都道府県別労働力人口比率(女性)ランキング(2020年度)
概要
労働力人口比率(女性)とは、15歳以上の女性人口に占める労働力人口(就業者と完全失業者の合計)の割合を指します。この記事では、2020年度の都道府県別女性労働力人口比率のランキングを紹介します。
女性の労働力人口比率は、女性の社会進出度や地域の雇用環境、産業構造などを反映しており、地域経済や少子化対策などの政策立案の基礎データとして重要な指標です。2020年度は、福井県や富山県などの北陸地方や、佐賀県などの九州地方で女性労働力人口比率が高く、大阪府や奈良県などで低くなっています。
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上位県と下位県の比較
女性労働力人口比率が高い上位5県
2020年度の女性労働力人口比率ランキングでは、福井県が54.5%(偏差値70.8)で全国1位となりました。福井県は伝統的に女性の就業率が高く、繊維産業など女性が活躍できる産業が発達していることが高い労働力人口比率につながっていると考えられます。また、三世代同居率が高く、子育て支援の環境が整っていることも女性の就業を後押ししていると考えられます。
2位は富山県と佐賀県で同率の53.0%(偏差値64.8)、4位は長野県で52.9%(偏差値64.4)、5位は石川県で52.7%(偏差値63.7)となっています。上位県には北陸地方の県が多く、製造業が盛んであることや、伝統的に女性の社会進出が進んでいる地域性が影響していると考えられます。
女性労働力人口比率が低い下位5県
最も女性労働力人口比率が低かったのは大阪府で43.9%(偏差値28.6)でした。大阪府は大都市特有の産業構造であり、専業主婦世帯が多いことが低い労働力人口比率の一因と考えられます。また、都市部特有の厳しい労働環境も影響していると考えられます。
46位は奈良県で44.1%(偏差値29.4)、45位は京都府で44.9%(偏差値32.6)、44位は北海道で45.4%(偏差値34.6)、43位は沖縄県で45.6%(偏差値35.4)となっています。下位県には大都市圏のベッドタウンや、産業構造の特性から女性の雇用機会が限られている地域が多く見られます。
地域別の特徴分析
東北地方の女性労働事情
東北地方では、山形県(6位、52.1%)が最も女性労働力人口比率が高く、秋田県(34位、47.9%)が最も低くなっています。その他の県は、青森県(20位、49.9%)、岩手県(13位、50.8%)、宮城県(28位、48.7%)、福島県(28位、48.7%)と、全国的に見ると中位から上位に位置しています。
東北地方全体として女性労働力人口比率が比較的高い理由としては、製造業や農林水産業などの第一次・第二次産業が盛んであり、女性の就業機会が多いことが挙げられます。特に山形県では、農業や繊維産業など女性が活躍できる産業が発達しており、女性の就業率が高くなっていると考えられます。
特に山形県で女性労働力人口比率が高い理由としては、農業(特にさくらんぼや米などの生産)や繊維産業が盛んであり、これらの産業で女性が重要な役割を担っていることが挙げられます。また、三世代同居率が高く、子育て支援の環境が整っていることも女性の就業を後押ししていると考えられます。
一方、秋田県で東北地方の中では女性労働力人口比率が低い理由としては、高齢化の進行や若年女性の県外流出が挙げられます。また、女性が活躍できる産業が限られていることも影響していると考えられます。
関東地方の都市化と女性の就業
関東地方では、群馬県(12位、51.3%)が最も女性労働力人口比率が高く、東京都(42位、45.8%)が最も低くなっています。その他の県は、茨城県(24位、49.1%)、栃木県(22位、49.8%)、埼玉県(32位、48.5%)、千葉県(35位、47.5%)、神奈川県(40位、46.8%)と、全国的に見るとばらつきがあります。
関東地方は全国的に見ると女性労働力人口比率に大きな地域差があります。これは、東京都や神奈川県、埼玉県などの大都市圏と、茨城県や栃木県、群馬県などの製造業や農業が盛んな県との産業構造や生活様式の違いを反映していると考えられます。
特に群馬県で女性労働力人口比率が高い理由としては、製造業(特に自動車関連や食品加工業)が盛んであり、女性の就業機会が多いことが挙げられます。また、農業も盛んであり、女性が活躍できる場が多いことも特徴です。
一方、東京都で女性労働力人口比率が低い理由としては、金融業やIT産業など特定分野での高度な専門性が求められる傾向が強く、また女性の雇用条件や労働環境が十分に整っていない面もあると考えられます。また、大都市特有の厳しい労働環境や長時間通勤なども影響している可能性があります。
中部・北陸地方の産業構造と女性の活躍
中部・北陸地方では、福井県(1位、54.5%)が最も女性労働力人口比率が高く、静岡県(6位、52.1%)、岐阜県(8位、51.7%)、山梨県(11位、51.6%)、新潟県(13位、50.8%)、愛知県(16位、50.7%)、滋賀県(19位、50.3%)、三重県(20位、49.9%)と続き、全国的に見ると上位から中位に集中しています。
中部・北陸地方全体として女性労働力人口比率が高い理由としては、製造業(特に繊維産業や精密機械産業)が盛んであり、女性の就業機会が多いことが挙げられます。特に福井県や富山県、石川県などの北陸地方では、繊維産業や伝統工芸など女性が活躍できる産業が発達しており、女性の就業率が高くなっていると考えられます。
