概要
離婚率とは、人口1,000人あたりの離婚件数を示す指標です。この記事では、2022年度の都道府県別離婚率のランキングを紹介します。
離婚率は、地域の家族観や経済状況、年齢構成などを反映しており、家族政策や社会保障制度の基礎データとして重要な指標です。2022年度は、沖縄県や宮崎県などで離婚率が高く、富山県や石川県などの北陸地方の県で離婚率が低くなっています。
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上位県と下位県の比較
離婚率が高い上位5県
2022年度の離婚率ランキングでは、沖縄県が2.10(偏差値10.6)で全国47位となりました。沖縄県は若年層の結婚率も高く、早婚の傾向があることが離婚率の高さに影響していると考えられます。若くして結婚するカップルは、経済的・精神的に不安定な状態で家庭を築くことが多く、それが離婚率の高さにつながっている可能性があります。また、沖縄県特有の歴史的・文化的背景も影響していると考えられます。
46位は宮崎県で1.67(偏差値35.0)、45位は福岡県と大阪府でともに1.65(偏差値36.1)、43位は北海道で1.63(偏差値37.2)となっています。上位県には九州・四国地方や大都市を含む府県が多く、地域的な特性が見られます。特に宮崎県や沖縄県は、若年層の早婚傾向や経済的な不安定さが離婚率の高さに影響している可能性があります。
離婚率が低い下位5県
最も離婚率が低かったのは富山県で1.06(偏差値69.5)でした。富山県は三世代同居率が高く、家族のつながりが強い地域として知られています。また、製造業を中心とした安定した雇用環境が、家族の経済的基盤を支えていることも要因の一つです。
2位は石川県と新潟県でともに1.12(偏差値66.1)、4位は福井県で1.13(偏差値65.6)、5位は秋田県と山形県でともに1.15(偏差値64.4)となっています。下位県には北陸地方や東北地方の県が多く、高齢化や伝統的な家族観の残存が離婚率の低さに影響していることがわかります。
地域別の特徴分析
東北地方の離婚事情
東北地方では、福島県(29位、1.43)が最も離婚率が高く、秋田県と山形県(ともに5位、1.15)が最も低くなっています。その他の県は、青森県(20位、1.38)、岩手県(8位、1.26)、宮城県(14位、1.34)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
東北地方全体として離婚率が低い理由としては、高齢化の進行と伝統的な家族観の残存が挙げられます。東北地方は全国的に見ても高齢化率が高く、若年層の人口比率が低いことが離婚率の低さに影響していると考えられます。また、地域社会や親族のつながりが強く、離婚に対する社会的障壁が高い傾向があることも要因の一つです。
特に秋田県と山形県で離婚率が低い理由としては、高齢化の進行に加えて、農村部が多く伝統的な家族観が根強く残っていることが挙げられます。これらの県では、三世代同居の割合も比較的高く、家族のつながりが強い傾向があります。
一方、福島県で離婚率が比較的高い理由としては、都市部の発展や産業構造の変化が挙げられます。福島県は東北地方の中でも比較的都市化が進んでおり、また原子力発電所事故後の避難や生活環境の変化が家族関係にストレスを与えた可能性もあります。
関東地方の都市化と離婚動向
関東地方では、群馬県(33位、1.45)が最も離婚率が高く、茨城県(18位、1.37)、千葉県(19位、1.37)、東京都(17位、1.37)が最も低くなっています。その他の県は、栃木県(23位、1.39)、埼玉県(25位、1.40)、神奈川県(24位、1.39)と、全国的に見ると中位に位置しています。
関東地方は全国的に見ると離婚率が中程度であり、大きな地域差は見られません。これは、都市化の進行と伝統的な家族観の希薄化が全体的に進んでいることを反映していると考えられます。また、経済的な安定性や教育水準の高さも、極端な離婚率の上昇を抑制している可能性があります。
特に東京都で離婚率が中位にとどまっている理由としては、高学歴者や専門職が多く、経済的に安定した層が多いことが挙げられます。また、晩婚化の傾向も強く、結婚年齢が高いことで、より慎重に配偶者を選択している可能性もあります。
