都道府県別就業者数ランキング（2020年度）

概要

就業者数とは、15歳以上の人口のうち、調査期間中に収入を伴う仕事をした人の数を指します。この記事では、2020年度の都道府県別就業者数のランキングを紹介します。

就業者数は、地域の経済規模や産業構造、雇用環境などを反映しており、地域経済政策や雇用政策の基礎データとして重要な指標です。2020年度は、東京都や神奈川県などの大都市圏で就業者数が多く、鳥取県や高知県などの人口規模の小さい地方県で就業者数が少なくなっています。

上位県と下位県の比較

就業者数が多い上位5県

2020年度の就業者数ランキングでは、東京都が5,962,306人（偏差値89.5）で全国1位となりました。東京都は日本の政治・経済・文化の中心地であり、多様な産業が集積していることから、就業機会が豊富であることが就業者数の多さにつながっていると考えられます。特に、金融業や情報通信業、専門・技術サービス業などの高度なサービス業が集中していることが特徴です。

2位は神奈川県で4,153,054人（偏差値74.4）、3位は大阪府で3,635,394人（偏差値70.1）、4位は愛知県で3,605,438人（偏差値69.8）、5位は埼玉県で3,386,880人（偏差値68.0）となっています。上位県には大都市を有する都府県が多く、人口規模が大きいことや産業が集積していることが就業者数の多さに直接影響していると考えられます。

就業者数が少ない下位5県

最も就業者数が少なかったのは鳥取県で269,353人（偏差値42.0）でした。鳥取県は日本で最も人口が少ない県であり、人口規模の小ささが就業者数の少なさに直接影響していると考えられます。

46位は高知県で308,565人（偏差値42.4）、45位は徳島県で328,286人（偏差値42.5）、44位は島根県で332,592人（偏差値42.6）、43位は福井県で395,765人（偏差値43.1）となっています。下位県には人口規模の小さい地方県が多く、人口規模の小ささが就業者数の少なさに直接影響していると考えられます。

地域別の特徴分析

東北地方の就業状況

東北地方では、宮城県（15位、1,081,348人）が最も就業者数が多く、秋田県（38位、463,894人）が最も少なくなっています。その他の県は、青森県（29位、602,391人）、岩手県（28位、605,093人）、山形県（34位、540,922人）、福島県（20位、872,045人）と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。

東北地方全体として就業者数が比較的少ない理由としては、人口規模が全国的に見て小さいことが挙げられます。特に秋田県や山形県は人口減少が進んでおり、就業者数も少なくなっていると考えられます。

特に宮城県で東北地方の中では就業者数が多い理由としては、仙台市という東北地方最大の都市を有しており、商業やサービス業などの第三次産業が発達していることが挙げられます。また、東日本大震災後の復興需要により、建設業などでの雇用が増加している可能性もあります。

一方、秋田県で就業者数が少ない理由としては、人口規模が小さいことに加え、若年層の県外流出が進んでいることが挙げられます。若年層の流出により、労働力人口自体が減少していると考えられます。

関東地方の産業集積と就業動向

関東地方では、東京都（1位、5,962,306人）が最も就業者数が多く、栃木県（19位、926,595人）が最も少なくなっています。その他の県は、茨城県（11位、1,362,944人）、群馬県（18位、949,945人）、埼玉県（5位、3,386,880人）、千葉県（6位、2,862,135人）、神奈川県（2位、4,153,054人）と、全国的に見ると上位から中位に位置しています。

関東地方全体として就業者数が多い理由としては、人口規模が全国的に見て大きいことに加え、東京都を中心とする首都圏に産業が集積していることが挙げられます。特に東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県は人口規模が大きく、就業者数も多くなっていると考えられます。

特に東京都で就業者数が最も多い理由としては、日本の政治・経済・文化の中心地であり、多様な産業が集積していることが挙げられます。特に、金融業や情報通信業、専門・技術サービス業などの高度なサービス業が集中していることが特徴です。また、多くの企業の本社が東京都に集中していることも就業者数の多さにつながっていると考えられます。

一方、栃木県で関東地方の中では就業者数が少ない理由としては、人口規模が比較的小さいことが挙げられます。ただし、製造業（特に自動車関連産業）が盛んであり、就業者一人当たりの生産性は高い可能性があります。

中部・北陸地方の製造業と就業構造

中部・北陸地方では、愛知県（4位、3,605,438人）が最も就業者数が多く、福井県（43位、395,765人）が最も少なくなっています。その他の県は、新潟県（14位、1,084,410人）、富山県（35位、528,961人）、石川県（33位、560,133人）、山梨県（42位、398,578人）、長野県（16位、1,034,281人）、岐阜県（17位、972,728人）、静岡県（10位、1,817,048人）と、全国的に見るとばらつきがあります。

