都道府県別自然公園面積ランキング(2022年度)

自然公園とは

自然公園とは、優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることを目的として指定される区域です。日本の自然公園は、自然公園法に基づき、国立公園、国定公園、都道府県立自然公園の3種類に分類されます。

国立公園は我が国を代表する傑出した自然の風景地で環境大臣が指定し、国定公園は国立公園に準ずる優れた自然の風景地で環境大臣が指定します。都道府県立自然公園は都道府県内の優れた自然の風景地で都道府県知事が指定します。自然公園面積は、これら3種類の自然公園の合計面積を示しています。

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上位県と下位県の比較

自然公園面積が広い都道府県の特徴

自然公園面積が最も広いのは北海道880,179ヘクタール(偏差値108.9)となっています。次いで新潟県316,891ヘクタール(偏差値65.3)、長野県277,994ヘクタール(偏差値62.3)、三重県208,477ヘクタール(偏差値56.9)、岐阜県195,093ヘクタール(偏差値55.9)と続きます。

北海道は日本最大の面積を持つ都道府県であり、知床、阿寒摩周、大雪山、支笏洞爺などの国立公園をはじめ、多くの自然公園を有しています。特に原生的な自然環境が広く残されており、自然公園面積も突出して広くなっています。新潟県は佐渡弥彦米山、越後三山只見などの国定公園を有し、長野県は中部山岳、上信越高原などの国立公園を含む多くの自然公園が指定されています。

特筆すべきは三重県が4位に入っていることで、伊勢志摩国立公園や吉野熊野国立公園など、海岸線を含む多様な自然環境が保全されています。

自然公園面積が狭い都道府県の特徴

一方、自然公園面積が最も狭いのは大阪府20,039ヘクタール(偏差値42.3)です。次いで香川県20,534ヘクタール(偏差値42.4)、佐賀県26,884ヘクタール(偏差値42.8)、千葉県28,537ヘクタール(偏差値43.0)、広島県37,857ヘクタール(偏差値43.7)と続きます。

大阪府は都市化が進んだ地域が多く、自然公園に指定できる自然環境が限られています。また、府の面積自体も小さいことが影響しています。香川県も面積が小さく、平野部が多いことから自然公園の指定面積が限られています。これらの県では、限られた自然環境を保全するために、小規模ながらも重要な自然公園が指定されています。

地域別の特徴

地方別の自然公園面積

地方別に自然公園面積を見ると、以下のような特徴があります:

  1. 北海道:880,179ヘクタールと突出して広い面積を有しています。
  2. 東北地方:平均約136,157ヘクタールと全国平均を上回っており、特に福島県(180,002ha)や宮城県(171,201ha)で広い面積が指定されています。
  3. 中部地方:平均約146,359ヘクタールと全国で2番目に高く、新潟県(316,891ha)や長野県(277,994ha)、岐阜県(195,093ha)などで広い面積が指定されています。
  4. 近畿地方:平均約82,435ヘクタールと全国平均をやや下回っていますが、兵庫県(166,081ha)や滋賀県(149,957ha)では比較的広い面積が指定されています。
  5. 関東地方:平均約91,767ヘクタールと全国平均をやや下回っていますが、埼玉県(124,582ha)や栃木県(133,443ha)では比較的広い面積が指定されています。
  6. 中国・四国地方:平均約45,962ヘクタールと低く、特に香川県(20,534ha)や徳島県(38,706ha)では指定面積が限られています。
  7. 九州・沖縄地方:平均約102,584ヘクタールと全国平均に近く、大分県(174,730ha)や熊本県(155,636ha)では広い面積が指定されています。

自然環境の地域差

自然公園の指定面積には、地域によって大きな差があります。これは各地域の自然環境の特性や、保全価値の高い自然景観の分布を反映しています。山岳地帯や海岸線が複雑な地域、火山地形が発達した地域などでは自然公園の指定面積が広い傾向にあります。一方、平野部が多く都市化が進んだ地域では指定面積が限られる傾向があります。

特に注目すべきは、県土面積に対する自然公園面積の割合です。例えば、大分県や福島県などは県土の約30%が自然公園に指定されており、自然環境保全への高い意識が見られます。対照的に、茨城県や千葉県などは都市的土地利用が進み、自然公園の割合が低くなっています。

自然公園と地域振興

観光資源としての自然公園

自然公園は単なる保護区域ではなく、重要な観光資源でもあります。特に国立公園は日本を代表する景勝地として国内外から多くの観光客を集めています。例えば、北海道の知床や富士箱根伊豆国立公園などは、年間数百万人の観光客が訪れる人気の観光地となっています。

