都道府県別完全失業率(女性)ランキング(2020年度)
概要
完全失業率(女性)とは、女性の労働力人口(就業者と完全失業者の合計)に占める完全失業者の割合を指します。この記事では、2020年度の都道府県別女性完全失業率のランキングを紹介します。
女性の完全失業率は、地域の雇用状況や経済状況を反映する重要な指標であり、特に2020年度はコロナ禍の影響により、多くの地域で失業率が上昇した時期でもあります。沖縄県や福岡県などで女性の完全失業率が高く、福井県や富山県などで女性の完全失業率が低くなっています。
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上位県と下位県の比較
女性完全失業率が高い上位5県
2020年度の女性完全失業率ランキングでは、沖縄県が4.5%(偏差値81.5)で全国1位となりました。沖縄県は観光業を中心とする産業構造であり、コロナ禍による観光客の減少が女性の雇用に大きな影響を与えたと考えられます。特に、宿泊業や飲食サービス業など、女性の就業率が高い業種での雇用減少が顕著だったと推測されます。
2位は福岡県で4.0%(偏差値70.0)、3位は大阪府で3.9%(偏差値67.7)、4位は青森県で3.7%(偏差値63.1)、5位は北海道で3.7%(偏差値63.1)となっています。上位県には大都市を有する都道府県や観光業が盛んな地域が多く含まれており、コロナ禍の影響を強く受けたと考えられます。
女性完全失業率が低い下位5県
最も女性完全失業率が低かったのは福井県で2.0%(偏差値24.7)でした。福井県は製造業、特に繊維産業や眼鏡産業などの地場産業が発達しており、女性の雇用の安定性が高いことが特徴です。また、女性の就業率が全国的に高い地域でもあり、労働市場のミスマッチが少ない可能性があります。
46位は富山県で2.1%(偏差値27.0)、45位は石川県で2.3%(偏差値31.6)、44位は島根県で2.4%(偏差値33.9)、43位は岐阜県で2.5%(偏差値36.2)となっています。下位県には製造業が盛んな地域や、地場産業が発達している地域が多く含まれており、女性の雇用の安定性が高いことが特徴です。
地域別の特徴分析
東北地方の雇用状況
東北地方では、青森県(4位、3.7%)と宮城県(6位、3.7%)の女性失業率が特に高く、山形県(40位、2.7%)の女性失業率が最も低くなっています。その他の県は、岩手県(38位、2.9%)、秋田県(31位、3.0%)、福島県(15位、3.3%)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
東北地方全体として女性失業率にばらつきがある理由としては、各県の産業構造の違いが挙げられます。特に青森県では、第一次産業の比率が高く、季節的な雇用変動が大きいことや、女性の就業機会が限られていることが高い失業率の要因として考えられます。
特に宮城県で女性失業率が高い理由としては、仙台市を中心とするサービス業や小売業が発達しており、これらの産業がコロナ禍の影響を強く受けたことが考えられます。また、東日本大震災からの復興需要が一段落し、復興関連の雇用が減少していることも要因として考えられます。
一方、山形県で女性失業率が低い理由としては、製造業や農業などでの女性の雇用が安定していることが挙げられます。特に、食品加工業や繊維産業などの地場産業が発達しており、これらの産業での女性の雇用が安定していると考えられます。また、地域に根ざした中小企業が多く、女性の雇用の維持に努めている可能性もあります。
関東地方の都市化と失業の動向
関東地方では、埼玉県(8位、3.5%)と千葉県(8位、3.5%)の女性失業率が比較的高く、栃木県(38位、2.9%)と群馬県(34位、2.9%)の女性失業率が比較的低くなっています。その他の県は、茨城県(23位、3.1%)、東京都(11位、3.4%)、神奈川県(11位、3.4%)と、全国的に見ると上位から中位に位置しています。
関東地方全体として女性失業率が中程度である理由としては、多様な産業構造を持ち、女性の就業機会が比較的豊富であることが挙げられます。ただし、コロナ禍の影響により、サービス業や小売業などの女性の就業率が高い業種での雇用が減少した地域では、女性失業率が上昇した可能性があります。
特に埼玉県と千葉県で女性失業率が比較的高い理由としては、東京都のベッドタウンとしての性格が強く、東京都内の雇用状況の影響を受けやすいことが考えられます。また、サービス業や小売業の比率が高く、これらの業種がコロナ禍の影響を強く受けたことも要因として考えられます。
一方、栃木県と群馬県で女性失業率が比較的低い理由としては、製造業の比率が高く、特に食品加工業や繊維産業などの女性の就業率が高い業種が発達していることが挙げられます。これらの産業は、コロナ禍の影響を比較的受けにくかった可能性があります。
中部・北陸地方の産業構造と失業の特徴
