都道府県別森林面積割合ランキング(2019年度)
概要
2019年度の都道府県別森林面積割合(森林率)を比較すると、高知県が全国1位で83.3%、奈良県が2位で77.0%、岐阜県が3位で76.4%となっています。森林面積割合は、都道府県の総面積に占める森林面積の割合を示す指標で、日本全体では約67%が森林に覆われています。
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上位5県と下位5県の比較
上位5県の特徴
- 高知県(83.3%、偏差値64.7): 四国地方に位置し、四国山地が県土の大部分を占めています。急峻な地形と豊富な降水量により、豊かな森林が育まれています。「森林県」として知られ、スギやヒノキの人工林が多く、「魚梁瀬杉」や「土佐ヒノキ」は高品質な木材として評価されています。県土の8割以上が森林という高い森林率は全国でも突出しています。
- 奈良県(77.0%、偏差値60.4): 近畿地方に位置し、大和高原や吉野山地などの山岳地帯に広大な森林を有しています。特に吉野地域は「吉野林業」の発祥地として知られ、持続可能な林業の先駆けとして世界的にも評価されています。スギやヒノキの人工林が多く、古くから良質な木材の産地として栄えてきました。
- 岐阜県(76.4%、偏差値60.0): 中部地方に位置し、飛騨山脈や木曽山脈などの山岳地帯に広大な森林を有しています。特に東濃地域は「東濃ヒノキ」の産地として知られ、高品質な木材の生産地となっています。標高差による多様な森林生態系が見られ、豊かな森林資源を活かした林業が盛んです。
- 山梨県(75.8%、偏差値59.6): 中部地方に位置し、富士山や南アルプス、八ヶ岳などの山岳地帯に広大な森林を有しています。特に富士山麓のアカマツ林や南アルプスのシラビソ林など、標高に応じた多様な森林が分布しています。水源涵養林としての役割も重要で、首都圏の水源地としても機能しています。
- 宮崎県(75.5%、偏差値59.4): 九州地方に位置し、九州山地に広大な森林を有しています。特に「飫肥杉」の産地として知られ、古くから林業が盛んな地域です。温暖な気候と豊富な降水量により、成長の早い森林が育まれています。人工林率が高く、計画的な森林経営が行われています。
下位5県の特徴
- 大阪府(30.4%、偏差値28.9): 近畿地方に位置し、高度に都市化された地域です。北部の北摂山地や南部の金剛山地などに森林が残されていますが、都市開発により森林面積は限られています。全国で最も森林率が低く、全国平均の半分以下となっています。残された森林は都市住民の憩いの場として重要な役割を果たしています。
- 茨城県(32.4%、偏差値30.3): 関東地方に位置し、平野部が多いことが特徴です。県北部の八溝山地や筑波山などに森林が分布していますが、関東平野の一部を形成する平坦な地形が多いため、森林率は低くなっています。農地としての土地利用が多く、特に平野部では稲作や畑作が盛んです。
- 千葉県(32.5%、偏差値30.4): 関東地方に位置し、平野部が多いことが特徴です。房総丘陵や清澄山系などに森林が分布していますが、東京湾沿岸部を中心に都市化が進んでいるため、森林率は低くなっています。特に北西部は首都圏の一部として高度に都市化されています。
- 埼玉県(32.7%、偏差値30.5): 関東地方に位置し、県北西部の秩父山地に森林が集中しています。一方、県南東部は関東平野の一部を形成し、高度に都市化されているため、森林率は低くなっています。秩父地域の森林は水源涵養や首都圏の憩いの場として重要な役割を果たしています。
- 神奈川県(39.4%、偏差値35.1): 関東地方に位置し、丹沢山地や箱根山などに森林が残されています。一方、横浜市や川崎市を中心とした東京湾沿岸部は高度に都市化されているため、森林率は低くなっています。残された森林は水源涵養や都市住民の憩いの場として重要な役割を果たしています。
地域別の特徴分析
北海道・東北地方
北海道・東北地方は全体的に森林率が高い傾向にありますが、地域内でも差があります。岩手県(74.6%、偏差値58.8)が最も高く、次いで秋田県(70.3%、偏差値55.9)、山形県(69.0%、偏差値55.0)と続きます。一方、宮城県(55.4%、偏差値45.8)は比較的低くなっています。北海道(67.7%、偏差値54.1)は面積が広大なため、森林面積自体は最大ですが、森林率としては中位に位置しています。
