都道府県別商業従業者数ランキング(2021年度)
概要
商業従業者数は、各都道府県の卸売業・小売業に従事する人の数を示す指標です。地域の流通・小売業の規模や雇用状況を把握する上で重要なデータとなります。本記事では、2021年度の都道府県別商業従業者数のランキングデータを分析し、地域間の特徴や格差について解説します。
地図データを読み込み中...
上位県と下位県の比較
上位5県の詳細
- 東京都が1,576,575人(偏差値103.4)で全国1位となっています。首都として流通業・小売業の中心であり、商業従業者数が突出しています。
- 大阪府は776,664人(偏差値72.3)で全国2位です。関西圏の経済・商業の中心として、多くの商業従業者を抱えています。
- 愛知県は597,518人(偏差値65.3)で全国3位です。中部地方の経済・商業の中心として、自動車産業を中心とした製造業とともに商業も発達しています。
- 神奈川県は546,955人(偏差値63.3)で全国4位です。首都圏の重要な一角として多くの商業従業者を擁しています。
- 埼玉県は438,389人(偏差値59.1)で全国5位です。首都圏のベッドタウンとしての性格と同時に、独自の商業集積地も形成しています。
下位5県の詳細
- 佐賀県は58,295人(偏差値44.3)で全国43位です。人口規模が小さく、商業従業者数も限られています。
- 高知県は52,523人(偏差値44.1)で全国44位です。人口減少や高齢化の影響もあり、商業従業者数が少なくなっています。
- 徳島県は49,923人(偏差値44.0)で全国45位です。四国の中でも商業規模が小さく、従業者数も少ない傾向があります。
- 島根県は47,619人(偏差値43.9)で全国46位です。人口規模の小ささと高齢化の進行が商業従業者数の少なさに反映されています。
- 鳥取県は39,832人(偏差値43.6)で全国最下位です。人口が最も少ない県であり、商業従業者数も最も少なくなっています。
地域別の特徴分析
首都圏・大都市圏
東京都(1位:1,576,575人)を中心に、大阪府(2位:776,664人)、愛知県(3位:597,518人)、神奈川県(4位:546,955人)、埼玉県(5位:438,389人)と、三大都市圏の中心都道府県が上位を占めています。これらの地域は人口集中地域であるとともに、商業・流通の拠点としての機能も有しているため、商業従業者数が多くなっています。
特に東京都は2位の大阪府の約2倍の商業従業者を抱えており、日本の商業・流通において圧倒的な中心地となっていることがわかります。
地方中枢都市圏
福岡県(6位:398,889人)、北海道(7位:380,732人)、千葉県(8位:368,384人)、兵庫県(9位:361,685人)など、地方の中枢都市を有する道県や、首都圏・関西圏の外縁部の県が続いています。これらの地域は地方における商業・流通の拠点として機能しており、一定規模の商業従業者数を維持しています。
特に福岡県は九州地方の商業・流通の中心として、北海道は広大な面積をカバーする広域的な商業圏を形成していることが、比較的多い商業従業者数に表れています。
中規模県の状況
静岡県(10位:269,340人)、広島県(11位:225,166人)、京都府(12位:192,204人)など、一定の人口規模と経済基盤を持つ県は中位に位置しています。これらの県は地域の中核都市を有し、周辺地域への商業・サービス提供の役割を担っています。
小規模県の特徴
鳥取県(47位:39,832人)、島根県(46位:47,619人)、徳島県(45位:49,923人)など、人口規模が小さく、大都市から遠い地方県は下位に集中しています。これらの県は人口減少や高齢化が進んでおり、商業市場の縮小と商業従業者数の減少が進んでいる傾向があります。
格差や課題の考察
地域間格差の実態
東京都(1位:1,576,575人)と鳥取県(47位:39,832人)の間には約40倍もの格差があります。この格差は人口規模の差(東京都は鳥取県の約14倍)以上に大きく、東京一極集中の商業構造を反映しています。
また上位5県(東京都、大阪府、愛知県、神奈川県、埼玉県)の商業従業者数の合計は約393万人で、これは全国の商業従業者数の約45%を占めています。日本の商業・流通が三大都市圏、特に首都圏に集中していることが明確に表れています。
産業構造による違い
商業従業者数が多い地域は、総じて第三次産業の比重が高く、サービス業や情報産業なども発達している傾向があります。一方、下位県は第一次産業や第二次産業の比重が相対的に高く、商業・流通業の発展が限定的である場合が多いです。
また、観光業が発達している沖縄県(26位:96,371人)や長崎県(28位:93,943人)などは、人口規模の割に商業従業者数がやや多い傾向があり、観光関連の小売業・サービス業の影響が見られます。
雇用の安定性と課題
商業従業者数の多い大都市圏では、多様な雇用機会があるものの、競争も激しく、大型店の出店や電子商取引(EC)の拡大による小売業の構造変化が進んでいます。一方、商業従業者数の少ない地方では、地域の商店街の衰退や後継者不足による廃業が進み、商業従業者数の更なる減少が懸念されます。
また、全国的に見ると、少子高齢化やEC市場の拡大により、実店舗の小売業は構造的な変化を迫られており、今後の商業従業者数の動向には注意が必要です。
統計データの基本情報と分析
統計データの分析
平均値と中央値の比較
全国の商業従業者数の平均値は約186,000人ですが、中央値は約94,000人と平均値の約半分にとどまっています。これは、東京都や大阪府など一部の都府県の値が非常に高いため、平均値が大きく引き上げられていることを示しています。
分布の歪みの有無
データの分布は強い正の歪み(右に裾を引く分布)を示しており、多くの県が平均値よりも低い従業者数を持つ一方で、一部の都府県が突出して高い値を示しています。特に東京都(1,576,575人)と大阪府(776,664人)の値が突出しています。
外れ値の特定と影響
東京都(1,576,575人)は最も顕著な外れ値であり、2位の大阪府(776,664人)と比較しても約2倍、中央値(約94,000人)と比較すると約17倍の差があります。これらの外れ値を除くと、より均一な分布となります。
四分位範囲による分布の特徴
第1四分位数(約60,000人)と第3四分位数(約190,000人)の差(四分位範囲)は約130,000人で、中央の50%の県はこの範囲に分布しています。特に下位25%の県は商業従業者数が60,000人未満と小規模であり、上位25%の県は190,000人以上と大規模であるという二極化の傾向が見られます。
標準偏差によるばらつきの程度
標準偏差は約240,000人と非常に大きく、都道府県間の商業従業者数には極めて大きなばらつきがあることを示しています。この大きなばらつきは、東京都や大阪府などの大都市圏と地方県との間の商業規模の格差を反映しています。
まとめ
2021年度の都道府県別商業従業者数ランキングからは、東京都を筆頭に大阪府、愛知県などの大都市圏で従業者数が多い一方、鳥取県や島根県などの地方県では従業者数が少なく、地域間で非常に大きな格差が存在していることが明らかになりました。
この格差は単に流通・小売業の規模の違いだけでなく、人口分布、経済構造、都市化の程度など多様な要因によるものです。特に東京一極集中の商業構造は、人口集中以上に顕著であり、商業・流通業における地域格差の大きさを示しています。
今後の地域経済の持続的発展のためには、地方の商業・流通業の活性化や、地域の特性を活かした商業政策、EC時代に対応した新たな商業モデルの構築など、多角的なアプローチが求められます。