2023年度の製造業従業者数は、愛知県が849,965人(偏差値96.4)で全国1位、沖縄県が23,384人(偏差値40.4)で最下位となりました。最も高い県と低い県では約36.4倍の格差があり、地域間の産業集積に大きな差が存在しています。製造業従業者数は各地域の産業構造や経済力を示す重要な指標で、地域経済の基盤を左右します。
概要
製造業従業者数は、各地域の産業構造や経済力を示す重要な指標です。日本の製造業は自動車、電子機器、機械、化学など多様な分野で国際競争力を持ち、地域経済と雇用を支える基幹産業となっています。しかし、製造業の集積は全国で均一ではなく、地域によって大きな格差が存在します。
都市部では人口密度の高さにより産業集積への投資効果が高く、経済活動の活発さが製造業の発展を促進し、交通インフラが整備されているため物流コストが相対的に低いという特徴があります。一方、地方部では広大な面積と人口密度の低さにより、製造業の集積が限られる傾向があります。
2023年度の全国製造業従業者数は約775万人で、その分布には顕著な地域的偏りが見られます。特に愛知県を中心とする中部地方と、大阪府・兵庫県を中心とする近畿地方、埼玉県・神奈川県を中心とする関東地方に製造業が集中しています。
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上位5県の詳細分析
愛知県(1位)
愛知県が849,965人(偏差値96.4)で圧倒的な1位を達成しています。日本の製造業の中心地として圧倒的な存在感を示しており、全国の製造業従業者の約11%がこの1県に集中しています。自動車産業(トヨタ自動車を中心とした大規模な産業集積)が主要産業であり、自動車の完成車メーカーだけでなく、部品メーカーや素材メーカーなど多層的なサプライチェーンが形成されています。製造業が県内総生産の約30%を占め、日本の製造業輸出の中心地となっています。
大阪府(2位)
大阪府が449,661人(偏差値69.3)で2位となっています。多様な中小企業の集積地として、幅広い分野で製造業の雇用を生み出しています。金属製品、電気機器、機械、プラスチック製品など多様な分野が主要産業であり、中小企業が多く特定の産業に偏らない多様性が強みです。伝統的な「町工場」から最先端技術を持つ企業まで幅広く存在し、商業の中心地でありながら製造業も強い「商工業都市」としての特徴を持っています。
静岡県(3位)
静岡県が409,607人(偏差値66.6)で3位となっています。自動車・二輪車産業を中心に、多様な製造業が発達しています。輸送機器(スズキ、ヤマハ発動機など)、電機、食品、製紙が主要産業であり、東西に長い県土に沿って複数の産業集積地が形成されています。中部地方と関東地方の中間に位置する地理的優位性と、豊富な工業用水や交通インフラが製造業の発展を支えています。
埼玉県(4位)
埼玉県が385,746人(偏差値65.0)で4位となっています。首都圏の製造業拠点として、東京都からの工場移転も受け入れながら発展してきました。輸送用機器部品、電子部品、機械、化学が主要産業であり、大手メーカーの工場と多数の中小企業が共存しています。東京に近接しながらも比較的地価が安く、広い工場用地が確保できる立地条件が製造業の集積を促進しています。
兵庫県(5位)
兵庫県が362,845人(偏差値63.4)で5位となっています。重工業から先端産業まで幅広い製造業が発達しています。鉄鋼(神戸製鋼所など)、造船、機械、電子機器、食品が主要産業であり、阪神工業地帯の西部を形成しています。大企業と中小企業がバランス良く共存し、神戸・阪神地域から播磨地域まで、県内の広範囲に製造業が分布しています。
下位5県の詳細分析
徳島県(43位)
徳島県が47,886人(偏差値42.1)で43位となっています。製造業の規模が比較的小さく、特定分野に集中しています。食品加工、製紙、電子部品が主要産業であり、大規模な産業集積が形成されておらず、企業数・従業者数ともに限られています。LED関連産業など、特定の分野では高い技術力と集積を持っています。
島根県(44位)
島根県が42,194人(偏差値41.7)で44位となっています。製造業の集積が限られていますが、特定分野での特色ある産業が発展しています。鉄鋼(特殊鋼)、電子部品、機械が主要産業であり、交通アクセスの制約や人口減少が製造業の発展に影響しています。出雲地域を中心に特殊鋼などの特定分野で高い技術力を持つ企業が立地しています。
鳥取県(45位)
鳥取県が31,770人(偏差値41.0)で45位となっています。人口規模が小さく、製造業の集積も限られていますが、電子部品などの分野で特色ある産業が発展しています。電子部品・デバイス、食品加工が主要産業であり、人口当たりの製造業従業者数は全国平均に近く、規模は小さいながらも一定の産業基盤があります。電子部品などの分野で大手企業の進出もあり、特定分野での発展が見られます。
高知県(46位)
高知県が24,068人(偏差値40.5)で46位となっています。第一次産業と観光業が中心で、製造業の規模は小さくなっています。食品加工、紙・パルプ、機械が主要産業であり、地理的な隔絶性や交通インフラの制約が製造業の発展を制限しています。第一次産業と連携した食品加工業や、地域資源を活用した特色ある製造業が発展しています。
