都道府県別第3次産業就業者比率ランキング(2020年度)

概要

第3次産業就業者比率とは、全就業者数に占めるサービス業、小売業、金融業、運輸業などの第3次産業に従事している人の割合を指します。この記事では、2020年度の都道府県別第3次産業就業者比率のランキングを紹介します。

第3次産業就業者比率は、地域の産業構造や経済基盤を反映する重要な指標であり、特に都市部や観光地では比率が高くなる傾向があります。東京都や沖縄県などのサービス業が中心の地域で第3次産業就業者比率が高く、長野県や山形県などの製造業が盛んな地域で低くなっています。

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上位県と下位県の比較

第3次産業就業者比率が高い上位5県

2020年度の第3次産業就業者比率ランキングでは、東京都81.1%(偏差値77.1)で全国1位となりました。東京都は日本の政治・経済・文化の中心地であり、国会や中央省庁などの政府機関、東京証券取引所などの金融機関、大手企業の本社、メディア関連企業など、多様な第3次産業が集積しています。また、小売業や飲食業なども極めて発達しており、第3次産業の比率が非常に高くなっています。

2位は沖縄県78.2%(偏差値71.1)、3位は神奈川県76.5%(偏差値67.5)、4位は千葉県75.7%(偏差値65.9)、5位は福岡県74.9%(偏差値64.2)となっています。上位県には大都市圏や観光地が多く含まれており、サービス業や商業が発達していることがわかります。

沖縄県は観光業を中心としたサービス業が発達しており、宿泊業、飲食業、小売業、レジャー産業などの観光関連産業が地域経済の中心となっています。また、米軍基地関連のサービス業も多く、第3次産業の比率が極めて高くなっています。

第3次産業就業者比率が低い下位5県

最も第3次産業就業者比率が低かったのは長野県61.3%(偏差値36.0)でした。長野県は農業や製造業が盛んな地域であり、特に精密機器製造業や食品加工業などが発達しています。第1次産業と第2次産業の比率が比較的高く、相対的に第3次産業の比率が低くなっています。

46位は山形県61.4%(偏差値36.2)、45位は栃木県61.6%(偏差値36.6)、44位は福島県62.0%(偏差値37.4)、43位は富山県62.3%(偏差値38.0)となっています。下位県には製造業が盛んな地域や、第1次産業の比率が比較的高い地域が多く含まれており、第3次産業の比率が相対的に低くなっています。

山形県が低い理由としては、農業(特に果樹栽培)や製造業(特に電子部品製造業)が盛んであることが挙げられます。山形県は全国有数のさくらんぼやラ・フランスの産地であり、農業の比率が比較的高くなっています。また、米沢市を中心に電子部品製造業も発達しており、第2次産業の比率も高くなっています。

地域別の特徴分析

東北地方の産業構造

東北地方では、宮城県(12位、71.4%)の第3次産業就業者比率が最も高く、青森県(26位、67.1%)、秋田県(31位、66.1%)、福島県(44位、62.0%)、岩手県(33位、64.3%)がそれに続き、山形県(46位、61.4%)が最も低くなっています。

東北地方全体として第3次産業就業者比率にばらつきがある理由としては、地域によって産業構造が異なることが挙げられます。特に、宮城県では仙台市という東北地方最大の都市を有しており、商業やサービス業が発達しているため、第3次産業就業者比率が高くなっています。仙台市は東北地方の経済・文化の中心地であり、商業施設やオフィスビルが集積しており、小売業、金融業、サービス業などの第3次産業が発達しています。

一方、山形県で東北地方の中では第3次産業就業者比率が最も低い理由としては、農業(特に果樹栽培)や製造業(特に電子部品製造業)が盛んであることが挙げられます。山形県は全国有数のさくらんぼやラ・フランスの産地であり、農業の比率が比較的高くなっています。また、米沢市を中心に電子部品製造業も発達しており、第2次産業の比率も高くなっています。

関東地方の都市型産業構造

関東地方では、東京都(1位、81.1%)の第3次産業就業者比率が最も高く、神奈川県(3位、76.5%)、千葉県(4位、75.7%)がそれに続いています。その他の県は、埼玉県(9位、73.0%)、茨城県(35位、64.0%)、栃木県(45位、61.6%)、群馬県(41位、62.5%)と、全国的に見ると上位から下位まで幅広く分布しています。

関東地方全体として第3次産業就業者比率にばらつきがある理由としては、都市部と地方部で産業構造が大きく異なることが挙げられます。特に、東京都や神奈川県、千葉県、埼玉県などの首都圏では、商業やサービス業が極めて発達しており、第3次産業就業者比率が高くなっています。

