概要
充足率とは、新規求人数に対する充足数(就職件数)の割合を示す指標です。この指標は、求人と求職者のマッチング効率や労働市場の需給バランスを反映しています。2021年度のデータによると、地方圏、特に九州地方や東北地方で高く、大都市圏で低い傾向が見られます。
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上位県と下位県の比較
上位5県と下位5県の詳細説明
上位5県
1位は長崎県で7.0%(偏差値69.9)と全国で最も高い充足率を示しています。長崎県は地域の雇用対策が充実しており、ハローワークと地元企業の連携が強いことが高い充足率につながっていると考えられます。
2位は岩手県で6.8%(偏差値68.1)となっています。岩手県は地域密着型の求人が多く、求職者と企業のニーズが合致しやすい環境があることが背景にあります。
3位は青森県で6.7%(偏差値67.2)です。青森県も地域内での就職支援体制が整っており、地元企業と求職者のマッチングが効率的に行われていることが要因と考えられます。
4位は大分県で6.3%(偏差値63.7)、5位は佐賀県で6.2%(偏差値62.8)となっています。九州地方の県が上位に入っており、地域に根ざした就職支援の取り組みが成果を上げていることがうかがえます。
下位5県
47位は東京都で1.9%(偏差値24.7)と最も低い充足率となっています。東京都は求人数が非常に多く、また求職者の選択肢も多いため、一つの求人に対する応募が分散し、充足率が低くなる傾向があります。
46位は大阪府で2.5%(偏差値30.0)となっています。大阪府も東京都と同様に、求人市場が大きく競争が激しいことが低い充足率の要因です。
45位は愛知県で2.8%(偏差値32.7)です。製造業が盛んな愛知県ですが、多様な求人に対して求職者のマッチングが難しい状況が見られます。
44位は京都府で3.5%(偏差値38.9)、43位は埼玉県と神奈川県で共に3.2%(偏差値36.2)となっています。大都市圏やその周辺地域では全般的に充足率が低い傾向が見られます。
地域別の特徴分析
九州地方の高さ
九州地方では、長崎県(7.0%)、大分県(6.3%)、佐賀県(6.2%)、宮崎県(6.0%)など、多くの県が高い充足率を示しています。これらの地域では地元志向が強く、また地域内での就職支援体制が充実していることが特徴です。
東北地方の好調さ
東北地方も、岩手県(6.8%)、青森県(6.7%)、秋田県(6.1%)、山形県(5.9%)と上位に入っています。人口減少が進む中で、地域内での雇用確保に力を入れており、地元企業と求職者のマッチングが比較的うまく機能していることが背景にあります。
大都市圏の低さ
首都圏(東京都1.9%、埼玉県3.2%、神奈川県3.2%、千葉県3.6%)や関西圏(大阪府2.5%、京都府3.5%)では充足率が低い傾向にあります。これらの地域は求人数が多く、また求職者の選択肢も多いため、一つの求人に対する応募が分散し、充足率が低くなる傾向があります。
格差や課題の考察
地方と都市の労働市場の違い
地方圏では求人数が限られている一方で、地域内での就職志向が強く、また就職支援体制も充実していることから、充足率が高い傾向があります。一方、大都市圏では求人数が多く、また求職者の選択肢も多いため、マッチングが難しく充足率が低くなる傾向があります。
産業構造と充足率の関係
地方圏では第一次産業や製造業など、地域に根ざした産業が中心であり、求人と求職者のミスマッチが少ない傾向があります。一方、大都市圏ではサービス業や情報通信業など多様な産業があり、求人要件も多様化しているため、マッチングが難しくなっています。
人材確保の地域間競争
人口減少が進む中、地方圏では人材確保のための取り組みが活発化しており、これが充足率の向上につながっています。一方、大都市圏では企業間の人材獲得競争が激しく、求人が充足されにくい状況が生じています。
統計データの基本情報と分析
統計的分析
全国の充足率の平均値は約4.6%、**中央値は約4.5%**とほぼ一致しており、分布の偏りは小さいと言えます。しかし、最大値(長崎県の7.0%)と最小値(東京都の1.9%)の差は5.1ポイントと大きく、都道府県間の格差は顕著です。
**標準偏差は約1.2%**で、データのばらつきは比較的大きいと言えます。特に、上位の九州・東北地方の県と下位の首都圏・関西圏の県の間には明確な差があり、地域による労働市場の違いが表れています。
四分位範囲を見ると、上位25%の県は約5.7%以上、下位25%の県は約3.8%以下となっており、中間50%の県は比較的近い値に集中しています。これは、極端に高い、または低い一部の県を除けば、多くの県が似通った状況にあることを示しています。
まとめ
2021年度の充足率は、長崎県が7.0%で全国1位、東京都が1.9%で全国47位となりました。地方圏、特に九州地方や東北地方で高く、大都市圏で低い傾向が明確に表れています。
この指標は、地域の労働市場の効率性や雇用のマッチング状況を反映しており、雇用政策の効果を測る上で重要な視点を提供しています。人口減少や産業構造の変化が進む中、地域特性に応じた雇用対策や人材育成の取り組みが求められます。