この地域は奥羽山脈や北上山地、出羽山地などの山岳地帯に広大な森林が広がっており、冷温帯性の森林が多く、ブナやミズナラなどの広葉樹林が特徴的です。また、スギの人工林も多く、特に秋田県の「秋田杉」は銘柄材として有名です。
関東地方
関東地方は全国的に見て森林率が低い傾向にあります。群馬県(67.3%、偏差値53.8)が最も高く、次いで栃木県(52.9%、偏差値44.1)となっています。一方、茨城県(32.4%、偏差値30.3)、千葉県(32.5%、偏差値30.4)、埼玉県(32.7%、偏差値30.5)、神奈川県(39.4%、偏差値35.1)は全国的にも森林率が低い県となっています。
これは関東平野という広大な平野部が広がっていることと、首都圏として高度に都市化されていることが主な要因です。森林は関東山地や奥日光、奥多摩などの山岳地帯に集中しており、都市近郊の森林は水源涵養や環境保全、レクリエーションの場として重要な役割を果たしています。
中部・北陸地方
中部・北陸地方は全体的に森林率が高い傾向にあります。岐阜県(76.4%、偏差値60.0)、山梨県(75.8%、偏差値59.6)が特に高く、次いで長野県(74.9%、偏差値59.0)、福井県(74.4%、偏差値58.7)と続きます。一方、愛知県(42.2%、偏差値37.0)は比較的低くなっています。
この地域は日本アルプスや飛騨山脈、木曽山脈などの山岳地帯に広大な森林が広がり、標高差による多様な森林生態系が見られます。カラマツやヒノキの人工林が多いことが特徴で、特に長野県のカラマツ林や岐阜県の東濃ヒノキは高品質な木材として知られています。
近畿地方
近畿地方は森林率の地域差が大きいことが特徴です。奈良県(77.0%、偏差値60.4)が全国2位と非常に高く、次いで和歌山県(73.9%、偏差値58.3)、三重県(64.9%、偏差値52.2)と続きます。一方、大阪府(30.4%、偏差値28.9)は全国最下位となっています。
紀伊山地や鈴鹿山脈などの山岳地帯に森林が集中しており、特に奈良県と和歌山県にまたがる紀伊山地は「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されています。スギやヒノキの人工林が多く、特に奈良県の「吉野林業」は持続可能な林業の先駆けとして知られています。
中国・四国地方
中国・四国地方も森林率が高い地域が多いです。高知県(83.3%、偏差値64.7)が全国1位と突出しており、次いで徳島県(74.1%、偏差値58.5)、愛媛県(71.1%、偏差値56.4)と続きます。一方、香川県(46.7%、偏差値39.9)は比較的低くなっています。
中国山地や四国山地に広大な森林が広がり、特に高知県は県土の8割以上が森林に覆われており、「森林県」として知られています。スギやヒノキの人工林が多く、特に高知県の「魚梁瀬杉」や「土佐ヒノキ」は高品質な木材として評価されています。
九州・沖縄地方
九州・沖縄地方は森林率が中程度の地域が多いです。宮崎県(75.5%、偏差値59.4)が最も高く、次いで大分県(70.8%、偏差値56.2)となっています。一方、福岡県(44.5%、偏差値38.5)や佐賀県(45.3%、偏差値39.0)は比較的低くなっています。
阿蘇山や九重山、霧島山などの火山周辺に広大な森林が広がり、スギやヒノキの人工林が多いことが特徴です。特に宮崎県は「飫肥杉」の産地として知られています。沖縄県(46.7%、偏差値39.9)は亜熱帯性気候に適応した独特の森林生態系を有しており、やんばる国立公園などに貴重な自然林が残されています。
森林面積割合の地域差と課題
地理的条件と森林面積割合の関係
森林面積割合の地域差は、各地域の地形や気候などの自然条件と密接に関連しています。山岳地帯が多い地域では森林率が高く、平野部が多い地域や都市化が進んだ地域では森林率が低い傾向にあります。高知県や奈良県、岐阜県などの森林率が高い県は、いずれも山地が多く平野部が少ないという地形的特徴を持っています。
一方、大阪府や茨城県、千葉県などの森林率が低い県は、平野部が多く都市化や農地化が進んでいるという特徴があります。特に大阪府は高度に都市化されており、森林率は30.4%と全国平均の半分以下となっています。
