都道府県別病院数ランキング(2022年度)

概要

2022年度の都道府県別病院数を比較すると、東京都が全国1位で629施設、北海道が2位で535施設、大阪府が3位で506施設となっています。病院数は人口規模や地域特性によって大きく異なり、都市部では大規模病院が多く、地方では中小規模の病院が点在する傾向があります。

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上位5県と下位5県の比較

上位5県の特徴

  1. 東京都(629施設、偏差値83.8): 日本最大の人口を抱える都市圏であり、病院数も全国で最も多くなっています。高度専門医療を提供する大規模病院から地域密着型の中小病院まで多様な医療機関が存在します。特に大学病院や国立病院、専門医療センターなど高度医療を担う施設が集中しており、全国から患者が集まる医療拠点となっています。
  2. 北海道(535施設、偏差値76.8): 広大な面積を持ち、点在する集落に医療を提供するため多くの病院が設置されています。札幌市を中心に都市部には高度医療機関が集中する一方、地方部では医療過疎の課題も抱えています。冬季の厳しい気象条件も考慮した医療提供体制が特徴的です。
  3. 大阪府(506施設、偏差値74.7): 関西の中心都市として人口密度が高く、多くの病院が設置されています。高度医療を提供する大学病院や総合病院が集中しています。特に大阪市内には先進医療を提供する施設が多く、関西圏の医療の中心地となっています。
  4. 福岡県(453施設、偏差値70.8): 九州地方の中心都市として、広域的な医療機能を担っています。福岡市や北九州市を中心に多くの医療機関が集中しています。九州全体の高度医療の拠点として機能しており、周辺県からの患者も多く受け入れています。
  5. 兵庫県(347施設、偏差値62.9): 神戸市を中心に都市部に多くの病院が集中し、阪神間の人口密集地域にも多くの医療機関が設置されています。阪神・淡路大震災の経験を踏まえた災害医療体制の整備も進んでいます。

下位5県の特徴

  1. 鳥取県(43施設、偏差値40.3): 人口が最も少ない県であり、病院数も全国で最も少なくなっています。限られた医療資源の中で地域医療を支えています。県内の中核病院を中心としたネットワーク構築により、効率的な医療提供を目指しています。
  2. 島根県(46施設、偏差値40.5): 過疎地域が多く、人口あたりの病院数は比較的多いものの、総数としては少なくなっています。特に山間部や離島での医療アクセスの確保が課題となっています。
  3. 滋賀県(58施設、偏差値41.4): 京都府や大阪府といった医療資源が豊富な府県に隣接しており、高度医療については周辺地域との連携が図られています。琵琶湖を中心とした地理的特性も医療提供体制に影響しています。
  4. 山梨県(60施設、偏差値41.6): 山間部が多く、人口も比較的少ないため、病院数も少なくなっています。富士山周辺の観光地では季節による医療需要の変動も特徴的です。
  5. 福井県(67施設、偏差値42.1): 北陸地方の中でも人口規模が小さく、病院数も少なくなっていますが、地域医療連携が進んでいます。原子力発電所立地県として、放射線医療の体制も整備されています。

地域別の特徴分析

関東地方

東京都(629施設、偏差値83.8)が全国1位、埼玉県(342施設、偏差値62.5)が6位、神奈川県(336施設、偏差値62.1)が7位と首都圏では病院数が多くなっています。特に東京都は高度専門医療を提供する大学病院や国立病院が集中し、医療資源が豊富です。一方で、医療機関の偏在や救急医療の負担集中などの課題も抱えています。千葉県(290施設、偏差値58.6)も首都圏のベッドタウンとして多くの医療機関が立地しています。

関西地方

大阪府(506施設、偏差値74.7)が全国3位、兵庫県(347施設、偏差値62.9)が5位と病院数が多くなっています。特に大阪市内や阪神間の人口密集地域に多くの医療機関が設置されています。京都府(160施設、偏差値49.0)では大学病院を中心とした医療提供体制が整備されています。奈良県(75施設、偏差値42.7)や和歌山県(83施設、偏差値43.3)では人口規模に応じた病院配置となっています。

中部・東海地方

愛知県(317施設、偏差値60.7)が全国8位と病院数が多くなっています。名古屋市を中心とした都市圏に多くの医療機関が集中しています。静岡県(170施設、偏差値49.7)も東西に長い地形に対応して、静岡市、浜松市などの主要都市に病院が分散しています。岐阜県(97施設、偏差値44.3)や三重県(93施設、偏差値44.0)でも地域の中核病院を中心とした医療ネットワークが形成されています。

