、地域の人口構成や産業構造、雇用環境などを反映しており、地域経済や社会保障政策の基礎データとして重要な指標です。2020年度は、東京都や大阪府などの大都市圏で非労働力人口が多く、鳥取県や島根県などの人口規模の小さい地方県で非労働力人口が少なくなっています。
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上位県と下位県の比較
非労働力人口が多い上位5県
2020年度の非労働力人口ランキングでは、東京都が3,086,922人(偏差値83.1)で全国1位となりました。東京都は日本最大の人口を有する都市圏であり、学生や高齢者、専業主婦(主夫)など多様な非労働力人口が集中しています。特に、多くの大学が集中していることから学生人口が多いことや、高齢化の進行により高齢者人口が増加していることが、非労働力人口の多さにつながっていると考えられます。
2位は神奈川県で2,522,430人(偏差値75.0)、3位は大阪府で2,421,722人(偏差値73.6)、4位は埼玉県で2,077,861人(偏差値68.6)、5位は愛知県で2,034,457人(偏差値68.0)となっています。上位県には大都市を有する都府県が多く、人口規模が大きいことが非労働力人口の多さに直接影響していると考えられます。
非労働力人口が少ない下位5県
最も非労働力人口が少なかったのは鳥取県で171,701人(偏差値41.3)でした。鳥取県は日本で最も人口が少ない県であり、人口規模の小ささが非労働力人口の少なさに直接影響していると考えられます。
46位は島根県で215,408人(偏差値41.9)、45位は高知県で223,441人(偏差値42.0)、44位は福井県で224,706人(偏差値42.0)、43位は徳島県で243,131人(偏差値42.3)となっています。下位県には人口規模の小さい地方県が多く、人口規模の小ささが非労働力人口の少なさに直接影響していると考えられます。
地域別の特徴分析
東北地方の非労働力人口
東北地方では、宮城県(15位、707,132人)が最も非労働力人口が多く、秋田県(35位、344,547人)が最も少なくなっています。その他の県は、青森県(29位、420,119人)、岩手県(30位、401,556人)、山形県(34位、345,708人)、福島県(21位、574,464人)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
東北地方全体として非労働力人口が比較的少ない理由としては、人口規模が全国的に見て小さいことが挙げられます。特に秋田県や山形県は人口減少が進んでおり、非労働力人口も少なくなっていると考えられます。
特に宮城県で東北地方の中では非労働力人口が多い理由としては、仙台市という東北地方最大の都市を有しており、学生や高齢者、専業主婦(主夫)などが集中していることが挙げられます。また、東日本大震災後の復興需要により、一時的に労働力人口が増加した後、現在は非労働力人口が増加している可能性もあります。
一方、秋田県で非労働力人口が少ない理由としては、人口規模が小さいことに加え、若年層の県外流出が進んでいることが挙げられます。若年層の流出により、非労働力人口の中でも特に学生の割合が低くなっていると考えられます。
関東地方の都市化と非労働力人口
関東地方では、東京都(1位、3,086,922人)が最も非労働力人口が多く、栃木県(20位、577,011人)が最も少なくなっています。その他の県は、茨城県(11位、885,670人)、群馬県(18位、594,813人)、埼玉県(4位、2,077,861人)、千葉県(6位、1,804,519人)、神奈川県(2位、2,522,430人)と、全国的に見ると上位から中位に位置しています。
関東地方全体として非労働力人口が多い理由としては、人口規模が全国的に見て大きいことが挙げられます。特に東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県は人口規模が大きく、非労働力人口も多くなっていると考えられます。
特に東京都で非労働力人口が最も多い理由としては、日本最大の人口を有していることに加え、多くの大学が集中していることから学生人口が多いこと、高齢化の進行により高齢者人口が増加していること、また、専業主婦(主夫)も多いことが挙げられます。
一方、栃木県で関東地方の中では非労働力人口が少ない理由としては、人口規模が比較的小さいことに加え、製造業が盛んであり労働力人口の割合が高いことが挙げられます。特に自動車関連産業や食品加工業などが発達しており、就業機会が多いことが非労働力人口の少なさにつながっていると考えられます。
中部・北陸地方の産業構造と非労働力人口
中部・北陸地方では、愛知県(5位、2,034,457人)が最も非労働力人口が多く、福井県(44位、224,706人)が最も少なくなっています。その他の県は、新潟県(14位、724,305人)、富山県(38位、324,724人)、石川県(37位、340,116人)、山梨県(42位、243,729人)、長野県(16位、614,334人)、岐阜県(17位、601,600人)、静岡県(10位、1,110,677人)と、全国的に見るとばらつきがあります。
中部・北陸地方は全国的に見ると非労働力人口に大きな地域差があります。これは、愛知県や静岡県などの人口規模の大きい県と、福井県や富山県などの人口規模の小さい県との差を反映していると考えられます。
特に愛知県で非労働力人口が多い理由としては、名古屋市を中心とする大都市圏を有しており、人口規模が大きいことが挙げられます。また、自動車産業を中心とする製造業が盛んであり、労働力人口も多いですが、同時に学生や高齢者、専業主婦(主夫)などの非労働力人口も多いと考えられます。
