都道府県別建設業者数ランキング(2022年度)
概要
2022年度の都道府県別建設業者数データを分析すると、東京都が最も多く、大阪府、福岡県、埼玉県、北海道が続いています。建設業者数は地域の経済規模や建設需要、インフラ整備状況などを反映する重要な指標です。
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上位5県と下位5県の比較
上位5県の特徴
- 東京都(31,945社、偏差値87.2): 首都として大規模な都市開発やインフラ整備が継続的に行われており、建設業者数も全国で最も多くなっています。大手ゼネコンの本社が集中し、多様な建設プロジェクトが常時進行しています。
- 大阪府(26,578社、偏差値78.8): 関西経済の中心地として、都市再開発やインフラ更新事業が多く、建設業者も集積しています。歴史的に商工業が発達した地域であり、建設需要も安定しています。
- 福岡県(19,238社、偏差値67.4): 九州地方の中心として、都市開発や交通インフラの整備が活発に行われています。九州全体の建設需要を支える拠点となっており、地方では最も建設業者が集積しています。
- 埼玉県(18,475社、偏差値66.2): 首都圏のベッドタウンとして住宅建設需要が高く、東京に隣接する地理的優位性から建設業者が多数立地しています。近年は物流施設の建設も増加しています。
- 北海道(18,456社、偏差値66.2): 広大な面積を持ち、積雪対策や寒冷地特有のインフラ整備需要があることから、建設業者数が多くなっています。季節的な工事集中も特徴的です。
下位5県の特徴
- 島根県(2,517社、偏差値41.4): 人口減少が進む地方県であり、新規建設需要が限られていることから建設業者数も少なくなっています。過疎地域が多く、建設市場の縮小が進んでいます。
- 佐賀県(2,581社、偏差値41.5): 隣接する福岡県に建設需要が集中する傾向があり、県内の建設業者数は少ない状況です。県内の建設市場規模が小さいことも要因です。
- 鳥取県(2,744社、偏差値41.8): 人口が最も少ない県の一つであり、建設需要も限られています。中山間地域が多く、大規模開発の適地が少ないことも影響しています。
- 高知県(2,950社、偏差値42.1): 四国地方の中でも特に人口減少が進んでおり、建設需要の縮小に伴い業者数も少なくなっています。山間部が多く、建設適地が限られていることも影響しています。
- 徳島県(3,041社、偏差値42.3): 四国地方の中小県であり、大規模な建設プロジェクトが限られることから業者数も少ない傾向にあります。人口規模に比例して建設業者数も少なくなっています。
地域別の特徴分析
関東地方
東京都(31,945社、偏差値87.2)を中心に、埼玉県(18,475社、偏差値66.2)、神奈川県(17,536社、偏差値64.8)、千葉県(12,172社、偏差値56.5)と首都圏で建設業者が集中しています。茨城県(8,769社、偏差値51.2)、群馬県(6,572社、偏差値47.7)、栃木県(5,483社、偏差値46.1)も含め、関東地方全体で全国の建設業者の約26.8%(10万952社)を占めています。首都圏の旺盛な建設需要を背景に、大規模から中小まで多様な建設業者が存在しています。
関西地方
大阪府(26,578社、偏差値78.8)を中心に、兵庫県(12,810社、偏差値57.4)、京都府(7,253社、偏差値48.8)と続きます。関西圏全体では建設業者の集積が見られますが、東京一極集中の影響もあり、首都圏と比較すると相対的に少なくなっています。関西地方の平均は約9,793社で、全国の約15.6%(5万8,759社)を占めています。大阪府と兵庫県では都市再開発や交通インフラ整備が活発ですが、他の関西地域では建設需要の伸び悩みが見られます。
中部・東海地方
愛知県(18,137社、偏差値65.7)を中心に、静岡県(10,567社、偏差値54.0)、新潟県(10,431社、偏差値53.7)、岐阜県(7,666社、偏差値49.4)と続きます。中部・東海地方全体では平均約7,505社で、全国の約19.9%(7万5,046社)を占めています。自動車産業を中心とした製造業の集積地であり、工場や物流施設の建設需要が特徴的です。愛知県では名古屋市を中心に都市開発も活発で、建設業者数も多くなっています。