九州・沖縄地方

福岡県(453施設、偏差値70.8)が全国4位と病院数が多くなっています。九州全体の医療の中心地として高度医療を提供する役割を担っています。熊本県(203施設、偏差値52.2)や鹿児島県(230施設、偏差値54.2)でも地域の特性に応じた医療提供体制が構築されています。長崎県(147施設、偏差値48.0)は離島が多いという地理的特性から、島嶼部の医療確保が課題となっています。沖縄県(89施設、偏差値43.7)は離島県としての特性から、本島と離島間の医療格差解消が課題です。

東北・北海道地方

北海道(535施設、偏差値76.8)が全国2位と病院数が多くなっています。広大な面積に対して点在する集落に医療を提供するため、多くの病院が設置されていますが、医師の地域偏在や医療過疎の課題も抱えています。東北地方では宮城県(135施設、偏差値47.1)を中心に医療提供体制が整備されています。福島県(124施設、偏差値46.3)では東日本大震災と原発事故の影響から医療提供体制の再構築が進められています。

病院数の格差と課題

病院数の地域間格差は、人口分布や医療需要、医師の偏在などによって生じています。東京都と鳥取県では約14.6倍もの差があり、この格差は人口規模の差(約14倍)に近い値となっています。

特に過疎地域では医療機関の減少や医師不足により、医療アクセスの格差が拡大しています。地方の中小病院では医師確保が困難となり、診療科の縮小や閉鎖が進んでいる地域もあります。また、高齢化率の高い地域では医療需要が増加する一方、医療提供体制の維持が課題となっています。

一方で、単純な病院数だけでなく、病床数や診療科の分布、医師・看護師数などの医療資源の質的な側面も重要です。人口当たりの病床数では、地方部が都市部を上回る傾向があり、地域によって医療資源の配置に特徴があります。

統計データの基本情報

この統計データは2022年度の都道府県別病院数を示しています。病院とは、医療法に基づき20床以上の入院施設を有する医療機関を指します。診療所(無床または19床以下)は含まれていません。

データの分析から、以下のような特徴が見られます:

  1. 分布の歪み: 病院数の分布は正の歪みを示しており、全国平均値は約170施設程度となっています。東京都や北海道、大阪府などの突出した地域が平均値を押し上げており、多くの県は平均値を下回っています。
  2. 明確な外れ値の存在: 東京都(629施設)は明らかな外れ値であり、第2位の北海道(535施設)、第3位の大阪府(506施設)も一般的な分布から外れています。
  3. 四分位範囲: 上位25%の都道府県(第3四分位)は約230施設以上、下位25%(第1四分位)は約90施設以下となっており、中間50%の範囲も比較的広く、地域間格差の大きさを示しています。
  4. 標準偏差の大きさ: 標準偏差は大きく、都道府県間のばらつきが顕著であることを示しています。
  5. 人口との相関: 病院数は人口規模と高い相関関係にありますが、北海道のように面積が広い地域では人口当たりの病院数が多くなる傾向があります。

まとめ

病院数は地域の医療提供体制を示す重要な指標の一つです。東京都や北海道、大阪府などの大都市圏や面積の広い地域で多くの病院が設置される一方、鳥取県や島根県などの人口規模の小さい県では病院数も少ない状況にあります。

この地域間格差は、人口分布や医療需要、地理的条件など様々な要因によって形成されてきました。特に近年では医師の地域偏在や診療科偏在、少子高齢化による医療需要の変化など、医療提供体制を取り巻く環境も大きく変化しています。

今後は、人口減少・高齢化社会の中で持続可能な医療提供体制の構築がさらに重要な課題となります。地域医療構想に基づく病床機能の分化・連携や、医師の地域偏在対策、遠隔医療の活用など、様々な取り組みが進められています。

また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験し、感染症対応を含めた医療提供体制の強靭化も重要な課題となっています。地域の特性に応じた効率的で質の高い医療提供体制の構築が、今後の医療政策の鍵となるでしょう。

病院は地域医療の中核であり、すべての住民が適切な医療を受けられる体制の整備が求められています。人口減少・高齢化社会においても、持続可能な医療提供体制の構築が重要な課題となっています。

出典