都道府県別自然公園面積割合ランキング(2022年度)

自然公園面積割合とは

自然公園面積割合とは、都道府県の総面積に対する自然公園面積の割合を示す指標です。自然公園は、国立公園、国定公園、都道府県立自然公園の3種類に分類され、優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることを目的として指定されています。

この指標は、各都道府県がどの程度の割合の土地を自然公園として保全しているかを示すものであり、自然環境保全への取り組みや、保全価値の高い自然環境の存在を反映しています。単純な面積ではなく割合で見ることで、都道府県の規模に関わらず比較することができます。

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上位県と下位県の比較

自然公園面積割合が高い都道府県の特徴

自然公園面積割合が最も高いのは滋賀県37.3%(偏差値72.9)となっています。次いで東京都36.4%(偏差値71.9)、三重県36.1%(偏差値71.5)、沖縄県35.7%(偏差値71.1)、埼玉県32.8%(偏差値67.8)と続きます。

滋賀県は琵琶湖国定公園を中心に、県土の約3分の1以上が自然公園に指定されています。琵琶湖は日本最大の湖であり、その周辺の自然環境を保全するために広い範囲が自然公園に指定されています。東京都は小笠原諸島や伊豆諸島などの島嶼部も含め、都の面積に対する自然公園の割合が非常に高くなっています。三重県は伊勢志摩国立公園や吉野熊野国立公園など、海岸線を中心に美しい自然景観が広がっており、県土の約36%が自然公園に指定されています。

上位県に共通する特徴として、海岸線や湖沼、山岳地帯など特徴的な地形を有し、観光資源としても価値の高い自然環境が広く分布していることが挙げられます。また、これらの地域では自然環境の保全と観光振興を両立させる取り組みが進められています。

自然公園面積割合が低い都道府県の特徴

一方、自然公園面積割合が最も低いのは広島県4.5%(偏差値35.7)です。次いで岩手県4.7%(偏差値36.0)、千葉県5.5%(偏差値36.9)、島根県6.0%(偏差値37.4)、高知県6.7%(偏差値38.2)と続きます。

広島県は瀬戸内海国立公園などの自然公園を有していますが、県土面積に対する割合は低くなっています。岩手県は十和田八幡平国立公園などの自然公園を有していますが、県土面積が非常に広いことから、割合としては低くなっています。千葉県は都市化が進んだ地域が多く、南房総国定公園などはあるものの、全体としての割合は低くなっています。

下位県では、必ずしも自然環境が乏しいわけではなく、他の保護制度(例えば森林保全地域など)によって自然環境が保全されている場合や、農地として利用されている場合も多いです。また、県土面積が広い県では、絶対面積では多くの自然公園があっても、割合としては低くなる傾向があります。

地域別の特徴

地方別の自然公園面積割合

地方別に自然公園面積割合を見ると、以下のような特徴があります:

  1. 近畿地方:平均約21.3%と全国で最も高く、特に滋賀県(37.3%)や三重県(36.1%)で高い割合を示しています。
  2. 関東地方:平均約21.0%と2番目に高く、東京都(36.4%)や埼玉県(32.8%)などで高い割合となっています。
  3. 九州・沖縄地方:平均約19.6%と全国平均を上回っており、特に沖縄県(35.7%)や大分県(27.6%)で高い割合を示しています。
  4. 中部地方:平均約19.4%と全国平均に近く、富山県(29.6%)や山梨県(27.1%)で高い割合となっています。
  5. 東北地方:平均約13.4%と全国平均を下回っており、特に岩手県(4.7%)で低い割合となっています。ただし、宮城県(23.5%)は比較的高い割合です。
  6. 中国・四国地方:平均約9.2%と最も低く、特に広島県(4.5%)や島根県(6.0%)で低い割合となっています。
  7. 北海道:11.2%と全国平均を下回っていますが、面積自体は最大です。

自然環境の地域差

自然公園面積割合の地域差は、各地域の地形的特徴や歴史的背景、土地利用の状況などを反映しています。例えば、近畿地方では琵琶湖周辺や熊野地域など、特徴的な自然環境を持つ地域が多く、これらが自然公園に指定されています。関東地方では、東京都の島嶼部や埼玉県の奥秩父地域など、都市部から離れた地域に貴重な自然環境が保全されています。

一方、中国・四国地方の多くの県では、平野部が多く農地や都市として利用されているため、自然公園の割合が低くなる傾向があります。また、北海道は自然公園の面積自体は最大ですが、総面積も非常に広いため、割合としては全国平均を下回っています。これは、北海道の広大な土地が農地や森林など様々な用途に利用されていることを反映しています。

