都道府県別転入率ランキング(2023年度)

概要

転入率とは、その地域の総人口に対する他地域からの転入者数の割合を示す指標です。この記事では、2023年度の都道府県別転入率のランキングを紹介します。

転入率は、その地域がどれだけ人口を引きつける力を持っているかを示す重要な指標であり、地域の魅力や経済力、生活環境などを反映しています。この値が高いほど、その地域が多くの人々を引きつけていることを意味します。

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上位県と下位県の比較

転入率が高い上位5都府県

2023年度の転入率ランキングでは、東京都2.89%(偏差値86.3)で全国1位となりました。東京都は日本の政治・経済・文化の中心地であり、多くの雇用機会や教育機関、文化施設が集中していることから、国内外から多くの人々が移り住んでいます。

2位は神奈川県2.29%(偏差値70.2)、3位は千葉県2.24%(偏差値68.9)、4位は埼玉県2.19%(偏差値67.5)、5位は京都府2.04%(偏差値63.5)となっています。上位には首都圏の都県や大都市を持つ府県が占めており、雇用機会の多さや交通の利便性の高さが転入率の高さに影響していると考えられます。

転入率が低い下位5県

最も転入率が低かったのは北海道0.93%(偏差値33.8)でした。北海道は面積が広大で人口密度が低く、また冬季の厳しい気候条件などが転入の障壁となっている可能性があります。

46位は新潟県0.94%(偏差値34.1)、44位タイは秋田県福井県1.09%(偏差値38.1)、43位は山形県1.11%(偏差値38.6)となっています。下位県には東北地方や日本海側の県が多く、雇用機会の少なさや厳しい気候条件などが転入率の低さに影響していると考えられます。

地域別の特徴分析

首都圏の高い転入率

首都圏では、東京都(1位、2.89%)を中心に、神奈川県(2位、2.29%)、千葉県(3位、2.24%)、埼玉県(4位、2.19%)と、いずれも高い転入率を示しています。これらの地域は、東京都を中心とした経済圏を形成しており、多くの雇用機会や教育機関が集中していることから、地方からの若年層を中心に多くの転入者を集めています。

関西圏の状況

関西圏では、京都府(5位、2.04%)が最も高い転入率を示しており、大阪府と滋賀県(8位タイ、1.82%)がそれに続いています。京都府は古都としての魅力に加え、多くの大学が集中していることから、若年層の転入が多いと考えられます。一方、兵庫県(22位タイ、1.54%)は中位、和歌山県(40位タイ、1.21%)は下位に位置しており、関西圏内でも格差が見られます。

地方中枢都市を持つ県の状況

福岡県(6位、1.91%)や宮城県(7位、1.90%)など、地方の中枢都市を持つ県も比較的高い転入率を示しています。これらの地域は、地方における経済・行政・教育の中心地としての役割を担っており、周辺地域からの転入者を多く集めています。

九州・沖縄地方の比較的高い転入率

九州・沖縄地方では、福岡県(6位、1.91%)を筆頭に、佐賀県(8位タイ、1.82%)、沖縄県(11位、1.80%)、長崎県・鹿児島県(17位タイ、1.58%)など、比較的高い転入率を示しています。九州地方は全体的に転入率が高く、温暖な気候や地域の魅力、福岡県を中心とした経済圏の形成などが要因と考えられます。

東北・北陸地方の低い転入率

東北地方では、宮城県(7位、1.90%)を除いて、秋田県(44位タイ、1.09%)、山形県(43位、1.11%)、福島県(39位、1.22%)、岩手県(35位、1.28%)、青森県(34位、1.29%)と、いずれも低い転入率を示しています。北陸地方も、石川県(25位、1.45%)を除いて、富山県(42位、1.15%)、福井県(44位タイ、1.09%)、新潟県(46位、0.94%)と低い転入率となっています。これらの地域は、冬季の厳しい気候条件や雇用機会の少なさなどが転入の障壁となっている可能性があります。

