都道府県別県外就職者比率ランキング(2023年度)
概要
県外就職者比率とは、就業者全体のうち、居住する都道府県外で就業している人の割合を示す指標です。この指標は、地域間の労働力移動や通勤圏の広がり、雇用機会の地域差などを反映しています。2023年度のデータによると、大都市圏周辺の県で高く、地理的に孤立した地域や地方圏で低い傾向が見られます。
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上位県と下位県の比較
上位5県と下位5県の詳細説明
上位5県
1位は同率で埼玉県と千葉県で、ともに32.6%(偏差値80.5)と全国で最も高い県外就職者比率を示しています。両県は東京都のベッドタウンとしての性格が強く、多くの住民が東京都内に通勤していることが主な要因です。
3位は神奈川県で30.0%(偏差値76.4)となっています。神奈川県も東京都への通勤者が多く、横浜市や川崎市などの主要都市から東京都心部へのアクセスが良好なことが背景にあります。
4位は奈良県で27.9%(偏差値73.2)です。奈良県は大阪府や京都府のベッドタウンとしての役割を持ち、多くの住民が大阪市や京都市に通勤しています。
5位は兵庫県で19.7%(偏差値60.4)となっています。兵庫県は大阪府への通勤者が多く、特に阪神間の都市から大阪市内への通勤が一般的です。
下位5県
47位は北海道で5.0%(偏差値37.5)と最も低い割合となっています。北海道は地理的に他県と陸続きでなく、県外への通勤が物理的に困難であることが主な要因です。
46位は新潟県で6.1%(偏差値39.3)、45位は長野県で6.6%(偏差値40.0)となっています。両県とも地理的に山間部が多く、県境を越えた通勤が容易でないことが影響しています。
44位は秋田県で6.8%(偏差値40.3)です。秋田県は地方圏に位置し、周辺県との交通アクセスが限られていることが低い比率の要因となっています。
地域別の特徴分析
大都市圏周辺県の高さ
首都圏(埼玉県、千葉県、神奈川県)、関西圏(奈良県、兵庫県、滋賀県)、中部圏(岐阜県、三重県)など、大都市圏に隣接する県では県外就職者比率が高い傾向にあります。これらの地域は、住宅価格が比較的安価で居住環境が良好な一方、大都市への通勤が可能な距離にあることが特徴です。
地方圏の低さ
北海道、東北地方(秋田県6.8%、山形県7.6%)、北陸地方(新潟県6.1%、福井県7.6%)、九州地方(高知県7.9%、沖縄県8.0%)など、地方圏では県外就職者比率が低い傾向にあります。これらの地域は、県境を越えた通勤が地理的に困難であることや、地域内での雇用が中心となっていることが要因です。
東京都と大阪府の特徴
大都市である東京都(13.7%、偏差値51.1)と大阪府(12.0%、偏差値48.4)は、周辺県ほど高くはありません。これは、これらの都府内に雇用機会が多く、また他県からの通勤者を受け入れる側であることを反映しています。
格差や課題の考察
通勤圏の拡大と生活環境
県外就職者比率が高い地域では、長時間通勤による生活の質の低下や、地域コミュニティへの帰属意識の希薄化などの課題があります。一方で、居住地選択の自由度が高まり、ライフスタイルに合わせた住環境を選べるメリットもあります。
地域経済への影響
県外就職者比率が高い地域では、所得が他県で生み出され、消費の一部も通勤先で行われるため、地域経済への波及効果が限定的になる可能性があります。一方、住民税などの税収は居住地にもたらされるため、財政面ではプラスの側面もあります。
テレワークの影響と今後の展望
新型コロナウイルス感染症の流行を契機に普及したテレワークにより、居住地と就業地の関係が変化しつつあります。今後、県外就職者比率のパターンが変化する可能性があり、地方圏でも大都市の企業に就業しながら居住することが増える可能性があります。
統計データの基本情報と分析
統計的分析
全国の県外就職者比率の平均値は13.0%、**中央値は11.3%**となっており、平均値が中央値を上回っていることから、一部の高い値を持つ県が平均を引き上げていることがわかります。
最大値(埼玉県・千葉県の32.6%)と最小値(北海道の5.0%)の差は27.6ポイントと非常に大きく、都道府県間の格差が顕著です。
**標準偏差は約6.7%**で、データのばらつきが大きいことを示しています。特に、上位の首都圏3県(埼玉県、千葉県、神奈川県)と奈良県は他県と比べて突出して高い値を示しており、これらの県が全体の分布を歪めています。
四分位範囲を見ると、上位25%の県は17.4%以上、下位25%の県は8.6%以下となっており、中間50%の県は比較的近い値に集中しています。これは、極端に高い一部の県と、極端に低い一部の県を除けば、多くの県が中程度の値を示していることを表しています。
まとめ
2023年度の県外就職者比率は、埼玉県と千葉県が32.6%で全国1位、北海道が5.0%で全国47位となりました。大都市圏に隣接する県で高く、地理的に孤立した地域や地方圏で低い傾向が明確に表れています。
この指標は、地域の雇用環境や通勤圏の広がり、居住地選択の傾向を反映しており、地域政策や都市計画を考える上で重要な視点を提供しています。テレワークの普及など働き方の変化により、今後この指標の意味合いや分布パターンが変化する可能性があり、継続的な観察が必要です。