土地面積分類の定義について

用語の定義

はじめに

土地面積は、国土計画や都市計画、税制、環境保全など様々な分野で基礎となる重要な情報です。しかし、「面積」と一口に言っても、その定義や測定方法、対象範囲によって様々な種類があります。本記事では、日本で用いられている主な土地面積分類の定義と特徴について解説します。

国土面積

定義と測定方法

国土面積とは、日本の領土の総面積を指します。国土地理院が「全国都道府県市区町村別面積調」として公表しており、2023年時点での日本の国土面積は約37.8万平方キロメートルです。

国土面積の測定は、国土地理院が作成する地図や測量データに基づいて行われます。具体的には、1/25,000地形図などの地図データをデジタル処理し、GIS(地理情報システム)を用いて計算されています。なお、北方領土や竹島は日本固有の領土として面積に含まれていますが、尖閣諸島については沖縄県石垣市の一部として計上されています。

国土面積の変動要因

国土面積は、以下のような要因によって変動することがあります:

  1. 測量技術の向上による精度の変化
  2. 海岸線の浸食や堆積
  3. 埋立地の造成
  4. 火山活動による新島の形成や既存島の拡大

特に近年では、測量技術の発達により、より精密な面積計測が可能になっています。また、東京湾や大阪湾などでの大規模な埋立事業により、国土面積は微増傾向にあります。

可住地面積

定義と算出方法

可住地面積とは、人が居住可能な土地の面積を指します。具体的には、国土面積から林野面積(森林や原野)と主要湖沼面積を差し引いた面積として定義されています。

可住地面積 = 国土面積 - 林野面積 - 主要湖沼面積

2023年時点での日本の可住地面積は約12.4万平方キロメートルで、国土面積の約32.8%を占めています。

可住地面積の意義と限界

可住地面積は、人口密度の実態をより正確に把握するための指標として用いられます。日本は国土の約7割が山地であるため、単純な国土面積あたりの人口密度では実態を正確に反映できません。可住地面積あたりの人口密度を見ることで、実際の居住空間における人口の集中度をより適切に評価できます。

ただし、可住地面積の定義には以下のような限界もあります:

  1. 林野でも一部は居住可能な場合がある
  2. 可住地とされる地域でも、急傾斜地や災害危険区域など居住に適さない場所が含まれる
  3. 都市計画や土地利用規制により、可住地でも居住用途に利用できない場合がある

評価総地積

定義と特徴

評価総地積とは、固定資産税の課税対象となる土地の合計面積を指します。市町村の固定資産課税台帳に登録されている土地の面積の総和であり、総務省の「固定資産の価格等の概要調書」で公表されています。

評価総地積には、宅地、田、畑、山林、原野、雑種地など様々な地目の土地が含まれますが、道路、河川、公園など公共用地や非課税となる国有地などは含まれません。

評価総地積割合

評価総地積割合とは、都道府県の総面積(国土面積)に対する評価総地積の割合を示す指標です。この割合が高いほど、都道府県の土地が固定資産税の課税対象として評価されている割合が高いことを意味します。

評価総地積割合 = 評価総地積 ÷ 国土面積 × 100(%)

2022年度のデータによると、評価総地積割合は都道府県によって大きく異なり、千葉県(68.6%)や茨城県(68.2%)などで高く、山梨県(29.4%)や富山県(32.0%)などで低くなっています。この差は、地形的特徴や土地利用状況、都市化の程度などを反映しています。

地目別面積

地目の定義と種類

地目とは、土地の用途による分類であり、不動産登記法に基づいて定められています。主な地目には以下のようなものがあります:

  1. 宅地:建物の敷地や庭園など
  2. 田:水稲を栽培するための土地
  3. 畑:野菜や穀物などを栽培するための土地
  4. 山林:樹木の集団生育地
  5. 原野:雑草や灌木が生育する土地
  6. 牧場:家畜の放牧地
  7. 池沼:灌漑用水などのための人工的な水溜まり
  8. 鉱泉地:鉱泉の湧出する土地
  9. 雑種地:上記のいずれにも該当しない土地

地目別面積の統計

地目別面積の統計は、法務省の「土地登記統計」や農林水産省の「耕地及び作付面積統計」、国土交通省の「土地基本調査」など、複数の統計調査で公表されています。これらの統計は、土地利用の現状や変化を把握するための基礎資料として活用されています。

例えば、農林水産省の統計によると、2022年の耕地面積(田と畑の合計)は約437万ヘクタールで、国土面積の約11.6%を占めています。また、森林面積は約2,505万ヘクタールで、国土面積の約66.3%を占めています。

都市計画区域と用途地域

都市計画区域の定義と面積

都市計画区域とは、都市計画法に基づいて指定される区域で、計画的な都市形成を図るべき区域を指します。都市計画区域は、市街化区域と市街化調整区域に区分される場合(線引き都市計画区域)と、区分されない場合(非線引き都市計画区域)があります。

2022年時点での都市計画区域の面積は約10.2万平方キロメートルで、国土面積の約27.0%を占めています。

用途地域の種類と面積

用途地域とは、都市計画区域内において、土地利用の合理化を図るために定められる地域区分です。住居、商業、工業など12種類の用途地域があり、それぞれ建築できる建物の種類や規模が制限されています。

2022年時点での用途地域の指定面積は約1.9万平方キロメートルで、都市計画区域面積の約18.6%、国土面積の約5.0%を占めています。

面積測定の技術と課題

測量技術の発展

土地面積の測定技術は、従来の三角測量や平板測量から、GPS(全地球測位システム)やリモートセンシング、航空レーザー測量など高度な技術へと発展してきました。特に近年では、GIS(地理情報システム)の普及により、デジタル化された地図データを用いた高精度な面積計測が可能になっています。

面積測定の課題

しかし、面積測定には依然として以下のような課題があります:

  1. 地球は完全な球体ではないため、平面への投影方法によって面積に差が生じる
  2. 山岳地域など起伏の激しい地形では、水平投影面積と実際の表面積に差がある
  3. 海岸線や河川など自然の境界は常に変化しており、厳密な面積の確定が難しい
  4. 異なる機関や時期の測定では、測定方法や基準の違いにより数値に差が生じることがある

まとめ

土地面積の分類は、その目的や用途によって様々な定義があります。国土面積、可住地面積、評価総地積、地目別面積など、それぞれの面積概念は異なる文脈で用いられ、異なる意義を持っています。

これらの面積データは、国土計画や都市計画、税制、環境保全など多岐にわたる分野で活用されており、政策立案や意思決定の基礎となる重要な情報です。測量技術の発展により、より精密な面積測定が可能になっていますが、測定方法や基準の違いによる数値の差異には注意が必要です。

土地は限られた資源であり、その効率的かつ持続可能な利用は現代社会の重要な課題です。様々な面積分類の概念を正しく理解し、適切に活用することが、土地政策の立案や評価において不可欠となっています。