都道府県別労働力人口比率(男性)ランキング(2020年度)

概要

労働力人口比率(男性)とは、15歳以上の男性人口に占める労働力人口(就業者と完全失業者の合計)の割合を指します。この記事では、2020年度の都道府県別男性労働力人口比率のランキングを紹介します。

労働力人口比率は、地域の経済活動の活発さや雇用状況を反映しており、地域経済政策や雇用政策の基礎データとして重要な指標です。2020年度は、福井県や長野県などで男性労働力人口比率が高く、沖縄県や東京都などで低くなっています。

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上位県と下位県の比較

男性労働力人口比率が高い上位5県

2020年度の男性労働力人口比率ランキングでは、福井県69.4%(偏差値65.3)で全国1位となりました。福井県は繊維産業や眼鏡産業などの地場産業が発達しており、原子力発電所関連の雇用も多いことが高い労働力人口比率につながっていると考えられます。また、伝統的に勤労意欲が高い地域性も影響していると考えられます。

2位は長野県68.8%(偏差値63.3)、3位は富山県68.7%(偏差値62.9)、4位は佐賀県68.4%(偏差値62.0)、5位は岩手県68.3%(偏差値61.6)となっています。上位県には北陸地方や中部地方、東北地方の県が多く、製造業が盛んであることや、伝統的に勤労意欲が高い地域性が影響していると考えられます。

男性労働力人口比率が低い下位5県

最も男性労働力人口比率が低かったのは沖縄県56.9%(偏差値24.1)でした。沖縄県は観光業が主要産業であり、季節変動や非正規雇用が多いことが低い労働力人口比率の一因と考えられます。また、若年層の失業率が高いことも特徴です。

46位は東京都57.2%(偏差値25.0)、45位は大阪府57.5%(偏差値26.0)、44位は京都府58.8%(偏差値30.3)、43位は高知県60.0%(偏差値34.3)となっています。下位県には大都市を有する都府県が多く、高齢化の進行や大学生など非労働力人口の割合が高いことが影響していると考えられます。

地域別の特徴分析

東北地方の労働事情

東北地方では、岩手県(5位、68.3%)が最も男性労働力人口比率が高く、青森県(10位、67.3%)、山形県(7位、67.9%)と続き、秋田県(17位、66.0%)、福島県(20位、65.9%)、宮城県(21位、65.7%)も全国的に見ると上位から中位に位置しています。

東北地方全体として男性労働力人口比率が高い理由としては、製造業や農林水産業などの第一次・第二次産業が盛んであることが挙げられます。特に岩手県や山形県では、これらの産業が地域経済の中心となっており、男性の就業機会が比較的多いことが高い労働力人口比率につながっていると考えられます。

特に岩手県で男性労働力人口比率が高い理由としては、製造業や農林水産業が盛んであることに加え、公共事業などによる建設業の雇用も多いことが挙げられます。また、東日本大震災からの復興需要も雇用創出に寄与していると考えられます。

一方、宮城県で東北地方の中では男性労働力人口比率が低い理由としては、仙台市という大都市を有しており、大学生など非労働力人口の割合が高いことが挙げられます。また、サービス業など第三次産業の比重が高く、相対的に男性の雇用機会が少ない可能性があります。

関東地方の都市化と労働動向

関東地方では、群馬県(11位、67.1%)が最も男性労働力人口比率が高く、栃木県(17位、66.0%)、茨城県(24位、65.5%)、埼玉県(32位、64.2%)、千葉県(38位、62.6%)、神奈川県(40位、62.0%)、東京都(46位、57.2%)と続きます。

関東地方は全国的に見ると男性労働力人口比率に大きな地域差があります。これは、東京都や神奈川県などの大都市圏と、群馬県や栃木県などの製造業や農業が盛んな県との産業構造の違いを反映していると考えられます。

特に東京都で男性労働力人口比率が低い理由としては、大学生や専門学校生など非労働力人口の割合が高いことが挙げられます。また、高齢化の進行も影響していると考えられます。さらに、東京都は金融業やIT産業など高度なスキルを要する産業が集中しており、これらの産業にマッチしない労働者が労働市場から退出している可能性もあります。

群馬県や栃木県で比較的高い労働力人口比率を示している理由としては、自動車関連産業や電気機械産業などの製造業が盛んであり、男性の就業機会が多いことが挙げられます。

中部・北陸地方の産業構造と労働傾向

中部・北陸地方では、福井県(1位、69.4%)が最も男性労働力人口比率が高く、長野県(2位、68.8%)、富山県(3位、68.7%)と続き、山梨県(8位、67.5%)、岐阜県(9位、67.4%)、静岡県(6位、68.0%)、石川県(12位、66.8%)、新潟県(14位、66.6%)、愛知県(15位、66.5%)、三重県(23位、65.6%)と、全国的に見ると上位から中位に集中しています。