自然公園面積割合と観光

観光資源としての価値

自然公園は重要な観光資源であり、自然公園面積割合の高い地域では、自然を活かした観光振興が盛んな傾向があります。例えば、滋賀県の琵琶湖、三重県の伊勢志摩国立公園、沖縄県の西表石垣国立公園などは、多くの観光客を集める人気の観光地となっています。

自然公園を訪れる観光客は、ハイキングや温泉、キャンプ、野生動物観察など様々なアクティビティを楽しむことができ、地域経済に大きく貢献しています。特に近年は、自然体験や環境教育への関心の高まりから、自然公園の観光資源としての価値が再評価されています。

持続可能な観光の課題

一方で、観光客の増加に伴い、自然環境への負荷や混雑、地域住民との軋轢などの問題も生じています。特に人気の高い自然公園では、オーバーツーリズムの問題が顕在化しており、持続可能な観光のあり方が課題となっています。

この課題に対応するため、入場制限や予約制の導入、環境教育の強化、地域住民との協働など、様々な取り組みが進められています。自然公園面積割合の高い地域では、自然環境の保全と観光振興のバランスを取りながら、持続可能な地域づくりを進めることが重要となっています。

格差と課題

地域間の格差

自然公園面積割合の都道府県間格差は大きく、最高の滋賀県(37.3%)と最低の広島県(4.5%)では約8.3倍の開きがあります。この格差は、自然環境の地域差や土地利用の状況を反映したものですが、自然環境保全への取り組みの違いも影響しています。

保全と開発のバランス

自然公園の指定は、自然環境の保全に貢献する一方で、開発や産業活動に一定の制限をもたらします。そのため、自然公園面積割合の低い地域では、経済発展を優先して自然公園の指定を控える傾向がある一方、自然公園面積割合の高い地域では、自然環境の保全と地域振興のバランスを取ることが課題となっています。

特に近年は、再生可能エネルギー施設の建設や観光施設の整備など、自然公園内での開発圧力が高まっており、保全と利用のバランスをどのように取るかが重要な政策課題となっています。例えば、沖縄県の西表島では世界自然遺産登録に伴い観光客が増加する中、自然環境の保全と観光利用の調和が課題となっています。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

自然公園面積割合の全国平均は約17.3%、中央値は約14.8%となっています。平均値が中央値を上回っていることから、分布は右に歪んでいることがわかります。これは、滋賀県、東京都、三重県など一部の都県で特に高い割合を示していることが影響しています。

標準偏差は約10.0ポイントと比較的大きく、都道府県間のばらつきが大きいことを示しています。四分位範囲(第3四分位数 - 第1四分位数)は約13.0ポイントで、中央付近の都道府県でも自然公園面積割合にかなりの差があることがわかります。

最大値(滋賀県の37.3%)と最小値(広島県の4.5%)の差は32.8ポイントと非常に大きく、自然公園の指定状況に大きな地域差があることを示しています。

外れ値の分析

統計的に見ると、滋賀県(37.3%)、東京都(36.4%)、三重県(36.1%)、沖縄県(35.7%)は上方への外れ値と考えられます。これらの県は、全国平均を大きく上回る割合の土地を自然公園に指定しています。

特に滋賀県と東京都は、県土・都土の3分の1以上が自然公園に指定されており、自然環境保全への積極的な取り組みが見られます。一方、下方への顕著な外れ値は見られませんが、広島県(4.5%)、岩手県(4.7%)、千葉県(5.5%)などは全国平均を大きく下回っています。

まとめ

自然公園面積割合は、各都道府県における自然環境保全への取り組みや、保全価値の高い自然環境の存在を示す重要な指標です。滋賀県、東京都、三重県などでは高い割合を示している一方、広島県、岩手県、千葉県などでは低い割合となっており、都道府県間で大きな差があることがわかりました。

この差は、各地域の自然環境の特性や土地利用の状況を反映していますが、自然公園は単なる保護区域ではなく、観光資源や地域振興の核としても重要な役割を担っています。自然環境の保全と利用のバランスを取りながら、地域の特性に応じた自然公園の管理運営が求められています。

今後は、気候変動による生態系への影響や、観光需要の変化など、新たな課題に対応するために、自然公園の管理体制の強化や、地域との協働による保全の取り組みがますます重要になるでしょう。また、自然公園を核とした持続可能な地域づくりを進めることで、自然環境の保全と地域振興の両立を図ることが期待されます。

出典