概要
就職率とは、求職者に対する就職者の割合を示す指標です。この指標は、地域の雇用環境や労働市場の状況、経済活動の活発さなどを反映しています。2021年度のデータによると、地方圏、特に東北地方や北陸地方で高く、大都市圏で低い傾向が見られます。
全国平均は6.09%、中央値は6.10%となっており、地域間の格差が顕著に表れています。
地図データを読み込み中...
上位県と下位県の比較
上位5県の詳細説明
1位は福井県で9.5%(偏差値67.8)と全国で最も高い就職率を示しています。福井県は製造業が盛んで、特に繊維産業や眼鏡産業などの地場産業が発達しており、地域に根ざした雇用が多いことが要因と考えられます。また、原子力発電所関連の雇用も地域経済を支えています。
2位は秋田県で9.1%(偏差値65.7)となっています。秋田県は人口減少が進む中で、地域内での雇用確保に力を入れており、地元企業と求職者のマッチングが比較的うまく機能していることが背景にあります。また、製造業や農林水産業など地域資源を活かした産業が根付いています。
3位は同率で岩手県と島根県で、ともに8.8%(偏差値64.2)です。両県とも地方圏に位置し、地域内での就職を促進する取り組みが活発であることが高い就職率につながっています。岩手県は震災復興関連の雇用創出も継続しており、島根県は地場産業と公共部門が地域の雇用を支えています。
5位は宮崎県で8.6%(偏差値63.1)となっています。宮崎県は農業や食品加工業が盛んで、これらの産業が地域の雇用を支えていることが要因です。また、企業誘致にも積極的で、地域内での雇用機会の創出に成功しています。
下位5県の詳細説明
47位は東京都で2.1%(偏差値29.2)と最も低い割合となっています。東京都は求職者数が多く、また転職や就職活動の選択肢が多いため、就職率が低くなる傾向があります。高度なスキルを求める求人も多く、マッチングに時間がかかる傾向も見られます。
46位は神奈川県で2.5%(偏差値31.3)、45位は大阪府で2.8%(偏差値32.9)となっています。これらの大都市圏も東京都と同様に、求職者数が多く、就職活動が長期化する傾向があります。また、都心部への通勤が容易なため、就職先の地理的範囲が広く、選択肢の多さが就職決定を遅らせる要因となっています。
44位は埼玉県で2.9%(偏差値33.4)、43位は千葉県で3.0%(偏差値33.9)です。首都圏のベッドタウンとしての性格が強く、東京都内での就職を希望する求職者が多いことが低い就職率の要因となっています。また、地域内の求人と求職者のミスマッチも影響しています。
地域別の特徴分析
東北地方の高い就職率
東北地方の平均就職率は7.88%と全国的に見て最も高い水準にあります。特に秋田県(9.1%)、岩手県(8.8%)、山形県(8.6%)で高く、最も低い宮城県でも5.7%と全国平均を上回っています。
東北地方では、人口減少や高齢化が進む中で、地域内での雇用確保を重視する傾向があります。また、製造業や農林水産業など地域資源を活かした産業が発達しており、地元での就職を促進する取り組みも活発です。特に、震災復興関連の雇用創出が継続している地域もあり、これが高い就職率につながっています。
関東地方の低い就職率
関東地方の平均就職率は3.74%と全国で最も低くなっています。特に東京都(2.1%)、神奈川県(2.5%)、埼玉県(2.9%)、千葉県(3.0%)と大都市圏で低く、地方部の群馬県でも5.5%と全国平均を下回っています。
関東地方、特に首都圏では求職者数が多く、また就職先の選択肢も多いため、就職活動が長期化する傾向があります。高度なスキルを求める求人も多く、マッチングに時間がかかる傾向も見られます。また、転職市場も活発で、より条件の良い就職先を求めて活動を継続する求職者も多いことが、低い就職率の背景にあります。
中部・北陸地方の特徴
中部・北陸地方の平均就職率は6.40%と全国平均をやや上回っています。特に福井県(9.5%)、富山県(7.8%)、新潟県(7.7%)といった北陸地方で高く、愛知県(3.5%)など大都市を有する地域で低くなっています。
北陸地方では製造業を中心とした地場産業が発達しており、地域に根ざした雇用が多いことが高い就職率につながっています。一方、愛知県は大企業が多く、高度な技術や専門性を求める求人が多いため、マッチングに時間がかかる傾向があります。
近畿地方の低い就職率
近畿地方の平均就職率は4.66%と全国平均を下回っています。特に大阪府(2.8%)、兵庫県(3.7%)、京都府(3.8%)と都市部で低く、和歌山県(6.0%)など地方部でやや高くなっています。
関西圏も首都圏と同様に、求職者数が多く、就職先の選択肢も多いため、就職活動が長期化する傾向があります。また、経済規模は首都圏に次ぐものの、雇用創出力では首都圏に劣る面があり、これが低い就職率の一因となっています。
