都道府県別第2次産業就業者数ランキング(2020年度)
概要
第2次産業就業者数とは、製造業、建設業、鉱業などの第2次産業に従事している人の数を指します。この記事では、2020年度の都道府県別第2次産業就業者数のランキングを紹介します。
第2次産業就業者数は、地域の産業構造や経済基盤を反映する重要な指標であり、特に製造業が盛んな地域では就業者数が多くなる傾向があります。愛知県や東京都などの製造業が発達した地域で第2次産業就業者数が多く、高知県や鳥取県などの人口規模が小さい地域で少なくなっています。
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上位県と下位県の比較
第2次産業就業者数が多い上位5県
2020年度の第2次産業就業者数ランキングでは、愛知県が1,135,848人(偏差値84.8)で全国1位となりました。愛知県はトヨタ自動車を中心とした自動車産業が発達しており、関連部品メーカーも多数立地しています。製造業が地域経済の重要な基盤となっており、第2次産業就業者数が突出して多くなっています。
2位は東京都で873,231人(偏差値74.1)、3位は神奈川県で811,104人(偏差値71.6)、4位は大阪府で786,169人(偏差値70.6)、5位は埼玉県で752,258人(偏差値69.2)となっています。上位県には製造業が盛んな地域や、人口規模の大きい都道府県が多く含まれており、第2次産業が地域経済において重要な役割を果たしていることがわかります。
第2次産業就業者数が少ない下位5県
最も第2次産業就業者数が少なかったのは高知県で50,806人(偏差値40.6)でした。高知県は人口規模が小さく、第1次産業や第3次産業が中心の産業構造となっています。また、山間部が多い地理的特性から、大規模な製造業の立地が限られていることも要因の一つです。
46位は鳥取県で56,777人(偏差値40.8)、45位は徳島県で74,530人(偏差値41.5)、44位は島根県で76,093人(偏差値41.6)、43位は沖縄県で79,353人(偏差値41.7)となっています。下位県には人口規模が小さい地域や、第1次産業や第3次産業が中心となっている地域が多く含まれており、第2次産業の集積が限られていることがわかります。
地域別の特徴分析
東北地方の製造業と建設業
東北地方では、福島県(19位、250,803人)の第2次産業就業者数が最も多く、宮城県(20位、236,613人)がそれに続いています。その他の県は、青森県(34位、118,134人)、岩手県(29位、147,219人)、秋田県(38位、109,589人)、山形県(28位、152,051人)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
東北地方全体として第2次産業就業者数が中位から下位に位置している理由としては、人口規模が比較的小さいことや、大規模な製造業の集積が限られていることが挙げられます。特に、東日本大震災の影響を受けた地域では、復興需要による建設業の就業者数の増加が見られる一方で、製造業の回復には時間がかかっている面もあります。
特に福島県で東北地方の中では第2次産業就業者数が多い理由としては、いわき市や郡山市などの工業都市があることや、電子部品・デバイス製造業などの産業が集積していることが挙げられます。また、東日本大震災からの復興需要による建設業の就業者数の増加も要因として考えられます。
一方、青森県で東北地方の中では第2次産業就業者数が比較的少ない理由としては、製造業の集積が限られていることや、第1次産業の比率が高いことが挙げられます。特に、青森県は農業や漁業が盛んであり、第1次産業の就業者比率が全国でも高い水準にあります。
関東地方の製造業と建設業の集積
関東地方では、東京都(2位、873,231人)、神奈川県(3位、811,104人)、埼玉県(5位、752,258人)と上位5位以内に3都県がランクインしており、千葉県(8位、527,288人)も含めて関東地方の第2次産業就業者数は非常に多くなっています。その他の県は、茨城県(11位、380,140人)、栃木県(17位、282,005人)、群馬県(16位、287,927人)と、全国的に見ると上位から中位に位置しています。
関東地方全体として第2次産業就業者数が多い理由としては、人口規模が大きいことや、製造業の集積が進んでいることが挙げられます。特に、首都圏を中心に多様な製造業が立地しており、自動車や電機、食品などの産業が発達しています。また、大規模な都市開発や住宅建設などによる建設業の就業者数も多くなっています。