森林の多面的機能と地域特性
森林は木材生産だけでなく、水源涵養、土砂災害防止、生物多様性保全、二酸化炭素吸収など多面的な機能を有しています。森林率の高い地域は、これらの多面的機能による恩恵を受けやすい一方、森林管理の負担も大きくなります。
例えば、高知県や奈良県などの森林率が高い県では、森林の適切な管理が水源涵養や土砂災害防止に直結します。特に近年は気候変動の影響で豪雨災害が増加しており、森林の防災機能の重要性が高まっています。
一方、大阪府や神奈川県などの都市化が進んだ地域では、限られた森林の価値が非常に高く、都市住民の憩いの場や環境教育の場として重要な役割を果たしています。都市近郊の森林は、ヒートアイランド現象の緩和や生物多様性の保全にも貢献しています。
森林管理の課題と持続可能な取り組み
森林率の高い地域では、林業の担い手不足や高齢化、木材価格の低迷などにより、適切に管理されていない森林が増加しています。特に人工林では間伐などの手入れが行き届かず、森林の多面的機能が低下している地域も見られます。
一方、森林率の低い都市部では、残された森林の保全と活用が課題となっています。都市開発の圧力から森林を守りつつ、都市住民が森林の恵みを享受できるような取り組みが求められています。
持続可能な森林管理を実現するためには、地域の特性に応じた取り組みが重要です。森林環境譲与税の創設により、都市部から森林地域への資金移転の仕組みが整備され、森林整備や担い手確保の取り組みが進められています。また、木質バイオマスエネルギーの利用拡大や、CLT(直交集成板)などの新たな木材利用技術の開発により、林業の可能性が広がっています。
統計データの基本情報
この統計データは2019年度の都道府県別森林面積割合を示しています。森林面積割合(森林率)とは、都道府県の総面積に占める森林面積の割合を示す指標です。
データの分析から、以下のような特徴が見られます:
- 分布の特徴: 森林面積割合の全国平均は約67%で、最高値は高知県の83.3%、最低値は大阪府の30.4%となっています。全体的には正規分布に近い形状を示していますが、大阪府や茨城県などの低森林率の県がやや外れ値となっています。
- 地域差: 森林面積割合は地域によって大きく異なり、四国地方や中部山岳地域で高く、関東平野や大阪平野などの都市化・農地化が進んだ地域で低い傾向があります。
- 四分位範囲: 上位25%の都道府県(第3四分位)は約75%以上、下位25%(第1四分位)は約45%以下となっており、中間50%の範囲は比較的広く、地域間格差の大きさを示しています。
- 標準偏差: 標準偏差は約15%ポイントで、平均値の約22%に相当します。これは都道府県間のばらつきがある程度大きいことを示しています。
- 総面積との関係: 森林面積割合は総面積との相関は弱く、小さな県でも森林率が高い場合(例:奈良県)や、大きな県でも森林率が中程度の場合(例:北海道)があります。
まとめ
森林面積割合は地域の自然環境や土地利用の特徴を示す重要な指標です。高知県や奈良県、岐阜県などの山岳地帯が多い地域で森林率が高く、大阪府や茨城県、千葉県などの平野部が多い地域や都市化が進んだ地域では森林率が低くなっています。
この地域間格差は、地形や気候などの自然条件、歴史的な土地利用の変遷、都市化や農地化の進展など様々な要因によって形成されてきました。特に高度経済成長期以降の都市開発や農地開発により、平野部の森林は大きく減少しました。
森林は多面的な機能を有しており、その適切な管理と保全は重要な課題です。森林率の高い地域では林業の再生と活性化が、森林率の低い地域では残された森林の保全と活用が求められています。
近年は地球温暖化対策としての森林の役割が注目されており、二酸化炭素吸収源としての機能強化が求められています。また、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、森林の持続可能な管理は重要な課題となっています。
森林面積割合のデータは、日本の森林資源の現状や地域特性を反映しており、持続可能な森林管理や国土利用に向けた政策立案の基礎資料となるものです。地域特性を踏まえた効果的な森林政策の推進が、森林の多面的機能の発揮につながると考えられます。