都道府県別第1次産業就業者比率ランキング(2020年度)
概要
第1次産業就業者比率とは、全就業者数に占める農業、林業、漁業などの第1次産業に従事している人の割合を指します。この記事では、2020年度の都道府県別第1次産業就業者比率のランキングを紹介します。
第1次産業就業者比率は、地域の産業構造や経済基盤を反映する重要な指標であり、特に農業や漁業が盛んな地域では比率が高くなる傾向があります。青森県や高知県などの東北・四国地方や、宮崎県や熊本県などの九州地方で第1次産業就業者比率が高く、東京都や大阪府などの大都市圏で低くなっています。
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上位県と下位県の比較
第1次産業就業者比率が高い上位5県
2020年度の第1次産業就業者比率ランキングでは、青森県が11.1%(偏差値71.2)で全国1位となりました。青森県は農業と漁業が盛んな地域であり、特にりんごやにんにくなどの特産品の生産が有名です。また、三方を海に囲まれた地理的特性から漁業も発達しており、第1次産業が地域経済の重要な基盤となっています。
2位は高知県で10.2%(偏差値68.0)、3位は宮崎県で9.9%(偏差値67.0)、4位は岩手県で9.6%(偏差値65.9)、5位は熊本県で8.8%(偏差値63.1)となっています。上位県には農業が盛んな地域や、漁業が発達している地域が多く含まれており、第1次産業が地域経済において重要な役割を果たしていることがわかります。
第1次産業就業者比率が低い下位5県
最も第1次産業就業者比率が低かったのは東京都で0.4%(偏差値33.4)でした。東京都は日本最大の都市圏であり、第3次産業を中心とした産業構造となっています。都市化が進み、農地や漁場が限られていることから、第1次産業の就業者比率が極めて低くなっています。
46位は大阪府で0.5%(偏差値33.7)、45位は神奈川県で0.8%(偏差値34.8)、44位は埼玉県で1.5%(偏差値37.3)、43位は兵庫県で1.8%(偏差値38.3)となっています。下位県には大都市圏や都市化が進んだ地域が多く含まれており、第1次産業よりも第2次産業や第3次産業が中心となっている地域が多いことがわかります。
地域別の特徴分析
東北地方の農林水産業の重要性
東北地方では、青森県(1位、11.1%)と岩手県(4位、9.6%)の第1次産業就業者比率が特に高く、宮城県(26位、4.1%)の第1次産業就業者比率が比較的低くなっています。その他の県は、秋田県(6位、8.6%)、山形県(6位、8.6%)、福島県(19位、6.2%)と、全国的に見ると上位から中位に位置しています。
東北地方全体として第1次産業就業者比率が高い理由としては、広大な農地や豊かな森林資源、長い海岸線を持つ地理的特性が挙げられます。特に青森県では、りんごやにんにくなどの特産品を生産する農業が盛んであり、三方を海に囲まれた地理的特性から漁業も発達しています。また、岩手県では、広大な森林面積を持ち、林業も地域の重要な産業となっています。
特に青森県で第1次産業就業者比率が高い理由としては、他の産業の発達が相対的に遅れていることも挙げられます。製造業やサービス業などの第2次・第3次産業の雇用機会が限られているため、相対的に第1次産業の比率が高くなっている面もあります。
一方、宮城県で東北地方の中では第1次産業就業者比率が低い理由としては、仙台市を中心とした都市化が進んでいることや、第2次産業や第3次産業の発達により、産業構造が多様化していることが挙げられます。特に、仙台市はオフィスや商業施設が集中しており、サービス業や小売業などの第3次産業の就業者が多くなっています。
関東地方の都市化と第1次産業の縮小
関東地方では、栃木県(21位、5.2%)と茨城県(22位、5.1%)の第1次産業就業者比率が比較的高く、東京都(47位、0.4%)、神奈川県(45位、0.8%)、埼玉県(44位、1.5%)の第1次産業就業者比率が特に低くなっています。その他の県は、群馬県(25位、4.5%)、千葉県(37位、2.4%)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
関東地方全体として第1次産業就業者比率が低い理由としては、東京都を中心とした都市化の進展や、製造業やサービス業などの第2次・第3次産業の発達が挙げられます。特に東京都や神奈川県などの大都市圏では、都市化が進み、農地や漁場が限られていることから、第1次産業の就業者比率が低くなっています。