中部・北陸地方は全国的に見ると就業者数に大きな地域差があります。これは、愛知県や静岡県などの人口規模の大きい県と、福井県や富山県などの人口規模の小さい県との差を反映していると考えられます。

特に愛知県で就業者数が多い理由としては、トヨタ自動車を中心とする自動車産業が発達していることが挙げられます。自動車産業は裾野が広く、関連産業も含めて多くの雇用を生み出しています。また、名古屋市という大都市を有していることも就業者数の多さにつながっていると考えられます。

一方、福井県で就業者数が少ない理由としては、人口規模が小さいことが挙げられます。ただし、繊維産業や眼鏡産業などの地場産業が発達しており、女性の労働力人口比率が全国で最も高いことが特徴です。

近畿地方の経済構造と就業特性

近畿地方では、大阪府（3位、3,635,394人）が最も就業者数が多く、和歌山県（40位、428,780人）が最も少なくなっています。その他の県は、京都府（13位、1,086,427人）、兵庫県（7位、2,377,454人）、奈良県（32位、573,513人）、滋賀県（25位、666,602人）と、全国的に見るとばらつきがあります。

近畿地方は全国的に見ると就業者数に大きな地域差があります。これは、大阪府や兵庫県などの人口規模の大きい都府県と、奈良県や和歌山県などの人口規模の小さい県との差を反映していると考えられます。

特に大阪府で就業者数が多い理由としては、大阪市を中心とする大都市圏を有しており、商業やサービス業などの第三次産業が発達していることが挙げられます。また、製造業も盛んであり、特に中小企業が多いことが特徴です。

一方、和歌山県で就業者数が少ない理由としては、人口規模が比較的小さいことが挙げられます。また、第一次産業（特に柑橘類の栽培や漁業）が比較的盛んであり、就業構造が他の近畿地方の都府県とは異なる特徴を持っています。

中国・四国地方の産業特性と就業傾向

中国・四国地方では、広島県（12位、1,318,328人）が最も就業者数が多く、鳥取県（47位、269,353人）が最も少なくなっています。その他の県は、島根県（44位、332,592人）、岡山県（21位、867,759人）、山口県（26位、620,702人）、徳島県（45位、328,286人）、香川県（39位、443,196人）、愛媛県（30位、601,302人）、高知県（46位、308,565人）と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。

中国・四国地方全体として就業者数が比較的少ない理由としては、人口規模が全国的に見て小さいことが挙げられます。特に鳥取県や島根県、徳島県、高知県は人口規模が小さく、就業者数も少なくなっていると考えられます。

特に広島県で中国・四国地方の中では就業者数が多い理由としては、広島市という中国地方最大の都市を有していることに加え、自動車産業（マツダ）や造船業などの製造業が発達していることが挙げられます。また、サービス業など第三次産業も発達しており、多様な就業機会が存在することが就業者数の多さにつながっていると考えられます。

一方、鳥取県で就業者数が最も少ない理由としては、日本で最も人口が少ない県であることが挙げられます。人口規模の小ささが就業者数の少なさに直接影響していると考えられます。

九州・沖縄地方の地域経済と就業構造

九州・沖縄地方では、福岡県（9位、2,253,134人）が最も就業者数が多く、佐賀県（41位、400,264人）が最も少なくなっています。その他の県は、長崎県（27位、617,707人）、熊本県（23位、819,259人）、大分県（36位、520,322人）、宮崎県（37位、498,592人）、鹿児島県（24位、738,343人）、沖縄県（31位、577,419人）と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。

九州・沖縄地方全体として就業者数が比較的少ない理由としては、福岡県を除いて人口規模が全国的に見て小さいことが挙げられます。特に佐賀県や宮崎県は人口規模が小さく、就業者数も少なくなっていると考えられます。

特に福岡県で九州・沖縄地方の中では就業者数が多い理由としては、福岡市という九州地方最大の都市を有していることが挙げられます。福岡市は商業やサービス業などの第三次産業が発達しており、九州地方の経済・文化の中心地となっています。また、北九州市も工業都市として発展しており、製造業も盛んです。

一方、佐賀県で就業者数が少ない理由としては、人口規模が小さいことが挙げられます。ただし、農業（特に米や野菜の生産）が盛んであり、女性の労働力人口比率が全国的に見て高いことが特徴です。

就業者数の格差がもたらす影響と課題

地域経済への影響

就業者数の地域間格差は、地域経済にも影響を与えます。就業者数が多い地域では、消費活動が活発化し、地域経済が活性化する傾向があります。また、税収も増加するため、公共サービスの充実にもつながります。一方、就業者数が少ない地域では、消費活動が低迷し、地域経済が停滞する傾向があります。また、税収も減少するため、公共サービスの維持が困難になる可能性があります。

