都道府県別粗出生率ランキング(2022年度)

概要

粗出生率とは、人口1000人あたりの出生数を示す指標です。この記事では、2022年度の都道府県別粗出生率のランキングを紹介します。

粗出生率は、その地域の人口再生産の状況を示す重要な指標であり、地域の少子化の進行度や将来の人口動態を予測する上で重要な役割を果たします。この値が高いほど、その地域で多くの子どもが生まれていることを意味します。

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上位県と下位県の比較

粗出生率が高い上位5県

2022年度の粗出生率ランキングでは、沖縄県9.26(偏差値92.0)で全国1位となりました。沖縄県は長年にわたり日本で最も高い出生率を維持しており、家族を大切にする文化や子育てに対する地域の支援体制の充実などが要因として考えられます。

2位は福岡県7.03(偏差値62.4)、3位は佐賀県6.93(偏差値61.1)、4位は滋賀県6.93(偏差値61.1)、5位は熊本県6.91(偏差値60.9)となっています。上位県には九州地方の県が多く含まれており、地域の文化や子育て環境の良さが影響していると考えられます。

粗出生率が低い下位5県

最も粗出生率が低かったのは秋田県4.29(偏差値26.1)でした。秋田県は高齢化率が高く、若年層の流出も続いており、出生率の低下が深刻な問題となっています。

46位は岩手県4.90(偏差値34.2)、45位は青森県4.97(偏差値35.1)、44位は北海道5.14(偏差値37.4)、43位は福島県5.42(偏差値41.1)となっています。下位県には東北地方や高齢化が進む地方の県が多く、若年層の流出や晩婚化・未婚化の進行などが低い出生率の要因と考えられます。

地域別の特徴分析

九州・沖縄地方の高い出生率

九州・沖縄地方では、沖縄県(1位、9.26)を筆頭に、福岡県(2位、7.03)、佐賀県(3位、6.93)、熊本県(5位、6.91)、宮崎県(8位、6.78)、鹿児島県(9位、6.74)、長崎県(12位、6.52)、大分県(20位、6.14)と、全ての県が全国平均(6.09)を上回る高い出生率を示しています。地域全体の平均は7.04と非常に高く、これらの地域では、家族を大切にする文化や地域コミュニティの結びつきの強さ、子育て支援策の充実などが高い出生率の要因として考えられます。

関東地方の状況

関東地方では、東京都(13位、6.49)が比較的高い出生率を示す一方、茨城県(37位、5.60)、栃木県(39位、5.51)、群馬県(38位、5.59)などは低い出生率となっています。東京都の比較的高い出生率は、若い世代の人口集中や子育て支援策の充実などが影響していると考えられます。関東地方の平均は5.88と全国平均をやや下回っており、大都市圏特有の高い生活コストや長時間労働などが出生率に影響している可能性があります。

東北地方の低い出生率

東北地方では、秋田県(47位、4.29)、岩手県(46位、4.90)、青森県(45位、4.97)、福島県(43位、5.42)、山形県(42位、5.45)と、宮城県(35位、5.64)を除いて全ての県が低い出生率を示しています。地域全体の平均は5.11と全国平均を大きく下回っており、これらの地域では、若年層の流出による人口構造の高齢化や、雇用機会の不足、晩婚化・未婚化の進行などが低い出生率の要因として考えられます。

近畿地方の多様な状況

近畿地方では、滋賀県(4位、6.93)と大阪府(11位、6.53)が高い出生率を示す一方、京都府(28位、5.91)や奈良県(36位、5.60)は比較的低い出生率となっています。滋賀県の高い出生率は、京阪神のベッドタウンとしての役割や、自然環境の良さ、子育て支援策の充実などが影響していると考えられます。近畿地方全体の平均は6.16と全国平均をやや上回っていますが、地域内での格差も見られます。

中部地方の状況

中部地方では、愛知県(7位、6.82)や福井県(15位、6.46)、石川県(16位、6.33)が比較的高い出生率を示す一方、岐阜県(34位、5.72)や静岡県(33位、5.74)、新潟県(41位、5.45)は比較的低い出生率となっています。愛知県の高い出生率は、製造業を中心とした安定した雇用環境や、子育て支援策の充実などが影響していると考えられます。中部地方内でも地域による差が大きく、特に日本海側と太平洋側での違いが見られます。