特に栃木県と茨城県で関東地方の中では第1次産業就業者比率が高い理由としては、首都圏に近接しながらも広大な農地を有していることや、野菜や果物などの都市近郊型農業が発達していることが挙げられます。特に、茨城県ではメロンやレンコンなどの特産品の生産が盛んであり、栃木県ではいちごや米などの生産が盛んです。
一方、東京都で第1次産業就業者比率が極めて低い理由としては、高度に都市化が進み、農地や漁場が限られていることが挙げられます。また、金融業やサービス業などの第3次産業が高度に発達しており、これらの産業の就業者数が圧倒的に多いことも要因として考えられます。
中部・北陸地方の産業構造の多様性
中部・北陸地方では、長野県(8位、8.4%)と和歌山県(10位、8.1%)の第1次産業就業者比率が比較的高く、愛知県(42位、1.9%)の第1次産業就業者比率が特に低くなっています。その他の県は、山梨県(16位、6.6%)、新潟県(22位、5.1%)、富山県(33位、2.9%)、石川県(36位、2.6%)、福井県(31位、3.2%)、岐阜県(34位、2.8%)、静岡県(30位、3.5%)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
中部・北陸地方全体として第1次産業就業者比率にばらつきがある理由としては、地理的特性や産業構造の違いが挙げられます。特に長野県では、果樹栽培や高原野菜の生産が盛んであり、農業が地域経済の重要な基盤となっています。一方、愛知県では自動車産業を中心とした製造業が発達しており、第2次産業の就業者比率が高くなっています。
特に長野県で第1次産業就業者比率が高い理由としては、りんごやぶどうなどの果樹栽培やレタスなどの高原野菜の生産が盛んであることや、他の産業の発達が相対的に遅れていることが挙げられます。特に、山間部では農業が地域経済の中心となっており、第1次産業の就業者比率が高くなっています。
一方、愛知県で第1次産業就業者比率が低い理由としては、トヨタ自動車を中心とした自動車産業が発達していることや、名古屋市を中心とした都市化が進んでいることが挙げられます。特に、製造業の就業者数が多く、相対的に第1次産業の比率が低くなっています。
近畿地方の都市化と第1次産業の衰退
近畿地方では、和歌山県(10位、8.1%)の第1次産業就業者比率が特に高く、大阪府(46位、0.5%)の第1次産業就業者比率が特に低くなっています。その他の県は、三重県(32位、3.1%)、滋賀県(37位、2.4%)、京都府(41位、2.0%)、兵庫県(43位、1.8%)、奈良県(37位、2.4%)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
近畿地方全体として第1次産業就業者比率が低い理由としては、大阪府を中心とした都市化の進展や、製造業やサービス業などの第2次・第3次産業の発達が挙げられます。特に大阪府や京都府などの都市部では、農地や漁場が限られており、第1次産業の就業者比率が低くなる傾向があります。
特に和歌山県で近畿地方の中では第1次産業就業者比率が高い理由としては、みかんなどの柑橘類の栽培が盛んであることや、紀伊半島の地理的特性を活かした漁業も発達していることが挙げられます。また、他の産業の発達が相対的に遅れていることも要因として考えられます。
一方、大阪府で第1次産業就業者比率が極めて低い理由としては、高度に都市化が進み、農地や漁場が限られていることが挙げられます。また、製造業やサービス業などの第2次・第3次産業が発達しており、産業構造が第1次産業から離れていることも要因として考えられます。
中国・四国地方の地域特性と第1次産業
中国・四国地方では、高知県(2位、10.2%)の第1次産業就業者比率が特に高く、広島県(35位、2.7%)の第1次産業就業者比率が比較的低くなっています。その他の県は、鳥取県(11位、7.7%)、島根県(18位、6.4%)、岡山県(26位、4.1%)、山口県(26位、4.1%)、徳島県(12位、7.4%)、香川県(24位、4.7%)、愛媛県(14位、6.8%)と、全国的に見ると上位から中位に位置しています。
中国・四国地方全体として第1次産業就業者比率にばらつきがある理由としては、地理的特性や産業構造の違いが挙げられます。特に高知県では、温暖な気候を活かした施設園芸が盛んであり、ナスやピーマンなどの野菜の生産が盛んです。また、四万十川などの豊かな水資源を活かした漁業も発達しています。
