都道府県別就業者比率ランキング(2020年度)
概要
就業者比率とは、労働力人口(就業者と完全失業者の合計)に占める就業者の割合を指します。この指標は、労働市場の需給バランスや雇用状況を示す重要な指標であり、値が高いほど失業率が低いことを意味します。この記事では、2020年度の都道府県別就業者比率のランキングを紹介します。
就業者比率は、地域の産業構造や経済状況、雇用環境などを反映しており、地域経済政策や雇用政策の基礎データとして重要な指標です。2020年度は、島根県や福井県などの地方県で就業者比率が高く、沖縄県や青森県、福岡県などで低くなっています。
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上位県と下位県の比較
就業者比率が高い上位5県
2020年度の就業者比率ランキングでは、島根県が97.3%(偏差値72.9)で全国1位となりました。島根県は地場産業(特に製造業や農林水産業)が発達しており、多様な就業機会が存在します。また、人口流出により残った労働力人口の就業機会が比較的確保されやすい環境にあることも一因と考えられます。
2位は福井県で97.1%(偏差値68.8)、3位は三重県で96.9%(偏差値64.6)、4位は富山県で96.9%(偏差値64.6)、5位は愛知県で96.7%(偏差値60.5)となっています。上位県には製造業が盛んな県が多く、安定した雇用機会が確保されていることが高い就業者比率につながっていると考えられます。
就業者比率が低い下位5県
最も就業者比率が低かったのは沖縄県で94.5%(偏差値14.9)でした。沖縄県は観光業が主要産業であり、季節変動や非正規雇用が多いことが低い就業者比率の一因と考えられます。また、若年層の失業率が高いことも特徴です。
46位は青森県と福岡県でともに95.4%(偏差値33.6)、44位は大阪府で95.5%(偏差値35.6)、43位は宮城県で95.7%(偏差値39.8)となっています。下位県には大都市を有する都府県や、産業構造の変化に直面している地域が多く見られます。
地域別の特徴分析
東北地方の雇用状況
東北地方では、山形県(8位、96.6%)が最も就業者比率が高く、青森県(46位、95.4%)が最も低くなっています。その他の県は、岩手県(24位、96.2%)、宮城県(43位、95.7%)、秋田県(37位、95.9%)、福島県(38位、95.9%)と、全国的に見るとばらつきがあります。
東北地方は全国的に見ると就業者比率に地域差があります。これは、山形県などの製造業や農業が盛んな県と、青森県や宮城県などの産業構造の変化に直面している県との差を反映していると考えられます。
特に山形県で就業者比率が高い理由としては、製造業(特に電子部品や機械産業)が盛んであることに加え、農業(特に果樹栽培)も発達しており、多様な就業機会が存在することが挙げられます。また、地域コミュニティのつながりが強く、地元での就業を重視する傾向があることも影響していると考えられます。
一方、青森県で就業者比率が低い理由としては、第一次産業(特に農林水産業)の衰退や、若年層の県外流出による労働市場のミスマッチが挙げられます。また、冬季の厳しい気候条件により、季節的な失業が発生しやすいことも影響していると考えられます。
関東地方の都市化と雇用動向
関東地方では、東京都(16位、96.4%)が最も就業者比率が高く、埼玉県(32位、96.0%)が最も低くなっています。その他の県は、茨城県(28位、96.1%)、栃木県(36位、95.9%)、群馬県(23位、96.2%)、千葉県(21位、96.2%)、神奈川県(19位、96.3%)と、全国的に見ると中位から上位に位置しています。
関東地方全体として就業者比率は比較的高い水準を維持しています。特に東京都は首都として多様な産業が集積しており、サービス業や情報通信業など幅広い雇用機会が提供されています。
一方で、埼玉県などのベッドタウンでは相対的に就業者比率が低くなっています。これは東京都への通勤者が多く、地元での雇用機会が相対的に少ないことや、景気変動の影響を受けやすい製造業の比率が高いことなどが要因と考えられます。
中部・北陸地方の製造業と雇用環境
中部・北陸地方では、福井県(2位、97.1%)が最も就業者比率が高く、山梨県(29位、96.1%)が最も低くなっています。その他の県は、新潟県(15位、96.4%)、富山県(4位、96.9%)、石川県(11位、96.6%)、長野県(6位、96.7%)、岐阜県(7位、96.7%)、静岡県(22位、96.2%)、愛知県(5位、96.7%)と、全国的に見ると上位から中位に位置しています。
中部・北陸地方全体として就業者比率が高い理由としては、製造業(特に機械産業や電子部品産業)が盛んであり、安定した雇用機会が多いことが挙げられます。特に福井県や富山県、石川県などの北陸地方では、地場産業が発達しており、地域に根ざした雇用が確保されていることが特徴です。
