都道府県別人口集中地区面積ランキング(2020年度)

概要

2020年度の都道府県別人口集中地区面積を比較すると、東京都が全国1位で約1,092ヘクタール、愛知県が2位で約965ヘクタール、神奈川県が3位で約955ヘクタールとなっています。人口集中地区(DID: Densely Inhabited District)とは、人口密度が4,000人/km²以上の基本単位区が隣接して人口5,000人以上となる地区を指し、都市化の程度を示す重要な指標です。

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上位5県と下位5県の比較

上位5県の特徴

  1. 東京都(1,091.78ha、偏差値79.0): 日本の首都として高度に都市化が進んでおり、23区を中心に広大な人口集中地区が形成されています。商業・業務機能の集積と高層住宅の増加により、高密度な都市空間が広がっています。都心部から郊外に至るまで連続的な市街地が形成されており、DID面積が突出しています。
  2. 愛知県(965.17ha、偏差値74.4): 名古屋市を中心とした中京都市圏が形成されており、自動車産業などの製造業の集積地として発展してきました。名古屋市から豊田市、岡崎市などに連なる市街地が広がっています。
  3. 神奈川県(954.76ha、偏差値74.1): 横浜市や川崎市を中心に、東京都に隣接する形で大規模な人口集中地区が形成されています。京浜工業地帯の存在や首都圏のベッドタウンとしての役割から、県域の多くが都市化されています。
  4. 大阪府(927.02ha、偏差値73.1): 関西経済の中心地として高密度な市街地が広がっています。大阪市を中心に、堺市や東大阪市などの周辺都市も含めて連担した都市圏を形成しています。商業・工業・住宅が混在する高密度な土地利用が特徴です。
  5. 北海道(802.0ha、偏差値68.6): 広大な面積を持つ北海道では、札幌市を中心に函館市、旭川市など複数の拠点都市に人口集中地区が分散しています。特に札幌市は北日本最大の都市として大規模な人口集中地区を形成しています。

下位5県の特徴

  1. 島根県(41.15ha、偏差値41.4): 中山間地域が多く、松江市や出雲市などの限られた地域にのみ人口集中地区が形成されています。過疎化が進行しており、DID面積は全国的に見ても最も小さい状況です。
  2. 鳥取県(53.86ha、偏差値41.8): 日本で最も人口が少ない県であり、鳥取市や米子市などの中心市街地に限定された小規模な人口集中地区しか形成されていません。県全体の都市化の程度は低く、農村・自然地域が多くを占めています。
  3. 高知県(52.9ha、偏差値41.8): 高知市に人口が集中しており、それ以外の地域は中山間地域や農村地域が多くを占めています。県全体としての都市化の程度は低く、DID面積は限定的です。
  4. 徳島県(57.51ha、偏差値42.0): 徳島市を中心とした限られた地域にのみ人口集中地区が形成されています。中山間地域が多く、都市化の進んだエリアは少ない状況です。
  5. 山梨県(59.88ha、偏差値42.1): 甲府市を中心とした限られた地域にのみ人口集中地区が形成されています。山岳地域が多く、居住可能な平地が限られていることも影響し、DID面積は小さくなっています。

地域別の特徴分析

関東地方

関東地方では東京都(1,091.78ha、偏差値79.0)が全国1位、神奈川県(954.76ha、偏差値74.1)が3位、埼玉県(717.04ha、偏差値65.6)が6位、千葉県(673.94ha、偏差値64.0)が7位と上位に集中しています。首都圏を形成するこれらの都県では、東京都心部を中心に放射状に広がる鉄道網に沿って連続的な市街地が形成されています。特に東京都と神奈川県の京浜地域、埼玉県南部、千葉県西部は一体的な都市圏を形成しており、日本最大の人口集中地区となっています。茨城県(277.35ha、偏差値49.8)も県南部を中心に首都圏の一部として都市化が進んでいます。

関西地方

関西地方では大阪府(927.02ha、偏差値73.1)が全国4位、兵庫県(601.0ha、偏差値61.4)が8位と上位に位置しています。大阪市を中心に、神戸市や京都市を含む京阪神都市圏が形成されており、日本第二の都市圏として大規模な人口集中地区が広がっています。特に大阪府と兵庫県東部(阪神間)は連続した市街地を形成しています。京都府(267.58ha、偏差値49.5)は京都市を中心に歴史的な市街地が形成されていますが、地形的制約もあり面積は限定的です。奈良県(147.1ha、偏差値45.2)や滋賀県(129.55ha、偏差値44.6)も大阪都市圏の一部として都市化が進んでいます。

中部・東海地方

中部・東海地方では愛知県(965.17ha、偏差値74.4)が全国2位となっています。名古屋市を中心とした中京都市圏が形成されており、自動車産業などの製造業の集積を背景に都市化が進んでいます。静岡県(445.18ha、偏差値55.8)も浜松市や静岡市など複数の都市が点在し、東海道沿いに市街地が形成されています。長野県(173.93ha、偏差値46.1)や新潟県(250.63ha、偏差値48.9)は県庁所在地を中心に限定的な人口集中地区が形成されています。