特に高知県で第1次産業就業者比率が高い理由としては、他の産業の発達が相対的に遅れていることも挙げられます。高知県は四国山地に囲まれた地理的特性から、大規模な製造業の立地が限られており、相対的に第1次産業の比率が高くなっている面もあります。
一方、広島県で中国・四国地方の中では第1次産業就業者比率が低い理由としては、広島市を中心とした都市化が進んでいることや、自動車産業などの製造業が発達していることが挙げられます。特に、広島市はオフィスや商業施設が集中しており、サービス業や小売業などの第3次産業の就業者が多くなっています。
九州・沖縄地方の農業と漁業の重要性
九州・沖縄地方では、宮崎県(3位、9.9%)と熊本県(5位、8.8%)の第1次産業就業者比率が特に高く、福岡県(37位、2.4%)の第1次産業就業者比率が比較的低くなっています。その他の県は、佐賀県(12位、7.4%)、長崎県(16位、6.6%)、大分県(20位、6.1%)、鹿児島県(9位、8.3%)、沖縄県(29位、4.0%)と、全国的に見ると上位から中位に位置しています。
九州・沖縄地方全体として第1次産業就業者比率が高い理由としては、温暖な気候や肥沃な土壌を活かした農業が盛んであることや、四方を海に囲まれた地理的特性から漁業も発達していることが挙げられます。特に、九州地方は日本の食料供給基地としての役割を担っており、多様な農畜産物の生産が行われています。
特に宮崎県で第1次産業就業者比率が高い理由としては、温暖な気候を活かした施設園芸や畜産業が盛んであることが挙げられます。特に、宮崎牛や宮崎マンゴーなどのブランド農畜産物の生産が盛んであり、農業が地域経済の重要な基盤となっています。また、他の産業の発達が相対的に遅れていることも要因として考えられます。
一方、福岡県で九州・沖縄地方の中では第1次産業就業者比率が低い理由としては、福岡市や北九州市を中心とした都市化が進んでいることや、製造業やサービス業などの第2次・第3次産業が発達していることが挙げられます。特に、福岡市は九州地方の経済・文化の中心地であり、オフィスや商業施設が集中していることから、サービス業や小売業などの第3次産業の就業者が多くなっています。
格差や課題の考察
地域経済への影響
第1次産業就業者比率の地域間格差は、地域経済にも影響を与えます。第1次産業就業者比率が高い地域では、農林水産業が地域経済の重要な基盤となっており、関連産業の発達や雇用の創出にも貢献しています。一方、第1次産業就業者比率が低い地域では、第2次産業や第3次産業が中心となっており、産業構造の多様性が課題となる場合があります。
例えば、青森県(1位、11.1%)では、第1次産業が地域経済の重要な基盤となっており、農産物の加工や流通などの関連産業も発達しています。特に、りんごやにんにくなどの特産品は全国的にも知られており、これらの生産・加工・販売が地域の雇用や所得の創出に貢献しています。
一方、東京都(47位、0.4%)では、第1次産業の比率が極めて低く、金融業やサービス業などの第3次産業が中心となっています。このような産業構造は、経済的な効率性は高いものの、食料自給率の低下や地域間格差の拡大などの課題を抱えています。また、災害時などの非常時における食料供給の脆弱性も指摘されています。
高齢化と担い手不足の課題
第1次産業就業者比率の地域間格差は、高齢化と担い手不足という共通の課題も抱えています。特に、第1次産業就業者比率が高い地域でも、就業者の高齢化が進んでおり、若い世代の担い手不足が深刻な問題となっています。
例えば、高知県(2位、10.2%)では、第1次産業就業者比率は高いものの、就業者の高齢化が進んでおり、後継者不足が課題となっています。特に、中山間地域では、若い世代の流出が進み、農業の担い手不足が深刻化しています。これにより、耕作放棄地の増加や地域コミュニティの衰退などの問題が生じています。
一方、愛知県(42位、1.9%)では、自動車産業を中心とした製造業が発達しており、若い世代が第1次産業以外の産業に就業する傾向があります。このような産業構造の変化は、第1次産業の担い手不足をさらに加速させる要因となっています。
食料自給率と地域の持続可能性
第1次産業就業者比率の地域間格差は、食料自給率や地域の持続可能性にも影響を与えます。第1次産業就業者比率が高い地域では、食料自給率も高い傾向があり、地域内での食料供給が安定しています。一方、第1次産業就業者比率が低い地域では、食料の多くを他地域からの移入に依存しており、食料供給の脆弱性が課題となっています。