特に東京都で第2次産業就業者数が多い理由としては、大規模な都市開発や住宅建設需要による建設業の発達が挙げられます。また、多様な製造業の本社機能が集中していることも、第2次産業就業者数の多さに寄与しています。ただし、東京都では第3次産業の就業者数がさらに多く、相対的に第2次産業の比率は低くなっています。
埼玉県や神奈川県では、自動車関連産業や電機産業などの製造業が集積していることが特徴です。特に埼玉県では、東京都のベッドタウンとしての住宅建設需要による建設業の発達も見られます。また、交通アクセスの良さから物流拠点としての機能も発達しており、これらの産業が第2次産業就業者数の増加に寄与しています。
中部・北陸地方の製造業の発達
中部・北陸地方では、愛知県(1位、1,135,848人)の第2次産業就業者数が突出して多く、静岡県(6位、583,871人)がそれに続いています。その他の県は、新潟県(14位、302,187人)、富山県(24位、172,096人)、石川県(27位、153,512人)、福井県(33位、122,364人)、山梨県(37位、109,721人)、長野県(15位、290,821人)、岐阜県(13位、310,096人)と、全国的に見ると上位から下位まで幅広く分布しています。
中部・北陸地方全体として第2次産業就業者数にばらつきがある理由としては、地域によって産業構造や人口規模が大きく異なることが挙げられます。特に愛知県では、トヨタ自動車を中心とした自動車産業が高度に発達しており、関連部品メーカーも多数立地していることから、第2次産業就業者数が突出して多くなっています。
特に愛知県で第2次産業就業者数が多い理由としては、自動車産業の集積に加えて、航空機産業や工作機械産業なども発達していることが挙げられます。また、名古屋港を中心とした物流機能の発達も、製造業の集積を支える要因となっています。
一方、福井県や山梨県などで第2次産業就業者数が比較的少ない理由としては、人口規模が小さいことや、大規模な製造業の集積が限られていることが挙げられます。特に、福井県では繊維産業などの地場産業が中心となっており、大規模な製造業の立地が限られています。
近畿地方の多様な製造業
近畿地方では、大阪府(4位、786,169人)と兵庫県(7位、573,688人)の第2次産業就業者数が特に多く、京都府(21位、235,511人)がそれに続いています。その他の県は、滋賀県(23位、212,389人)、奈良県(32位、122,712人)、和歌山県(42位、92,015人)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
近畿地方全体として第2次産業就業者数にばらつきがある理由としては、大阪府や兵庫県などの大都市圏と、奈良県や和歌山県などの地方部で産業構造が大きく異なることが挙げられます。特に大阪府では、多様な製造業が集積しており、機械、金属、化学、食品などの産業が発達しています。
特に大阪府で第2次産業就業者数が多い理由としては、中小企業を中心とした多様な製造業の集積に加えて、大規模な都市開発や住宅建設などによる建設業の発達が挙げられます。また、大阪港を中心とした物流機能の発達も、製造業の集積を支える要因となっています。
一方、奈良県や和歌山県などで第2次産業就業者数が比較的少ない理由としては、人口規模が小さいことや、大規模な製造業の集積が限られていることが挙げられます。特に、奈良県では大阪府のベッドタウンとしての性格が強く、第3次産業を中心とした産業構造となっています。
中国・四国地方の地域特性と製造業
中国・四国地方では、広島県(12位、333,144人)の第2次産業就業者数が最も多く、岡山県(22位、227,154人)がそれに続いています。その他の県は、鳥取県(46位、56,777人)、島根県(44位、76,093人)、山口県(26位、159,792人)、徳島県(45位、74,530人)、香川県(39位、107,950人)、愛媛県(30位、140,228人)、高知県(47位、50,806人)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