自然公園内では、地域の特性に応じた様々な自然体験アクティビティが提供されており、地域の魅力を高める重要な要素となっています。登山やトレッキング、バードウォッチング、カヌーやシュノーケリングなど、多様なアクティビティが楽しめる場として、自然公園の価値は高まっています。

地域振興への貢献

自然公園は地域振興にも大きく貢献しています。自然公園を訪れる観光客による経済効果は大きく、特に地方部では重要な収入源となっています。また、自然公園の存在は地域のブランド価値を高め、地域産品の付加価値向上にも寄与しています。

一方で、観光利用と自然保護のバランスをどのように取るかが課題となっています。持続可能な観光(エコツーリズム)の推進や、適切な利用ルールの設定などが各地で取り組まれています。特に近年は、国立公園満喫プロジェクトなどを通じて、自然環境の保全と観光振興の両立が図られています。

格差と課題

地域間の格差

自然公園面積の都道府県間格差は非常に大きく、最大の北海道(880,179ヘクタール)と最小の大阪府(20,039ヘクタール)の間には約44倍の開きがあります。この格差は、自然環境の地域差や都道府県の面積の違いを反映したものですが、保全政策の違いも影響しています。

都道府県別の自然公園指定率(県土面積に対する自然公園面積の割合)を見ても、大きな差があります。例えば、栃木県や大分県などは県土の30%以上が自然公園に指定されている一方、大阪府や佐賀県などは10%未満となっています。これらの差は、自然環境の特性だけでなく、地域の保全に対する姿勢や優先度も反映しています。

保全と利用のバランス

自然公園制度の大きな特徴は、保護と利用の調和を図ることにあります。しかし、観光客の増加や開発圧力により、自然環境への負荷が高まっている地域もあります。特に人気の高い国立公園では、オーバーツーリズムの問題や施設整備による自然環境への影響が懸念されています。

一方、利用者が少ない自然公園では、施設の老朽化や管理不足、地域の過疎化による担い手不足などの問題も生じています。保全と利用のバランスを取りながら、地域の実情に合った自然公園の管理運営が求められています。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

自然公園面積の全国平均は約113,159ヘクタール、中央値は88,868ヘクタールとなっています。平均値が中央値を上回っていることから、分布は右に歪んでいることがわかります。これは、北海道や新潟県など一部の都道府県で特に広い面積が指定されていることが影響しています。

標準偏差は約130,994ヘクタールと非常に大きく、都道府県間のばらつきが極めて大きいことを示しています。四分位範囲(第3四分位数 - 第1四分位数)は約109,497ヘクタールで、中央付近の都道府県でも自然公園面積にかなりの差があることがわかります。

最大値(北海道の880,179ヘクタール)と最小値(大阪府の20,039ヘクタール)の差は860,140ヘクタールと非常に大きく、日本の自然環境の多様性と地域差を反映しています。

外れ値の分析

統計的に見ると、北海道(880,179ヘクタール)は明らかな上方への外れ値です。北海道の自然公園面積は第2位の新潟県(316,891ヘクタール)の約2.8倍、全国平均の約7.8倍に達しています。これは、北海道の面積の広さと原生的な自然環境の豊かさを反映しています。

新潟県や長野県、三重県なども上方への外れ値と考えられますが、北海道ほど極端ではありません。下方への顕著な外れ値は見られませんが、大阪府や香川県などは全国平均を大きく下回っています。

まとめ

自然公園面積は、各都道府県における自然環境の豊かさや保全への取り組みを示す重要な指標です。北海道や新潟県、長野県などでは広い面積が指定されている一方、大阪府や香川県などでは指定面積が限られており、都道府県間で大きな差があることがわかりました。

この差は、各地域の自然環境の特性や面積の違いを反映していますが、自然公園は単なる保護区域ではなく、観光資源や地域振興の核としても重要な役割を担っています。保全と利用のバランスを取りながら、地域の特性に応じた自然公園の管理運営が求められています。

今後は、気候変動による生態系への影響や、インバウンド観光の回復に伴う利用圧の増加など、新たな課題に対応するために、自然公園の管理体制の強化や、地域との協働による保全の取り組みがますます重要になるでしょう。また、自然公園を核とした持続可能な地域づくりを進めることで、自然環境の保全と地域振興の両立を図ることが期待されます。

出典