2021年度の都道府県別地方債現在高の割合において、静岡県が204.5%(偏差値67.4)で全国1位を獲得し、東京都が40.9%(偏差値15.3)で47位となりました。上位県と下位県の間には約5倍の格差が存在し、地方財政の健全性に大きな違いが生じています。地方債現在高の割合は都道府県の標準財政規模に対する地方債残高の比率を示す指標で、地方財政の健全性を測る重要な指標として、この比率が高いほど将来の財政負担が重く、財政運営の自由度が低いことを意味しています。
概要
地方債現在高の割合は、都道府県の標準財政規模に対する地方債残高の比率を示す指標で、地方財政の健全性を測る重要な指標の一つです。この比率が高いほど、将来の財政負担が重く、財政運営の自由度が低いことを意味します。
この指標が重要である理由として、地方財政の健全性を客観的に評価する基準として機能する点があります。また、将来世代への負担転嫁の程度を測定する指標として、財政運営の持続可能性を判断する材料となっています。さらに、地方自治体の財政運営の自由度を評価する基準として、政策立案能力の制約要因を把握する重要なデータとなっています。
全国平均は約150%となっており、最上位の静岡県と最下位の東京都では約5倍の格差が生じています。特に地方部や人口減少県で高い傾向が見られる一方、首都圏や関西圏の一部では比較的低い水準を維持しており、地方財政の構造的な課題を浮き彫りにしています。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
静岡県(1位)
静岡県は204.5%(偏差値67.4)で1位となっています。東海地震対策や富士山噴火対策などの防災インフラ整備、東名・新東名高速道路関連の社会資本整備に多額の投資を行ってきた結果、地方債残高が膨らんでいると考えられます。人口減少による税収減も影響している地域です。南海トラフ地震への備えとして、広域的な防災インフラ整備が継続的に実施されており、これらの投資が地方債残高の増加要因となっている状況です。
新潟県(2位)
新潟県は198.6%(偏差値65.5)で2位に位置しています。豪雪地帯としての特殊な事情から、除雪対策や雪害対策などの維持管理費が恒常的に高く、また過疎地域を多く抱えることから社会基盤整備への投資負担が大きいことが要因と考えられます。日本海側特有の気象条件により、インフラ維持に他県以上のコストが必要となっている地域です。中越地震や中越沖地震の復旧・復興事業も、長期的な財政負担として影響している要因です。
秋田県(3位)
秋田県は191.7%(偏差値63.4)で3位となっています。人口減少率が全国最高水準にあり、税収の減少と社会保障費の増加により財政構造が悪化しており、過去の投資による地方債残高の重荷が顕著に現れています。急激な人口減少により、社会基盤の維持コストが相対的に増加している地域です。高齢化率の上昇に伴う社会保障関連経費の増加も、財政圧迫の要因となっている状況です。
北海道(4位)
北海道は191.1%(偏差値63.2)で4位に位置しています。広大な面積を有する北海道は、社会基盤整備や維持管理に他県と比較して多額の費用を要することから、地方債への依存度が高くなっています。札幌圏以外の地域の人口減少も財政負担増の要因となっている地域です。寒冷地特有のインフラ維持コストと、分散した地域への行政サービス提供が、継続的な財政負担として影響している状況です。
富山県(5位)
富山県は189.2%(偏差値62.6)で5位となっています。北陸新幹線の延伸や立山黒部アルペンルートなどの観光インフラ整備、さらに高齢化対策への投資などが地方債残高の増加につながっていると考えられます。北陸新幹線開業に伴う関連インフラ整備により、観光振興と地域活性化への戦略的投資が実施されている地域です。人口減少対策としての地域振興事業も、地方債残高に影響を与えている要因です。
下位5県の詳細分析
栃木県(43位)
栃木県は113.0%(偏差値38.3)で43位に位置しています。首都圏に位置する利点を活かした企業誘致や人口流入により税収が安定しており、また無駄な公共投資を抑制してきた結果、地方債残高を比較的低水準に抑えています。首都圏のベッドタウンとしての機能により、安定した税収基盤が確保されている地域です。製造業の集積による法人税収の安定化も、財政健全性の維持に寄与している状況です。
大阪府(44位)
大阪府は112.0%(偏差値38.0)で44位となっています。関西経済圏の中心として税収基盤が安定しており、また府政改革により歳出削減に取り組んできた成果が現れています。ただし、絶対額では相当な規模の地方債を抱えている地域です。関西国際空港や大阪港などの国際拠点機能により、法人税収が安定している要因です。行政改革の推進による効率的な財政運営が、地方債残高の抑制に寄与している状況です。
福島県(45位)
福島県は106.3%(偏差値36.2)で45位に位置しています。東日本大震災後の復興事業は主に国費で賄われたため、県の地方債残高への影響は限定的だったことが要因の一つと考えられます。また、原発事故による特殊な財政措置も影響している可能性があります。復興特別交付税などの国の手厚い財政支援により、県独自の地方債発行が抑制されている地域です。原子力災害からの復興に向けた国の特別な支援制度が、財政運営の安定化に寄与している状況です。
沖縄県(46位)