特に東京都で第3次産業就業者比率が高い理由としては、日本の政治・経済・文化の中心地であることが挙げられます。国会や中央省庁などの政府機関、東京証券取引所などの金融機関、大手企業の本社、メディア関連企業など、多様な第3次産業が集積しています。また、小売業や飲食業なども極めて発達しており、第3次産業の比率が非常に高くなっています。

一方、栃木県が関東地方の中では第3次産業就業者比率が最も低い理由としては、製造業(特に自動車関連産業や食品加工業)が盛んであることが挙げられます。栃木県は宇都宮市や小山市を中心に自動車関連産業が集積しており、第2次産業の比率が比較的高くなっています。また、農業も盛んであり、第1次産業の比率も一定程度あります。

中部・北陸地方の製造業と第3次産業

中部・北陸地方では、石川県(23位、67.9%)の第3次産業就業者比率が最も高く、新潟県(32位、65.0%)、山梨県(34位、64.1%)、愛知県(36位、63.7%)、福井県(36位、63.7%)、静岡県(39位、62.8%)、富山県(43位、62.3%)と続き、長野県(47位、61.3%)が最も低くなっています。全国的に見ると中位から下位に位置しています。

中部・北陸地方全体として第3次産業就業者比率が中位から下位に位置している理由としては、製造業が極めて発達していることが挙げられます。特に、愛知県(トヨタ自動車を中心とした自動車産業)、静岡県(輸送機器、電機産業)、長野県(精密機器製造業)などでは、第2次産業の比率が高く、相対的に第3次産業の比率が低くなっています。

特に長野県で中部・北陸地方の中でも第3次産業就業者比率が最も低い理由としては、製造業(特に精密機器製造業)が極めて発達していることが挙げられます。長野県は諏訪地域を中心に精密機器製造業が集積しており、第2次産業の比率が高くなっています。また、農業も盛んであり、第1次産業の比率も比較的高くなっています。

一方、石川県で中部・北陸地方の中では第3次産業就業者比率が最も高い理由としては、金沢市という地方中核都市を有していることや、観光業(加賀温泉郷など)も一定程度発達していることが挙げられます。また、伝統工芸産業も発達しており、小規模な工房や販売店などが多く、これらは第3次産業に分類される場合もあります。

近畿地方の産業バランス

近畿地方では、大阪府(7位、73.7%)の第3次産業就業者比率が最も高く、京都府(10位、72.8%)、奈良県(8位、73.1%)、兵庫県(14位、70.6%)がそれに続いています。和歌山県(26位、67.1%)も比較的高い水準にありますが、滋賀県(41位、62.5%)は全国的に見ても低い水準となっています。

近畿地方全体として第3次産業就業者比率が比較的高い理由としては、大阪府や京都府、兵庫県などの大都市圏を有していることが挙げられます。特に、大阪市、京都市、神戸市などの大都市には商業施設やオフィスビルが多く立地しており、小売業、金融業、サービス業などの第3次産業が発達しています。

特に大阪府で近畿地方の中では第3次産業就業者比率が最も高い理由としては、大阪市という日本第二の都市を有していることが挙げられます。大阪市は関西地方の経済・文化の中心地であり、商業、金融業、サービス業などの第3次産業が集積しています。特に、梅田や難波などの商業地区には大規模な商業施設が立地しており、小売業や飲食業などの就業者が多くなっています。

一方、滋賀県で近畿地方の中では第3次産業就業者比率が最も低い理由としては、製造業(特に電子部品・デバイス製造業や自動車関連産業)が極めて発達していることが挙げられます。滋賀県は琵琶湖の豊富な水資源や京阪神地域へのアクセスの良さなどの地理的優位性を活かし、多くの製造業企業が立地しています。特に、草津市や栗東市などには大手電機メーカーや自動車部品メーカーの工場が多く立地しており、第2次産業の比率が高い水準となっています。

中国・四国地方の地域差

中国・四国地方では、高知県(15位、70.2%)の第3次産業就業者比率が最も高く、広島県(17位、69.0%)、山口県(19位、68.3%)、島根県(21位、68.0%)、香川県(21位、68.0%)、鳥取県(19位、68.3%)、愛媛県(25位、67.3%)、徳島県(26位、67.1%)、岡山県(30位、66.6%)と続いています。

中国・四国地方全体として第3次産業就業者比率が中位から上位に位置している理由としては、製造業の集積が関東や中部地方と比較して限定的であることや、高齢化に伴い医療・福祉サービスなどの第3次産業の比率が高まっていることが挙げられます。

特に高知県で中国・四国地方の中では第3次産業就業者比率が高い理由としては、製造業の立地が限られていることや、高齢化率が高く医療・福祉サービスの需要が大きいことが挙げられます。また、観光資源(高知城、桂浜など)を有しており、観光関連産業も一定程度発達しています。

