都道府県別可住地面積ランキング(2023年度)

概要

2023年度の都道府県別可住地面積を比較すると、北海道が全国1位で約227万ヘクタール、新潟県が2位で約45.5万ヘクタール、福島県が3位で約42.3万ヘクタールとなっています。可住地面積とは、総面積から森林面積と主要湖沼面積を差し引いた面積であり、人が居住可能な土地の広さを示す指標です。

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上位5県と下位5県の比較

上位5県の特徴

  1. 北海道(2,268,995ha、偏差値114.4): 日本最大の面積を持つ北海道は、可住地面積も圧倒的に広く、全国2位の新潟県の約5倍に達します。広大な平野部(石狩平野、十勝平野など)と丘陵地帯を有し、農業用地として活用されている面積も広大です。特に十勝地方や上川地方などでは、大規模な畑作や酪農が行われています。北海道の可住地面積は日本全体の可住地面積の約20%を占めています。

  2. 新潟県(455,009ha、偏差値56.2): 日本海側最大の平野である新潟平野を有し、信濃川や阿賀野川などの大河川によって形成された肥沃な平野が広がっています。県土の約3分の1が平野部で、特に稲作に適した環境となっています。新潟県は「コシヒカリ」をはじめとする高品質な米の産地として知られ、可住地面積の多くが水田として利用されています。

  3. 福島県(423,098ha、偏差値55.2): 東北地方南部に位置し、浜通り、中通り、会津の3つの地域に分かれています。特に中通り地方の福島盆地や会津地方の会津盆地など、複数の盆地を有しています。東日本大震災と原発事故の影響で一部地域の利用に制限がありますが、それでも広大な可住地面積を持ち、多様な農業が営まれています。

  4. 茨城県(388,892ha、偏差値54.1): 関東平野の北東部に位置し、平坦な地形が特徴です。特に県西部から南部にかけては広大な平野が広がり、農業に適した環境となっています。霞ヶ浦周辺の低地や鹿島灘に面した平野部など、水資源に恵まれた地域が多く、多様な農業が展開されています。首都圏に近いという立地を活かし、都市的土地利用と農業的土地利用がバランスよく分布しています。

  5. 岩手県(375,140ha、偏差値53.6): 東北地方で最大の面積を持つ県で、北上川流域を中心に広大な平野部(北上盆地)を有しています。県土の大部分は山地ですが、北上川沿いの平野部や沿岸部の平地など、まとまった可住地面積があります。特に内陸部の北上盆地では稲作や畜産が盛んで、沿岸部では漁業と組み合わせた生活圏が形成されています。

下位5県の特徴

  1. 奈良県(85,389ha、偏差値44.3): 日本の歴史文化の中心地である奈良県は、県土の約8割が山林で、可住地面積は限られています。奈良盆地を中心に人口が集中しており、歴史的な景観と近代的な都市機能が共存しています。限られた土地資源を活かした都市計画や土地利用が課題となっています。

  2. 鳥取県(90,422ha、偏差値44.5): 日本海に面した鳥取県は、人口が最も少ない県の一つで、可住地面積も限られています。鳥取平野や米子平野などの平野部に人口が集中しており、特に農業が盛んです。県土の約7割が森林で、中国山地が広がっています。

  3. 山梨県(95,310ha、偏差値44.7): 内陸県で、富士山や南アルプス、八ヶ岳などの山々に囲まれた盆地地形が特徴です。甲府盆地を中心に居住地が集中しており、盆地特有の気候を活かしたブドウやモモなどの果樹栽培が盛んです。県土の約78%が森林であるため可住地面積は限られていますが、その分、集約的な土地利用が行われています。

  4. 香川県(100,503ha、偏差値44.8): 四国地方で最も面積が小さい県で、可住地面積も限られています。瀬戸内海に面した平野部と讃岐山脈に挟まれた地形で、平野部は主に農業(特にため池を利用した稲作)に利用されています。温暖な気候と少ない降水量という特徴を活かし、オリーブやみかんなどの栽培も行われています。限られた土地を効率的に利用した農業が特徴です。

  5. 徳島県(101,628ha、偏差値44.9): 四国東部に位置する徳島県は、県土の約8割が森林で覆われており、可住地面積は限られています。吉野川流域の徳島平野に人口が集中しており、野菜や果物の栽培が盛んです。急峻な山地と平野部の対比が顕著で、山間部では過疎化が進行している一方、平野部では都市化が進んでいます。

地域別の特徴分析

北海道・東北地方

北海道・東北地方は全体的に可住地面積が広い傾向にあります。この地域の平均可住地面積は約61.7万haと全国で最も高く、北海道(2,268,995ha、偏差値114.4)が全国で突出して広く、東北地方では福島県(423,098ha、偏差値55.2)、岩手県(375,140ha、偏差値53.6)、青森県(325,268ha、偏差値52.0)が上位に入っています。