一方、群馬県で離婚率が比較的高い理由としては、製造業を中心とした産業構造や、都市部と農村部の混在による生活様式の変化が挙げられます。また、首都圏への通勤圏内であることから、夫婦の生活時間のずれやストレスが生じやすい環境にあることも要因の一つかもしれません。
中部・北陸地方の産業構造と離婚傾向
中部・北陸地方では、愛知県(36位、1.48)が最も離婚率が高く、富山県(1位、1.06)が最も低くなっています。その他の県は、新潟県(3位、1.12)、石川県(2位、1.12)、福井県(4位、1.13)、山梨県(27位、1.41)、長野県(9位、1.27)、岐阜県(12位、1.32)、静岡県(21位、1.38)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
中部・北陸地方全体として離婚率が低い理由としては、伝統的な家族観の残存と製造業を中心とした安定した雇用環境が挙げられます。特に北陸地方(富山県、石川県、福井県)は、三世代同居率が高く、家族のつながりが強い傾向があります。また、製造業を中心とした安定した雇用環境が、家族の経済的基盤を支えていることも要因の一つです。
特に富山県と福井県で離婚率が低い理由としては、三世代同居率の高さと女性の就業率の高さが挙げられます。これらの県では、女性が働きながらも、祖父母の支援を受けて子育てができる環境があり、夫婦間の負担やストレスが軽減されている可能性があります。
一方、愛知県で離婚率が比較的高い理由としては、都市化の進行と産業構造の変化が挙げられます。特に愛知県は自動車産業を中心とした製造業が盛んであり、景気変動の影響を受けやすいことが、家庭の経済的安定性に影響している可能性があります。
近畿地方の都市部と郊外の差
近畿地方では、大阪府(45位、1.65)が最も離婚率が高く、滋賀県(10位、1.30)が最も低くなっています。その他の県は、京都府(22位、1.38)、兵庫県(34位、1.46)、奈良県(15位、1.36)、和歌山県(39位、1.53)と、全国的に見ると中位から上位に位置しています。
近畿地方は全国的に見ると離婚率が中程度から高めであり、特に大阪府は全国的にも高い水準にあります。これは、都市化の進行と伝統的な家族観の希薄化が影響していると考えられます。また、大阪府では経済的な格差も大きく、低所得層では経済的なストレスが家族関係に影響している可能性があります。
特に滋賀県で離婚率が低い理由としては、ベッドタウンとしての性格と家族志向の強さが挙げられます。滋賀県は大阪府や京都府のベッドタウンとしての性格が強く、家族を形成して郊外に移り住む傾向があることから、家族志向が強い人口が多いことが離婚率の低さに影響していると考えられます。
一方、大阪府で離婚率が高い理由としては、都市的な生活様式と経済的な不安定さが挙げられます。大阪府は近畿地方の経済的中心であり、都市部では地域社会や親族のつながりが希薄になりがちで、離婚に対する社会的障壁が低い傾向があることも要因の一つです。また、経済的な格差も大きく、低所得層では経済的なストレスが家族関係に影響している可能性があります。
中国・四国地方の地域性
中国・四国地方では、香川県と高知県(ともに41位、1.58)が最も離婚率が高く、島根県(7位、1.24)が最も低くなっています。その他の県は、鳥取県(26位、1.40)、岡山県(38位、1.50)、広島県(31位、1.44)、山口県(13位、1.34)、徳島県(30位、1.43)、愛媛県(37位、1.48)と、全国的に見ると中位から上位に位置しています。
中国・四国地方は全国的に見ると離婚率が中程度から高めの傾向があります。これは、地域経済の停滞や若年層の流出による人口構造の変化が影響していると考えられます。特に四国地方(徳島県、香川県、愛媛県、高知県)は、離婚率が高い傾向が顕著です。
特に高知県で離婚率が高い理由としては、経済的な不安定さと若年層の流出が挙げられます。高知県は第一次産業の比率が高く、所得水準も全国平均を下回っており、経済的なストレスが家族関係に影響している可能性があります。また、若年層の県外流出も多く、残った若者の間で早婚の傾向があることも要因の一つかもしれません。