一方、岡山県で中国・四国地方の中では第3次産業就業者比率が低い理由としては、製造業(特に自動車・石油化学産業)が比較的発達していることが挙げられます。特に、岡山県の水島コンビナートは西日本最大の石油化学コンビナートであり、製造業の集積が進んでいます。

九州・沖縄地方の観光と第3次産業

九州・沖縄地方では、沖縄県(2位、78.2%)の第3次産業就業者比率が最も高く、福岡県(5位、74.9%)、長崎県(11位、72.2%)、鹿児島県(13位、71.1%)、大分県(16位、69.3%)、熊本県(18位、68.5%)、宮崎県(24位、67.8%)、佐賀県(29位、66.9%)と続いています。

九州・沖縄地方全体として第3次産業就業者比率にばらつきがある理由としては、地域によって産業構造が大きく異なることが挙げられます。特に、沖縄県や福岡県などの観光業や商業が発達している地域では第3次産業就業者比率が高く、佐賀県などの農業や製造業が比較的発達している地域では低くなっています。

特に沖縄県で九州・沖縄地方の中では第3次産業就業者比率が最も高い理由としては、観光業が極めて発達していることが挙げられます。沖縄県は日本有数の観光地であり、宿泊業、飲食業、小売業、レジャー産業などの観光関連産業が発達しています。また、米軍基地関連のサービス業も多く、第3次産業の比率が極めて高くなっています。

一方、佐賀県で九州・沖縄地方の中では第3次産業就業者比率が最も低い理由としては、農業(特に米作や野菜栽培)が盛んであることや、製造業(特に窯業・土石製品製造業や食品加工業)も一定程度発達していることが挙げられます。特に、有田焼や伊万里焼などの陶磁器産業は佐賀県の特徴的な産業であり、第2次産業の比率を高める要因となっています。

格差や課題の考察

産業構造と地域経済の関係

第3次産業就業者比率の地域間格差は、産業構造の違いを反映しており、地域経済の特性や課題とも密接に関連しています。一般的に、第3次産業就業者比率が高い地域では、サービス業や商業が発達しており、多様な雇用機会や高い所得水準が確保されている傾向があります。一方、第3次産業就業者比率が低い地域では、製造業や農業が中心となっており、産業構造の変化に対する脆弱性や、若年層の雇用機会の確保などの課題を抱えている場合があります。

例えば、東京都(1位、81.1%)や沖縄県(2位、78.2%)などの第3次産業就業者比率が高い地域では、サービス業や商業が発達しており、多様な雇用機会が確保されています。特に、観光業や情報通信業、金融業などの高付加価値のサービス業が発達している地域では、高い所得水準や経済成長が実現されています。

一方、長野県(47位、61.3%)や山形県(46位、61.4%)などの第3次産業就業者比率が低い地域では、製造業や農業が中心となっており、グローバル化やデジタル化の進展による産業構造の変化に対する脆弱性を抱えている場合があります。特に、製造業の海外移転や自動化の進展により、雇用機会の減少や所得水準の停滞などの課題に直面している地域もあります。

しかし、第3次産業就業者比率が低いことが必ずしも地域経済の弱さを意味するわけではありません。例えば、滋賀県(41位、62.5%)や愛知県(36位、63.7%)などの製造業が発達している地域では、高い付加価値を生み出す製造業が地域経済を支えており、所得水準や雇用環境も比較的良好な状態を維持しています。特に、技術革新や生産性向上を通じて競争力を維持している製造業は、地域経済の発展に大きく貢献しています。

観光業と地域経済の活性化

第3次産業就業者比率の地域間格差は、観光業の発展度合いとも関連しています。特に、観光資源を活用した地域経済の活性化は、第3次産業就業者比率を高める重要な要因となっています。

例えば、沖縄県(2位、78.2%)は観光業が極めて発達しており、宿泊業、飲食業、小売業、レジャー産業などの観光関連産業が地域経済の中心となっています。沖縄県の美しい自然環境や独自の文化、温暖な気候などの観光資源を活用し、国内外から多くの観光客を誘致しています。これにより、雇用機会の創出や所得水準の向上、地域経済の活性化などの効果が生まれています。

また、長崎県(11位、72.2%)や鹿児島県(13位、71.1%)なども観光業が比較的発達しており、第3次産業就業者比率が高くなっています。長崎県はハウステンボスや軍艦島などの観光地、鹿児島県は桜島や屋久島などの自然観光資源を有しており、観光関連産業が地域経済において重要な役割を果たしています。

