大分県が8,505万円(偏差値79.4)で全国1位、沖縄県が2,047万円(偏差値34.0)で最下位となり、約4.2倍の大きな格差が発生しています。上位は製造業集積地で、山口県(7,787万円)、千葉県(7,625万円)、愛媛県(6,640万円)、岡山県(6,465万円)が続きます。製造品出荷額等(従業者1人当たり)は、地域の製造業の労働生産性を示す重要指標です。
概要
製造品出荷額等(従業者1人当たり)は、各都道府県の製造業における労働生産性を示す重要な経済指標です。この統計は、製造業事業所における製造品出荷額、加工賃収入額、修理料収入額、製造工事収入額及びその他の収入額の合計を従業者数で除して算出されます。
製造業集積地では石油化学工業や鉄鋼業などの大規模装置産業が発達し、高い資本集約度により労働生産性を向上させています。一方、観光業やサービス業、第一次産業が中心の地域では製造業の集積が限られ、労働生産性が低くなる傾向があります。
全国平均は約4,500万円で、都市部と地方部で大きな格差が存在しています。特に大分県の突出した数値により、地域間の労働生産性格差が明確に現れています。
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上位5県の詳細分析
大分県(1位)
大分県が8,505万円(偏差値79.4)で圧倒的な1位を獲得しています。大分県の高い数値は、大分コンビナートを中心とした石油化学工業の集積によるものです。新日鉄住金大分製鉄所や昭和電工などの大規模装置産業が立地し、高付加価値製品の生産により従業者1人当たりの出荷額を押し上げています。また、自動車関連産業の誘致も成功しており、ダイハツ九州の本格稼働などが寄与しています。
山口県(2位)
山口県が7,787万円(偏差値74.3)で2位にランクインしています。周南コンビナートを中心とした化学工業と、宇部・小野田地区のセメント工業などの素材産業が主力となっています。特に、旭化成、東ソー、宇部興産などの大手化学メーカーの主力工場が集積し、高度な技術を要する化学製品の製造により高い労働生産性を実現しています。
千葉県(3位)
千葉県が7,625万円(偏差値73.2)で3位を確保しています。京葉工業地域における石油精製・石油化学工業の集積が主な要因です。JFEスチール東日本製鉄所や出光興産千葉製油所、住友化学千葉工場などの大規模プラントが立地し、装置産業における高い資本集約度が従業者1人当たりの出荷額を押し上げています。また、東京湾岸の立地優位性により物流コストの削減も寄与しています。
愛媛県(4位)
愛媛県が6,640万円(偏差値66.3)で4位に位置しています。新居浜・西条地区の化学工業と今治地区の造船業、製紙業が中心となっています。住友系企業の発祥地として住友化学、住友金属鉱山などの主力工場が集積し、非鉄金属や化学製品の高付加価値生産が特徴です。また、今治造船をはじめとする造船業も大型船舶の建造により高い付加価値を生み出しています。
岡山県(5位)
岡山県が6,465万円(偏差値65.0)で5位に入っています。水島コンビナートを中心とした重化学工業の集積が主な要因です。JFEスチール西日本製鉄所、三菱ケミカル、旭化成などの大規模工場が立地し、鉄鋼業と石油化学工業の連携による高い生産効率を実現しています。瀬戸内海の良港を活用した原料調達と製品出荷の効率性も競争力の源泉となっています。
下位5県の詳細分析
沖縄県(47位)
沖縄県が2,047万円(偏差値34.0)で最下位となっています。製造業の集積が限定的で、食品加工業や伝統工芸品製造が中心となっており、大規模装置産業の立地が少ないことが主な要因です。地理的制約により原材料の調達コストが高く、本土市場への輸送費も負担となっています。観光業やサービス業が主力産業であり、製造業の従業者数自体も少ない状況です。
秋田県(46位)
秋田県が2,599万円(偏差値37.9)で46位となっています。人口減少と高齢化の進行により製造業の規模が縮小傾向にあります。伝統的な鉱業の衰退後、電子部品製造業や自動車部品製造業の誘致を進めていますが、まだ大規模な集積には至っていません。TDKをはじめとする電子部品メーカーの工場はあるものの、全体的な労働生産性の向上には課題が残っています。
高知県(45位)
高知県が2,703万円(偏差値38.6)で45位に位置しています。製紙業や食品加工業が主力ですが、大規模な装置産業の立地は限定的です。地理的に四国の太平洋側に位置し、本州の大消費地や工業地帯からの距離が製造業発展の制約となっています。農林水産物の加工業が中心で、高付加価値製品の製造に向けた産業構造の転換が課題となっています。
鳥取県(44位)
鳥取県が2,859万円(偏差値39.7)で44位となっています。人口規模が小さく、製造業の集積も限定的です。電子部品・デバイス製造業や輸送用機械器具製造業の企業誘致を進めていますが、大規模な産業クラスターの形成には至っていません。三洋電機(現パナソニック)関連の電子部品工場などがありますが、全体的な規模は小さい状況です。
長崎県(43位)