この地域は広大な平野部(石狩平野、十勝平野、仙台平野、北上盆地など)を有し、稲作や畑作などの農業に適した環境となっています。特に北海道では大規模な農業経営が行われており、日本の食料生産基地としての役割を担っています。一方で、奥羽山脈や北上山地などの山岳地帯も多く、森林面積も広大です。

関東地方

関東地方は関東平野という日本最大の平野を有し、可住地面積の平均は約26.0万haとなっています。茨城県(388,892ha、偏差値54.1)、千葉県(353,301ha、偏差値52.9)、栃木県(300,506ha、偏差値51.2)などが上位に入っています。一方、東京都(142,868ha、偏差値46.2)は高度に都市化されており、可住地面積は限られています。

関東平野は肥沃な土壌と温暖な気候に恵まれ、多様な農業が展開されています。特に茨城県や千葉県では野菜や果物の生産が盛んです。また、首都圏として高度に発達した都市機能を有し、住宅地やオフィス、商業施設などの都市的土地利用も進んでいます。

中部・北陸地方

中部・北陸地方の可住地面積の平均は約23.4万haとなっています。日本アルプスなどの山岳地帯が多い一方で、新潟平野や濃尾平野などの広大な平野部も有しています。新潟県(455,009ha、偏差値56.2)が全国2位と突出して広く、次いで長野県(324,893ha、偏差値52.0)、愛知県(299,578ha、偏差値51.2)などが続きます。一方、山梨県(95,310ha、偏差値44.7)や福井県(107,730ha、偏差値45.1)は可住地面積が比較的小さくなっています。

新潟県は信濃川や阿賀野川などの大河川によって形成された広大な平野を有し、稲作が盛んです。愛知県は濃尾平野を中心に工業地帯と農業地帯がバランスよく分布しています。一方、山梨県や長野県は盆地を中心に居住地が集中し、果樹栽培などの集約的な農業が行われています。

近畿地方

近畿地方の可住地面積の平均は約15.2万haと全国で最も低くなっています。大阪平野や京都盆地、奈良盆地などの平野部と、紀伊山地などの山岳地帯が混在しています。兵庫県(276,947ha、偏差値50.5)が最も広く、次いで三重県(206,414ha、偏差値48.2)、大阪府(133,407ha、偏差値45.9)などが続きます。一方、奈良県(85,389ha、偏差値44.3)や和歌山県(112,339ha、偏差値45.2)は可住地面積が比較的小さくなっています。

兵庫県は播磨平野や但馬地方など多様な地形を有し、農業と工業がバランスよく発達しています。大阪府は高度に都市化されており、限られた可住地面積に多くの人口が集中しています。京都府は京都盆地を中心に古くからの都市機能と農村地域が共存しています。

中国・四国地方

中国・四国地方の可住地面積の平均は約14.7万haと近畿地方に次いで低くなっています。中国山地や四国山地などの山岳地帯が多く、可住地面積は比較的小さい県が多いです。広島県(229,802ha、偏差値49.0)や岡山県(222,854ha、偏差値48.8)が比較的広く、次いで山口県(171,523ha、偏差値47.1)などが続きます。一方、鳥取県(90,422ha、偏差値44.5)や香川県(100,503ha、偏差値44.8)、高知県(115,994ha、偏差値45.3)は可住地面積が小さくなっています。

広島県は太田川デルタを中心に都市機能が集中し、周辺部では農業や林業が営まれています。岡山県は岡山平野を中心に農業が盛んで、特に果物や野菜の生産が多いです。香川県は讃岐平野を中心に集約的な農業が行われ、高知県は高知平野に人口が集中しています。

九州・沖縄地方

九州・沖縄地方の可住地面積の平均は約20.7万haとなっています。阿蘇山や霧島山などの火山地帯と、筑紫平野や鹿児島平野などの平野部が混在しています。鹿児島県(328,724ha、偏差値52.2)が最も広く、次いで福岡県(276,452ha、偏差値50.5)、熊本県(274,668ha、偏差値50.4)などが続きます。一方、沖縄県(112,607ha、偏差値45.2)や佐賀県(133,458ha、偏差値45.9)は可住地面積が小さくなっています。

鹿児島県は薩摩半島や大隅半島など広大な地域を有し、農業や畜産が盛んです。福岡県は筑紫平野を中心に都市機能と農業地域が共存しています。沖縄県は島嶼地域であり、限られた土地を観光業や農業に活用しています。

可住地面積の地域差と課題

地形条件と可住地面積の関係

日本の可住地面積の地域差は、主に地形条件によって形成されています。日本は国土の約7割が山地・丘陵地であり、平野部は限られています。北海道や新潟県、福島県などの可住地面積が広い県は、広大な平野や盆地を有しています。一方、高知県や山梨県などの可住地面積が小さい県は、山地が多く平野部が限られています。