一方、観光業の発展が限定的な地域では、第3次産業就業者比率も相対的に低くなる傾向があります。特に、観光資源が限られている地域や、観光インフラ(宿泊施設、交通アクセスなど)が不十分な地域では、観光業の発展が制約されており、第3次産業の発展も限定的となっています。

このような地域間格差を是正するためには、地域の特性や資源を活かした観光振興策が重要です。特に、地域固有の文化や自然環境、食文化などを活用したニッチな観光市場の開拓や、体験型観光の推進などが、地方部における観光業の発展と第3次産業就業者比率の向上に貢献する可能性があります。

デジタル化と第3次産業の変化

第3次産業就業者比率の地域間格差は、デジタル化の進展による産業構造の変化とも関連しています。特に、情報通信技術の発達により、一部のサービス業ではオンライン化が進み、地理的制約が緩和されつつあります。これにより、地方部でも高付加価値のサービス業が展開できる可能性が広がっています。

例えば、東京都(1位、81.1%)では、IT企業やデジタルサービス企業が多数立地しており、デジタル化の恩恵を最も受けている地域の一つです。特に、情報通信業やデジタルコンテンツ産業などの新たな第3次産業が発達しており、高い付加価値と雇用を生み出しています。

一方、地方部でもテレワークの普及により、IT関連産業やクリエイティブ産業などの立地が可能になりつつあります。特に、自然環境や生活コストの面で優位性を持つ地方部では、ワーケーションやサテライトオフィスの誘致などの取り組みも進んでいます。

このようなデジタル化の進展は、第3次産業就業者比率の地域間格差を是正する可能性を持っていますが、デジタルインフラの整備や人材育成などの課題も残されています。特に、高速インターネット環境の整備や、デジタルスキルを持つ人材の育成・確保が、地方部における第3次産業の発展の鍵となる可能性があります。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2020年度の都道府県別第3次産業就業者比率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:

  1. 平均値と中央値の比較:平均値は約68.1%、中央値は約67.8%とほぼ同じ値を示しており、データが比較的対称的に分布していることを示しています。これは、極端な外れ値が少なく、多くの都道府県が平均値の周辺に分布していることを反映しています。

  2. 分布の歪み:データは全体としてわずかに正の歪みを示しており、右に長い裾を持つ分布となっています。特に、東京都(81.1%)や沖縄県(78.2%)などの一部の都道府県で第3次産業就業者比率が特に高くなっています。

  3. 外れ値の特定:東京都(81.1%)と沖縄県(78.2%)は上側の外れ値と考えられ、平均値を大きく上回っています。これは、これらの都道府県のサービス業中心の産業構造を反映していると考えられます。一方、長野県(61.3%)や山形県(61.4%)などは下側の外れ値と考えられ、平均値を大きく下回っています。

  4. 四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約63.0%、第3四分位数(Q3)は約72.0%で、四分位範囲(IQR)は約9.0%です。これは、中央の50%の都道府県の第3次産業就業者比率が63.0%から72.0%の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的近い比率であることがわかります。

  5. 標準偏差によるばらつき:標準偏差は約5.5%で、変動係数(標準偏差÷平均値)は約8.1%となり、相対的なばらつきは比較的小さいことを示しています。特に、最高値(東京都、81.1%)と最低値(長野県、61.3%)の差は19.8%ポイントであり、地域間の格差は一定程度存在するものの、極端な差ではないことがわかります。

まとめ

2020年度の都道府県別第3次産業就業者比率ランキングでは、東京都が81.1%で1位、長野県が61.3%で47位となりました。上位には東京都、沖縄県、神奈川県などの観光業が盛んな地域や大都市圏が多く、下位には長野県、山形県、栃木県などの製造業が発達した地域や第1次産業が比較的盛んな地域が多く見られました。

第3次産業就業者比率の地域差は、産業構造、地理的特性、歴史的背景など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、雇用環境、所得水準など様々な面に影響を与えています。特に、観光業が発達している地域や大都市圏では第3次産業就業者比率が高く、製造業が発達している地域では相対的に低くなる傾向があります。

統計分析からは、都道府県間の第3次産業就業者比率の格差が一定程度存在することがわかります。特に、東京都や沖縄県などの上位県と、長野県や山形県などの下位県との間には明確な差があります。これは、産業構造や地域特性の違いを反映していると考えられます。

第3次産業は、日本経済の中で最も大きな割合を占める産業であり、今後も雇用の中心的な役割を果たすことが予想されます。特に、デジタル化の進展により、新たなサービス業やビジネスモデルが生まれており、第3次産業の多様化や高度化が進んでいます。このような変化の中で、地方部における第3次産業の振興や、デジタル技術を活用した地域間格差の是正などの取り組みが重要となっています。

出典