中部・北陸地方では、愛知県(18位、3.2%)と静岡県(18位、3.2%)の女性失業率が比較的高く、福井県(47位、2.0%)、富山県(46位、2.1%)、石川県(45位、2.3%)の女性失業率が非常に低くなっています。その他の県は、新潟県(23位、3.1%)、山梨県(31位、3.0%)、長野県(31位、3.0%)、岐阜県(43位、2.5%)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
中部・北陸地方全体として女性失業率が低い理由としては、製造業を中心とする産業構造が挙げられます。特に、繊維産業や食品加工業、電子部品産業などの女性の就業率が高い業種が発達しており、女性の雇用の安定性が高いことが特徴です。また、地場産業が発達している地域も多く、これらの産業がコロナ禍の影響を比較的受けにくかった可能性があります。
特に福井県、富山県、石川県で女性失業率が非常に低い理由としては、繊維産業や眼鏡産業(福井県)、医薬品産業(富山県)、伝統工芸品産業(石川県)などの地場産業が発達していることが挙げられます。これらの産業は、女性の就業率が高く、長年にわたり地域の女性の雇用を支えており、雇用の安定性が高いことが特徴です。
一方、愛知県と静岡県で中部地方の中では女性失業率が比較的高い理由としては、自動車産業や電機産業などの製造業が発達しているものの、これらの産業は男性の就業率が高く、女性の就業機会が限られている可能性があります。また、名古屋市や静岡市などの都市部ではサービス業や小売業も発達しており、これらの業種がコロナ禍の影響を受けた可能性があります。
近畿地方の経済状況と失業の分布
近畿地方では、大阪府(3位、3.9%)の女性失業率が特に高く、滋賀県(31位、3.0%)の女性失業率が最も低くなっています。その他の県は、京都府(11位、3.4%)、兵庫県(11位、3.4%)、奈良県(18位、3.2%)、和歌山県(23位、3.1%)と、全国的に見ると上位から中位に位置しています。
近畿地方全体として女性失業率が中程度である理由としては、大阪府や京都府などの大都市圏と、滋賀県や和歌山県などの地方県との産業構造の違いが挙げられます。特に、大都市圏ではサービス業や小売業の比率が高く、コロナ禍の影響を強く受けた可能性があります。
特に大阪府で女性失業率が高い理由としては、サービス業や小売業、観光業などの第三次産業の比率が高く、これらの業種は女性の就業率が高いことが特徴です。コロナ禍の影響により、これらの業種での雇用が減少したことが、女性失業率の上昇につながった可能性があります。また、非正規雇用の女性の比率が高いことも、雇用の不安定性を高めている可能性があります。
一方、滋賀県で女性失業率が低い理由としては、製造業の比率が高く、特に電子部品産業や食品加工業などの女性の就業率が高い業種が発達していることが挙げられます。これらの産業は、コロナ禍の影響を比較的受けにくかった可能性があります。また、大阪府や京都府などへの通勤者が多く、地元での雇用依存度が比較的低いことも要因として考えられます。
一方、佐賀県で九州地方の中では女性失業率が低い理由としては、農業や食品加工業などの第一次産業と関連産業が発達しており、これらの産業での女性の雇用が安定していることが挙げられます。また、医療・福祉分野での女性の就業率が高く、これらの分野はコロナ禍でも雇用が比較的安定していたと考えられます。さらに、福岡県への通勤者が多く、地元での雇用依存度が比較的低いことも要因として考えられます。
格差や課題の考察
地域経済への影響
女性完全失業率の地域間格差は、地域経済にも影響を与えます。女性失業率が高い地域では、世帯収入の減少により消費活動が低迷する可能性があり、地域経済の活性化が課題となります。特に、共働き世帯が増加している現代社会では、女性の雇用状況が家計に与える影響は大きくなっています。
例えば、沖縄県(1位、4.5%)では、女性失業率が高く、特に観光業や飲食業などでの女性の雇用が減少しています。これにより、世帯収入が減少し、消費活動が低迷する可能性があります。また、女性の経済的自立が阻害され、貧困率の上昇や社会保障費の増加につながる可能性もあります。
一方、福井県(47位、2.0%)では、女性失業率が低く、雇用が安定していることから、世帯収入も安定しており、消費活動も安定していると考えられます。これにより、地域経済の持続的な成長が期待できます。また、女性の経済的自立が促進され、地域社会の活力向上につながる可能性があります。
社会保障制度への影響
女性完全失業率の地域間格差は、社会保障制度にも影響を与えます。女性失業率が高い地域では、失業給付や生活保護などの社会保障費が増加する傾向があり、財政的な負担が大きくなる可能性があります。
例えば、大阪府(3位、3.9%)では、女性失業率が高く、特に非正規雇用の女性が多いことから、失業給付の受給資格を持たない女性も多い可能性があります。これにより、生活保護などの社会保障制度への依存が高まり、地方自治体の財政に負担をかける可能性があります。