九州・沖縄地方

九州地方では福岡県(598.9ha、偏差値61.3)が全国9位となっています。福岡市と北九州市の二つの大都市を有し、九州最大の都市圏を形成しています。熊本県(165.97ha、偏差値45.9)や鹿児島県(124.98ha、偏差値44.4)、長崎県(125.92ha、偏差値44.4)なども県庁所在地を中心に人口集中地区が形成されていますが、面積は限定的です。沖縄県(143.8ha、偏差値45.1)は那覇市を中心に南部地域に人口が集中しています。

東北・北海道地方

北海道(802ha、偏差値68.6)は全国5位と上位に位置していますが、これは札幌市という大規模な都市を有していることが主な要因です。東北地方では宮城県(266.92ha、偏差値49.5)が仙台市を中心に比較的大きな人口集中地区を形成していますが、他の東北各県は県庁所在地を中心とした限定的な人口集中地区にとどまっています。福島県(189.18ha、偏差値46.7)、青森県(163.65ha、偏差値45.8)、山形県(129.59ha、偏差値44.6)などは都市化の程度が低く、DID面積も小さい状況です。

人口集中地区面積の地域差と課題

都市化の進展と地域格差

人口集中地区面積の地域差は、各地域の経済力や産業構造、歴史的背景などと密接に関連しています。三大都市圏(首都圏、関西圏、中京圏)では高度経済成長期以降の人口流入により都市化が急速に進展し、広大な人口集中地区が形成されました。一方、地方部では限られた中心市街地にのみ人口が集中し、DID面積も小さくなっています。

東京都と島根県では約26倍もの差があり、この格差は人口の差を上回っています。これは単に人口規模だけでなく、都市の密度や構造の違いも反映しています。

人口減少時代の都市構造

多くの地方都市では人口減少に伴い、人口集中地区の縮小や空洞化が進行しています。特に地方の県庁所在地などでは、郊外への大型商業施設の立地などにより中心市街地の衰退が進み、DIDの人口密度低下や面積縮小が課題となっています。一方、東京都や大阪府などの大都市では、都心回帰現象により都心部の人口密度が上昇する傾向も見られます。

コンパクトシティ政策と都市の持続可能性

人口減少社会において持続可能な都市構造を実現するため、多くの自治体ではコンパクトシティ政策が推進されています。これは人口や都市機能を一定のエリアに集約し、効率的な都市運営を目指すものです。人口集中地区の適切な維持・管理は、インフラコストの削減や公共交通の維持、高齢者の生活利便性確保などの観点から重要な課題となっています。

統計データの基本情報

この統計データは2020年度の都道府県別人口集中地区面積を示しています。人口集中地区(DID)とは、人口密度が4,000人/km²以上の基本単位区が隣接して人口5,000人以上となる地区を指します。国勢調査ごとに設定され、都市化の程度を示す指標として用いられています。

データの分析から、以下のような特徴が見られます:

  1. 分布の歪み: 人口集中地区面積の分布は強い正の歪みを示しており、平均値が中央値を大きく上回っています。これは東京都や愛知県、神奈川県などの突出した値が平均値を押し上げているためです。
  2. 明確な外れ値の存在: 東京都(1,091.78ha)、愛知県(965.17ha)、神奈川県(954.76ha)は明らかな外れ値であり、他の道府県との間に大きな差があります。
  3. 四分位範囲: 上位25%の都道府県(第3四分位)は約300ha以上、下位25%(第1四分位)は約100ha以下となっており、中間50%の範囲も比較的広く、地域間格差の大きさを示しています。
  4. 標準偏差の大きさ: 標準偏差は大きく、平均値の約100%に相当します。これは都道府県間のばらつきが非常に大きいことを示しています。
  5. 人口との相関: 人口集中地区面積は総人口との間に強い相関関係がありますが、人口密度や都市構造の違いにより、必ずしも人口に比例しない面もあります。

まとめ

人口集中地区面積は都市化の程度を示す重要な指標です。東京都や愛知県、神奈川県などの大都市圏で広大な人口集中地区が形成される一方、島根県や鳥取県などの地方県では限定的な面積にとどまっています。

この地域間格差は、経済力や産業構造、歴史的背景など様々な要因によって形成されてきました。特に高度経済成長期以降の人口移動により、三大都市圏への人口集中が進み、地方との格差が拡大しました。

近年では人口減少社会の到来により、多くの地方都市で人口集中地区の縮小や空洞化が進行しています。一方、東京都などの大都市では都心回帰現象も見られ、都市構造の変化が進んでいます。

今後は、人口減少・高齢化社会に対応した持続可能な都市構造の構築が重要な課題となります。コンパクトシティ政策の推進や公共交通を軸としたまちづくり、既存インフラの効率的な維持管理などが求められています。

また、新型コロナウイルス感染症の影響によるテレワークの普及など、新たな生活様式の広がりが都市構造にどのような影響を与えるかも注目されています。過密な大都市から地方への分散の可能性も含め、今後の人口集中地区の動向は都市政策の重要な指標となるでしょう。

人口集中地区面積のデータは、日本の都市化の現状や地域間格差を反映しており、持続可能な都市づくりに向けた政策立案の基礎資料となるものです。地域特性を踏まえた効果的な都市政策の推進が、将来の都市の持続可能性につながると考えられます。

出典