中国・四国地方全体として第2次産業就業者数が中位から下位に位置している理由としては、人口規模が比較的小さいことや、大規模な製造業の集積が限られていることが挙げられます。特に、中山間地域や島嶼部が多い地理的特性から、大規模な製造業の立地が難しい面もあります。
特に広島県で中国・四国地方の中では第2次産業就業者数が多い理由としては、マツダを中心とした自動車産業が発達していることや、造船業や鉄鋼業などの重工業も立地していることが挙げられます。また、広島市を中心とした都市開発や住宅建設などによる建設業の発達も要因として考えられます。
一方、高知県や鳥取県で第2次産業就業者数が少ない理由としては、人口規模が小さいことや、大規模な製造業の集積が限られていることが挙げられます。特に、高知県は山間部が多い地理的特性から、大規模な製造業の立地が難しい面があります。
九州・沖縄地方の製造業と建設業
九州・沖縄地方では、福岡県(9位、436,066人)の第2次産業就業者数が最も多く、熊本県(25位、169,965人)がそれに続いています。その他の県は、佐賀県(41位、93,908人)、長崎県(36位、116,363人)、大分県(35位、117,736人)、宮崎県(40位、101,547人)、鹿児島県(31位、138,793人)、沖縄県(43位、79,353人)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
九州・沖縄地方全体として第2次産業就業者数が中位から下位に位置している理由としては、人口規模が比較的小さいことや、大規模な製造業の集積が限られていることが挙げられます。特に、第1次産業や第3次産業の比率が高い地域が多く、相対的に第2次産業の比率が低くなっています。
特に福岡県で九州・沖縄地方の中では第2次産業就業者数が多い理由としては、北九州市を中心とした鉄鋼業や化学工業などの重工業が発達していることや、福岡市を中心とした都市開発や住宅建設などによる建設業の発達が挙げられます。また、九州地方の経済・文化の中心地としての機能も、多様な産業の集積を支える要因となっています。
一方、沖縄県で第2次産業就業者数が少ない理由としては、観光業を中心とした第3次産業が発達していることや、製造業の集積が限られていることが挙げられます。特に、沖縄県は島嶼県であり、物流コストが高いことなどから、大規模な製造業の立地が難しい面もあります。
格差や課題の考察
地域経済への影響
第2次産業就業者数の地域間格差は、地域経済にも影響を与えます。第2次産業就業者数が多い地域では、製造業を中心とした産業集積が形成されており、関連産業の発達や雇用の創出にも貢献しています。一方、第2次産業就業者数が少ない地域では、産業構造の多様性が限られ、経済的な脆弱性が課題となる場合があります。
例えば、愛知県(1位、1,135,848人)では、自動車産業を中心とした製造業が高度に発達しており、関連部品メーカーや研究開発機関なども集積しています。これにより、高い付加価値の創出や安定した雇用の確保が実現しており、地域経済の発展に大きく貢献しています。
一方、高知県(47位、50,806人)などの第2次産業就業者数が少ない地域では、製造業の集積が限られており、地域経済の基盤が脆弱な面があります。特に、人口減少や高齢化が進む地域では、産業構造の多様化や高付加価値化が課題となっています。
産業構造の変化と雇用の課題
第2次産業就業者数の地域間格差は、産業構造の変化や雇用の課題とも関連しています。特に、グローバル化やデジタル化の進展により、製造業の海外移転や自動化が進んでおり、第2次産業の雇用環境は大きく変化しています。
例えば、大阪府(4位、786,169人)では、かつては多様な製造業が集積していましたが、近年では製造業の海外移転や事業所の統廃合などにより、第2次産業の就業者数が減少傾向にあります。特に、中小企業を中心に後継者不足や技術継承の課題も顕在化しており、産業構造の転換が求められています。
一方、愛知県(1位、1,135,848人)では、自動車産業を中心に高い国際競争力を維持しており、第2次産業の就業者数も比較的安定しています。しかし、電動化や自動運転などの技術革新により、今後は求められる技能や知識が大きく変化する可能性があり、人材育成や技術開発の面での対応が課題となっています。
地域間格差と地方創生
第2次産業就業者数の地域間格差は、地域間格差の拡大や地方創生の課題とも関連しています。特に、製造業の集積が進んでいる地域と、そうでない地域との間では、所得水準や雇用機会の面で格差が生じている場合があります。