特に福井県で就業者比率が高い理由としては、繊維産業や眼鏡産業などの地場産業が発達していることに加え、原子力発電所関連の雇用も多いことが挙げられます。また、三世代同居率が高く、家族のサポートを受けながら働ける環境が整っていることも影響していると考えられます。
近畿地方の経済構造と雇用特性
近畿地方では、三重県(3位、96.9%)が最も就業者比率が高く、大阪府(44位、95.5%)が最も低くなっています。その他の県は、滋賀県(9位、96.6%)、京都府(35位、95.9%)、兵庫県(30位、96.0%)、奈良県(34位、95.9%)、和歌山県(26位、96.1%)と、全国的に見ると上位から下位まで幅広く分布しています。
近畿地方は地域によって就業者比率に大きな差が見られます。特に三重県や滋賀県などの製造業が盛んな県では就業者比率が高く、大阪府や京都府などの大都市では相対的に低くなっています。
特に三重県で就業者比率が高い理由としては、自動車関連や電子部品などの製造業が発達していることに加え、石油化学コンビナートなどの大規模工場も立地しており、安定した雇用機会が確保されていることが挙げられます。
一方、大阪府で就業者比率が低い理由としては、製造業の衰退や産業構造の変化により、労働市場のミスマッチが生じていることが挙げられます。また、若年層の失業率が高いことや、非正規雇用が多いことも影響していると考えられます。
中国・四国地方の産業特性と雇用傾向
中国・四国地方では、島根県(1位、97.3%)が最も就業者比率が高く、徳島県(42位、95.8%)が最も低くなっています。その他の県は、鳥取県(14位、96.5%)、岡山県(18位、96.4%)、広島県(10位、96.6%)、山口県(13位、96.5%)、香川県(12位、96.5%)、愛媛県(20位、96.3%)、高知県(39位、95.9%)と、高知県と徳島県を除くと全国的に見ると中位から上位に位置しています。
中国・四国地方全体として、特に中国地方では就業者比率が高い傾向があります。これは製造業や公共事業などが地域経済を支えていることや、地域コミュニティの強さが雇用の安定につながっていると考えられます。
特に島根県で就業者比率が全国1位となっている理由としては、人口減少により労働力人口自体が減少する中で、残った労働力の就業機会は比較的確保されやすい状況にあることが挙げられます。また、製造業や公務員などの安定した雇用が地域経済を支えていることも重要な要因です。
一方、四国地方では徳島県と高知県で相対的に就業者比率が低くなっています。これは第一次産業の衰退や若年層の流出などが影響していると考えられます。
九州・沖縄地方の地域経済と雇用構造
九州・沖縄地方では、佐賀県(17位、96.4%)が最も就業者比率が高く、沖縄県(47位、94.5%)が最も低くなっています。その他の県は、福岡県(45位、95.4%)、長崎県(25位、96.2%)、熊本県(27位、96.1%)、大分県(40位、95.8%)、宮崎県(33位、96.0%)、鹿児島県(31位、96.0%)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
九州・沖縄地方全体として就業者比率が比較的低い理由としては、第一次産業(特に農林水産業)の衰退や、若年層の都市部への流出による労働市場のミスマッチが挙げられます。特に沖縄県や福岡県では、観光業やサービス業など季節変動や景気変動の影響を受けやすい産業が多いことも特徴です。
特に沖縄県で就業者比率が最も低い理由としては、観光業が主要産業であり、季節変動や景気変動の影響を受けやすいことが挙げられます。また、若年層の失業率が高いことや、非正規雇用が多いことも影響していると考えられます。さらに、米軍基地関連の雇用も多く、特殊な労働市場構造を持っていることも特徴です。
福岡県については、九州最大の都市圏を持ちながらも就業者比率が低い理由として、若年層の流入による労働力人口の増加に対して、雇用機会の創出が追いついていないことが考えられます。また、サービス業や小売業など景気変動の影響を受けやすい産業の比率が高いことも要因の一つです。
就業者比率の格差がもたらす影響と課題
地域経済への影響
就業者比率の地域間格差は、地域経済にも影響を与えます。就業者比率が高い地域では、所得水準が安定し、消費活動が活発化する傾向があります。また、税収も安定するため、公共サービスの充実にもつながります。一方、就業者比率が低い地域では、所得水準が不安定になり、消費活動が低迷する傾向があります。また、社会保障費の増加や税収の減少により、財政状況が悪化する可能性があります。
例えば、島根県(1位、97.3%)では、就業者比率が高いことにより、所得水準が安定し、消費活動が活発化しています。また、税収も安定しているため、公共サービスの充実にもつながっています。