特に北海道は、石狩平野や十勝平野など複数の広大な平野を有し、可住地面積が突出して広くなっています。これに対し、四国や中部山岳地域などは山地が多く、可住地面積が限られています。

人口密度と土地利用の効率性

可住地面積と人口の関係を見ると、地域によって大きな差があります。東京都は可住地面積が限られていますが、人口は約1,400万人と非常に多く、可住地人口密度(可住地面積当たりの人口)は全国で最も高くなっています。一方、北海道は可住地面積が広大ですが、人口は約520万人であり、可住地人口密度は比較的低くなっています。

このような地域差は、土地利用の効率性にも影響しています。大都市圏では限られた土地を効率的に利用するため、高層建築物や公共交通機関の整備が進んでいます。一方、地方部では広い土地を活かした農業や自然環境の保全が行われています。

災害リスクと可住地の安全性

日本は地震、台風、豪雨などの自然災害が多い国であり、可住地の安全性は重要な課題です。特に平野部の多くは河川の氾濫原や海岸低地に位置しており、洪水や津波のリスクがあります。2011年の東日本大震災や2018年の西日本豪雨など、近年も大規模な自然災害が発生しています。

可住地面積が限られている地域では、災害リスクの高い場所にも居住地が広がっている場合があります。今後は気候変動の影響による災害リスクの増大も懸念されており、安全な可住地の確保が課題となっています。

人口減少社会における土地利用の課題

日本は人口減少社会に入っており、特に地方部では過疎化が進んでいます。可住地面積が広い地域でも、人口減少により空き家や耕作放棄地が増加しています。一方、東京などの大都市圏では人口集中が続いており、地域間の格差が拡大しています。

今後は人口減少に対応した持続可能な土地利用が求められています。コンパクトシティの推進や二地域居住の促進、遊休農地の活用など、新たな土地利用の在り方が模索されています。

統計データの基本情報

この統計データは2023年度の都道府県別可住地面積を示しています。可住地面積とは、総面積から森林面積と主要湖沼面積を差し引いた面積であり、人が居住可能な土地の広さを示す指標です。

データの分析から、以下のような特徴が見られます:

  1. 分布の歪み: 可住地面積の分布は強い正の歪みを示しており、平均値(約23万ha)が中央値(約17万ha)を大きく上回っています。これは北海道の突出した値が平均値を押し上げているためです。
  2. 明確な外れ値の存在: 北海道(2,268,995ha)は明らかな外れ値であり、第2位の新潟県(455,009ha)との間にも大きな差があります。北海道を除くと、分布はより正規分布に近くなります。
  3. 四分位範囲: 上位25%の都道府県(第3四分位)は約30万ha以上、下位25%(第1四分位)は約13万ha以下となっており、中間50%の範囲も比較的広く、地域間格差の大きさを示しています。
  4. 標準偏差の大きさ: 標準偏差は約32万haと非常に大きく、平均値の約140%に相当します。これは北海道の突出した値の影響が大きいと考えられます。
  5. 総面積との相関: 可住地面積は県の総面積と正の相関関係にありますが、森林率の高い県(例:高知県、山梨県)では総面積に比べて可住地面積が小さくなる傾向があります。

まとめ

可住地面積は、人間の居住や経済活動に利用可能な土地の広さを示す重要な指標です。北海道や新潟県、福島県などの広大な平野を有する地域で可住地面積が広く、奈良県や鳥取県、山梨県などの面積が小さい、または山地が多い地域で可住地面積が小さくなっています。

この地域間格差は、主に地形条件によって形成されていますが、歴史的な開発の経緯や土地利用政策も影響しています。特に日本は国土の約7割が山地・丘陵地であり、平野部は限られているため、可住地面積の地域差は大きくなっています。

可住地面積の違いは、人口密度や土地利用の効率性、災害リスク、経済活動など様々な面に影響を与えています。大都市圏では限られた土地を効率的に利用するための高度な都市計画が求められる一方、地方部では広い土地を活かした農業や自然環境の保全が重要となっています。

人口減少社会に入った日本では、可住地面積の効率的かつ持続可能な利用が課題となっています。コンパクトシティの推進や二地域居住の促進、遊休農地の活用など、新たな土地利用の在り方が模索されています。また、気候変動の影響による災害リスクの増大も懸念されており、安全な可住地の確保も重要な課題です。

可住地面積のデータは、国土計画や都市計画、防災計画などの基礎資料として活用されており、持続可能な国土利用に向けた政策立案に貢献しています。地域特性を踏まえた効果的な土地利用政策の推進が、日本の持続可能な発展につながると考えられます。

出典