特に福井県で女性労働力人口比率が最も高い理由としては、繊維産業(特に合繊産業)や眼鏡産業など女性が活躍できる産業が発達していることが挙げられます。また、三世代同居率が高く、子育て支援の環境が整っていることも女性の就業を後押ししていると考えられます。さらに、伝統的に女性の社会進出に対する理解が深い地域性も影響していると考えられます。
近畿地方の都市部と郊外の差
近畿地方では、滋賀県(19位、50.3%)が最も女性労働力人口比率が高く、大阪府(47位、43.9%)が最も低くなっています。その他の県は、和歌山県(37位、47.2%)、兵庫県(41位、45.9%)、京都府(45位、44.9%)、奈良県(46位、44.1%)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
近畿地方全体として女性労働力人口比率が低い理由としては、大都市圏特有の産業構造や生活様式が挙げられます。特に大阪府や京都府、兵庫県などの大都市圏では、サービス業など第三次産業の比重が高く、女性の雇用は非正規雇用が多い傾向があります。また、専業主婦世帯も多く、女性の労働力人口比率が低くなっていると考えられます。
特に大阪府で女性労働力人口比率が最も低い理由としては、大都市圏特有の厳しい労働環境や、女性の雇用条件が十分に整っていないことなどが挙げられます。また、サービス業などでの非正規雇用が多く、安定した就業につながりにくい面もあると考えられます。
一方、滋賀県で近畿地方の中では女性労働力人口比率が高い理由としては、製造業(特に電子部品や機械産業)が盛んであり、女性の就業機会が多いことが挙げられます。また、大阪府や京都府のベッドタウンでありながらも、県内に雇用機会があることも特徴です。
中国・四国地方の地域性と女性の就業
中国・四国地方では、鳥取県と島根県が同率(8位、51.7%)で最も女性労働力人口比率が高く、山口県(39位、47.0%)が最も低くなっています。その他の県は、広島県(23位、49.3%)、岡山県・香川県(24位、49.1%)、徳島県(28位、48.7%)、高知県(36位、47.4%)、愛媛県(38位、47.1%)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
中国・四国地方は全国的に見ると女性労働力人口比率にばらつきがあります。これは、鳥取県や島根県などの第一次産業や製造業が盛んな県と、山口県などの工業地帯を有する県との産業構造の違いを反映していると考えられます。
特に鳥取県と島根県で女性労働力人口比率が高い理由としては、第一次産業(特に農林水産業)が盛んであり、女性が重要な役割を担っていることが挙げられます。また、製造業(特に電子部品や食品加工業)も発達しており、女性の就業機会が多いことも特徴です。さらに、人口減少が進む中で、女性の労働力が地域経済を支える重要な役割を果たしていると考えられます。
一方、山口県で中国・四国地方の中では女性労働力人口比率が低い理由としては、重化学工業など男性中心の製造業が主要産業であることが挙げられます。こうした産業構造が女性の就業機会を限定している可能性があります。
九州・沖縄地方の地域差と女性の就業
九州・沖縄地方では、佐賀県(2位、53.0%)が最も女性労働力人口比率が高く、沖縄県(43位、45.6%)が最も低くなっています。その他の県は、熊本県(13位、50.8%)、宮崎県・鹿児島県(17位、50.5%)、長崎県(24位、49.1%)、大分県(31位、48.6%)、福岡県(33位、48.0%)と、全国的に見るとばらつきがあります。
九州・沖縄地方は全国的に見ると女性労働力人口比率に地域差があります。これは、佐賀県や熊本県などの農業が盛んな県と、福岡県や沖縄県などのサービス業が中心の県との産業構造の違いを反映していると考えられます。
特に佐賀県で女性労働力人口比率が高い理由としては、農業(特に米や野菜の生産)が盛んであり、女性が重要な役割を担っていることが挙げられます。また、陶磁器産業など伝統工芸も発達しており、女性の就業機会が多いことも特徴です。さらに、三世代同居率が比較的高く、子育て支援の環境が整っていることも女性の就業を後押ししていると考えられます。
一方、沖縄県で女性労働力人口比率が低い理由としては、観光業が主要産業であり、季節変動や非正規雇用が多いことが挙げられます。また、若年層の失業率が高いことも特徴です。さらに、独自の文化や家族観から、女性が家庭を守る傾向が強い面もあると考えられます。
女性労働力人口比率の格差がもたらす影響と課題
地域経済への影響
女性労働力人口比率の地域間格差は、地域経済にも影響を与えます。女性労働力人口比率が高い地域では、労働力の供給が豊富であり、企業誘致や産業発展に有利に働く可能性があります。また、女性の所得が家計に加わることで、地域の消費活動も活発化し、経済の好循環につながる可能性があります。
例えば、福井県(1位、54.5%)では、女性労働力人口比率が高く、労働力の供給が豊富です。これにより、繊維産業や眼鏡産業などの地場産業が発展し、地域経済の活性化につながっていると考えられます。また、女性の所得が家計に加わることで、地域の消費活動も活発化していると考えられます。
一方、大阪府(47位、43.9%)では、女性労働力人口比率が低く、労働力の供給が限られています。これにより、産業発展が制約され、地域経済の活性化が進みにくい状況にあると考えられます。また、女性の所得が家計に加わる割合が低いため、地域の消費活動も制約されている可能性があります。
