都道府県別転入超過率ランキング(2023年度)
概要
転入超過率とは、その地域の総人口に対する転入者数から転出者数を引いた社会増減数の割合を示す指標です。この記事では、2023年度の都道府県別転入超過率のランキングを紹介します。
転入超過率は、その地域の人口が社会移動によってどれだけ増減しているかを示す重要な指標であり、地域の魅力や経済力、生活環境などを総合的に反映しています。この値がプラスであれば転入超過(社会増)、マイナスであれば転出超過(社会減)を意味します。
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上位県と下位県の比較
転入超過率が高い上位5都府県
2023年度の転入超過率ランキングでは、東京都が0.42%(偏差値79.6)で全国1位となりました。東京都は日本の政治・経済・文化の中心地であり、多くの雇用機会や教育機関が集中していることから、高い転入超過率を維持しています。
2位は千葉県で0.26%(偏差値71.5)、3位は埼玉県と神奈川県で同率の0.24%(偏差値70.5)、5位は福岡県で0.17%(偏差値67.0)となっています。上位には首都圏の都県や経済的に発展している地域が占めており、雇用機会の多さや生活環境の良さが転入超過の要因と考えられます。
転入超過率が低い下位5県
最も転入超過率が低かったのは長崎県で**-0.50**%(偏差値33.3)でした。長崎県は若年層を中心に人口流出が続いており、転出超過の状態が続いています。
46位は青森県で**-0.47**%(偏差値34.8)、45位は岩手県と山形県で同率の**-0.41**%(偏差値37.8)、43位は福島県で**-0.39**%(偏差値38.8)となっています。下位県には東北地方や九州地方の県が多く、雇用機会の少なさや若年層の流出が転出超過の主な要因と考えられます。
地域別の特徴分析
首都圏の高い転入超過率
首都圏では、東京都(1位、0.42%)を中心に、千葉県(2位、0.26%)、埼玉県(3位、0.24%)、神奈川県(3位、0.24%)と、いずれも高い転入超過率を示しています。これらの地域は、東京都を中心とした経済圏を形成しており、多くの雇用機会や教育機関が集中していることから、地方からの若年層を中心に多くの転入者を集めています。特に近年は、東京都からの住み替え需要により、周辺県の転入超過率も高くなっています。
中部・関西地方の状況
中部地方では、愛知県(7位、-0.04%)がほぼ転入転出均衡の状態にあります。愛知県は自動車産業を中心とした製造業が盛んで、雇用機会が豊富なことが比較的良好な転入超過率の要因と考えられます。一方、関西地方では、大阪府(6位、0.15%)が転入超過を示していますが、京都府(19位、-0.15%)や兵庫県(17位、-0.13%)は転出超過となっています。関西地方全体としては、首都圏ほどの求心力を持っていないことがうかがえます。
地方中枢都市を持つ県の状況
福岡県(5位、0.17%)や宮城県(7位、-0.04%)など、地方の中枢都市を持つ県は比較的転入超過率が高い傾向にあります。これらの地域は、地方における経済・行政・教育の中心地としての役割を担っており、周辺地域からの転入者を集めています。特に福岡県は、九州地方の中心都市として高い求心力を持っており、九州各県からの転入者が多いことが特徴です。
東北・北陸地方の低い転入超過率
東北地方では、宮城県(7位、-0.04%)を除いて、青森県(46位、-0.47%)、岩手県(44位、-0.41%)、山形県(44位、-0.41%)、秋田県(40位、-0.35%)、福島県(43位、-0.39%)と、いずれも低い転入超過率を示しています。北陸地方も、富山県と石川県(24位、-0.20%)、福井県(40位、-0.35%)と転出超過となっています。これらの地域は、若年層の首都圏への流出が続いており、人口減少が課題となっています。
九州・四国地方の状況
九州地方では、福岡県(5位、0.17%)が転入超過を示していますが、長崎県(47位、-0.50%)、佐賀県(22位、-0.19%)、大分県(28位、-0.23%)、宮崎県(21位、-0.17%)、鹿児島県(26位、-0.21%)は転出超過となっています。特筆すべきは、熊本県(12位、-0.08%)が比較的良好な値を示していることです。四国地方も、香川県(27位、-0.22%)、徳島県(39位、-0.34%)、愛媛県(36位、-0.32%)、高知県(34位、-0.30%)と全県が転出超過となっています。これらの地域では、若年層の首都圏や福岡県への流出が続いており、人口減少が深刻な課題となっています。
沖縄県の特徴
沖縄県(7位、-0.04%)は離島県ながら比較的高い転入超過率を示しています。これは、観光業の好調や独自の文化・生活環境の魅力、Uターン・Iターン移住の増加などが要因と考えられます。沖縄県は若年層の割合も高く、人口構造の面でも他県と異なる特徴を持っています。
転入超過率の格差がもたらす影響と課題
人口構造への影響