一方、沖縄県(47位、94.5%)では、就業者比率が低いことにより、所得水準が不安定になり、消費活動が低迷する傾向があります。また、社会保障費の増加や税収の減少により、財政状況が悪化する可能性があります。
社会保障制度への影響
就業者比率の地域間格差は、社会保障制度にも影響を与えます。就業者比率が低い地域では、失業給付や生活保護などの社会保障費が増加する傾向があります。また、税収が減少するため、社会保障制度の持続可能性に課題が生じる可能性があります。
例えば、沖縄県(47位、94.5%)では、就業者比率が低いことにより、失業給付や生活保護などの社会保障費が増加する傾向があります。また、税収が減少するため、社会保障制度の持続可能性に課題が生じる可能性があります。
一方、島根県(1位、97.3%)では、就業者比率が高いことにより、社会保障費が抑制され、税収も安定しているため、社会保障制度の持続可能性が確保されやすい状況にあります。
若年層の就業環境への影響
就業者比率の地域間格差は、特に若年層の就業環境にも影響を与えます。就業者比率が低い地域では、若年層の失業率が高くなる傾向があり、これが若年層の地域外への流出を促進する要因となっています。一方、就業者比率が高い地域では、若年層の就業機会が確保されやすく、地域に定着する傾向があります。
例えば、沖縄県(47位、94.5%)では、若年層の失業率が高く、これが若年層の県外への流出を促進する要因となっています。特に、大学卒業後の就職を機に県外に移住する若者が多いことが特徴です。
一方、福井県(2位、97.1%)では、若年層の就業機会が確保されやすく、地域に定着する傾向があります。特に、地場産業が発達していることや、三世代同居率が高いことなどが、若年層の地域定着に寄与していると考えられます。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2020年度の都道府県別就業者比率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約96.2%、中央値も約96.2%とほぼ一致しており、データの分布が比較的対称的であることを示しています。これは、就業者比率が全国的に見て大きな偏りがないことを反映しています。
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分布の歪み:データは全体としてわずかに負の歪みを示しており、左に長い裾を持つ分布となっています。島根県(97.3%)が最も高く、沖縄県(94.5%)が最も低いですが、その差は2.8ポイントと比較的小さく、極端な格差は見られません。
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外れ値の特定:沖縄県(94.5%)は下側の外れ値と考えられ、平均値を大きく下回っています。これは、沖縄県の特殊な産業構造や労働市場の特性を反映していると考えられます。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約95.9%、第3四分位数(Q3)は約96.5%で、四分位範囲(IQR)は約0.6ポイントです。これは、中央の50%の都道府県の就業者比率が95.9%から96.5%の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的近い就業者比率であることがわかります。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約0.6ポイントで、変動係数(標準偏差÷平均値)は約0.6%となり、相対的なばらつきが非常に小さいことを示しています。これは、都道府県間の就業者比率の格差が比較的小さいことを意味します。
まとめ
2020年度の都道府県別就業者比率ランキングでは、島根県が97.3%で1位、沖縄県が94.5%で47位となりました。上位には島根県、福井県、三重県などの製造業が盛んな地方県が多く、下位には沖縄県、青森県、福岡県などの観光業が盛んな地域や都市部が多く見られました。
就業者比率の地域差は、産業構造、雇用環境、地域の特性など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、社会保障制度、若年層の就業環境など様々な面に影響を与えています。
統計分析からは、都道府県間の就業者比率の格差は比較的小さく、多くの県が96%前後の就業者比率であることがわかります。ただし、沖縄県のように特殊な産業構造や労働市場の特性を持つ地域では、就業者比率が全国平均を大きく下回る傾向があります。
少子高齢化が進む日本社会において、就業者比率の維持・向上は重要な課題となっています。特に、若年層や女性、高齢者など多様な労働力の活用や、地域の特性を活かした産業の育成などが求められています。また、デジタル化やグローバル化の進展により、労働市場は大きく変化しており、これに対応した人材育成や雇用創出も重要な政策課題です。