都道府県別森林面積ランキング(2019年度)

概要

2019年度の都道府県別林野面積を比較すると、北海道が全国1位で約550万ヘクタール、岩手県が2位で約115万ヘクタール、長野県が3位で約103万ヘクタールとなっています。林野面積は国土の森林資源の分布を示す重要な指標であり、日本全体では国土の約67%が森林に覆われています。

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上位5県と下位5県の比較

上位5県の特徴

  1. 北海道(5,503,768ha、偏差値114.0): 日本最大の面積を持つ北海道は、林野面積も圧倒的に広く、全国2位の岩手県の約4.8倍に達しています。広大な針葉樹林や広葉樹林が広がり、特に道東や道北地域に豊かな森林資源を有しています。トドマツやエゾマツなどの針葉樹、ミズナラやカバ類などの広葉樹が主要な樹種です。
  2. 岩手県(1,152,364ha、偏差値58.0): 東北地方で最も林野面積が広く、県土の約77%が森林に覆われています。北上山地を中心に広大な森林地帯が広がり、スギやアカマツなどの人工林と、ブナやミズナラなどの天然林がバランスよく分布しています。古くから林業が盛んな地域です。
  3. 長野県(1,029,195ha、偏差値56.5): 中部山岳地帯に位置し、県土の約78%が森林に覆われています。北アルプス、中央アルプス、南アルプスなどの山岳地帯に広大な森林を有し、カラマツの人工林が多いことが特徴です。標高差による多様な森林生態系が見られます。
  4. 福島県(942,413ha、偏差値55.3): 東北地方南部に位置し、阿武隈高地や奥会津地域を中心に広大な森林を有しています。スギやヒノキの人工林と、ブナやミズナラなどの天然林がバランスよく分布しています。東日本大震災後の森林再生にも取り組んでいます。
  5. 岐阜県(841,066ha、偏差値54.0): 飛騨山脈や木曽山脈などの山岳地帯に広大な森林を有しています。県土の約81%が森林に覆われており、ヒノキの良質な産地として知られています。「東濃ヒノキ」は銘柄材として高い評価を受けています。

下位5県の特徴

  1. 大阪府(57,127ha、偏差値44.0): 高度に都市化された地域であり、林野面積は全国で最も少なくなっています。北部の北摂山地や南部の金剛山地などに森林が残されていますが、都市開発により森林面積は限られています。府内の森林率は約31%で全国平均を大きく下回っています。
  2. 東京都(77,125ha、偏差値44.2): 都市化が進んだ地域ですが、多摩地域や奥多摩、島しょ部に森林が残されています。特に奥多摩地域には豊かな森林が広がり、水源涵養や都民の憩いの場として重要な役割を果たしています。都内の森林率は約36%です。
  3. 香川県(87,184ha、偏差値44.3): 四国地方で最も林野面積が少なく、平野部が多いことが特徴です。讃岐山脈や小豆島などに森林が分布していますが、県土に占める森林の割合は約47%と全国平均を下回っています。
  4. 神奈川県(93,524ha、偏差値44.4): 都市化が進んだ地域ですが、丹沢山地や箱根山などに森林が残されています。水源涵養や県民の憩いの場として重要な役割を果たしていますが、都市開発により森林面積は限られています。県内の森林率は約39%です。
  5. 佐賀県(110,610ha、偏差値44.6): 九州地方で最も林野面積が少ない県の一つです。脊振山地や多良山地などに森林が分布していますが、有明海沿岸の平野部が広いため、県土に占める森林の割合は約49%と全国平均を下回っています。

地域別の特徴分析

北海道・東北地方

北海道(5,503,768ha、偏差値114.0)が全国1位で突出しており、東北地方では岩手県(1,152,364ha、偏差値58.0)が2位、福島県(942,413ha、偏差値55.3)が4位、秋田県(832,517ha、偏差値53.9)が6位と上位に位置しています。東北地方は全体的に森林資源が豊富で、特に奥羽山脈や北上山地、出羽山地などの山岳地帯に広大な森林が広がっています。冷温帯性の森林が多く、ブナやミズナラなどの広葉樹林が特徴的です。また、スギの人工林も多く、特に秋田県の「秋田杉」は銘柄材として有名です。