転入超過率の高い地域では、若年層を中心に人口が流入することで、人口構造が若返り、生産年齢人口の割合が高まる傾向があります。一方、転出超過率の高い地域では、若年層の流出と高齢者の残留により、人口の高齢化が加速する傾向があります。この人口構造の変化は、地域の経済力や社会保障制度の持続可能性に大きな影響を与えます。例えば、秋田県や青森県では、若年層の流出により高齢化率が30%を超え、地域の活力低下が懸念されています。
地域経済への影響
転入超過率の高い地域では、人口増加に伴う消費拡大や労働力の確保により、地域経済が活性化する傾向があります。一方、転出超過率の高い地域では、人口減少に伴う消費縮小や労働力不足により、地域経済が停滞する傾向があります。この経済格差は、さらなる人口移動を促進し、地域間格差を拡大させる可能性があります。特に地方の中小企業では、人材確保が困難になり、事業継続の危機に直面しているケースも少なくありません。
住宅・不動産市場への影響
転入超過率の高い地域では、住宅需要の増加により、不動産価格や家賃が上昇する傾向があります。特に東京都や大阪府などの大都市圏では、住宅の高騰が若年層の居住環境に影響を与えています。一方、転出超過率の高い地域では、空き家の増加や不動産価値の下落が問題となっています。総務省の調査によれば、全国の空き家率は13.6%に達し、特に転出超過が続く地方では20%を超える地域も少なくありません。
地方創生と人口分散の必要性
転入超過率の地域間格差は、東京一極集中の問題と密接に関連しています。地方創生や働き方改革、テレワークの推進などを通じて、人口や経済活動の分散を図ることが、持続可能な国土形成のために重要な課題となっています。特にコロナ禍以降、地方移住への関心が高まっており、この流れを促進する政策が求められています。政府の調査によれば、東京都在住者の約4割が地方移住に関心を持っているとされ、この潜在的な移住希望者を実際の移住につなげる取り組みが重要です。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2023年度の都道府県別転入超過率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約-0.15%、中央値は約-0.20%となっており、平均値の方がやや高くなっています。これは、東京都(0.42%)や千葉県(0.26%)など、一部の都県の値が極端に高いためです。全体としては、多くの都道府県が転出超過(マイナス値)となっていることがわかります。
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分布の歪み:データは全体としては対称的ですが、東京都(0.42%)や千葉県(0.26%)、埼玉県・神奈川県(0.24%)という極端に高い値があるため、わずかに正の歪み(右に裾を引いた形状)を示しています。
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外れ値の特定:東京都(0.42%)は明らかな上側の外れ値と考えられます。2位の千葉県(0.26%)との差が大きく、統計的に見ても特異な値を示しています。また、長崎県(-0.50%)や青森県(-0.47%)も下側の外れ値と考えられます。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約-0.31%、第3四分位数(Q3)は約-0.08%で、四分位範囲(IQR)は約0.23%ポイントです。これは、中央の50%の都道府県の転入超過率が-0.31%から-0.08%の間に収まっていることを示しています。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約0.21%ポイントで、多くの都道府県が平均値から±0.21%ポイントの範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値の絶対値)は約140%となり、相対的なばらつきは非常に大きいと言えます。最高値と最低値の差は0.92%ポイント(0.42%−(-0.50%))に達し、東京都と長崎県の間には大きな格差があることを示しています。
まとめ
2023年度の都道府県別転入超過率ランキングでは、東京都が0.42%で1位、長崎県が-0.50%で47位となりました。上位には首都圏の都県や経済的に発展している地域が多く、下位には東北地方や九州地方の県が多く見られました。
転入超過率の地域差は、雇用機会や生活環境、教育機会などの地域特性を反映しており、この差は人口構造、地域経済、住宅市場など多方面に影響を与えています。
統計分析からは、東京都を中心とした首都圏が突出して高い転入超過率を示す一方、多くの都道府県は転出超過の状態にあることがわかります。この地域差は、日本の都市構造や産業構造の特徴を示すとともに、地方創生や人口分散の必要性を物語っています。
持続可能な国土形成のためには、テレワークの推進や地方拠点の強化など、人口や経済活動の分散を図る取り組みが重要です。また、転出超過が続く地域では、地域の特性を活かした産業振興や生活環境の整備が、転入超過が続く地域では、住宅の確保や生活コストの適正化が求められています。