中部・北陸地方全体として男性労働力人口比率が高い理由としては、製造業が盛んであることが挙げられます。特に福井県や富山県では、繊維産業や機械産業などの製造業が地域経済の中心となっており、男性の就業機会が比較的多いことが高い労働力人口比率につながっていると考えられます。

特に福井県で男性労働力人口比率が高い理由としては、繊維産業や眼鏡産業などの地場産業が発達していることに加え、原子力発電所関連の雇用も多いことが挙げられます。また、伝統的に勤労意欲が高い地域性も影響していると考えられます。

長野県が2位となっている理由としては、精密機械や電子部品などの製造業が発達していることに加え、農業も盛んであり、多様な就業機会が存在することが挙げられます。また、健康長寿県として知られ、高齢者の就業率も高いことも影響していると考えられます。

近畿地方の都市部と郊外の差

近畿地方では、滋賀県(17位、66.0%)が最も男性労働力人口比率が高く、和歌山県(32位、64.2%)、兵庫県(39位、62.3%)、奈良県(42位、60.9%)、京都府(44位、58.8%)、大阪府(45位、57.5%)と続きます。

近畿地方全体として男性労働力人口比率が低い理由としては、大都市圏特有の産業構造や人口構成が挙げられます。特に大阪府や京都府では、サービス業など第三次産業の比重が高く、また大学生など非労働力人口の割合も高いことが低い労働力人口比率につながっていると考えられます。

特に大阪府で男性労働力人口比率が低い理由としては、高齢化の進行や若年層の失業率の高さが挙げられます。また、製造業の衰退により、かつての主要な雇用先が減少していることも影響していると考えられます。

一方、滋賀県で近畿地方の中では男性労働力人口比率が高い理由としては、製造業が盛んであることが挙げられます。滋賀県は琵琶湖を中心に多くの工業団地があり、電子部品や機械などの製造業が発達しています。また、大阪府や京都府のベッドタウンとしての側面もあり、通勤者も多いことが特徴です。

中国・四国地方の地域性

中国・四国地方では、島根県(12位、66.8%)が最も男性労働力人口比率が高く、鳥取県(16位、66.1%)、鹿児島県(21位、65.7%)、広島県(24位、65.5%)、岡山県(28位、64.9%)、香川県(30位、64.3%)、山口県(34位、64.0%)、徳島県(35位、63.9%)、愛媛県(36位、63.0%)、高知県(43位、60.0%)と続きます。

中国・四国地方は全国的に見ると男性労働力人口比率に大きなばらつきがあります。これは、島根県や鳥取県などの第一次産業や製造業が盛んな県と、高知県などの観光業や第三次産業が中心の県との産業構造の違いを反映していると考えられます。

特に島根県で男性労働力人口比率が高い理由としては、第一次産業や製造業の比重が高いことが挙げられます。島根県は農林水産業が盛んであり、また製鉄所などの製造業も地域経済の中心となっています。これらの産業が男性の就業機会を提供していると考えられます。

一方、高知県で男性労働力人口比率が低い理由としては、中山間地域が多く、過疎高齢化が進んでいることが挙げられます。また、第一次産業の比重が高い一方で、若年層の県外流出が進んでいることも影響していると考えられます。

九州・沖縄地方の地域差

九州・沖縄地方では、佐賀県(4位、68.4%)が最も男性労働力人口比率が高く、長崎県(26位、65.2%)、熊本県(27位、65.0%)、大分県(28位、64.9%)、宮崎県(30位、64.3%)、福岡県(37位、62.7%)、沖縄県(47位、56.9%)と続きます。

九州・沖縄地方は全国的に見ると男性労働力人口比率に大きな地域差があります。これは、佐賀県などの製造業や農業が盛んな県と、福岡県や沖縄県などのサービス業が中心の県との産業構造の違いを反映していると考えられます。

特に佐賀県で男性労働力人口比率が高い理由としては、製造業や農業が盛んであることが挙げられます。佐賀県は陶磁器産業や農業が地域経済の中心となっており、これらの産業が男性の就業機会を提供していると考えられます。

一方、沖縄県で男性労働力人口比率が最も低い理由としては、観光業が主要産業であり、季節変動や非正規雇用が多いことが挙げられます。また、若年層の失業率が高いことも特徴です。さらに、米軍基地の存在により、地域経済の自立的発展が阻害されている側面もあると考えられます。

男性労働力人口比率の格差がもたらす影響と課題

地域経済への影響

男性労働力人口比率の地域間格差は、地域経済にも影響を与えます。男性労働力人口比率が高い地域では、労働力の供給が豊富であり、企業誘致や産業発展に有利に働く可能性があります。一方、男性労働力人口比率が低い地域では、労働力不足が経済成長の制約となる可能性があります。