関東地方

関東地方は都市化が進んだ地域が多く、林野面積は比較的少ない傾向にあります。栃木県(349,748ha、偏差値48.3)が最も多く、群馬県(341,805ha、偏差値48.2)がそれに続きます。一方、埼玉県(119,466ha、偏差値44.8)、千葉県(160,891ha、偏差値45.3)、東京都(77,125ha、偏差値44.2)は下位に位置しています。関東山地や奥日光、奥多摩などの山岳地帯に森林が集中しており、都市近郊の森林は水源涵養や環境保全、レクリエーションの場として重要な役割を果たしています。

中部・北陸地方

中部・北陸地方は山岳地帯が多く、森林資源が豊富な地域です。長野県(1,029,195ha、偏差値56.5)が全国3位、岐阜県(841,066ha、偏差値54.0)が5位、新潟県(802,757ha、偏差値53.5)が7位と上位に位置しています。日本アルプスや飛騨山脈、木曽山脈などの山岳地帯に広大な森林が広がり、標高差による多様な森林生態系が見られます。カラマツやヒノキの人工林が多いことが特徴で、特に長野県のカラマツ林や岐阜県の東濃ヒノキは高品質な木材として知られています。

近畿地方

近畿地方は都市化が進んだ地域と山間部が混在しています。三重県(371,191ha、偏差値48.5)や和歌山県(361,522ha、偏差値48.4)は比較的林野面積が多い一方、大阪府(57,127ha、偏差値44.0)は全国最下位となっています。紀伊山地や鈴鹿山脈などの山岳地帯に森林が集中しており、特に奈良県と和歌山県にまたがる紀伊山地は「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されています。スギやヒノキの人工林が多く、特に奈良県の「吉野林業」は持続可能な林業の先駆けとして知られています。

中国・四国地方

中国・四国地方は山地が多く、森林資源が豊富な地域です。島根県(528,356ha、偏差値50.1)や高知県(596,358ha、偏差値50.9)などが比較的上位に位置しています。一方、香川県(87,184ha、偏差値44.3)は全国で3番目に林野面積が少なくなっています。中国山地や四国山地に広大な森林が広がり、特に高知県は県土の84%が森林に覆われており、「森林県」として知られています。スギやヒノキの人工林が多く、特に高知県の「魚梁瀬杉」や「土佐ヒノキ」は高品質な木材として評価されています。

九州・沖縄地方

九州地方は火山地帯が多く、森林資源も比較的豊富です。熊本県(468,637ha、偏差値49.5)や大分県(453,701ha、偏差値49.3)などが中位に位置しています。一方、佐賀県(110,610ha、偏差値44.6)は九州地方で最も林野面積が少なくなっています。阿蘇山や九重山、霧島山などの火山周辺に広大な森林が広がり、スギやヒノキの人工林が多いことが特徴です。特に宮崎県は「飫肥杉」の産地として知られています。沖縄県(115,602ha、偏差値44.7)は亜熱帯性気候に適応した独特の森林生態系を有しており、やんばる国立公園などに貴重な自然林が残されています。

林野面積の地域差と課題

地理的条件と林野面積の関係

林野面積の地域差は、各地域の地形や気候などの自然条件と密接に関連しています。山岳地帯が多い地域では林野面積が広く、平野部が多い地域や都市化が進んだ地域では林野面積が限られています。北海道や東北、中部地方などの山岳地帯が多い地域では林野面積が広く、関東平野や大阪平野などの平野部が広がる地域では林野面積が少ない傾向にあります。

