概要
製造業事業所数は、各都道府県に存在する製造業の事業所(工場や工場に準ずる施設)の数を示す指標です。地域の産業集積や経済活動の活発さを把握する上で重要なデータとなります。本記事では、2023年度の都道府県別製造業事業所数のランキングデータを分析し、地域間の特徴や格差について解説します。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細
- 大阪府が18,604事業所(偏差値82.2)で全国1位となっています。伝統的な工業地帯であり、多様な分野の製造業が発展しています。
- 愛知県は18,509事業所(偏差値82.0)で全国2位です。自動車産業を中心に多様な製造業が集積し、関連する中小企業も多く立地しています。
- 東京都は15,400事業所(偏差値74.8)で全国3位です。都市型の小規模事業所が多く、食品や印刷、機械など幅広い業種が存在します。
- 埼玉県は13,252事業所(偏差値69.8)で全国4位です。首都圏の工業集積地として、自動車部品や電機、食品など多様な業種が立地しています。
- 静岡県は10,586事業所(偏差値63.6)で全国5位です。自動車や電機、食品など多様な製造業が集積しています。
下位5県の詳細
- 鳥取県は856事業所(偏差値40.9)で全国最下位です。人口規模が小さく、製造業の事業所数が全国で最も少なくなっています。
- 沖縄県は983事業所(偏差値41.2)で全国46位です。観光業やサービス業が中心で、製造業の事業所数は少ない水準です。
- 高知県は1,101事業所(偏差値41.5)で全国45位です。人口規模や産業構造の影響で、製造業の事業所数が限られています。
- 島根県は1,216事業所(偏差値41.8)で全国44位です。人口減少や産業構造の変化により、事業所数が少なくなっています。
- 徳島県は1,300事業所(偏差値42.0)で全国43位です。地域経済の規模や産業構造から製造業の集積が限られています。
地域別の特徴分析
東海地方
愛知県(2位)、静岡県(5位)、岐阜県(8位)、三重県(21位)と上位にランクインしており、自動車や機械、食品など多様な製造業が集積しています。特に愛知県は大阪府に次ぐ事業所数を誇り、日本の製造業の中心地の一つです。
関東地方
東京都(3位)、埼玉県(4位)、神奈川県(6位)、茨城県(16位)、群馬県(15位)、千葉県(12位)、栃木県(18位)と多くの県が上位に位置し、首都圏の工業集積の強さがうかがえます。
近畿地方
大阪府(1位)、兵庫県(7位)、京都府(17位)、滋賀県(23位)、奈良県(35位)、和歌山県(37位)と、伝統的な工業地帯が多く存在します。特に大阪府は全国トップの事業所数を持ち、中小製造業が高密度に集積しています。
中国・四国地方
広島県(13位)、岡山県(19位)、山口県(34位)などが中位に位置していますが、鳥取県(47位)、島根県(44位)、高知県(45位)など下位の県も多く、地域内で格差が見られます。
九州・沖縄地方
福岡県(11位)は比較的事業所数が多いですが、熊本県(31位)、鹿児島県(29位)、佐賀県(42位)、長崎県(39位)、沖縄県(46位)など下位に位置する県が多く、地域間格差が顕著です。
北海道・東北地方
北海道(9位)は比較的事業所数が多いですが、青森県(41位)、秋田県(36位)、岩手県(32位)などは中位から下位に位置しています。福島県(20位)は東北地方では最も事業所数が多くなっています。
格差や課題の考察
地域間格差の実態
大阪府(1位:18,604事業所)と鳥取県(47位:856事業所)の間には約22倍もの格差があります。産業集積の有無や人口規模、地域経済の発展度合いが大きく影響しています。
産業構造による違い
上位県は自動車や機械、電機などの大規模製造業とそれを支える中小企業が集積している傾向があります。一方、下位県は観光業やサービス業、農林水産業が中心で、製造業の事業所数が少なくなっています。
中小企業の役割
製造業事業所の多くは中小企業であり、地域経済や雇用の基盤となっています。特に上位県では、大企業を中心とした関連する中小企業の集積が産業の厚みを生み出しています。
人口減少と事業所数
人口減少や高齢化が進む地方では、事業所数の減少が顕著です。今後は事業承継や新規創業の促進、地域特性を活かした産業育成が重要な課題となります。
統計データの基本情報と分析
統計データの分析
平均値と中央値の比較
全国の製造業事業所数の平均値は約4,733事業所(JSONデータの平均値を計算)ですが、中央値は約2,955事業所(富山県の値)と平均値よりも低くなっています。これは、大阪府や愛知県など一部の県の値が非常に高いため、平均値が引き上げられていることを示しています。
分布の歪みの有無
データの分布は右に歪んでおり(正の歪度)、多くの県が平均値よりも低い事業所数を持つ一方で、一部の県が突出して高い値を示しています。
外れ値の特定と影響
大阪府(18,604事業所)と愛知県(18,509事業所)は最も顕著な外れ値であり、3位の東京都(15,400事業所)とも大きな差があります。これらの外れ値を除くと、より均一な分布となります。
四分位範囲による分布の特徴
偏差値のデータから、第1四分位数(約43.0)と第3四分位数(約52.5)の間に多くの県が分布しており、中央の50%の県は比較的狭い範囲に集中しています。一方で、上位県は偏差値が突出して高くなっています。
標準偏差によるばらつきの程度
都道府県間の製造業事業所数にはかなりのばらつきがあることがデータから明らかです。これは産業集積や地域経済の規模の違いによるものと考えられます。
まとめ
2023年度の都道府県別製造業事業所数ランキングからは、大阪府や愛知県、東京都などの大都市圏や工業集積地で事業所数が多い一方、鳥取県や沖縄県、高知県などでは事業所数が少なく、地域間で大きな格差が存在していることが明らかになりました。
この格差は単に製造業の規模の違いだけでなく、地域の産業構造や人口動態、歴史的背景など多様な要因によるものです。今後の地域経済の発展のためには、各地域の特性を活かした産業政策や中小企業支援、事業承継対策が求められます。