例えば、福井県(1位、69.4%)では、男性労働力人口比率が高く、労働力の供給が豊富です。これにより、製造業や研究開発機関の立地が進み、地域経済の発展につながっている可能性があります。

一方、沖縄県(47位、56.9%)では、男性労働力人口比率が低く、労働力不足が経済成長の制約となっている可能性があります。特に、観光業以外の産業発展が限られており、経済の多角化が課題となっていると考えられます。

社会保障制度への影響

男性労働力人口比率の地域間格差は、社会保障制度にも影響を与えます。男性労働力人口比率が高い地域では、税収や社会保険料の収入が多く、社会保障制度の財政基盤が安定する傾向があります。一方、男性労働力人口比率が低い地域では、税収や社会保険料の収入が少なく、社会保障制度の財政が厳しくなる可能性があります。

例えば、長野県(2位、68.8%)では、男性労働力人口比率が高く、税収や社会保険料の収入が多い傾向があります。これにより、社会保障制度の財政基盤が安定し、充実したサービスを提供できる可能性があります。

一方、東京都(46位、57.2%)では、男性労働力人口比率が低いにもかかわらず、高い所得水準と企業集積により税収は確保されています。しかし、高齢化の進行と労働力人口比率の低下が今後の社会保障制度に影響を与える可能性があります。

地域社会への影響

男性労働力人口比率の地域間格差は、地域社会にも影響を与えます。男性労働力人口比率が高い地域では、経済的に安定した家庭が多く、地域コミュニティの活力も高まる傾向があります。一方、男性労働力人口比率が低い地域では、経済的に不安定な家庭が増え、地域コミュニティの活力が低下する可能性があります。

例えば、富山県(3位、68.7%)では、男性労働力人口比率が高く、経済的に安定した家庭が多い傾向があります。これにより、地域コミュニティの活力も高まり、住民の生活満足度も高い可能性があります。

一方、京都府(44位、58.8%)では、男性労働力人口比率が低く、経済的に不安定な家庭が増えている可能性があります。これにより、地域コミュニティの活力が低下し、社会問題が増加する恐れがあります。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2020年度の都道府県別男性労働力人口比率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:

  1. 平均値と中央値の比較:平均値は約64.6%、中央値は約65.2%とほぼ一致しており、データの分布がほぼ対称的であることを示しています。ただし、沖縄県(56.9%)や東京都(57.2%)、大阪府(57.5%)が特に低い値を示しており、これらを除くとさらに対称性が高まります。

  2. 分布の歪み:データは全体としてわずかに負の歪みを示しており、左に長い裾を持つ分布となっています。福井県(69.4%)が最も高く、沖縄県(56.9%)が最も低いですが、その差は12.5ポイントであり、極端な格差は見られません。

  3. 外れ値の特定:沖縄県(56.9%)、東京都(57.2%)、大阪府(57.5%)は下側の外れ値と考えられ、平均値を大きく下回っています。これらは、特殊な産業構造や雇用状況を反映していると考えられます。一方、上側の外れ値は特に見られません。

  4. 四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約62.6%、第3四分位数(Q3)は約67.3%で、四分位範囲(IQR)は約4.7ポイントです。これは、中央の50%の都道府県の男性労働力人口比率が62.6%から67.3%の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的近い値を示していることがわかります。

  5. 標準偏差によるばらつき:標準偏差は約3.5ポイントで、変動係数(標準偏差÷平均値)は約5.4%となり、相対的なばらつきは小さいことを示しています。これは、都道府県間の男性労働力人口比率の格差が比較的小さいことを意味します。

まとめ

2020年度の都道府県別男性労働力人口比率ランキングでは、福井県が69.4%で1位、沖縄県が56.9%で47位となりました。上位には福井県、長野県、富山県などの製造業が盛んな県が多く、下位には沖縄県、東京都、大阪府などの大都市を有する都府県や観光業が中心の県が多く見られました。

男性労働力人口比率の地域差は、産業構造、年齢構成、教育水準など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、社会保障制度、地域社会など様々な面に影響を与えています。

統計分析からは、都道府県間の男性労働力人口比率の格差は比較的小さく、多くの県が63%から67%の間に収まっていることがわかります。ただし、沖縄県、東京都、大阪府は特に低い値を示しており、特殊な状況にあることが伺えます。

少子高齢化が進む日本社会において、労働力人口の確保は重要な課題となっています。特に、男性労働力人口比率が低い地域では、女性や高齢者の労働参加を促進するとともに、産業構造の転換や雇用環境の改善を通じて、労働力人口比率の向上を図ることが求められています。また、地域の特性に応じた雇用創出や人材育成も重要な政策課題です。

出典