沖縄県は57.8%(偏差値20.7)で46位と、全国平均を大きく下回っています。沖縄振興予算による国庫支出金の比率が極めて高く、県独自の地方債発行の必要性が他県と比較して低いことが主要因です。沖縄振興特別措置法による国の手厚い財政支援により、社会基盤整備の多くが国費で賄われている地域です。観光産業中心の経済構造により、大規模な産業インフラ投資の必要性が相対的に低い状況となっています。
東京都(47位)
東京都は40.9%(偏差値15.3)で47位と圧倒的に低い水準です。法人住民税や固定資産税などの税収が豊富で、地方債に頼らない財政運営が可能となっています。また、都債の発行も戦略的に行われており、健全な財政運営の模範例となっています。首都機能の集積による豊富な税収基盤により、自主財源比率が極めて高い地域です。国際金融都市としての機能強化に向けた戦略的投資も、税収増加による自己資金で対応可能な状況です。
地域別の特徴分析
関東地方
東京都(47位)、神奈川県(114.5%、42位)、栃木県(43位)が下位に位置しており、首都圏の経済力を反映した結果となっています。この地域は税収基盤が安定しており、地方債への依存度を低く保つことができている状況です。一方で、埼玉県(154.5%、26位)、茨城県(159.6%、21位)は中位に位置し、地域内でも格差が見られます。
中部・北陸地方
静岡県(1位)、新潟県(2位)、富山県(5位)が上位に位置する一方、愛知県(153.4%、27位)などは中位に位置しています。この地域は製造業が盛んな地域が多いものの、社会基盤整備への投資負担が大きい県で地方債残高が高くなっている状況です。北陸地方では特に雪害対策や地震対策への投資が、継続的な財政負担となっています。
近畿地方
大阪府(44位)が下位に位置するなど、関西経済圏の中心としての税収基盤の安定性が現れています。京都府(159.2%、22位)、奈良県(162.9%、18位)は中位に位置し、兵庫県(137.9%、34位)は比較的良好な水準を維持している状況です。関西国際空港や阪神港などの国際拠点整備による税収効果が、地域全体の財政健全性に寄与しています。
中国・四国地方
多くの県が中位から上位に位置しており、人口減少と産業基盤の縮小により財政運営が厳しくなっている状況が伺えます。高知県(170.0%、9位)、香川県(168.4%、11位)、広島県(167.6%、12位)が上位から中位上位に位置し、地域全体での財政課題が顕在化している地域です。
東北・北海道地方
北海道(4位)、秋田県(3位)が上位に位置する一方、福島県(45位)が下位となるなど格差が大きくなっています。この地域は人口減少と高齢化が進んでおり、社会基盤の維持費用負担が重い一方で税収基盤が縮小している構造的な問題を抱えている状況です。
九州・沖縄地方
沖縄県(46位)が特異的に低い水準を示しており、国の特別な財政措置の効果が顕著に現れています。福岡県(157.8%、23位)、熊本県(166.1%、13位)、鹿児島県(169.3%、10位)は中位から上位に位置し、地域内での格差が顕著な地域です。
社会的・経済的影響
九州・沖縄地方では沖縄県が46位と特異的に低い水準を示しており、国の特別な財政措置の効果が顕著に現れています。特に沖縄県は国の特別な支援制度により地方債残高を抑制できています。
上位県では将来世代への負担転嫁が進んでおり、財政の持続可能性に課題があります。特に人口減少が進む地域では、将来の税収減少により返済能力の低下が懸念される状況です。高い地方債残高により、新たな政策実施の財政的制約が生じ、行政サービスの質的向上が困難になっている地域もあります。
下位県では財政運営の自由度が高く、新たな政策課題への対応力があります。豊富な税収基盤により、戦略的な投資や政策実施が可能な状況です。将来世代への負担が軽減されており、持続可能な財政運営が実現されている地域です。
地方債現在高の割合が高い県では、将来世代への負担転嫁が進んでおり、財政の持続可能性に課題があります。一方で、この指標だけでは財政の健全性を完全に判断することはできません。地方債の使途や償還計画、将来の税収見通しなどを総合的に評価する必要があります。
対策と今後の展望
地方債残高の適正管理に向けて、各地域の特性に応じた取り組みが重要です。成功している地域の財政運営モデルを参考に、効果的な施策の展開が求められています。
効率的な財政運営では、歳出削減と税収基盤強化の両面からのアプローチが重要です。大阪府では府政改革により歳出削減に取り組んできた成果が現れている事例があります。
税収基盤の強化では、企業誘致や産業振興による法人税収の確保が効果的です。栃木県では首都圏立地を活かした企業誘致により、安定した税収基盤を確保している取り組みがあります。
今後の課題として、人口減少社会における財政の持続可能性確保が重要です。地方債残高の適正な管理と併せて、税収基盤の強化や歳出の効率化など、総合的な財政健全化への取り組みが求められています。地域間格差の是正に向けた国の財政調整機能の充実も継続的な課題となっています。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値% |
---|---|
平均値 | 149.8 |
中央値 | 157.5 |
最大値 | 204.5(静岡県) |
最小値 | 40.9(東京都) |
標準偏差 | 31.4 |
データ数 | 47件 |