沖縄県(47位)
沖縄県が23,384人(偏差値40.4)で最下位となっています。観光業とサービス業が主要産業であり、製造業の規模は全国で最も小さくなっています。食品加工(泡盛など)、窯業・土石製品(シーサーなど)が主要産業であり、戦後の米国統治や地理的条件から製造業よりもサービス業中心の産業構造が形成されました。地理的に東アジアの中心に位置する利点を活かした製造業の展開が模索されています。
地域別の特徴分析
中部地方
中部地方は全国でも最高水準の地域です。愛知県849,965人が圧倒的な1位で、静岡県409,607人が3位、岐阜県207,658人が13位となっています。自動車産業を中心とした産業集積が特徴的で、群馬県221,123人、三重県204,728人も高水準を維持しています。中部地方全体で製造業の集積が進んでおり、日本の製造業の中心地としての地位を確立しています。
関東地方
関東地方は比較的高い水準を維持しています。埼玉県385,746人が4位、神奈川県357,750人が6位、茨城県277,608人が7位、東京都264,693人が8位となっています。首都圏の製造業拠点として、多様な産業が集積しており、千葉県210,821人、栃木県201,306人も高水準を維持しています。人口密度が高く投資効率が良いことが背景にあります。
近畿地方
近畿地方は概ね良好な水準を保っています。大阪府449,661人が2位、兵庫県362,845人が5位となっており、都市部を中心とした効率的な製造業整備により、全体的に高い水準を達成しています。京都府147,970人、滋賀県170,383人も一定の水準を維持しており、都市機能を支える製造業インフラが充実しています。
九州・沖縄地方
九州地方では地域格差が顕著です。熊本県94,371人が28位、鹿児島県73,614人が33位となっていますが、宮崎県55,038人、長崎県54,106人、大分県66,498人、佐賀県63,960人は比較的低水準です。沖縄県23,384人は最下位となっており、観光業中心の産業構造が影響しています。
東北地方
東北地方は全般的に中位の水準です。福島県154,852人が20位、宮城県116,346人が24位、山形県97,965人が27位となっています。岩手県86,593人、秋田県61,155人、青森県55,466人は比較的低水準で、地域内での格差が顕著です。東北地方全体では製造業の集積が限定的で、地理的条件と人口減少が影響しています。
中国・四国地方
中国地方では岡山県149,824人が21位、広島県214,241人が11位となっており、一定の水準を維持しています。四国地方では愛媛県が比較的高水準ですが、徳島県47,886人、高知県24,068人は低水準となっています。四国内での格差が大きく、地域特性に応じた産業発展が課題となっています。
社会的・経済的影響
最上位の愛知県849,965人と最下位の沖縄県23,384人では約36.4倍の格差があります。この格差は地域住民の生活に大きな影響を与えています。製造業従業者数の少ない地域では、安定した雇用機会の不足により若年層の流出が発生しています。地域経済の基盤が脆弱になり、税収の減少により公共サービスの質低下が懸念されています。産業集積の不足により、技術革新やイノベーションの機会が限られています。
逆に製造業従業者数の多い地域では、安定した雇用と比較的高い賃金水準により地域経済の活性化が実現しています。技術革新の促進により産業競争力の向上が達成され、地域の経済基盤として重要な役割を果たしています。製造業の集積により関連産業の発展も促進され、地域全体の経済発展に貢献しています。
対策と今後の展望
下位県では地域特性に応じた製造業振興策の導入が進んでいます。地域資源を活用した特色ある製造業の育成により改善が期待されます。成功事例として愛知県の取り組みが注目されています。自動車産業を中心とした産業集積により、多層的なサプライチェーンの形成を実現しました。この手法は他県でも参考にされています。
今後の課題は人材確保と技術革新への対応です。人口減少社会における製造業の人材確保が重要になり、デジタル化・自動化への対応力も地域間の競争力を左右する要因となります。地域間格差の是正に向けて、各地域の特性を活かした製造業振興策の開発と導入が求められています。
指標 | 値人 |
---|---|
平均値 | 164,934.8 |
中央値 | 116,346 |
最大値 | 849,965(愛知県) |
最小値 | 23,384(沖縄県) |
標準偏差 | 147,517.9 |
データ数 | 47件 |
統計データの特徴分析
全国平均約16.5万人と中央値の比較から、全体的に右に歪んだ分布をしていることがわかります。しかし標準偏差から、地域間でのばらつきが存在することも明らかです。分布の特徴として、愛知県が統計的に明確な外れ値であり、日本の製造業における特異な位置づけを示しています。
偏差値の分布では、愛知県(96.4)が突出している一方、沖縄県(40.4)など下位県との格差が顕著で、地理的・社会的要因の影響が数値に明確に反映されています。データの階層構造として、最上位層(愛知県のみ)、上位層(大阪府、静岡県、埼玉県、兵庫県、神奈川県)、中位層、下位層に大きく分けられ、地域間の産業集積格差が明確に現れています。