長崎県が2,911万円(偏差値40.0)で43位に位置しています。造船業の長い歴史がありますが、韓国や中国との競争激化により三菱重工長崎造船所の規模縮小が影響しています。離島が多い地理的特性により製造業の立地に制約があり、輸送コストの負担も大きくなっています。新たな産業の誘致と既存産業の高付加価値化が課題となっています。
地域別の特徴分析
関東地方
千葉県(3位)が京葉工業地域の集積により上位に位置していますが、他の関東各県は中位から上位中程度に分布しています。首都圏でありながら千葉県以外は装置産業の集積が限定的で、多様な製造業が展開している特徴があります。
近畿地方
大阪府(18位)、兵庫県(11位)などが中位に位置しており、多様な製造業の集積はあるものの、装置産業の集中度は瀬戸内海沿岸部ほど高くありません。加工組立型産業が中心で、労働集約的な側面も残しています。
中部地方
自動車産業の集積地である愛知県(6位)や、精密機械産業の長野県(30位)などが中位から上位に位置していますが、トップ5には入っていません。多品種少量生産型の製造業が多く、装置産業型の高い労働生産性とは異なる産業構造を示しています。
中国・四国地方
山口県(2位)、愛媛県(4位)、岡山県(5位)が上位に位置し、瀬戸内海沿岸の重化学工業地帯の優位性が際立っています。一方で高知県(45位)、鳥取県(44位)など太平洋側や日本海側の県は下位に位置し、瀬戸内海工業地域との格差が鮮明です。
九州・沖縄地方
九州地方は大分県(1位)を筆頭に、コンビナート立地県が上位にランクインしています。一方で沖縄県(47位)、長崎県(43位)など下位県も存在し、地域内格差が顕著です。大分県や山口県(中国地方だが九州に隣接)の石油化学工業の集積と、島嶼部や造船業縮小地域との格差が明確に現れています。
北海道・東北地方
秋田県(46位)をはじめ、多くの県が下位に位置しています。人口減少と産業空洞化の影響により、製造業の集積と高付加価値化が課題となっています。一部で電子部品産業の誘致は進んでいますが、大規模な産業集積には至っていません。
社会的・経済的影響
地域格差の深刻さ
最上位の大分県(8,505万円)と最下位の沖縄県(2,047万円)の間には約4.2倍の格差が存在しています。この差は、地域の経済活動や雇用機会に大きな影響を与えています。労働生産性の低い地域では、雇用機会の制約により若年層の流出が加速し、地域経済の衰退が懸念されています。税収の減少により地域の財政基盤が弱体化し、公共サービスの質の低下が発生しています。産業基盤の脆弱性により地域経済の持続可能性が脅かされ、地域間格差の拡大が深刻な社会問題となっています。
産業構造による違い
製造品出荷額等(従業者1人当たり)が高い地域は、石油化学・鉄鋼業などの装置産業が集積している傾向があります。特に大分県は大分コンビナートを中心とした石油化学工業の集積により、高い労働生産性を実現しています。一方で、観光業やサービス業、第一次産業が中心の地域は製造品出荷額等(従業者1人当たり)が低くなる傾向にあります。
改善効果の期待
労働生産性の向上により期待される効果として、雇用機会の創出による地域経済の活性化があります。税収増加による地域財政の健全化が実現し、産業基盤の強化による地域の持続可能性向上が期待されています。これらの効果により、地域間格差の縮小と持続可能な地域発展が期待されています。
対策と今後の展望
効率的な産業振興戦略
地域の特性を活かした製造業の振興策を推進し、既存産業との連携強化による相乗効果の創出が重要です。技術革新による生産性向上で競争力強化を実現し、地域特性に応じた段階的な産業振興計画が必要です。
地域特性に応じた対策
製造業集積が少ない地域では、地域の特性を活かした製造業の振興策が求められています。観光業との連携による製造業の振興や、第一次産業との連携による付加価値向上が重要です。各地域の地理的条件や産業構造を考慮した、持続可能な産業振興戦略が求められています。
成功事例の活用
大分県の取り組みとして、大分コンビナートの形成による石油化学工業の集積が参考になります。山口県の戦略として、周南コンビナートによる化学工業の集積が成功事例として挙げられます。これらの事例を他地域に応用し、地域特性を活かした製造業振興を推進することが重要です。
今後の課題
グローバル競争の激化に対応した製造業の高付加価値化が求められ、技術革新による生産性向上が不可欠です。地域間格差の縮小に向けた包括的な取り組みが求められ、持続可能な地域経済の発展が重要な課題となっています。
指標 | 値万円 |
---|---|
平均値 | 4,326.6 |
中央値 | 3,933.1 |
最大値 | 8,505(大分県) |
最小値 | 2,047.4(沖縄県) |
標準偏差 | 1,422.3 |
データ数 | 47件 |
統計データの特徴分析
全国平均約4,500万円に対し、中央値は約4,200万円とやや低く、上位県による押し上げ効果が確認されます。標準偏差の大きな値は、都道府県間のばらつきが極めて大きいことを示しています。第1四分位から第3四分位の範囲に約半数が集中し、この範囲外の都道府県は特に高い値(装置産業集積地)または特に低い値(観光・サービス業中心地)を示す特徴があります。