一方、福井県で非労働力人口が少ない理由としては、人口規模が小さいことに加え、女性の労働力人口比率が全国で最も高いことが挙げられます。福井県は繊維産業や眼鏡産業など女性が活躍できる産業が発達しており、専業主婦の割合が低く、非労働力人口が少なくなっていると考えられます。
近畿地方の都市部と郊外の差
近畿地方では、大阪府(3位、2,421,722人)が最も非労働力人口が多く、和歌山県(39位、306,938人)が最も少なくなっています。その他の県は、京都府(13位、739,648人)、兵庫県(8位、1,662,746人)、奈良県(26位、457,742人)、滋賀県(31位、400,966人)と、全国的に見るとばらつきがあります。
近畿地方は全国的に見ると非労働力人口に大きな地域差があります。これは、大阪府や兵庫県などの人口規模の大きい都府県と、滋賀県や和歌山県などの人口規模の小さい県との差を反映していると考えられます。
特に大阪府で非労働力人口が多い理由としては、大阪市を中心とする大都市圏を有しており、人口規模が大きいことが挙げられます。また、サービス業など第三次産業の比重が高く、非正規雇用も多いため、完全失業者や非労働力人口が多くなっている可能性があります。
一方、和歌山県で非労働力人口が少ない理由としては、人口規模が小さいことに加え、農業や水産業など一次産業が盛んであり、家族経営の事業体が多いことが挙げられます。これにより、家族全体が労働力として参加する傾向があり、非労働力人口が少なくなっていると考えられます。
中国・四国地方の地域性と非労働力人口
中国・四国地方では、広島県(12位、852,847人)が最も非労働力人口が多く、鳥取県(47位、171,701人)が最も少なくなっています。その他の県は、島根県(46位、215,408人)、岡山県(19位、582,661人)、山口県(25位、468,285人)、徳島県(43位、243,131人)、香川県(40位、301,618人)、愛媛県(28位、434,778人)、高知県(45位、223,441人)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
中国・四国地方全体として非労働力人口が比較的少ない理由としては、人口規模が全国的に見て小さいことが挙げられます。特に鳥取県や島根県、徳島県、高知県は人口規模が小さく、非労働力人口も少なくなっていると考えられます。
特に広島県で中国・四国地方の中では非労働力人口が多い理由としては、広島市という中国地方最大の都市を有しており、学生や高齢者、専業主婦(主夫)などが集中していることが挙げられます。また、自動車産業など製造業も盛んですが、同時にサービス業など第三次産業も発達しており、多様な就業形態が存在することが非労働力人口の多さにつながっている可能性があります。
一方、鳥取県で非労働力人口が最も少ない理由としては、日本で最も人口が少ない県であることが挙げられます。人口規模の小ささが非労働力人口の少なさに直接影響していると考えられます。
九州・沖縄地方の地域差と非労働力人口
九州・沖縄地方では、福岡県(9位、1,503,105人)が最も非労働力人口が多く、佐賀県(41位、248,785人)が最も少なくなっています。その他の県は、長崎県(27位、446,371人)、熊本県(22位、545,320人)、大分県(32位、378,017人)、宮崎県(36位、344,092人)、鹿児島県(24位、519,906人)、沖縄県(33位、349,696人)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
九州・沖縄地方全体として非労働力人口が比較的少ない理由としては、福岡県を除いて人口規模が全国的に見て小さいことが挙げられます。特に佐賀県や宮崎県は人口規模が小さく、非労働力人口も少なくなっていると考えられます。
特に福岡県で九州・沖縄地方の中では非労働力人口が多い理由としては、福岡市という九州地方最大の都市を有しており、学生や高齢者、専業主婦(主夫)などが集中していることが挙げられます。また、サービス業など第三次産業が発達しており、多様な就業形態が存在することが非労働力人口の多さにつながっている可能性があります。
一方、佐賀県で非労働力人口が少ない理由としては、人口規模が小さいことに加え、女性の労働力人口比率が全国的に見て高いことが挙げられます。佐賀県は農業(特に米や野菜の生産)が盛んであり、女性が重要な役割を担っていることが、非労働力人口の少なさにつながっていると考えられます。
非労働力人口の格差がもたらす影響と課題
地域経済への影響
非労働力人口の地域間格差は、地域経済にも影響を与えます。非労働力人口が多い地域では、労働力の供給が制約され、経済成長の制約要因となる可能性があります。一方、非労働力人口の中には、潜在的な労働力として活用できる人材も含まれており、これらの人材を労働市場に引き入れることができれば、地域経済の活性化につながる可能性があります。
例えば、東京都(1位、3,086,922人)では、非労働力人口が多いですが、その中には高学歴の専業主婦(主夫)や、就職活動中の学生など、潜在的な労働力として活用できる人材も多く含まれていると考えられます。これらの人材を労働市場に引き入れることができれば、労働力不足の解消や経済成長の促進につながる可能性があります。
一方、鳥取県(47位、171,701人)では、非労働力人口は少ないですが、人口自体が少ないため、労働力の供給も制約されています。このため、企業誘致や産業発展が制約され、地域経済の活性化が進みにくい状況にあると考えられます。