粗出生率の格差がもたらす影響と課題

人口構造への影響

粗出生率の地域間格差は、将来の人口構造に大きな影響を与えます。出生率の高い地域では、若年層の割合が高く、人口ピラミッドがバランスの取れた形状を維持しやすい傾向があります。一方、出生率の低い地域では、高齢化が加速し、人口ピラミッドが逆三角形に近づく傾向があります。この人口構造の変化は、地域の経済力や社会保障制度の持続可能性に大きな影響を与えます。

地域経済への影響

粗出生率の低下は、将来的な労働力人口の減少につながり、地域経済に大きな影響を与えます。特に出生率の低い地域では、労働力不足による産業の衰退や、消費市場の縮小による経済活動の停滞が懸念されます。また、高齢化に伴う社会保障費の増大は、地方自治体の財政を圧迫し、さらなる経済的困難をもたらす可能性があります。

教育・医療・福祉サービスへの影響

粗出生率の地域間格差は、教育・医療・福祉サービスの提供体制にも影響を与えます。出生率の低い地域では、子どもの数の減少により、学校の統廃合や小児科医療機関の減少が進む傾向があります。一方、高齢化が進む地域では、高齢者向けの医療・福祉サービスの需要が増大し、サービス提供体制の再構築が求められています。

少子化対策と地域創生の必要性

粗出生率の低下は、日本全体の課題であり、特に出生率の低い地域では、少子化対策と地域創生の取り組みが急務となっています。若年層の雇用創出や、子育て支援策の充実、ワーク・ライフ・バランスの改善など、総合的な対策が求められています。また、地域の特性を活かした産業振興や、移住・定住促進策なども重要な取り組みとなっています。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2022年度の都道府県別粗出生率データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:

  1. 平均値と中央値の比較:平均値は約6.09、中央値は約5.93とほぼ同じ値を示していますが、沖縄県(9.26)という極端に高い値と秋田県(4.29)という極端に低い値があるため、分布の両端に外れ値が存在しています。

  2. 分布の歪み:データは全体としては対称的ですが、沖縄県(9.26)という上側の外れ値があるため、わずかに正の歪み(右に裾を引いた形状)を示しています。

  3. 外れ値の特定:沖縄県(9.26)は明らかな上側の外れ値と考えられます。2位の福岡県(7.03)との差が大きく、統計的に見ても特異な値を示しています。また、秋田県(4.29)も下側の外れ値と考えられます。

  4. 四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約5.60、第3四分位数(Q3)は約6.52で、四分位範囲(IQR)は約0.92ポイントです。これは、中央の50%の都道府県の粗出生率が5.60から6.52の間に収まっていることを示しています。

  5. 標準偏差によるばらつき:標準偏差は約0.75ポイントで、多くの都道府県が平均値から±0.75ポイントの範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約12.3%となり、相対的なばらつきは中程度と言えます。最高値と最低値の差は4.97ポイント(9.26−4.29)に達し、沖縄県と秋田県の間には大きな格差があることを示しています。

まとめ

2022年度の都道府県別粗出生率ランキングでは、沖縄県が9.26で1位、秋田県が4.29で47位となりました。上位には九州地方の県や滋賀県などが多く、下位には東北地方や高齢化が進む地方の県が多く見られました。

粗出生率の地域差は、地域の文化や子育て環境、雇用状況、住宅事情などの地域特性を反映しており、この差は人口構造、地域経済、教育・医療・福祉サービスなど多方面に影響を与えています。

統計分析からは、沖縄県が突出して高い粗出生率を示す一方、多くの都道府県は5.60から6.52の範囲に集中していることがわかります。また、秋田県をはじめとする東北地方の県では、特に低い粗出生率が課題となっています。

地域別に見ると、九州・沖縄地方が平均7.04と最も高く、東北地方が平均5.11と最も低くなっています。この地域間格差は、人口動態や社会経済状況の違いを反映しており、地域特性に応じた少子化対策や地域創生の取り組みが求められています。

出典