都道府県別製造業付加価値額ランキング(2022年度)

概要

製造業付加価値額とは、製造業の生産活動によって新たに生み出された価値のことで、企業の売上高から原材料費などの中間投入を差し引いた金額を指します。この指標は地域の製造業の経済規模や生産性を示す重要な指標です。本記事では、2022年度の都道府県別製造業付加価値額のランキングデータを分析し、地域間の特徴や格差について解説します。

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上位県と下位県の比較

上位5県の詳細

  1. 愛知県142,521億円(偏差値99.9)で全国1位となっています。トヨタ自動車をはじめとする自動車産業の集積地であり、製造業の中心地として圧倒的な付加価値額を生み出しています。

  2. 静岡県61,879億円(偏差値66.2)で全国2位です。自動車・オートバイ産業や電機産業など多様な製造業が集積しており、高い付加価値を創出しています。

  3. 大阪府61,793億円(偏差値66.1)で全国3位です。多様な中小企業が集積する製造業の拠点として、幅広い分野で付加価値を生み出しています。

  4. 兵庫県57,918億円(偏差値64.5)で全国4位です。鉄鋼業や造船業などの重工業から精密機械まで幅広い製造業が発達しています。

  5. 埼玉県51,863億円(偏差値62.0)で全国5位です。首都圏の製造業拠点として、自動車部品や電機、食品など多様な製造業が集積しています。

下位5県の詳細

  1. 沖縄県1,550億円(偏差値40.9)で全国最下位です。観光業やサービス業が主要産業であり、製造業の規模は全国で最も小さくなっています。

  2. 高知県2,150億円(偏差値41.2)で全国46位です。第一次産業や観光業が中心で、製造業の集積が少ないことが付加価値額の低さにつながっています。

  3. 鳥取県2,456億円(偏差値41.3)で全国45位です。人口規模が小さく、製造業の事業所数も限られているため、付加価値額も低くなっています。

  4. 島根県4,635億円(偏差値42.2)で全国44位です。製造業の集積が少なく、付加価値額も限られています。

  5. 青森県5,363億円(偏差値42.5)で全国43位です。第一次産業が中心の産業構造であり、製造業の規模は比較的小さくなっています。

地域別の特徴分析

東海地方

東海地方は製造業付加価値額が特に高く、愛知県(1位)、静岡県(2位)、三重県(9位)、岐阜県(19位)がいずれも上位から中位にランクインしています。自動車産業を中心とした製造業の集積地であり、日本の製造業の中心地域となっています。

関東地方

関東地方も製造業が盛んで、埼玉県(5位)、茨城県(6位)、神奈川県(7位)、群馬県(10位)、東京都(11位)、千葉県(12位)、栃木県(14位)と多くの県が上位に位置しています。首都圏を中心に多様な製造業が発達しています。

近畿地方

近畿地方では大阪府(3位)、兵庫県(4位)が上位に入り、滋賀県(13位)、京都府(16位)も比較的高い順位です。伝統的な製造業から先端技術産業まで幅広い分野で発展しています。

中国・四国地方

中国地方では広島県(8位)が上位に入っていますが、その他の県は中位から下位に分布しています。山口県(18位)、岡山県(23位)が続き、特に鳥取県(45位)、島根県(44位)、高知県(46位)は下位に位置しており、地域内での格差が見られます。

九州・沖縄地方

九州地方は全体的に中位から下位に分布しており、福岡県(15位)が最も高い順位です。熊本県(25位)、大分県(28位)が続き、沖縄県(47位)は全国最下位となっており、製造業の集積が少ない状況です。

北海道・東北地方

北海道・東北地方も全体的に中位から下位に分布しており、福島県(21位)、北海道(22位)が比較的高い順位です。宮城県(26位)、山形県(29位)と続き、第一次産業が中心の地域が多く、製造業の集積は限られています。

格差や課題の考察

地域間格差の実態

愛知県(1位:142,521億円)と沖縄県(47位:1,550億円)の間には約92倍もの格差があります。この格差は産業構造の違いや歴史的な製造業の集積の差によるものですが、地域経済の発展に大きな影響を与えています。

産業構造による違い

製造業付加価値額が高い地域は、自動車産業や電機産業などの高付加価値製造業が集積している傾向があります。特に愛知県はトヨタ自動車を中心とした自動車産業クラスターが形成されており、関連企業も含めて高い付加価値を生み出しています。一方で、観光業やサービス業、第一次産業が中心の地域は製造業付加価値額が低くなる傾向にあります。

グローバル競争と地域産業

製造業は国際競争にさらされており、特に自動車産業や電機産業などは世界市場での競争力が求められます。地域の製造業が持続的に発展するためには、技術革新や生産性向上が不可欠です。また、グローバルサプライチェーンの中での位置づけも重要になっています。

地方創生と製造業

地方創生の観点からは、製造業の誘致や育成が地域経済の活性化に重要な役割を果たします。特に下位に位置する県では、地域の特性を活かした製造業の振興策が求められています。単なる工場誘致だけでなく、研究開発機能や本社機能の分散も地域経済の発展には重要です。

統計データの基本情報と分析

統計データの分析

平均値と中央値の比較

全国の製造業付加価値額の平均値は約24,246億円(JSONデータの平均値を計算)ですが、中央値は約12,901億円(宮城県の値)と平均値よりも大幅に低くなっています。これは、愛知県など一部の県の値が非常に高いため、平均値が引き上げられていることを示しています。

分布の歪みの有無

データの分布は強く右に歪んでおり(正の歪度)、多くの県が平均値よりも低い付加価値額を持つ一方で、一部の県が突出して高い値を示しています。特に愛知県の値は他県と比較して極めて高く、分布の歪みに大きく影響しています。

外れ値の特定と影響

愛知県(142,521億円)は最も顕著な外れ値であり、2位の静岡県(61,879億円)と比較しても2.3倍以上の差があります。この外れ値を除くと、より均一な分布となります。

四分位範囲による分布の特徴

偏差値のデータから、第1四分位数(約43.0)と第3四分位数(約55.0)の間に多くの県が分布しており、中央値(約45.0)を中心に比較的均等に分布しています。しかし、愛知県の偏差値(99.9)は突出して高く、特異な存在となっています。

標準偏差によるばらつきの程度

都道府県間の製造業付加価値額には極めて大きなばらつきがあることがデータから明らかです。これは産業構造や地域経済の規模の違い、特に自動車産業などの高付加価値産業の集積度合いによるものと考えられます。

まとめ

2022年度の都道府県別製造業付加価値額ランキングからは、愛知県を筆頭とする自動車産業集積地域や、大阪府・兵庫県などの伝統的な製造業地域が高い付加価値を生み出していることが明らかになりました。一方で、沖縄県や高知県など観光業やサービス業、第一次産業が中心の地域では製造業付加価値額が低く、地域間で大きな格差が存在しています。

この格差は単に製造業の規模の違いだけでなく、地域の産業構造や歴史的背景、地理的条件など多様な要因によるものです。今後の地域経済の発展のためには、各地域の特性を活かした産業政策が求められるとともに、製造業のデジタル化や高付加価値化を進めることが重要です。

出典