九州・沖縄地方
福岡県(19,238社、偏差値67.4)が突出して多く、九州地方の建設業の中心となっています。熊本県(6,070社、偏差値47.0)、鹿児島県(5,450社、偏差値46.0)、長崎県(4,868社、偏差値45.1)、大分県(4,752社、偏差値44.9)と続き、佐賀県(2,581社、偏差値41.5)は最も少なくなっています。九州・沖縄地方の平均は約6,373社で、全国の約13.5%(5万982社)を占めています。福岡県と他県の格差が大きく、九州内での建設需要の一極集中が見られます。
東北・北海道地方
北海道(18,456社、偏差値66.2)が突出して多く、東北では宮城県(6,743社、偏差値48.0)が最も多くなっています。福島県(6,683社、偏差値47.9)、青森県(5,077社、偏差値45.4)、山形県(4,547社、偏差値44.6)、岩手県(4,107社、偏差値43.9)、秋田県(3,405社、偏差値42.8)と続きます。東北・北海道地方の平均は約7,003社で、全国の約13.0%(4万9,018社)を占めています。北海道は広大な面積と積雪対策のための特殊な建設需要があり、建設業者数も多くなっています。東北地方では東日本大震災からの復興需要が一段落し、建設業者数も安定傾向にあります。
建設業者数の格差と課題
建設業者数の地域間格差は、人口分布や経済規模、地理的条件などによって生じています。東京都と島根県では約12.7倍もの差があり、この格差は単に人口差だけでなく、建設投資額や都市化の程度も反映しています。
地方では人口減少に伴う建設需要の縮小が進む一方、既存インフラの維持管理や防災対策の必要性は高まっており、建設業者の役割は変化しています。特に建設業者数が少ない地域では、地域のインフラ維持を担う建設業者の持続可能性確保が課題となっています。
統計データの基本情報
この統計データは2022年度の都道府県別建設業者数を示しています。建設業者数とは、建設業法に基づく許可を受けた建設業者の数を指します。
データの分析から、以下のような特徴が見られます:
- 分布の歪み: 建設業者数の分布は正の歪みを示しており、平均値(約8,020社)が中央値(約5,483社)を上回っています。これは東京都や大阪府などの突出した地域が平均値を押し上げているためです。
- 明確な外れ値の存在: 東京都(31,945社)は明らかな外れ値であり、第2位の大阪府(26,578社)も特に高い値を示しています。
- 四分位範囲: 上位25%の都道府県(第3四分位)は約9,945社以上、下位25%(第1四分位)は約3,934社以下となっており、中間50%の範囲も比較的広く、地域間格差の大きさを示しています。
- 標準偏差の大きさ: 標準偏差は約6,434社と大きく、平均値の約80%に相当します。これは都道府県間のばらつきが非常に大きいことを示しています。
- 地域的な集中: 東京都、大阪府、福岡県、埼玉県、北海道の上位5県で全国の建設業者の約30%を占めており、特定地域への集中が見られます。
まとめ
建設業者数は地域の建設需要や経済活動の規模を反映する重要な指標です。東京都を筆頭に大都市圏で多くの建設業者が集積している一方、地方県では相対的に少ない状況にあります。
この地域間格差は、人口分布や経済規模、都市化の程度など様々な要因によって形成されてきました。特に東京一極集中の傾向は建設業界でも顕著であり、地方の建設業者数の相対的な減少が課題となっています。
今後は人口減少社会の中で建設需要の質的変化が予想され、新設工事から維持管理・更新へのシフト、防災・減災対策の強化、環境配慮型建設へのニーズ増加などが見込まれます。これらの変化に対応するため、建設業者には技術力の向上や事業の多角化、デジタル技術の活用などが求められています。
また、建設業界全体で深刻な人材不足と高齢化が進む中、特に建設業者数が少ない地域では、限られた人材で地域のインフラを支える持続可能な体制づくりが重要な課題となっています。地域の建設業は単なる産業としてだけでなく、地域の安全・安心を支える重要な社会基盤としての役割も担っており、その持続可能性確保は地域社会全体の課題と言えます。