一方、島根県で離婚率が低い理由としては、高齢化の進行と伝統的な家族観の残存が挙げられます。島根県は全国でも特に高齢化率が高く、若年層の人口比率が低いことが離婚率の低さに影響していると考えられます。また、地域社会や親族のつながりが強く、離婚に対する社会的障壁が高い傾向があることも要因の一つです。
九州・沖縄地方の地域差
九州・沖縄地方では、沖縄県(47位、2.10)が最も離婚率が高く、佐賀県(11位、1.30)が最も低くなっています。その他の県は、福岡県(45位、1.65)、長崎県(16位、1.36)、熊本県(32位、1.44)、大分県(35位、1.48)、宮崎県(46位、1.67)、鹿児島県(40位、1.57)と、全国的に見ると中位から上位に位置しています。
九州・沖縄地方は全国的に見ると離婚率が比較的高い傾向があります。これは、地域経済の構造や文化的背景が影響していると考えられます。特に沖縄県、宮崎県、福岡県は、離婚率が高い傾向が顕著です。
特に沖縄県で離婚率が突出して高い理由としては、若年層の早婚傾向と独特の歴史的・文化的背景が挙げられます。沖縄県は全国で最も出生率が高く、若くして結婚・出産するカップルが多いことが特徴です。若くして結婚するカップルは、経済的・精神的に不安定な状態で家庭を築くことが多く、それが離婚率の高さにつながっている可能性があります。また、米軍基地の存在による国際結婚の多さや、沖縄特有の家族観も影響していると考えられます。
一方、佐賀県で離婚率が低い理由としては、伝統的な家族観の残存と地域社会のつながりの強さが挙げられます。佐賀県は農村部が多く、地域社会や親族のつながりが強い傾向があり、これが離婚に対する社会的障壁となっている可能性があります。また、三世代同居の割合も比較的高く、家族のサポート体制が整っていることも要因の一つです。
離婚率の格差がもたらす影響と課題
人口動態への影響
離婚率の格差は、地域の人口動態にも影響を与えます。離婚率が高い地域では、単身世帯や母子・父子世帯が増加する傾向があり、これにより住宅需要や社会サービスの需要パターンが変化します。また、離婚後の再婚や家族再形成のパターンも地域によって異なり、これが出生率や人口構成に影響を与える可能性があります。
例えば、沖縄県(47位、2.10)では、離婚率が高く、単身世帯や母子・父子世帯の割合が高くなっています。これにより、小規模住宅の需要が高まり、また子育て支援サービスや放課後児童クラブなどの需要も増加しています。一方で、再婚率も比較的高く、新たな家族形成が活発に行われているという特徴があります。
一方、富山県(1位、1.06)では、離婚率が低く、伝統的な家族形態が維持される傾向があります。これにより、多世代同居や核家族世帯の割合が高く、大規模住宅の需要が比較的安定しています。また、地域社会や親族のサポートが得られやすいことから、公的な子育て支援サービスの需要が都市部ほど高くないという特徴があります。
子どもの福祉への影響
離婚率の格差は、子どもの福祉にも影響を与えます。離婚率が高い地域では、離婚を経験する子どもの数も多くなり、これにより子どもの心理的・経済的な支援の必要性が高まります。一方、離婚率が低い地域では、離婚を経験する子どもの数は少ないものの、離婚に対する社会的なスティグマが強い可能性があり、これが離婚家庭の子どもに対する偏見や差別につながる恐れがあります。
例えば、宮崎県(46位、1.67)では、離婚率が高く、離婚を経験する子どもの数も多くなっています。これに対応するため、母子・父子家庭への経済的支援や、離婚後の子どもの心理的ケアを提供する施設・サービスの充実が求められています。また、学校や地域社会での理解促進も重要な課題となっています。
一方、石川県(2位、1.12)では、離婚率が低く、離婚を経験する子どもの数も少ないですが、離婚に対する社会的なスティグマが強い可能性があります。これにより、離婚家庭の子どもが偏見や差別を受けるリスクがあり、こうした子どもたちの心理的サポートや社会的包摂の促進が課題となっています。
社会保障制度への影響
離婚率の格差は、社会保障制度にも影響を与えます。離婚率が高い地域では、母子・父子家庭への支援ニーズが高まり、児童扶養手当や生活保護などの社会保障給付の需要が増加する傾向があります。一方、離婚率が低い地域では、こうした支援ニーズは相対的に低いものの、高齢化の進行により高齢者福祉のニーズが高まっている可能性があります。