中部地方の状況

中部地方では、山梨県(14位、1.63%)が比較的高い転入率を示している一方、愛知県(29位、1.40%)は中位に位置しています。愛知県は製造業を中心とした産業が盛んですが、転入率では首都圏や関西圏、福岡県などの都市部に及ばない状況です。長野県(33位、1.34%)、静岡県(32位、1.36%)、岐阜県(36位、1.27%)、三重県(30位、1.38%)も中位から下位に位置しています。

転入率の格差がもたらす影響と課題

人口構造への影響

転入率の高い地域では、若年層を中心に人口が流入することで、人口構造が若返り、生産年齢人口の割合が高まる傾向があります。一方、転入率の低い地域では、若年層の流出と高齢者の残留により、人口の高齢化が加速する傾向があります。この人口構造の変化は、地域の経済力や社会保障制度の持続可能性に大きな影響を与えます。

地域経済への影響

転入率の高い地域では、人口増加に伴う消費拡大や労働力の確保により、地域経済が活性化する傾向があります。一方、転入率の低い地域では、人口減少に伴う消費縮小や労働力不足により、地域経済が停滞する傾向があります。この経済格差は、さらなる人口移動を促進し、地域間格差を拡大させる可能性があります。

住宅・不動産市場への影響

転入率の高い地域では、住宅需要の増加により、不動産価格や家賃が上昇する傾向があります。特に東京都や大阪府などの大都市圏では、住宅の高騰が若年層の居住環境に影響を与えています。一方、転入率の低い地域では、空き家の増加や不動産価値の下落が問題となっています。

地方創生と人口分散の必要性

転入率の地域間格差は、東京一極集中の問題と密接に関連しています。地方創生や働き方改革、テレワークの推進などを通じて、人口や経済活動の分散を図ることが、持続可能な国土形成のために重要な課題となっています。特にコロナ禍以降、地方移住への関心が高まっており、この流れを促進する政策が求められています。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2023年度の都道府県別転入率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:

  1. 平均値と中央値の比較:平均値は約1.54%、中央値は約1.48%とほぼ同じ値を示していますが、東京都(2.89%)や神奈川県(2.29%)という極端に高い値があるため、平均値がやや高くなっています。

  2. 分布の歪み:データは全体としては対称的ですが、東京都(2.89%)という極端に高い値があるため、わずかに正の歪み(右に裾を引いた形状)を示しています。

  3. 外れ値の特定:東京都(2.89%)は明らかな上側の外れ値と考えられます。2位の神奈川県(2.29%)との差が大きく、統計的に見ても特異な値を示しています。また、北海道(0.93%)や新潟県(0.94%)も下側の外れ値と考えられます。

  4. 四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約1.24%、第3四分位数(Q3)は約1.82%で、四分位範囲(IQR)は約0.58%ポイントです。これは、中央の50%の都道府県の転入率が1.24%から1.82%の間に収まっていることを示しています。

  5. 標準偏差によるばらつき:標準偏差は約0.41%ポイントで、多くの都道府県が平均値から±0.41%ポイントの範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約26.6%となり、相対的なばらつきは中程度と言えます。最高値と最低値の差は1.96%ポイント(2.89%−0.93%)に達し、東京都と北海道の間には大きな格差があることを示しています。

まとめ

2023年度の都道府県別転入率ランキングでは、東京都が2.89%で1位、北海道が0.93%で47位となりました。上位には首都圏の都県や地方の中枢都市を持つ県が多く、下位には東北地方や日本海側の県が多く見られました。

転入率の地域差は、雇用機会や生活環境、交通の利便性などの地域特性を反映しており、この差は人口構造、地域経済、住宅市場など多方面に影響を与えています。

統計分析からは、東京都が突出して高い転入率を示す一方、多くの都道府県は1.2%から1.8%の範囲に集中していることがわかります。この地域差は、日本の都市構造や産業構造の特徴を示すとともに、地方創生や人口分散の必要性を物語っています。

持続可能な国土形成のためには、テレワークの推進や地方拠点の強化など、人口や経済活動の分散を図る取り組みが重要です。また、転入率の低い地域では、地域の特性を活かした産業振興や生活環境の整備が、転入率の高い地域では、住宅の確保や生活コストの適正化が求められています。

出典