一方、富山県(46位、2.1%)では、女性失業率が低く、特に正規雇用の女性の比率が高い可能性があります。これにより、社会保障費の増加が抑制され、財政的な余裕が生まれる可能性があります。この余裕を活用して、子育て支援や高齢者福祉などの施策を充実させることで、女性の就業環境の更なる改善につながる可能性があります。
女性の就業環境への影響
女性完全失業率の地域間格差は、女性の就業環境にも影響を与えます。女性失業率が高い地域では、女性の就業機会が限られる可能性があり、これが女性の地域外への流出を促進する要因となっています。
例えば、福岡県(2位、4.0%)では、女性失業率が高く、特に若年女性の就業機会が限られている可能性があります。これにより、若年女性が県外に流出する傾向があり、人口減少と高齢化が進行する可能性があります。特に、高学歴の女性ほど就業機会を求めて都市部に移動する傾向があり、地方の人材流出につながる可能性があります。
一方、石川県(45位、2.3%)では、女性失業率が低く、特に繊維産業や伝統工芸品産業などで女性の就業機会が確保されています。これにより、女性の県外流出が抑制され、地域社会の持続可能性が高まっています。特に、金沢市を中心に文化的な魅力も高く、女性にとって魅力的な就業・生活環境が整っていることが特徴です。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2020年度の都道府県別女性完全失業率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約3.1%、中央値は約3.1%とほぼ同じ値を示しており、データの分布がほぼ対称的であることを示しています。ただし、沖縄県(4.5%)や福岡県(4.0%)などの上位県と、福井県(2.0%)や富山県(2.1%)などの下位県との間には大きな差があります。
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分布の歪み:データは全体としてほぼ対称的な分布を示していますが、沖縄県(4.5%)が上側の外れ値として存在しています。これは、沖縄県の特殊な産業構造や雇用環境を反映していると考えられます。
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外れ値の特定:沖縄県(4.5%)は上側の外れ値と考えられ、平均値を大きく上回っています。これは、沖縄県の観光業を中心とする産業構造や、女性の就業機会の限定性を反映していると考えられます。一方、福井県(2.0%)や富山県(2.1%)などは下側の外れ値と考えられ、平均値を大きく下回っています。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約2.8%、第3四分位数(Q3)は約3.4%で、四分位範囲(IQR)は約0.6%です。これは、中央の50%の都道府県の女性完全失業率が2.8%から3.4%の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的近い失業率であることがわかります。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約0.5%で、変動係数(標準偏差÷平均値)は約16%となり、相対的なばらつきは比較的小さいことを示しています。ただし、最高値(沖縄県、4.5%)と最低値(福井県、2.0%)の差は2.5%ポイントと大きく、地域間の格差が存在することを示しています。
まとめ
2020年度の都道府県別女性完全失業率ランキングでは、沖縄県が4.5%で1位、福井県が2.0%で47位となりました。上位には沖縄県、福岡県、大阪府などの観光業が盛んな地域や大都市を有する都府県が多く、下位には福井県、富山県、石川県などの製造業や地場産業が発達している地域が多く見られました。
女性完全失業率の地域差は、産業構造、雇用環境、女性の就業機会など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、社会保障制度、女性の就業環境など様々な面に影響を与えています。特に2020年度は、コロナ禍の影響により、サービス業や小売業などの女性の就業率が高い業種で雇用が大きく減少した時期であり、これらの業種が集中する地域では女性失業率が上昇した可能性があります。
統計分析からは、都道府県間の女性完全失業率の格差が存在することがわかります。特に、沖縄県や福岡県などの上位県と、福井県や富山県などの下位県との間には大きな差があります。これは、産業構造や雇用環境の違いを反映していると考えられます。
コロナ禍からの経済回復が進む中、女性失業率の改善が期待されますが、地域によって回復のスピードや程度は異なる可能性があります。特に、観光業やサービス業に依存している地域では、回復に時間がかかる可能性があります。一方、製造業や地場産業が発達している地域では、比較的早い回復が期待できます。地域の特性に応じた雇用対策や女性の就業支援策が求められています。