少子化対策への影響
女性労働力人口比率の地域間格差は、少子化対策にも影響を与えます。一般的に、女性の就業環境が整っている地域では、仕事と家庭の両立がしやすく、出生率が高くなる傾向があります。一方、女性の就業環境が整っていない地域では、仕事か家庭かの二者択一を迫られることが多く、出生率が低くなる傾向があります。
例えば、福井県(1位、54.5%)では、女性労働力人口比率が高く、女性の就業環境が整っています。同時に、三世代同居率が高く、子育て支援の環境も整っているため、仕事と家庭の両立がしやすい状況にあります。これにより、全国的に見ても出生率が比較的高い水準を維持していると考えられます。
一方、奈良県(46位、44.1%)では、女性労働力人口比率が低く、女性の就業環境が整っていない可能性があります。また、大阪府のベッドタウンとしての性格が強く、通勤時間が長いことなどから、仕事と家庭の両立が難しい状況にあると考えられます。これにより、出生率が低くなっている可能性があります。
女性の経済的自立への影響
女性労働力人口比率の地域間格差は、女性の経済的自立にも影響を与えます。女性労働力人口比率が高い地域では、女性の経済的自立が進んでおり、生涯を通じて安定した収入を得られる可能性が高くなります。一方、女性労働力人口比率が低い地域では、女性の経済的自立が進んでおらず、結婚や配偶者の収入に依存する傾向が強くなる可能性があります。
例えば、富山県(2位、53.0%)では、女性労働力人口比率が高く、女性の経済的自立が進んでいると考えられます。これにより、女性が生涯を通じて安定した収入を得られる可能性が高く、経済的な理由による結婚の必要性が低くなっている可能性があります。
一方、京都府(45位、44.9%)では、女性労働力人口比率が低く、女性の経済的自立が進んでいない可能性があります。これにより、結婚や配偶者の収入に依存する傾向が強くなり、経済的な理由による結婚の必要性が高くなっている可能性があります。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2020年度の都道府県別女性労働力人口比率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約49.3%、中央値は約49.1%とほぼ一致しており、データの分布がほぼ対称的であることを示しています。これは、女性労働力人口比率の地域間格差が比較的小さいことを意味します。
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分布の歪み:データは全体としてわずかに負の歪みを示しており、左に長い裾を持つ分布となっています。福井県(54.5%)が最も高く、大阪府(43.9%)が最も低いですが、その差は10.6ポイントであり、極端な格差は見られません。
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外れ値の特定:特に顕著な外れ値は見られませんが、福井県(54.5%)は上側の外れ値の候補と考えられ、平均値を大きく上回っています。一方、大阪府(43.9%)、奈良県(44.1%)、京都府(44.9%)などは下側の外れ値の候補と考えられ、平均値を大きく下回っています。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約47.1%、第3四分位数(Q3)は約51.3%で、四分位範囲(IQR)は約4.2ポイントです。これは、中央の50%の都道府県の女性労働力人口比率が47.1%から51.3%の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的近い値を示していることがわかります。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約2.9ポイントで、変動係数(標準偏差÷平均値)は約5.9%となり、相対的なばらつきは小さいことを示しています。これは、都道府県間の女性労働力人口比率の格差が比較的小さいことを意味します。
まとめ
2020年度の都道府県別女性労働力人口比率ランキングでは、福井県が54.5%で1位、大阪府が43.9%で47位となりました。上位には福井県、富山県、佐賀県などの製造業や農業が盛んな県が多く、下位には大阪府、奈良県、京都府などの大都市圏が多く見られました。
女性労働力人口比率の地域差は、産業構造、三世代同居率、子育て支援環境など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、少子化対策、女性の経済的自立など様々な面に影響を与えています。
統計分析からは、都道府県間の女性労働力人口比率の格差は比較的小さく、多くの県が47%から51%の間に収まっていることがわかります。ただし、上位県と下位県の間には10ポイント程度の差があり、女性の就業環境に地域差があることが伺えます。
少子高齢化が進む日本社会において、女性の労働参加は重要な課題となっています。特に、女性労働力人口比率が低い地域では、女性が働きやすい環境の整備や、仕事と家庭の両立支援など、女性の就業を促進する政策が求められています。また、女性が活躍できる産業の育成や、女性の起業支援なども重要な政策課題です。