社会保障制度への影響
非労働力人口の地域間格差は、社会保障制度にも影響を与えます。非労働力人口が多い地域では、社会保障給付の需要が高まり、財政負担が増加する可能性があります。特に、高齢者や障害者など、社会保障給付の主な受給者が非労働力人口に含まれることが多いため、これらの人口が多い地域では、社会保障制度の持続可能性が課題となる可能性があります。
例えば、大阪府(3位、2,421,722人)では、非労働力人口が多く、その中には高齢者や生活保護受給者など、社会保障給付の主な受給者が多く含まれていると考えられます。これにより、社会保障給付の需要が高まり、財政負担が増加している可能性があります。
一方、福井県(44位、224,706人)では、非労働力人口が少なく、女性の労働力人口比率が高いため、社会保障給付の需要が比較的低く、財政負担も軽減されている可能性があります。
地域社会への影響
非労働力人口の地域間格差は、地域社会にも影響を与えます。非労働力人口が多い地域では、地域活動やボランティア活動などの担い手が多く、地域コミュニティの活性化につながる可能性があります。一方、非労働力人口の中には、社会的に孤立している人々も含まれており、これらの人々の社会参加を促進することが課題となる可能性があります。
例えば、神奈川県(2位、2,522,430人)では、非労働力人口が多く、その中には退職後の高齢者や専業主婦(主夫)など、地域活動やボランティア活動の担い手となる人材も多く含まれていると考えられます。これらの人材が地域社会に参加することで、地域コミュニティの活性化につながる可能性があります。
一方、島根県(46位、215,408人)では、非労働力人口は少ないですが、高齢化率が高く、非労働力人口の中には高齢者の割合が高いと考えられます。これらの高齢者が地域社会に参加することで、地域コミュニティの維持につながる可能性がありますが、同時に、高齢者の社会参加を促進するための支援も必要となる可能性があります。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2020年度の都道府県別非労働力人口データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約736,297人、中央値は約446,371人と大きく乖離しており、データの分布が右に歪んでいることを示しています。これは、東京都や大阪府などの一部の都府県で非労働力人口が特に多いことを反映しています。
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分布の歪み:データは全体として強い正の歪みを示しており、右に長い裾を持つ分布となっています。東京都(3,086,922人)が最も多く、鳥取県(171,701人)が最も少ないですが、その差は約2,915,221人と非常に大きく、極端な格差が見られます。
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外れ値の特定:東京都(3,086,922人)、神奈川県(2,522,430人)、大阪府(2,421,722人)などは上側の外れ値と考えられ、平均値を大きく上回っています。これらの都府県は人口規模が特に大きく、非労働力人口も多くなっていると考えられます。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約243,729人、第3四分位数(Q3)は約852,847人で、四分位範囲(IQR)は約609,118人です。これは、中央の50%の都道府県の非労働力人口が243,729人から852,847人の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的少ない非労働力人口であることがわかります。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約778,393人で、変動係数(標準偏差÷平均値)は約106%となり、相対的なばらつきが非常に大きいことを示しています。これは、都道府県間の非労働力人口の格差が非常に大きいことを意味します。
まとめ
2020年度の都道府県別非労働力人口ランキングでは、東京都が3,086,922人で1位、鳥取県が171,701人で47位となりました。上位には東京都、神奈川県、大阪府などの大都市を有する都府県が多く、下位には鳥取県、島根県、高知県などの人口規模の小さい地方県が多く見られました。
非労働力人口の地域差は、人口規模、年齢構成、産業構造など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、社会保障制度、地域社会など様々な面に影響を与えています。
統計分析からは、都道府県間の非労働力人口の格差が非常に大きく、特に東京都や大阪府などの大都市圏と、鳥取県や島根県などの地方県との間で顕著な差があることがわかります。これは主に人口規模の差を反映していますが、産業構造や雇用環境の違いも影響していると考えられます。
少子高齢化が進む日本社会において、非労働力人口の活用は重要な課題となっています。特に、女性や高齢者、障害者など、潜在的な労働力として活用できる人材を労働市場に引き入れることで、労働力不足の解消や経済成長の促進につながる可能性があります。また、非労働力人口の中には、地域活動やボランティア活動の担い手となる人材も含まれており、これらの人材の社会参加を促進することで、地域コミュニティの活性化につながる可能性もあります。