例えば、愛知県(1位、1,135,848人)や東京都(2位、873,231人)などの製造業が集積している地域では、比較的高い賃金水準や安定した雇用機会が確保されており、若年層の流入も見られます。一方、高知県(47位、50,806人)や鳥取県(46位、56,777人)などの製造業の集積が限られている地域では、若年層の流出や人口減少が課題となっています。
このような地域間格差を是正するためには、地域の特性を活かした産業振興や、第2次産業と第1次産業・第3次産業との連携強化などの取り組みが重要です。特に、地域資源を活用した付加価値の高い製造業の育成や、デジタル技術を活用した新たな産業の創出などが、地方創生の鍵となる可能性があります。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2020年度の都道府県別第2次産業就業者数データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約293,000人、中央値は約159,000人と平均値が中央値を大きく上回っており、データが右に強く歪んでいることを示しています。これは、愛知県(1,135,848人)や東京都(873,231人)などの一部の県で第2次産業就業者数が特に多いことを反映しています。
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分布の歪み:データは全体として強い正の歪みを示しており、右に長い裾を持つ分布となっています。特に、愛知県(1,135,848人)は他の都道府県と比べて突出して高い値を示しており、外れ値と考えられます。
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外れ値の特定:愛知県(1,135,848人)、東京都(873,231人)、神奈川県(811,104人)は上側の外れ値と考えられ、平均値を大きく上回っています。これは、これらの県の製造業の高度な集積を反映していると考えられます。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約107,000人、第3四分位数(Q3)は約333,000人で、四分位範囲(IQR)は約226,000人です。これは、中央の50%の都道府県の第2次産業就業者数が107,000人から333,000人の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的近い就業者数であることがわかります。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約266,000人で、変動係数(標準偏差÷平均値)は約91%となり、相対的なばらつきが非常に大きいことを示しています。特に、最高値(愛知県、1,135,848人)と最低値(高知県、50,806人)の差は1,085,042人と非常に大きく、地域間の格差が顕著であることを示しています。
まとめ
2020年度の都道府県別第2次産業就業者数ランキングでは、愛知県が1,135,848人で1位、高知県が50,806人で47位となりました。上位には愛知県、東京都、神奈川県などの製造業が発達した地域や人口規模の大きい都道府県が多く、下位には高知県、鳥取県、徳島県などの人口規模が小さい地域や第1次産業・第3次産業が中心となっている地域が多く見られました。
第2次産業就業者数の地域差は、人口規模、産業構造、地理的特性など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、雇用環境、所得水準など様々な面に影響を与えています。特に、製造業が集積している地域では、関連産業の発達や技術革新の促進などの波及効果も見られ、地域経済の発展に大きく貢献しています。
統計分析からは、都道府県間の第2次産業就業者数の格差が顕著であることがわかります。特に、愛知県や東京都などの上位県と、高知県や鳥取県などの下位県との間には大きな差があります。これは、産業構造や人口規模の違いを反映していると考えられます。
第2次産業は、日本の経済成長を支えてきた重要な産業であり、今後も技術革新や生産性向上を通じて、地域経済の発展に貢献することが期待されています。しかし、グローバル化やデジタル化の進展により、第2次産業を取り巻く環境は大きく変化しており、地域特性を活かした産業振興や人材育成などの取り組みが求められています。