例えば、宮崎県(3位、9.9%)では、第1次産業就業者比率が高く、多様な農畜産物の生産が行われています。これにより、地域内での食料供給が安定しており、食料自給率も高い水準を維持しています。また、地産地消の取り組みも盛んであり、地域内での食料循環が形成されています。
一方、大阪府(46位、0.5%)では、第1次産業就業者比率が極めて低く、食料の多くを他地域からの移入に依存しています。これにより、食料供給の脆弱性が高まっており、災害時などの非常時における食料確保が課題となっています。また、食料の長距離輸送によるエネルギー消費や環境負荷の増大も問題となっています。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2020年度の都道府県別第1次産業就業者比率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約5.0%、中央値は約4.3%と平均値が中央値を上回っており、データが右に歪んでいることを示しています。これは、青森県(11.1%)や高知県(10.2%)などの一部の県で第1次産業就業者比率が特に高いことを反映しています。
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分布の歪み:データは全体として正の歪みを示しており、右に長い裾を持つ分布となっています。特に、東京都(0.4%)や大阪府(0.5%)などの大都市圏では第1次産業就業者比率が極めて低く、青森県(11.1%)や高知県(10.2%)などの農業が盛んな地域では比率が高くなっています。
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外れ値の特定:東京都(0.4%)と大阪府(0.5%)は下側の外れ値と考えられ、平均値を大きく下回っています。これは、これらの都府県の高度な都市化と第3次産業中心の産業構造を反映していると考えられます。一方、青森県(11.1%)や高知県(10.2%)などは上側の外れ値と考えられ、平均値を大きく上回っています。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約2.6%、第3四分位数(Q3)は約7.7%で、四分位範囲(IQR)は約5.1%です。これは、中央の50%の都道府県の第1次産業就業者比率が2.6%から7.7%の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的近い比率であることがわかります。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約2.9%で、変動係数(標準偏差÷平均値)は約58%となり、相対的なばらつきが大きいことを示しています。特に、最高値(青森県、11.1%)と最低値(東京都、0.4%)の差は10.7%ポイントと非常に大きく、地域間の格差が顕著であることを示しています。
まとめ
2020年度の都道府県別第1次産業就業者比率ランキングでは、青森県が11.1%で1位、東京都が0.4%で47位となりました。上位には青森県、高知県、宮崎県などの農業や漁業が盛んな地域が多く、下位には東京都、大阪府、神奈川県などの大都市圏や都市化が進んだ地域が多く見られました。
第1次産業就業者比率の地域差は、地理的特性、産業構造、都市化の程度など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、食料自給率、国土保全など様々な面に影響を与えています。特に、第1次産業就業者比率が高い地域では、農林水産業が地域経済の重要な基盤となっており、関連産業の発達や雇用の創出にも貢献しています。
統計分析からは、都道府県間の第1次産業就業者比率の格差が顕著であることがわかります。特に、青森県や高知県などの上位県と、東京都や大阪府などの下位県との間には大きな差があります。これは、地理的特性や産業構造の違いを反映していると考えられます。
第1次産業は、食料の生産だけでなく、国土の保全や環境の維持、伝統文化の継承など、多面的な機能を有しており、地域社会の持続可能性に大きく貢献しています。しかし、就業者の高齢化や担い手不足など、多くの課題も抱えています。これらの課題に対応するためには、第1次産業の生産性向上や付加価値の創出、若い世代の参入促進など、総合的な取り組みが求められています。