統計データの分析から、平均値が約150%程度となっており、中央値との比較から、一部の県で特に高い値を示していることが分かります。標準偏差は約30ポイントとなっており、都道府県間でのばらつきが相当大きいことを示しています。
分布の特徴として、東京都と沖縄県が明らかな外れ値として位置しており、これらの特殊事情(東京都の豊富な税収、沖縄県の国庫支出金依存)が全体の分布に影響を与えています。四分位範囲で見ると、第1四分位から第3四分位の間でも約40ポイントの差があり、多くの県で財政状況に大きな違いがあることが確認できます。
この分布は、日本の地方財政が抱える構造的な格差問題を数値的に裏付けており、地域特性に応じた財政運営の重要性を示しています。これらの統計的特徴は、今後の地方財政政策立案の重要な基礎データとなっています。
まとめ
2021年度の都道府県別地方債現在高の割合分析により、重要な知見が得られました。静岡県が204.5%で最も高く、東京都が40.9%で最も低い結果となりました。上位県は主に地方部や人口減少県が占めており、社会基盤整備負担と税収減少の影響が顕著に現れています。
下位県は首都圏や経済中心地が多く、安定した税収基盤を背景とした健全な財政運営を実現しています。地域間格差は約5倍に達しており、構造的な財政格差の存在が明確になっています。
人口減少と高齢化が進む地域での財政持続可能性が重要な政策課題です。今後は地方債残高の適正な管理と併せて、税収基盤の強化や歳出の効率化など、総合的な財政健全化への取り組みが求められます。地域間格差の是正に向けた国の財政調整機能の充実も継続的な課題となっています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (%) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 静岡県 | 204.5 | 67.4 | -7.8% |
2 | 新潟県 | 198.6 | 65.5 | -5.3% |
3 | 秋田県 | 191.7 | 63.4 | +1.7% |
4 | 北海道 | 191.1 | 63.2 | +1.0% |
5 | 富山県 | 189.2 | 62.6 | -5.0% |
6 | 石川県 | 183.2 | 60.6 | -7.3% |
7 | 岐阜県 | 174.1 | 57.7 | +0.2% |
8 | 三重県 | 172.8 | 57.3 | -9.1% |
9 | 高知県 | 170.0 | 56.4 | -6.0% |
10 | 鹿児島県 | 169.3 | 56.2 | -9.5% |
11 | 香川県 | 168.4 | 55.9 | -6.3% |
12 | 広島県 | 167.6 | 55.7 | -12.2% |
13 | 山形県 | 166.1 | 55.2 | -5.2% |
14 | 熊本県 | 166.1 | 55.2 | -8.2% |
15 | 和歌山県 | 165.4 | 55.0 | -1.8% |
16 | 島根県 | 164.6 | 54.7 | -6.7% |
17 | 山梨県 | 163.5 | 54.4 | -1.4% |
18 | 奈良県 | 162.9 | 54.2 | -3.1% |
19 | 山口県 | 161.8 | 53.8 | -4.5% |
20 | 鳥取県 | 160.9 | 53.5 | -4.5% |
21 | 茨城県 | 159.6 | 53.1 | -2.7% |
22 | 京都府 | 159.2 | 53.0 | -12.2% |
23 | 福岡県 | 157.8 | 52.6 | -15.7% |
24 | 岡山県 | 157.5 | 52.5 | -9.5% |
25 | 長崎県 | 156.8 | 52.2 | -2.2% |
26 | 埼玉県 | 154.5 | 51.5 | -16.3% |
27 | 愛知県 | 153.4 | 51.2 | -17.2% |
28 | 滋賀県 | 151.2 | 50.5 | -10.3% |
29 | 大分県 | 146.8 | 49.1 | -4.8% |
30 | 徳島県 | 146.5 | 49.0 | -6.0% |
31 | 岩手県 | 145.5 | 48.6 | +8.7% |
32 | 福井県 | 145.5 | 48.6 | -9.2% |
33 | 長野県 | 139.4 | 46.7 | -9.7% |
34 | 兵庫県 | 137.9 | 46.2 | -18.6% |
35 | 愛媛県 | 137.1 | 46.0 | -5.0% |
36 | 群馬県 | 132.6 | 44.5 | +1.3% |
37 | 宮城県 | 126.8 | 42.7 | -3.5% |
38 | 青森県 | 126.1 | 42.5 | -9.2% |
39 | 佐賀県 | 123.9 | 41.8 | -1.0% |
40 | 千葉県 | 122.2 | 41.2 | -14.4% |
41 | 宮崎県 | 122.1 | 41.2 | -3.1% |
42 | 神奈川県 | 114.5 | 38.8 | -21.5% |
43 | 栃木県 | 113.0 | 38.3 | -5.4% |
44 | 大阪府 | 112.0 | 38.0 | -19.3% |
45 | 福島県 | 106.3 | 36.2 | +2.2% |
46 | 沖縄県 | 57.8 | 20.7 | -16.2% |
47 | 東京都 | 40.9 | 15.3 | -11.7% |