中国・四国地方の安定した就職率
中国・四国地方の平均就職率は6.93%と全国平均を上回っています。特に島根県(8.8%)、山口県(7.8%)、香川県(7.3%)で高く、最も低い広島県でも5.5%と大きく平均を下回ることはありません。
中国・四国地方では、地場産業が発達している地域が多く、地域内での雇用が比較的安定しています。また、UIターン就職を促進する取り組みも活発で、地元出身者の還流も見られます。広島県は中国地方の経済中心地であるため、他の地方県と比べてやや低い傾向にあります。
九州・沖縄地方の地域差
九州・沖縄地方の平均就職率は6.99%と全国平均を上回っています。特に宮崎県(8.6%)、長崎県(8.1%)、大分県(8.1%)で高く、福岡県(4.4%)と沖縄県(4.5%)で低くなっています。
九州地方では、地域に根ざした産業が発達している県で就職率が高い傾向にあります。特に、農業や食品加工業が盛んな宮崎県や、造船業が盛んな長崎県などが代表例です。一方、福岡県は九州の経済中心地であり、求職者数が多いことが低い就職率の背景にあります。沖縄県は観光業への依存度が高く、季節変動や経済環境の影響を受けやすいことが就職率に影響していると考えられます。
格差や課題の考察
地方と都市の雇用環境の違い
就職率の地域差からは、大都市圏と地方圏の雇用環境の違いが明確に表れています。地方圏では求職者数に対して求人数が比較的バランスしており、また地域内での就職を促進する取り組みが活発であるため、就職率が高い傾向があります。一方、大都市圏では求職者数が多く、また就職先の選択肢も多いため、就職活動が長期化しやすく、就職率が低くなる傾向があります。
この格差は、単純に雇用環境の良し悪しを示すものではなく、労働市場の特性や求職者の行動様式の違いを反映しています。大都市圏では転職市場も活発で、より条件の良い就職先を求めて活動を継続する求職者も多いことが、低い就職率の背景にあります。
産業構造と就職率の関係
製造業や農業など、地域に根ざした産業が発達している地域では就職率が高い傾向があります。これらの産業は地域内での雇用を生み出し、地元での就職を促進する効果があります。特に、福井県の繊維・眼鏡産業、秋田県の電子部品製造業、宮崎県の農業・食品加工業などが代表例です。
一方、サービス業や情報通信業など、大都市圏に集中する産業が中心の地域では、就職率が低くなる傾向があります。これらの産業では高度なスキルや専門性を求める求人も多く、マッチングに時間がかかる傾向があります。
人口移動と就職環境の関係
地方圏から大都市圏への人口流出が続く中、地方圏では地元での就職を促進するための取り組みが活発化しています。UIターン就職の促進や地域企業とのマッチング強化、地域産業の活性化などの取り組みが、地方圏での高い就職率につながっています。
一方、大都市圏では若年層を中心とした人口流入が続いており、求職者数の増加が就職率の低下につながっている面があります。特に、首都圏では地方からの転入者が多く、これが労働市場の競争を激化させる要因となっています。
統計データの基本情報と分析
統計的分析
全国の就職率の平均値は6.09%、**中央値は6.10%**とほぼ一致しており、分布の偏りは小さいと言えます。しかし、最大値(福井県の9.5%)と最小値(東京都の2.1%)の差は7.4ポイントと大きく、都道府県間の格差は顕著です。
**標準偏差は約1.92%**で、データのばらつきはかなり大きいと言えます。特に、上位の東北・北陸地方の県と下位の首都圏・関西圏の県の間には明確な差があり、地域による就職環境の違いが表れています。
四分位範囲を見ると、第1四分位数(Q1)は4.50%、第3四分位数(Q3)は7.70%で、四分位範囲(IQR)は3.20%となっています。中央の50%の県は比較的近い値に集中しており、極端に高い、または低い一部の県が全体の分布に大きな影響を与えていることがわかります。
まとめ
2021年度の就職率は、福井県が9.5%で全国1位、東京都が2.1%で全国47位となりました。地方圏、特に東北地方(平均7.88%)や九州地方(平均6.99%)で高く、大都市圏を含む関東地方(平均3.74%)や近畿地方(平均4.66%)で低い傾向が明確に表れています。
この指標は、地域の雇用環境や労働市場の状況を反映しており、地域経済の活力や雇用政策の効果を測る上で重要な視点を提供しています。特に、産業構造や人口動態との関連性が強く、地域特性に根ざした就職環境の違いが浮き彫りになっています。
地方創生や地域活性化の観点からも、就職率の向上は重要な課題であり、地域特性に応じた雇用創出や人材育成の取り組みが求められます。特に、地場産業の活性化や若年層の地元定着促進など、地域の特性を活かした政策が効果的と考えられます。