例えば、東京都（1位、5,962,306人）では、就業者数が多いことにより、消費活動が活発化し、小売業やサービス業などが発展しています。また、税収も多いため、公共交通機関や文化施設などの公共サービスが充実しています。

一方、鳥取県（47位、269,353人）では、就業者数が少ないことにより、消費活動が低迷し、小売業やサービス業などが衰退する傾向があります。また、税収も少ないため、公共サービスの維持が課題となっています。

人口移動への影響

就業者数の地域間格差は、人口移動にも影響を与えます。就業者数が多い地域では、就業機会が豊富であるため、若年層を中心に人口が流入する傾向があります。一方、就業者数が少ない地域では、就業機会が限られているため、若年層を中心に人口が流出する傾向があります。

例えば、東京都（1位、5,962,306人）では、就業機会が豊富であるため、地方から若年層が流入しています。特に、大学卒業後の就職を機に東京都に移住する若者が多いことが特徴です。

一方、秋田県（38位、463,894人）では、就業機会が限られているため、若年層が県外に流出しています。特に、大学進学や就職を機に県外に移住する若者が多いことが特徴です。この結果、人口減少と高齢化が進行し、地域社会の維持が課題となっています。

産業構造への影響

就業者数の地域間格差は、産業構造にも影響を与えます。就業者数が多い地域では、多様な産業が発展する傾向があります。特に、高度なサービス業や研究開発型の産業が集積する傾向があります。一方、就業者数が少ない地域では、産業の多様性が限られる傾向があります。特に、第一次産業や製造業など、特定の産業に依存する傾向があります。

例えば、愛知県（4位、3,605,438人）では、自動車産業を中心に多様な製造業が発展しています。また、名古屋市を中心にサービス業も発達しており、産業構造の多様性が確保されています。

一方、島根県（44位、332,592人）では、農林水産業や製造業（特に鉄鋼業）など、特定の産業に依存する傾向があります。産業の多様性が限られているため、経済的なショックに対する脆弱性が高い可能性があります。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2020年度の都道府県別就業者数データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます：

1. 平均値と中央値の比較：平均値は約1,300,000人、中央値は約617,000人と大きく乖離しており、データの分布が右に歪んでいることを示しています。これは、東京都や神奈川県などの一部の都府県で就業者数が特に多いことを反映しています。

2. 分布の歪み：データは全体として強い正の歪みを示しており、右に長い裾を持つ分布となっています。東京都（5,962,306人）が最も多く、鳥取県（269,353人）が最も少ないですが、その差は約5,693,000人と非常に大きく、極端な格差が見られます。

3. 外れ値の特定：東京都（5,962,306人）、神奈川県（4,153,054人）、大阪府（3,635,394人）などは上側の外れ値と考えられ、平均値を大きく上回っています。これらの都府県は人口規模が特に大きく、産業も集積しているため、就業者数も多くなっていると考えられます。

4. 四分位範囲による分布の特徴：第1四分位数（Q1）は約420,000人、第3四分位数（Q3）は約1,100,000人で、四分位範囲（IQR）は約680,000人です。これは、中央の50%の都道府県の就業者数が420,000人から1,100,000人の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的少ない就業者数であることがわかります。

5. 標準偏差によるばらつき：標準偏差は約1,400,000人で、変動係数（標準偏差÷平均値）は約108%となり、相対的なばらつきが非常に大きいことを示しています。これは、都道府県間の就業者数の格差が非常に大きいことを意味します。

まとめ

2020年度の都道府県別就業者数ランキングでは、東京都が5,962,306人で1位、鳥取県が269,353人で47位となりました。上位には東京都、神奈川県、大阪府などの大都市を有する都府県が多く、下位には鳥取県、高知県、徳島県などの人口規模の小さい地方県が多く見られました。

就業者数の地域差は、人口規模、産業構造、雇用環境など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、人口移動、産業構造など様々な面に影響を与えています。

統計分析からは、都道府県間の就業者数の格差が非常に大きく、特に東京都や神奈川県などの大都市圏と、鳥取県や島根県などの地方県との間で顕著な差があることがわかります。これは主に人口規模の差を反映していますが、産業構造や雇用環境の違いも影響していると考えられます。

少子高齢化が進む日本社会において、地域間の就業者数の格差是正は重要な課題となっています。特に、地方創生や地域活性化の観点から、地方における就業機会の創出や産業の多様化が求められています。また、テレワークの普及など働き方の多様化により、地方でも都市部と同様の仕事ができる環境が整いつつあり、これが地域間格差の是正につながる可能性もあります。