北海道と大阪府では約96倍もの差があり、この格差は面積の差(約22倍)を大きく上回っています。これは単に面積だけでなく、地形や都市化の程度も反映しています。

森林の多面的機能と保全の重要性

森林は木材生産だけでなく、水源涵養、土砂災害防止、生物多様性保全、二酸化炭素吸収など多面的な機能を有しています。特に近年は地球温暖化対策としての森林の役割が注目されており、森林の適切な管理と保全が重要な課題となっています。

しかし、林業の採算性の悪化や担い手不足により、適切に管理されていない森林が増加しています。特に人工林では間伐などの手入れが行き届かず、森林の多面的機能が低下している地域も見られます。

林業の再生と持続可能な森林管理

林業の再生と持続可能な森林管理は、森林資源を豊富に有する地域の重要な課題です。木材価格の低迷や担い手不足、高齢化などにより、林業は厳しい状況に置かれていますが、近年は木質バイオマスエネルギーの利用拡大や、CLT(直交集成板)などの新たな木材利用技術の開発により、林業の可能性が広がっています。

また、森林環境譲与税の創設により、都市部から森林地域への資金移転の仕組みが整備され、森林整備や担い手確保の取り組みが進められています。持続可能な森林管理を実現するためには、林業の採算性向上と担い手確保、森林の多面的機能の評価と支援制度の充実が重要です。

統計データの基本情報

この統計データは2019年度の都道府県別林野面積を示しています。林野面積とは、森林法に基づく森林以外にも、主として木竹が集団して生育している土地や、木竹の集団的生育に供される土地を含む概念です。

データの分析から、以下のような特徴が見られます:

  1. 分布の歪み: 林野面積の分布は強い正の歪みを示しており、平均値(約50万ha)が中央値(約35万ha)を大きく上回っています。これは北海道の突出した値が平均値を押し上げているためです。
  2. 明確な外れ値の存在: 北海道(5,503,768ha)は明らかな外れ値であり、第2位の岩手県(1,152,364ha)との間にも大きな差があります。
  3. 四分位範囲: 上位25%の都道府県(第3四分位)は約50万ha以上、下位25%(第1四分位)は約15万ha以下となっており、中間50%の範囲も比較的広く、地域間格差の大きさを示しています。
  4. 標準偏差の大きさ: 標準偏差は約80万haと非常に大きく、平均値の約160%に相当します。これは都道府県間のばらつきが極めて大きいことを示しています。
  5. 総面積との相関: 林野面積は県の総面積と高い相関関係にありますが、森林率(県土に占める森林の割合)は地域によって大きく異なります。高知県や岐阜県などは森林率が80%を超える一方、大阪府や神奈川県などは40%以下となっています。

まとめ

林野面積は地域の森林資源の分布を示す重要な指標です。北海道や岩手県、長野県などの山岳地帯が多い地域で広大な林野面積を有する一方、大阪府や東京都などの都市化が進んだ地域では林野面積が限定的となっています。

この地域間格差は、地形や気候などの自然条件、歴史的な土地利用の変遷、都市化の進展など様々な要因によって形成されてきました。特に高度経済成長期以降の都市開発により、都市近郊の森林は大きく減少しました。

森林は木材生産だけでなく、水源涵養、土砂災害防止、生物多様性保全、二酸化炭素吸収など多面的な機能を有しており、その適切な管理と保全は重要な課題です。特に近年は地球温暖化対策としての森林の役割が注目されており、森林吸収源としての機能強化が求められています。

一方、林業の採算性の悪化や担い手不足により、適切に管理されていない森林が増加しています。持続可能な森林管理を実現するためには、林業の再生と活性化、森林の多面的機能の評価と支援制度の充実が重要です。

林野面積のデータは、日本の森林資源の現状や地域間格差を反映しており、持続可能な森林管理に向けた政策立案の基礎資料となるものです。地域特性を踏まえた効果的な森林政策の推進が、森林の多面的機能の発揮につながると考えられます。

出典