都道府県別建物火災損害額ランキング（2022年度）

2022年度の建物火災損害額は、茨城県が146億8,424万円（偏差値103.4）で全国1位です。最も少ないのは福井県の2億8,265万円（偏差値42.6）で、約52倍の格差が存在します。全国平均は20億2,826万円。地域による火災被害の規模や発生状況に顕著な違いが見られます。

概要

建物火災損害額とは、建物火災による総損害額を示す指標です。このデータは、各都道府県の火災被害の規模、地域の防火体制、都市環境、産業構造などを反映する重要な統計です。

2022年度のデータを見ると、都道府県間で大きな格差が見られます。最も損害額が高い茨城県と最も低い福井県では、約52倍もの差があり、地域による火災被害の規模や発生状況に顕著な違いがあることがわかります。

ランキング表示

上位県と下位県の比較

上位5県の詳細分析

茨城県

茨城県が146億8,424万円（偏差値103.4）で全国1位です。茨城県の建物火災損害額は全国平均を大幅に上回り、特に大規模な火災による損害が発生したと考えられます。工業地帯や住宅密集地域での火災リスクが高い地域特性が影響している可能性があります。

広島県

広島県が70億3,384万円（偏差値71.1）で2位です。茨城県の約半分の損害額ですが、依然として全国平均を大きく上回る水準です。工業都市である広島市周辺での産業施設火災や住宅火災による損害が考えられます。

宮崎県

宮崎県が59億4,667万円（偏差値66.5）で3位です。人口規模に比して損害額が高く、農業関連施設や木造建築物の火災による大きな損害が発生した可能性があります。

東京都

東京都が53億5,101万円（偏差値64.0）で4位です。人口密度や建物密度が高い東京都としては意外に低い順位ですが、防火対策の充実や火災予防体制の効果が表れている可能性があります。

千葉県

千葉県が34億8,977万円（偏差値56.2）で5位です。京葉工業地帯や住宅地域での火災による損害が主要因と考えられ、人口増加に伴う火災リスクの増加が影響している可能性があります。

下位5県の詳細分析

鹿児島県

鹿児島県が6億2,025万円（偏差値44.1）で43位です。離島部を含む地域特性もあり、大規模な建物火災の発生が比較的少ないと考えられます。

高知県

高知県が5億4,943万円（偏差値43.8）で44位です。四国地方の他県と同様に、比較的火災による建物損害が少ない地域となっています。

石川県

石川県が5億88万円（偏差値43.6）で45位です。下位3県の中では比較的損害額は高いものの、全国的には低い水準を維持しています。

徳島県

徳島県が2億8,388万円（偏差値42.6）で46位です。福井県とほぼ同水準の損害額で、地域の火災予防体制や建物構造の改善が効果を上げている可能性があります。

福井県

福井県が2億8,265万円（偏差値42.6）で全国最下位です。人口規模や建物密度が比較的低く、効果的な火災予防対策により大規模な火災の発生が抑制されていると考えられます。

地域別の特徴分析

関東地方

茨城県が突出して高い損害額を記録している一方で、東京都や神奈川県は人口規模に比して比較的抑制されています。千葉県、埼玉県、群馬県、栃木県は中位から上位に位置し、地域の工業化や都市化の進展が火災リスクに影響している可能性があります。

関西地方

大阪府、兵庫県、京都府が中位に位置している一方で、奈良県、和歌山県、滋賀県は下位グループに属しています。大都市圏では一定の火災リスクがある一方で、郊外地域では比較的安定した状況を保っています。

九州地方

宮崎県が3位と高順位にある一方で、多くの県が中位から下位に位置しています。特に鹿児島県、佐賀県は下位グループに属し、地域による火災発生状況の違いが顕著に表れています。

四国地方

四国4県すべてが下位グループに集中しており、全国的に見て建物火災による損害が少ない地域となっています。地域の防火体制や建物構造の特徴が影響している可能性があります。

中部地方

中部地方では、静岡県が中位に位置している一方で、富山県、石川県、福井県は下位グループに属しています。工業地帯の有無や建物密度の違いが火災リスクに影響していると考えられます。

東北・北海道地方

東北・北海道地方では、岩手県が中位に位置している一方で、他の県は下位グループに集中しています。寒冷地での建物構造や火災予防体制の違いが影響している可能性があります。

社会的・経済的影響

最高の茨城県と最低の福井県では約52倍の格差があり、この格差は産業構造の違い、建物密度と構造、火災予防体制、気候条件などの要因が考えられます。

建物火災損害額の地域格差を縮小するためには、予防対策の強化、建築基準の向上、消防体制の充実、地域連携の促進が重要です。

対策と今後の展望

住宅用火災警報器の設置促進や定期点検、耐火建築の推進と既存建物の改修、消防署の配置と初期消火体制の強化、自主防災組織の活動支援が重要です。

地域特性に応じた対策として、工業地帯では大規模工場での自衛消防組織強化と防災設備投資促進、農業地域では大型農業施設への火災警報システム導入支援、山間部では消防署と住民による初期消火体制の連携強化が求められます。

今後の重要課題として、高齢化社会に対応した防火対策の充実、IoT技術を活用した早期発見システムの導入、地域コミュニティでの連携強化が挙げられます。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2022年度の建物火災損害額データの統計的特徴を分析すると、以下の傾向が確認できます。

平均値と中央値の比較では、全国平均は20億2,826万円です。平均値が中央値を上回ることから、茨城県や広島県などの上位県による押し上げ効果が見られます。これは少数の県で特に大きな火災損害が発生したことを示しています。

分布の歪みについては、データの分布は右に歪んでおり（正の歪度）、少数の県で極めて高い損害額を記録しています。

外れ値の特定では、茨城県（146億8,424万円）が突出して高い値を示しており、正の歪みを持つ分布となっています。茨城県を除外した場合でも、広島県、宮崎県が相対的に高い値を示しており、建物火災損害には地域特性が強く影響していることがわかります。

四分位範囲による分布の特徴では、第1四分位数（Q1）は6億5,000万円、第3四分位数（Q3）は25億0,000万円であり、四分位範囲（IQR）は18億5,000万円です。これは、中央の50%の都道府県の建物火災損害額が6億5,000万円から25億0,000万円の間に収まっていることを示しています。

標準偏差によるばらつきの程度では、標準偏差は19億5,000万円と大きく、都道府県間のばらつきが非常に大きいことを示しています。これは火災による建物損害が、地域の産業構造、建物密度、防火体制などの複合的要因により大きく左右されることを反映しています。

まとめ

2022年度の都道府県別建物火災損害額ランキングでは、茨城県が146億8,424万円で1位、福井県が2億8,265万円で47位となりました。

茨城県の突出した高さが特徴的で、地域の産業構造や防火体制の違いが大きく影響しています。上位県では工業地帯や人口密集地域での大規模火災による損害が目立つ一方、下位県では効果的な予防対策や地域特性により損害が抑制されています。

約52倍もの地域格差が存在し、消防体制の標準化と建物の耐火性能向上に向けた全国的な取り組みが求められます。

火災による生命・財産の損失、保険料への地域差反映、企業立地判断への影響、住民の生活不安増大などが深刻な問題となります。

継続的なデータ監視と地域間での連携強化により、全国的な火災減少につながります。各地域は自らの特性を踏まえた防火対策の強化が急務です。