例えば、北海道(43位、1.63)では、離婚率が高く、母子・父子家庭への支援ニーズが高まっています。これに対応するため、児童扶養手当の受給者数が多く、また母子・父子家庭向けの就労支援や住宅支援などの施策も充実させる必要があります。これにより、社会保障費の増加圧力が生じているという課題があります。
一方、福井県(4位、1.13)では、離婚率が低く、母子・父子家庭への支援ニーズは相対的に低いですが、高齢化の進行により高齢者福祉のニーズが高まっています。これにより、介護保険や高齢者医療などの社会保障費の増加圧力が生じているという課題があります。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2022年度の都道府県別離婚率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約1.42、中央値は約1.43とほぼ一致しており、データの分布がほぼ対称的であることを示しています。ただし、沖縄県(2.10)が突出して高いため、わずかに右に歪んだ分布となっています。
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分布の歪み:データは全体としてやや正の歪みを示しており、右に長い裾を持つ分布となっています。沖縄県(2.10)が最も高く、富山県(1.06)が最も低いですが、その差は1.04と比較的大きく、地域間の格差が存在します。
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外れ値の特定:沖縄県(2.10)は上側の外れ値と考えられ、平均値を大きく上回っています。これは、沖縄県の独特の歴史的・文化的背景や、若年層の早婚傾向を反映しています。一方、富山県(1.06)は下側の外れ値と考えられ、平均値を下回っています。これは、富山県が高齢化率が高く、伝統的な家族観が根強く残っていることを反映しています。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約1.32、第3四分位数(Q3)は約1.48で、四分位範囲(IQR)は約0.16です。これは、中央の50%の都道府県の離婚率が1.32から1.48の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的近い離婚率であることがわかります。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約0.15で、変動係数(標準偏差÷平均値)は約10.6%となり、相対的なばらつきはそれほど大きくないことを示しています。ただし、最高値と最低値の差は1.04(2.10−1.06)であり、都道府県間の格差は無視できない水準にあります。
まとめ
2022年度の都道府県別離婚率ランキングでは、沖縄県が2.10で47位、富山県が1.06で1位となりました。上位(離婚率が高い)には沖縄県、宮崎県、福岡県、大阪府などが位置し、下位(離婚率が低い)には富山県、石川県、新潟県などの北陸地方や東北地方の県が多く見られました。
離婚率の地域差は、年齢構成、経済状況、家族観など様々な要素を反映しており、この差は人口動態、子どもの福祉、社会保障制度など様々な面に影響を与えています。
統計分析からは、都道府県間の離婚率の格差が存在し、特に沖縄県が突出して高いことがわかります。これは、沖縄県の独特の歴史的・文化的背景や、若年層の早婚傾向を反映しています。一方、北陸地方や東北地方の県では離婚率が低く、これは高齢化の進行と伝統的な家族観の残存を反映しています。
少子高齢化が進む日本社会において、家族のあり方は多様化しており、離婚後の生活支援や子どもの福祉の確保が重要な課題となっています。特に、母子・父子家庭への経済的支援、子どもの心理的ケア、離婚後の共同養育の促進などの政策が求められています。また、離婚に対する社会的なスティグマの解消や、多様な家族形態を受け入れる社会的包摂の促進も重要な課題です。