偏差値の分布では、大分県(79.4)が突出しており、2位の山口県(74.3)との間に大きな格差があります。一方、沖縄県(34.0)など下位県との格差も顕著で、産業構造の違いが数値に明確に反映されています。データのばらつきは、各都道府県の産業構造、地理的条件、人口規模の違いを反映しており、特に装置産業集積地と観光・サービス業中心地の格差が統計的にも明確に現れています。
まとめ
製造品出荷額等(従業者1人当たり)の分析により、装置産業集積地の圧倒的優位と観光・サービス業中心地の課題が明確に現れています。地域間格差の縮小に向けて、効率的な産業振興戦略と地域特性を考慮した対策が求められています。持続可能な製造業の構築により、地域経済の活性化と雇用機会の創出が期待されています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (万円) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 大分県 | 8,505.0 | 79.4 | +16.4% |
2 | 山口県 | 7,787.2 | 74.3 | +11.6% |
3 | 千葉県 | 7,625.1 | 73.2 | +19.9% |
4 | 愛媛県 | 6,639.8 | 66.3 | +7.5% |
5 | 岡山県 | 6,464.6 | 65.0 | +14.1% |
6 | 愛知県 | 6,187.1 | 63.1 | +4.3% |
7 | 和歌山県 | 5,867.6 | 60.8 | +24.4% |
8 | 三重県 | 5,800.0 | 60.4 | +6.0% |
9 | 茨城県 | 5,394.2 | 57.5 | +4.2% |
10 | 滋賀県 | 5,325.2 | 57.0 | +7.5% |
11 | 兵庫県 | 5,115.6 | 55.5 | +7.8% |
12 | 神奈川県 | 5,083.8 | 55.3 | +1.9% |
13 | 広島県 | 5,020.9 | 54.9 | +4.9% |
14 | 栃木県 | 4,735.0 | 52.9 | +7.7% |
15 | 宮城県 | 4,717.6 | 52.7 | +5.4% |
16 | 静岡県 | 4,707.4 | 52.7 | +9.4% |
17 | 徳島県 | 4,601.8 | 51.9 | -0.5% |
18 | 大阪府 | 4,529.7 | 51.4 | +1.7% |
19 | 福岡県 | 4,511.1 | 51.3 | +5.3% |
20 | 群馬県 | 4,374.0 | 50.3 | +10.8% |
21 | 京都府 | 4,272.4 | 49.6 | +1.0% |
22 | 香川県 | 4,255.5 | 49.5 | +4.5% |
23 | 北海道 | 4,024.9 | 47.9 | +7.3% |
24 | 山梨県 | 3,933.1 | 47.2 | +4.6% |
25 | 埼玉県 | 3,798.8 | 46.3 | +1.1% |
26 | 熊本県 | 3,725.7 | 45.8 | +3.4% |
27 | 佐賀県 | 3,671.4 | 45.4 | +8.1% |
28 | 岩手県 | 3,630.9 | 45.1 | +12.9% |
29 | 福島県 | 3,546.6 | 44.5 | +6.0% |
30 | 長野県 | 3,502.7 | 44.2 | +4.4% |
31 | 福井県 | 3,432.7 | 43.7 | +2.3% |
32 | 宮崎県 | 3,351.3 | 43.1 | +4.2% |
33 | 鹿児島県 | 3,327.3 | 43.0 | +4.7% |
34 | 富山県 | 3,320.2 | 42.9 | +3.9% |
35 | 奈良県 | 3,290.6 | 42.7 | +0.6% |
36 | 島根県 | 3,287.0 | 42.7 | +4.3% |
37 | 青森県 | 3,226.2 | 42.3 | +6.2% |
38 | 岐阜県 | 3,210.5 | 42.2 | +4.5% |
39 | 山形県 | 3,201.0 | 42.1 | +3.1% |
40 | 石川県 | 3,137.4 | 41.6 | +5.8% |
41 | 東京都 | 3,086.3 | 41.3 | -3.3% |
42 | 新潟県 | 3,007.4 | 40.7 | +4.5% |
43 | 長崎県 | 2,911.3 | 40.0 | +1.4% |
44 | 鳥取県 | 2,859.3 | 39.7 | +2.9% |
45 | 高知県 | 2,702.9 | 38.6 | +3.9% |
46 | 秋田県 | 2,598.8 | 37.9 | +8.1% |
47 | 沖縄県 | 2,047.4 | 34.0 | +2.3% |