まとめ
2023年度の製造業従業者数分析から、愛知県を頂点とする自動車産業集積地域、大阪府・兵庫県などの多様な製造業が集積する地域、そして製造業の集積が限られる地域との間には大きな格差が存在していることが明らかになりました。この格差は単に数字上の問題だけでなく、地域経済の安定性、技術革新の可能性、若年層の雇用機会、さらには地域のアイデンティティにまで影響を与えています。
一方で、製造業の単純な量的拡大だけが地域発展の唯一の道ではないことも認識すべきです。各地域が持つ固有の強みや資源を活かした特色ある産業発展の道筋も存在します。例えば、高知県や沖縄県のように第一次産業や観光業と連携した高付加価値な食品加工業の発展や、地域資源を活用した特色ある製品開発など、製造業の「質」を重視した発展モデルも考えられます。
今後の日本の製造業が持続的に発展していくためには、単純な地域間競争ではなく、各地域の特性を活かした相互補完的な産業生態系の構築が重要になるでしょう。また、人口減少や国際競争の激化といった課題に対応するためには、生産性向上、人材育成、イノベーション創出など質的な発展への転換も不可欠です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (人) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 愛知県 | 849,965 | 96.4 | +0.3% |
2 | 大阪府 | 449,661 | 69.3 | +0.6% |
3 | 静岡県 | 409,607 | 66.6 | +1.3% |
4 | 埼玉県 | 385,746 | 65.0 | -1.0% |
5 | 兵庫県 | 362,845 | 63.4 | +1.2% |
6 | 神奈川県 | 357,750 | 63.1 | -0.2% |
7 | 茨城県 | 277,608 | 57.6 | +0.8% |
8 | 東京都 | 264,693 | 56.8 | -1.4% |
9 | 福岡県 | 228,871 | 54.3 | -0.1% |
10 | 群馬県 | 221,123 | 53.8 | +1.1% |
11 | 広島県 | 214,241 | 53.3 | +0.6% |
12 | 千葉県 | 210,821 | 53.1 | +1.1% |
13 | 岐阜県 | 207,658 | 52.9 | +1.9% |
14 | 長野県 | 206,238 | 52.8 | +1.2% |
15 | 三重県 | 204,728 | 52.7 | +0.1% |
16 | 栃木県 | 201,306 | 52.5 | +0.6% |
17 | 新潟県 | 180,493 | 51.1 | +0.6% |
18 | 滋賀県 | 170,383 | 50.4 | +1.5% |
19 | 北海道 | 164,811 | 50.0 | -0.1% |
20 | 福島県 | 154,852 | 49.3 | -0.1% |
21 | 岡山県 | 149,824 | 49.0 | -0.1% |
22 | 京都府 | 147,970 | 48.8 | +1.0% |
23 | 富山県 | 124,001 | 47.2 | -0.2% |
24 | 宮城県 | 116,346 | 46.7 | +0.1% |
25 | 石川県 | 98,394 | 45.5 | +0.6% |
26 | 山口県 | 98,295 | 45.5 | +0.5% |
27 | 山形県 | 97,965 | 45.5 | -0.3% |
28 | 熊本県 | 94,371 | 45.2 | +1.1% |
29 | 岩手県 | 86,593 | 44.7 | +1.0% |
30 | 愛媛県 | 82,469 | 44.4 | +1.3% |
31 | 福井県 | 74,952 | 43.9 | +0.4% |
32 | 山梨県 | 74,139 | 43.8 | +0.4% |
33 | 鹿児島県 | 73,614 | 43.8 | +1.4% |
34 | 香川県 | 71,636 | 43.7 | -0.8% |
35 | 大分県 | 66,498 | 43.3 | +0.9% |
36 | 佐賀県 | 63,960 | 43.2 | +2.3% |
37 | 秋田県 | 61,155 | 43.0 | +0.8% |
38 | 奈良県 | 59,708 | 42.9 | +0.1% |
39 | 青森県 | 55,466 | 42.6 | +0.6% |
40 | 宮崎県 | 55,038 | 42.6 | +0.7% |
41 | 長崎県 | 54,106 | 42.5 | +0.2% |
42 | 和歌山県 | 52,733 | 42.4 | +1.9% |
43 | 徳島県 | 47,886 | 42.1 | +0.5% |
44 | 島根県 | 42,194 | 41.7 | +0.4% |
45 | 鳥取県 | 31,770 | 41.0 | +2.6% |
46 | 高知県 | 24,068 | 40.5 | +0.5% |
47 | 沖縄県 | 23,384 | 40.4 | +0.9% |